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プロローグ
※覚えやすいという理由でアナグラムのような名前の作り方をしています。気になる方はそっと閉じていただきますよう、お願いいたします。
クルリン王国の東の辺境伯家の次女、リファーラ・チャルブッレは、幼い頃から生死が不明の娘として有名だった。
リファーラには姉と弟がいるが、一般的な家庭のように両親に可愛がられ、世間からの評判も良かった。
特に姉のキュージーは聖女とあだ名がつくほどに、見た目も心も清らかだと言われている。
弟も父譲りの整った顔立ちで、女性には特に人気があった。
チャルブッレ家は五人家族のはずなのに、チャルブッレ邸に住む家族は四人だけ。
ある貴族がチャルブッレ邸を訪ねた際、さりげなく次女のことを尋ねても、病気で部屋から出ることができないと答えるだけだった。
通っていた学園にも退学届が出され、一切、姿を現さなくなったリファーラ。
多くの貴族は流行り病で亡くなったのではないかと噂していた。
そんなリファーラが社交界デビューすることになったのは、彼女が15歳の時だ。
ダークブラウンのストレートの髪に紫色の瞳。小顔でアーモンド型の目を持ち、顔立ちは美しいほうらしい。
美しいほうらしいというのは、リファーラは私自身のことであり、さすがに自分を美しいと言えるほどの自信はないからである。
15歳になるまで、私がどうしていたかというと、森の中で一人で暮らしていた。
といっても捨てられたわけでも、野宿をしていたわけでもないのでご安心を。
それならなぜ?
理由を説明すると、私は8歳の頃、父に手を出されそうになった。
殴られそうになった、というわけではない。
夜中に部屋に忍び込んできただけでなく、私のベッドに潜り込み、体を触ってきたのだ。
当時の私は、父が何をしようとしているのかさっぱりわからなかった。
とにかく気持ち悪くて恐怖を覚え、必死に抵抗した。そして、何とか難を逃れた私は、すぐに母に相談しにいった。
すると母は父を責めるのではなく、私を責め始めた。
『襲われそうになったですって? どうせ、あなたがあの人を誘惑したのでしょう? 実の父親に色目を使うなんて許せません!』
そう叫ぶと、母は使用人に命令して私を仕置き部屋に連れて行かせた。
仕置き部屋は使用人がミスをしたり、家主に逆らった時に罰を与える場所だ。
狭くて窓のない部屋の中には、鞭打ちや水責めをするためのバケツが置かれている。
私はそこで、母に命令された使用人から何度も鞭を打たれた。
それだけでは気がすまなかった母は、国境近くにある山小屋に私を隔離することに決めた。
父は私を庇うつもりは一切なく、母に言われるがままに、次の日には私を山小屋に連れて行くように執事に指示をした。
今となっては、家から追い出されたおかけで父から身を守ることができたので母に感謝はしている。だが、私を守るためにこちらに送ったわけではないので、今のところ和解するつもりはない。
私が連れて行かれた場所は屋敷から、馬車で三時間ほど離れた場所にある森の中だった。
元々は狩猟の休憩所として建てられた立派なログハウスで、子供一人が住むには十分な広さだった。
リビング・ダイニングに客室が一つ。梯子で上るロフトがあり、そこが私の寝室になった。
リビング・ダイニングからは広いウッドデッキに出ることもでき、よく晴れた日は木陰に置いたデッキチェアで昼寝をすることもできる。
周りは木々に囲まれてはいるものの、井戸もあり、近くには膝下くらいの深さしかない小川も流れている。
この小川は支流であり、本流はカインダキョウゲ川といい、隣国のクプンマ王国との境界にもなっている。
