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22 言う事を聞いておけばいいんだ? 嫌ですわ
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あれだけ、ルキアの家であるレイング伯爵家には偉そうにしていたのに、相手が公爵令息となると、態度が違うらしい。
ドーウッド伯爵は土下座した状態で謝ってくる。
「息子がご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした!」
「何に対しての謝罪かな?」
ザック様がドーウッド伯爵を見下ろして聞くと、伯爵は顔を上げて話し始める。
「息子がザック様に付きまとい行為をしている事でございます」
「付きまとい行為…」
私が呟くと、ドーウッド伯爵はお前は何も話すな、と言わんばかりに私を見て睨んでから、すぐにザック様には媚びる様な笑みを見せた。
けれど、ザック様が見逃すわけがなかった。
「今、ルキア嬢を見て、睨まなかったか?」
「と、とんでもございません! 目を細めただけでございます」
「ザック様、絶対に睨んでいたと思いますわ」
「お前は少し黙っていろ!」
ドーウッド伯爵は私に向かって叫んだけれど、すぐにザック様の冷たい視線に気が付いて、作り笑顔を浮かべる。
「レイング伯爵令嬢。きつい言い方をしてすまなかった。息子の件で気が立っていたのだよ」
「ミゲル様が悪い事をしたのに、私に当たるなんておかしいですわ」
「それは悪いと思っているよ。だけど、君は義理の娘だった事もあるし、親近感があるんだ」
「親近感? 義理の娘だったとしても他人は他人ですわよ? もちろん、良い舅であれば、家族と同じ様に接する方もいらっしゃるでしょうけれど、初夜の晩に浮気して、暴言を吐いただけでなく、人様に付きまとい行為をする人を育てた方に親近感があると言われても、全く嬉しくはないですわね」
私が言いたい事を言うと、ドーウッド伯爵は唇を噛んで睨んできた。
すると、すぐにザック様が割って入る。
「やはり睨んでいるじゃないか。ルキア嬢、気持ちはわからないでもないが、君ももう少し柔らかく言おうな? で、ドーウッド伯爵、あなたは何をしに来たんです?」
「そ、それは…、あの、ザック様!」
「何だ?」
「ザック様とお話させていただく前に、レイング伯爵令嬢と2人で話をさせていただけないでしょうか」
「2人で話を? この部屋でか?」
「部屋が駄目であれば、外でもかまいません」
「駄目だ、と言いたいところだが、君はどうしたい?」
ザック様が答えはわかっている様だけれど聞いてくれたので、笑顔で答える。
「かまいませんわ。部屋で2人きりはご遠慮願いたいので、中庭に移動させていただいても良いですか? あと、騎士を2人ほど、お借りできますでしょうか」
「かまわない」
今回、私の家からずっと、公爵家の騎士が付いてきてくれているので、そうお願いすると、ザック様は頷き、言葉を付け加える。
「彼らは元々、君の為に雇った騎士だからな」
「もしかして、前に少し話をしていただいていた…?」
「ああ。だから、自由に使えばいい」
「ありがとうございます」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫です。心配していただき、ありがとうございます!」
小さくガッツポーズをしてから、笑顔を向けたけど、ザック様はまだ心配そうだった。
たぶん、私が淑女らしからぬ発言をしそうなので、心配なのかもしれない。
ザック様には応接室に残ってもらい、部屋の外にいた騎士2人とドーウッド伯爵と一緒にメイドに中庭まで案内してもらう事になった。
なぜ中庭にしたかというと、応接室からも一部が見れるし、他の部屋からも見やすい場所にあるから。
騎士は近くにいてくれるけれど、乱暴な事をされそうになったら、他の人にも気付いてもらえる様に大声で叫んでやろうと思う。
私達が部屋を出る時に、ザック様がメイドに、中庭のガゼボに連れて行く様にと指示してくれたので、そちらに向かって歩きながら話をする。
「で、ドーウッド伯爵、わたくしに何か言いたい事があるのでしょうか?」
