どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ

文字の大きさ
27 / 29

エピローグ

しおりを挟む
「リノア様達もどこかへお出かけ?」

 屋敷から出ると、大きな宝石のついたアクセサリーを身につけたロレーヌ男爵令嬢が話しかけてこられました。

 どうしたら、そんな贅沢をしようという気になるのでしょう。
 お父様を見ていますと、暮らしが厳しいわけではありませんが、その分、自らが働き、事業をいくつも掛け持って、お金を稼いでくださっています。
 だからこそ、我が家はお金に困らずに済んでいるのです。
 それをわかっていますから、私の場合は無駄遣いをしないようにと心がけていますが、ロレーヌ男爵令嬢はこれから自分の家の事を管理しなければならないのに、どうされるおつもりなんでしょうか。
 使用人のお給料もラルフ様が1ヶ月分は先にお支払いしてあげているそうですが、その後、どうするかなんて考えてもいないのでしょうね。
 
 まあ、私という金づるがいるから良いと思っているのかもしれませんが、残念でしたね。
 
「ええ。ラルフ様のお屋敷に招待いただいたので、しばらくお世話になろうと思っているんです」
「あら、羨ましいです! お土産を楽しみにしていますね!  あ、私達もいつかお誘いいただけます?」
「それは無理ですかね」

 にっこり笑って拒否すると、ロレーヌ男爵令嬢は頬を膨らませて抗議してきます。

「そんな意地悪な事言わないでください、リノア様。私達の仲じゃないですか!」
「どんな仲です?」
「同じ男性を好きになった仲です! まあ、私が奪っちゃったので、リノア様は悔しいでしょうけど、同じ男性を好きになったという事は趣味も似通っていると思うんです! だから仲良く出来るはずですよ!」
「お断りです」

 はっきりと気持ちをお伝えしてから、私の為に用意された馬車に近付いていく。
 
「リノア様、つれない事を言わないで下さい! 今はまだ失恋の痛みが消えないだけで、落ち着けばきっと」

 ロレーヌ男爵令嬢が追いすがって来た時でした。
 
「そんな、嘘だ!!」

 ディーンの叫ぶ声が聞こえ、ラルフ様が私に近付いてくると、少し乱暴に私の腕を取ってから言いました。

「早く馬車に乗るんだ」
「は、はい!」

 ラルフ様に促され、何台かある内のひときわ豪華な馬車に押し込まれるように入れられると、私が座ったのを確認し、ラルフ様も中に入り、私の向かいに座られると、ケイン様が外から馬車の扉を閉めて下さいました。
 すると、ディーンの叫び声が聞こえました。

「そんな、待ってくれ! リノアが助けてくれると思ったから彼女と結婚したんだ! それに旅行先で贅沢して、もう手持ちのお金がないんだよ!」
「どうかしたの、ディーン?」
「大変だ、ヴィアラ! リノア達は旅行に行くんじゃない! 引っ越すんだ!」
「引っ越す?」
「もうこの土地には戻ってこないんだよ!」
「なんですって!?」

 二人が騒いでいる間に、御者から声がかかり、ゆっくりと馬車が動き出す。

「待って! 行かないで!」

 ロレーヌ男爵令嬢の叫び声と共に、馬車をどんどんと叩く音が聞こえます。
 窓から外を見ると、ディーンとばっちり目があってしまいました。
 彼は、私に向かって泣きそうな顔で訴えてきます。

「行かないでくれ、リノア! 君がいなくなったら、俺達はどうやって生きていけばいいんだよ!」
「そうよ、リノア様! リノア様は私達の幸せに欠かせない人なんです!」

 なんて迷惑で、自分勝手な人達なんでしょう!
 馬車は狭く細い道のため、スピードが出せず、彼らは必死に追いかけてきます。
 普通なら気の毒に思うところなのかもしれませんが、どうせ私の事などお財布か何かとしか思っていない人達です。
 罪悪感はわきませんし、それよりも言いたいことがあります。
 馬車の窓を小さく開けて、私の声を聞こえやすくした後、追いすがってくる二人に叫びます。

「カンタス伯爵、婚約破棄してくれてありがとう! ロレーヌ男爵令嬢、カンタス伯爵を誘惑してくれてありがとう! 二人ならきっと二人に似合う生活を送れると思います! 頑張って下さいね!」
「待ってくれ、リノア! 俺が悪かった! だから戻ってきてくれ!」
「リノア様、待って!」