クルリン王国とクプンマ王国は元々は同じ国だったのだが、遥か昔、国王が王弟と思想の違いで仲違いをし、王弟がクプンマ王国の西側をクルリン王国として建国したそうだ。
このことについては、あとで改めて詳しい話をすることになるので、話を戻す。
飲み水は井戸で自分で汲まなければいけないため大変だったが、少しずつ慣れていったし、食料は三日に一度、最低限にはなるが、メイドが運んできてくれたため生き延びることができた。
私が一人の生活に慣れてきた頃に、ある出来事が起きた。
なんと、我が家にメイド以外の人が訪ねてきたのだ。
その日は、昨晩から強い雨が降り始め、夜が明けても止むことはなかった。朝方ということもあり、長袖シャツを着ていたが肌寒くなってきたため、レンガで造られた暖炉に火をつけて暖まっていた時だった。激しい雨音と混じって、扉をノックする音が微かに聞こえてきた。
「誰か外にいるの?」
扉に何かが当たった音ではないと瞬時に判断できたのは、叩く音が大きくなっていったからだ。
覗き穴から確認すると、黒の執事服を着たお爺さんの姿が見えた。
ずぶ濡れのお爺さんは子供を背負っていて、パッと見た限りでは、男の子はぐったりしている。
危険な人かもしれないけど、悪い人なら開けなくても無理矢理、扉をこじ開けるわよね。
覚悟を決めた私は、意を決して扉を開けて二人を中に招き入れた。
この日私は、リックと名乗る少年と彼の世話役の老人と出会った。
リックたちは隣国の住人で他国に侵入したことが知られたくなかった。
私はこの生活が明るみになり、屋敷に戻ることが嫌だった。
だから、お互いにお互いのことは秘密にしようと約束した。
彼が国に帰ってからも、正規ルートで入国し、私に会いに来てくれるという秘密の関係が8年後まで続いた。
秘密といってもリックの世話役から、彼の両親にはこのことは知らされていたのだが、命の危険がないということで、見守ってくれていたらしい。
しかし、十六歳になった私に婚約者ができたあとは、リックが私に会いに来ることはなくなった。
婚約者のいる異性と、内緒で会うことはできない。
それは仕方のないことだ。
私は婚約者との約束がある日以外は、また一人ぼっちになってしまった。
そんな彼と二年ぶりに再会することになったのは、姉と私の婚約者が恋仲になったとわかった時だった。
クルリン王国の東の辺境伯家の次女、リファーラ・チャルブッレは、幼い頃から生死が不明の娘として有名だった。
リファーラには姉と弟がいるが、一般的な家庭のように両親に可愛がられ、世間からの評判も良かった。
特に姉のキュージーは聖女とあだ名がつくほどに、見た目も心も清らかだと言われている。
弟も父譲りの整った顔立ちで、女性には特に人気があった。
チャルブッレ家は五人家族のはずなのに、チャルブッレ邸に住む家族は四人だけ。
ある貴族がチャルブッレ邸を訪ねた際、さりげなく次女のことを尋ねても、病気で部屋から出ることができないと答えるだけだった。
通っていた学園にも退学届が出され、一切、姿を現さなくなったリファーラ。
多くの貴族は流行り病で亡くなったのではないかと噂していた。
そんなリファーラが社交界デビューすることになったのは、彼女が15歳の時だ。
ダークブラウンのストレートの髪に紫色の瞳。小顔でアーモンド型の目を持ち、顔立ちは美しいほうらしい。
美しいほうらしいというのは、リファーラは私自身のことであり、さすがに自分を美しいと言えるほどの自信はないからである。
15歳になるまで、私がどうしていたかというと、森の中で一人で暮らしていた。
といっても捨てられたわけでも、野宿をしていたわけでもないのでご安心を。
それならなぜ?