「何か言いたい事があるかだと? あるに決まっているだろう! 君のせいで息子の人生はめちゃくちゃだ」
「そうなるまで放置されたのは、ドーウッド伯爵なのでは? おかしいと気付いた時点で家に閉じ込めておくべきでしたわね?」
「息子は今までは、あんな子じゃなかったんだ!」
「では、遅い反抗期をむかえられたのかも? おめでとうございます」
「反抗期だと!? あいつは君を思うがあまりの行動だと言ってるんだぞ!? それなのに君は…!」
意味の分からない事で責められている気がしたので、歩く足を止めると、少し後ろを付いてきていた騎士も足を止めた。
それに伴い、ドーウッド伯爵も少し焦った顔をして立ち止まった。
「な、なんだ、いきなり」
「人のせいにするのはやめていただけませんか? 本人のせいじゃないというのであれば、あなたの管理不足ではないのでしょうか」
「大体、お前が悪いんだぞ! 一度くらいの浮気でごちゃごちゃ言うな!」
「一度だろうが二度だろうが浮気は浮気ですよ。許す許さないかは、された本人が決めるのが当たり前でしょう」
「許すのが当たり前なんだ!」
「その当たり前を選ばない人間がここにおりましてよ?」
「うるさい! 女は大人しく男の言う事を聞いておけばいいんだ!」
「嫌ですわ」
きっぱりと答えると、ドーウッド伯爵は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「私を馬鹿にするのか!?」
「馬鹿にはしてませんわ。ただ、嫌だと言っただけですわ」
「それが馬鹿にしていると言うんだ!」
「この国の特に貴族は男尊女卑が激しいようですが、今は外面だけになってきた事はご存知ですか? 家の中では奥様に頭があがらない方も増えてきていましてよ。それに良識のある貴族は男性は奥様を大事にしていらっしゃいますわよ? トルマリア公爵閣下だってそうですわ。普通なら、ザック様の婚約者でも何でもない、わたくしなど、屋敷に招待しようだなどとは思わないでしょう。ですけど、招いてくださっています。それは何故か? 奥様のロゼッタ様がお望みになったからですわ」
にっこりと微笑むと、ドーウッド伯爵は私の言おうとしている事がわからないのか、鼻で笑う。
「それがどうしたと言うんだ。招かれてすごいと褒めてほしいのか?」
うーん。
ミゲルだけが馬鹿なのは、父親が馬鹿だからなのかな。
私がルキアの中に入ってから、ミゲルの家庭の事も調べてみたけど、ミゲルのお母様はかなり虐げられている感じなのよね。
ミゲルは父の背中を見て育ったっていう感じ。
しかも、お母様は日本の言い方でいえば、ママ友に陰でいじめられていたみたい。
鬱になってしまったお母様がお父様に罵られている姿を見たミゲルは、夫婦がこんなものだと思って初夜を迎えたみたいだけど、だからって、それはミゲルを許す理由にはならない。
普通なら、父親みたいにならないようにしようと思うでしょ。
とにかく、父の方を懲らしめるか。
「招かれてすごい、というのはそうかもしれないですけど、その事も含めて、お話しておきますわ」
「は? 何を言ってるんだ?」
「わたくしは、ロゼッタ様に招待されているんですの」
「それがどうした? 自慢はもういい」
「自慢は自慢になるかもしれませんが、わかっていらっしゃらないようですから、お伝えしておきますが、ロゼッタ様と、この後、わたくし、お茶をご一緒させていただくんですの」
「はあ…。だから、それがどうしたって言うんだ!?」
「お伝えしておきます」
「もったいぶるな! とっとと言え!」
ここまで言って意味がつかめないあなたもどうかと思うんだけど!?
「ロゼッタ様に、ドーウッド伯爵が女は男の言う事を黙って聞いていればいいんだと叫んでおられたと、お伝えしておきます」
「な、何だと!?」
「ふふ。ありがとう、ルキアさん。でも、今、聞いていたから、お伝えいただかなくても大丈夫よ?」
これは予想外だった。
見えてきていた白いガゼボから、声が聞こえたかと思うと、ガゼボの中から現れたのは、笑っている様に見えるけれど、明らかに怒っているという表情のロゼッタ様だった。
ザック様、もしかして、ロゼッタ様がガゼボにいる事を知ってましたね…?