 広い道に出た所で、御者の方が「振り切るためスピードを上げます」とおっしゃったので、ラルフ様が私の隣に座ると私の身体を抱きしめました。

「ラ、ラルフ様!?」
「揺れるから危ない」

 ラルフ様のおっしゃる通り、スピードを上げた馬車は今までと段違いに揺れて、身体が上下左右に動きましたが、ラルフ様が抱きしめてくださっていたため、身体をぶつける事なく済みました。

「待って! リノア様! ひどいわ! こんなのってあんまりよ!」

 ロレーヌ男爵令嬢の泣き叫ぶ声が耳に届きましたが、もう私にはどうでも良い事です。

 後日、人から聞いた話によりますと、新婚旅行中も金貸しからお金を借りて買い物をしていたようで、手持ちのお金がなくなり、借金も返せなくなったカンタス伯爵夫妻は、借金取りから逃れるため、なけなしのお金で王都に出ると、無銭飲食や、暴力で平民からお金を奪ったり、店の商品を盗んで、それを売りさばいたりするなどの悪事を仕出かしたりと、色々な罪状で捕まり、現在は投獄されているとの事でした。

 ディーンは牢屋の中で私に会いたいと喚いているらしいですが、私の知った事ではありません。
 もう私にこだわってほしくないものです!



      「どうして私にこだわるんですか!?」完結
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

幼馴染と夫の衝撃告白に号泣「僕たちは愛し合っている」王子兄弟の関係に私の入る隙間がない!

佐藤 美奈
恋愛
「僕たちは愛し合っているんだ!」 突然、夫に言われた。アメリアは第一子を出産したばかりなのに……。 アメリア公爵令嬢はレオナルド王太子と結婚して、アメリアは王太子妃になった。 アメリアの幼馴染のウィリアム。アメリアの夫はレオナルド。二人は兄弟王子。 二人は、仲が良い兄弟だと思っていたけど予想以上だった。二人の親密さに、私は入る隙間がなさそうだと思っていたら本当になかったなんて……。

【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件

よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます 「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」 旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。 彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。 しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。 フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。 だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。 私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。 さて……誰に相談したら良いだろうか。

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

婚約者を妹に取られた私、幼馴染の〝氷の王子様〟に溺愛される日々

佐藤 美奈
恋愛
エリーゼ・ダグラス公爵家の令嬢は、フレックス・グリムベルク王子と婚約していた。二人の結婚は間近に迫り、すべてが順調に進んでいると思われた。しかし、その幸せは突然崩れ去る。妹のユリア・ダグラスが、フレックスの心を奪ってしまったのだ。婚約破棄の知らせが届くとき、エリーゼは絶望に打ちひしがれた。 「なぜ?」心の中で何度も繰り返した問いに、答えは見つからない。妹に取られたという嫉妬と、深い傷を負ったエリーゼが孤独に沈んでいた。そのとき、カイル・グリムベルク王子が現れる。 彼はエリーゼにとって、唯一の支えであり安らぎの源だった。学園で『氷の王子様』と呼ばれ、その冷徹な態度で周囲を震えさせているが、エリーゼには、その冷徹さとは対照的に、昔から変わらぬ温かい心で接してくれていた。 実は、エリーゼはフレックスとの婚約に苦しんでいた。彼は妹のユリアに似た我儘で気まぐれな性格で、内心では別れを望んでいた。しかし、それを言い出せなかった。

〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。

藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。 但し、条件付きで。 「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」 彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。 だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全7話で完結になります。

婚約破棄します

アズやっこ
恋愛
私は第一王子の婚約者として10年この身を王家に捧げてきた。 厳しい王子妃教育もいつか殿下の隣に立つ為だと思えばこそ耐えられた。殿下の婚約者として恥じないようにといつも心掛けてきた。 だからこそ、私から婚約破棄を言わせていただきます。  ❈ 作者独自の世界観です。

婚約破棄ですか?勿論お受けします。

アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。 そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。 婚約破棄するとようやく言ってくれたわ! 慰謝料?そんなのいらないわよ。 それより早く婚約破棄しましょう。    ❈ 作者独自の世界観です。

処理中です...