理由を説明すると、私は8歳の頃、父に手を出されそうになった。
殴られそうになった、というわけではない。
夜中に部屋に忍び込んできただけでなく、私のベッドに潜り込み、体を触ってきたのだ。
当時の私は、父が何をしようとしているのかさっぱりわからなかった。
とにかく気持ち悪くて恐怖を覚え、必死に抵抗した。そして、何とか難を逃れた私は、すぐに母に相談しにいった。
すると母は父を責めるのではなく、私を責め始めた。
『襲われそうになったですって? どうせ、あなたがあの人を誘惑したのでしょう? 実の父親に色目を使うなんて許せません!』
そう叫ぶと、母は使用人に命令して私を仕置き部屋に連れて行かせた。
仕置き部屋は使用人がミスをしたり、家主に逆らった時に罰を与える場所だ。
狭くて窓のない部屋の中には、鞭打ちや水責めをするためのバケツが置かれている。
私はそこで、母に命令された使用人から何度も鞭を打たれた。
それだけでは気がすまなかった母は、国境近くにある山小屋に私を隔離することに決めた。
父は私を庇うつもりは一切なく、母に言われるがままに、次の日には私を山小屋に連れて行くように執事に指示をした。
今となっては、家から追い出されたおかけで父から身を守ることができたので母に感謝はしている。だが、私を守るためにこちらに送ったわけではないので、今のところ和解するつもりはない。
私が連れて行かれた場所は屋敷から、馬車で三時間ほど離れた場所にある森の中だった。
元々は狩猟の休憩所として建てられた立派なログハウスで、子供一人が住むには十分な広さだった。
リビング・ダイニングに客室が一つ。梯子で上るロフトがあり、そこが私の寝室になった。
リビング・ダイニングからは広いウッドデッキに出ることもでき、よく晴れた日は木陰に置いたデッキチェアで昼寝をすることもできる。
周りは木々に囲まれてはいるものの、井戸もあり、近くには膝下くらいの深さしかない小川も流れている。
この小川は支流であり、本流はカインダキョウゲ川といい、隣国のクプンマ王国との境界にもなっている。
クルリン王国とクプンマ王国は元々は同じ国だったのだが、遥か昔、国王が王弟と思想の違いで仲違いをし、王弟がクプンマ王国の西側をクルリン王国として建国したそうだ。
このことについては、あとで改めて詳しい話をすることになるので、話を戻す。
飲み水は井戸で自分で汲まなければいけないため大変だったが、少しずつ慣れていったし、食料は三日に一度、最低限にはなるが、メイドが運んできてくれたため生き延びることができた。
私が一人の生活に慣れてきた頃に、ある出来事が起きた。
なんと、我が家にメイド以外の人が訪ねてきたのだ。
その日は、昨晩から強い雨が降り始め、夜が明けても止むことはなかった。朝方ということもあり、長袖シャツを着ていたが肌寒くなってきたため、レンガで造られた暖炉に火をつけて暖まっていた時だった。激しい雨音と混じって、扉をノックする音が微かに聞こえてきた。
「誰か外にいるの?」
扉に何かが当たった音ではないと瞬時に判断できたのは、叩く音が大きくなっていったからだ。
覗き穴から確認すると、黒の執事服を着たお爺さんの姿が見えた。
ずぶ濡れのお爺さんは子供を背負っていて、パッと見た限りでは、男の子はぐったりしている。
危険な人かもしれないけど、悪い人なら開けなくても無理矢理、扉をこじ開けるわよね。
覚悟を決めた私は、意を決して扉を開けて二人を中に招き入れた。
この日私は、リックと名乗る少年と彼の世話役の老人と出会った。
リックたちは隣国の住人で他国に侵入したことが知られたくなかった。
私はこの生活が明るみになり、屋敷に戻ることが嫌だった。
だから、お互いにお互いのことは秘密にしようと約束した。
彼が国に帰ってからも、正規ルートで入国し、私に会いに来てくれるという秘密の関係が8年後まで続いた。
秘密といってもリックの世話役から、彼の両親にはこのことは知らされていたのだが、命の危険がないということで、見守ってくれていたらしい。
しかし、十六歳になった私に婚約者ができたあとは、リックが私に会いに来ることはなくなった。
婚約者のいる異性と、内緒で会うことはできない。
それは仕方のないことだ。
私は婚約者との約束がある日以外は、また一人ぼっちになってしまった。
そんな彼と二年ぶりに再会することになったのは、姉と私の婚約者が恋仲になったとわかった時だった。
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