ドーウッド伯爵は土下座した状態で謝ってくる。
「息子がご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした!」
「何に対しての謝罪かな?」
ザック様がドーウッド伯爵を見下ろして聞くと、伯爵は顔を上げて話し始める。
「息子がザック様に付きまとい行為をしている事でございます」
「付きまとい行為…」
私が呟くと、ドーウッド伯爵はお前は何も話すな、と言わんばかりに私を見て睨んでから、すぐにザック様には媚びる様な笑みを見せた。
けれど、ザック様が見逃すわけがなかった。
「今、ルキア嬢を見て、睨まなかったか?」
「と、とんでもございません! 目を細めただけでございます」
「ザック様、絶対に睨んでいたと思いますわ」
「お前は少し黙っていろ!」
ドーウッド伯爵は私に向かって叫んだけれど、すぐにザック様の冷たい視線に気が付いて、作り笑顔を浮かべる。
「レイング伯爵令嬢。きつい言い方をしてすまなかった。息子の件で気が立っていたのだよ」
「ミゲル様が悪い事をしたのに、私に当たるなんておかしいですわ」
「それは悪いと思っているよ。だけど、君は義理の娘だった事もあるし、親近感があるんだ」
「親近感? 義理の娘だったとしても他人は他人ですわよ? もちろん、良い舅であれば、家族と同じ様に接する方もいらっしゃるでしょうけれど、初夜の晩に浮気して、暴言を吐いただけでなく、人様に付きまとい行為をする人を育てた方に親近感があると言われても、全く嬉しくはないですわね」
私が言いたい事を言うと、ドーウッド伯爵は唇を噛んで睨んできた。
すると、すぐにザック様が割って入る。
「やはり睨んでいるじゃないか。ルキア嬢、気持ちはわからないでもないが、君ももう少し柔らかく言おうな? で、ドーウッド伯爵、あなたは何をしに来たんです?」
「そ、それは…、あの、ザック様!」
「何だ?」
「ザック様とお話させていただく前に、レイング伯爵令嬢と2人で話をさせていただけないでしょうか」
「2人で話を? この部屋でか?」
「部屋が駄目であれば、外でもかまいません」
「駄目だ、と言いたいところだが、君はどうしたい?」
ザック様が答えはわかっている様だけれど聞いてくれたので、笑顔で答える。
「かまいませんわ。部屋で2人きりはご遠慮願いたいので、中庭に移動させていただいても良いですか? あと、騎士を2人ほど、お借りできますでしょうか」
「かまわない」
今回、私の家からずっと、公爵家の騎士が付いてきてくれているので、そうお願いすると、ザック様は頷き、言葉を付け加える。
「彼らは元々、君の為に雇った騎士だからな」
「もしかして、前に少し話をしていただいていた…?」
「ああ。だから、自由に使えばいい」
「ありがとうございます」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫です。心配していただき、ありがとうございます!」
小さくガッツポーズをしてから、笑顔を向けたけど、ザック様はまだ心配そうだった。
たぶん、私が淑女らしからぬ発言をしそうなので、心配なのかもしれない。
ザック様には応接室に残ってもらい、部屋の外にいた騎士2人とドーウッド伯爵と一緒にメイドに中庭まで案内してもらう事になった。
なぜ中庭にしたかというと、応接室からも一部が見れるし、他の部屋からも見やすい場所にあるから。
騎士は近くにいてくれるけれど、乱暴な事をされそうになったら、他の人にも気付いてもらえる様に大声で叫んでやろうと思う。
私達が部屋を出る時に、ザック様がメイドに、中庭のガゼボに連れて行く様にと指示してくれたので、そちらに向かって歩きながら話をする。
「で、ドーウッド伯爵、わたくしに何か言いたい事があるのでしょうか?」
「何か言いたい事があるかだと? あるに決まっているだろう! 君のせいで息子の人生はめちゃくちゃだ」
「そうなるまで放置されたのは、ドーウッド伯爵なのでは? おかしいと気付いた時点で家に閉じ込めておくべきでしたわね?」
「息子は今までは、あんな子じゃなかったんだ!」
「では、遅い反抗期をむかえられたのかも? おめでとうございます」
「反抗期だと!? あいつは君を思うがあまりの行動だと言ってるんだぞ!? それなのに君は…!」
意味の分からない事で責められている気がしたので、歩く足を止めると、少し後ろを付いてきていた騎士も足を止めた。
それに伴い、ドーウッド伯爵も少し焦った顔をして立ち止まった。
「な、なんだ、いきなり」
「人のせいにするのはやめていただけませんか? 本人のせいじゃないというのであれば、あなたの管理不足ではないのでしょうか」
「大体、お前が悪いんだぞ! 一度くらいの浮気でごちゃごちゃ言うな!」
「一度だろうが二度だろうが浮気は浮気ですよ。許す許さないかは、された本人が決めるのが当たり前でしょう」
「許すのが当たり前なんだ!」
「その当たり前を選ばない人間がここにおりましてよ?」
「うるさい! 女は大人しく男の言う事を聞いておけばいいんだ!」
「嫌ですわ」
きっぱりと答えると、ドーウッド伯爵は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「私を馬鹿にするのか!?」
「馬鹿にはしてませんわ。ただ、嫌だと言っただけですわ」
「それが馬鹿にしていると言うんだ!」
「この国の特に貴族は男尊女卑が激しいようですが、今は外面だけになってきた事はご存知ですか? 家の中では奥様に頭があがらない方も増えてきていましてよ。それに良識のある貴族は男性は奥様を大事にしていらっしゃいますわよ? トルマリア公爵閣下だってそうですわ。普通なら、ザック様の婚約者でも何でもない、わたくしなど、屋敷に招待しようだなどとは思わないでしょう。ですけど、招いてくださっています。それは何故か? 奥様のロゼッタ様がお望みになったからですわ」
にっこりと微笑むと、ドーウッド伯爵は私の言おうとしている事がわからないのか、鼻で笑う。
「それがどうしたと言うんだ。招かれてすごいと褒めてほしいのか?」
うーん。
ミゲルだけが馬鹿なのは、父親が馬鹿だからなのかな。
私がルキアの中に入ってから、ミゲルの家庭の事も調べてみたけど、ミゲルのお母様はかなり虐げられている感じなのよね。
ミゲルは父の背中を見て育ったっていう感じ。
しかも、お母様は日本の言い方でいえば、ママ友に陰でいじめられていたみたい。
鬱になってしまったお母様がお父様に罵られている姿を見たミゲルは、夫婦がこんなものだと思って初夜を迎えたみたいだけど、だからって、それはミゲルを許す理由にはならない。
普通なら、父親みたいにならないようにしようと思うでしょ。
とにかく、父の方を懲らしめるか。
「招かれてすごい、というのはそうかもしれないですけど、その事も含めて、お話しておきますわ」
「は? 何を言ってるんだ?」
「わたくしは、ロゼッタ様に招待されているんですの」
「それがどうした? 自慢はもういい」
「自慢は自慢になるかもしれませんが、わかっていらっしゃらないようですから、お伝えしておきますが、ロゼッタ様と、この後、わたくし、お茶をご一緒させていただくんですの」
「はあ…。だから、それがどうしたって言うんだ!?」
「お伝えしておきます」
「もったいぶるな! とっとと言え!」
ここまで言って意味がつかめないあなたもどうかと思うんだけど!?
「ロゼッタ様に、ドーウッド伯爵が女は男の言う事を黙って聞いていればいいんだと叫んでおられたと、お伝えしておきます」
「な、何だと!?」
「ふふ。ありがとう、ルキアさん。でも、今、聞いていたから、お伝えいただかなくても大丈夫よ?」
これは予想外だった。
見えてきていた白いガゼボから、声が聞こえたかと思うと、ガゼボの中から現れたのは、笑っている様に見えるけれど、明らかに怒っているという表情のロゼッタ様だった。
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