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4 自分勝手な夫
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ミシェルはくすくすと笑いながら立ち上がり、デイクスに話しかける。
「デイクス、子作りをすることはロン様に認めてもらっているんだから、お姉様が嫌がったとしても押し倒してでも、するべきことをすれば良いと思うわ」
「ほ、本当に良いのかな」
デイクスが期待に満ちた目で私を見つめてきたので応える。
「良いわけないでしょう。絶対に嫌よ」
「シェリル、頼むよ。彼との子供を作ってくれ! ミシェルが生んだ子であっても、僕の血が流れていて君が可愛がって育ててくれるなら、その子は僕たちの子だよ!」
「私が子供を生めない体であれば、その子を可愛がることはできたかもしれませんが、今の状態では、何の罪のないその子を憎んでしまいそうです。そして、ロン様、あなたには嫌悪感しか湧かないでしょう」
言いたいことを言い終えてから、ロン様を睨みつけて尋ねる。
「他の女性に子供を生ませてまで、私を妻にしておく必要はありますか?」
「だから言っているだろう! 今回の選択は君を愛してるからだ! 君に痛みを与えるような男にはなりたくないし、君を満足させられない男にもなりたくないんだ!」
ロン様はそう言うと、その場に膝をついて頭を下げる。
「離婚はしたくない! 君を妻にすることをずって夢に見てきたんだ! だから、頼む。聞き入れてくれないか」
「結婚は現実になりましたから、もう夢は叶いましたでしょう」
冷たく言葉を返すと、ロン様は顔を上げて首を何度も横に振る。
「その夢は叶った。でも、夢はそれで終わりじゃない! 僕の次の夢は君と子育てをすることなんだよ。頼むから別れるなんて言わないでくれ」
「私とロン様の子であるならば、可愛がって育てることができるでしょう。ですが、ミシェルの子では愛情を捧げられません」
私には姪っ子に当たるのだから、可愛いことは確かだと思う。
でも、実の娘と妹の娘では愛情のかけ方が違ってもおかしくない。
ロン様を睨みつけていると、ミシェルが挑戦的な口調で話しかけてくる。
「では、お姉様。子供を交換せずにそのまま育てますか? 血筋は変なことになっちゃいますけど、自分の子供ですから可愛いでしょう」
「ミシェル、代々受け継がれた血を簡単な気持ちで途絶えさせるようなことを言わないで。それに、そんなことは絶対にさせないわ」
「途絶えるわけではありません。それぞれ別の家で血を受け継いでいくんです」
「そんなことはさせないと言っているでしょう。私とロン様が離婚して、ロン様が新たに奥様を迎えて、その人との間に子供が生まれれば良いだけよ」
感情を優先させると、たとえ行く場所がなくたって、この家を出たほうが良いと思った。
別居生活を続ければ考え直してくれるかもしれないし、それが無理だとしても離婚はしてくれるでしょう。
跡継ぎがほしいことは確かだし、嫁が逃げたと知られたら、リグマ伯爵家の評判も悪くなる。
長期戦にはならないはずだ。
応接室を出ていこうとすると、ロン様が引き止めてくる。
「待ってくれ、シェリル! 話し合おう!」
「ミシェルと関係を持つ前であれば話し合う気になれましたが、関係を持ったと聞いてしまった以上は無理です」
「お姉様、駄目よ。諦めてちょうだい。お姉様はデイクスに抱かれて女になるのよ」
高圧的なミシェルの態度に苛立つ。
「私は夫以外の男性と結ばれたくなんてないのよ。何らかの事情があるならまだしも、ミシェルとロン様のやったことは、ただの不貞行為よ」
「うわあああ」
何が悲しいのかわからないけれど、ロン様が突然泣き叫んだ。
子供みたいに泣きわめきたいのはこちらのほうなのに、どうして彼が泣くのよ。
わあわあ泣き続けるロン様を見て、ミシェルが大きな息を吐く。
「お姉様、夫が夫がと言いながら、その夫に悲しい思いをさせるなんて最低ね」
「ミシェルに言われたくないわ。あなた、自分の夫が他の女性と関係を持とうとしているのに何も思わないの?」
「思わないわ。だって、わたしだってロン様と色んなことをしてるんだから。ロン様に抱いてもらえない、お姉様は可哀相」
「抱いてもらえないよりも浮気されたほうがショックだわ」
吐き捨てるように言うと、私はロン様たちを残して応接室から出た。
ロン様の情けない泣き声が聞こえるからか、廊下に立っていた騎士やメイドが驚いた顔をして見つめてきた。
「しばらく放っておいて大丈夫よ」
そう伝えると、騎士たちは詳しく聞いてくることなく「わかりました」と頷いた。
簡単に離婚は認めてもらえそうになさそう。
だから、自分で行動を起こさなくちゃいけないわ。
実家は頼れない。
手持ちのお金だって大してあるわけじゃない。
無計画だとわかっていても、この邸をすぐにでも出たかった。
部屋に戻り、荷造りをする前に親友の公爵令嬢に簡単に手紙を書いた。
『色々と事情があってリグマ伯爵家を出ます。でも、心配しないでください。落ち着いたら連絡します』
公爵令嬢のミオ様とは幼い頃に、彼女の話し相手として、同じ年の私が抜擢されたことで知り合った。
その頃のミオ様は病弱だったから、私の実家のすぐ近くにある別邸で静養していたのだ。
仲良くなったミオ様から、彼女と一緒に別邸に来ていた、二つ年上の兄であるフェリックス様を紹介してもらった。
外見は優しそうな美少年なのに、言葉遣いが悪くて公爵令息らしくなかった。
ぶっきらぼうだけど、私にはとても優しくて、私が彼のことを好きになるのに時間はかからなかった。
私とフェリックス様は、私が十二歳の頃に思いを伝え合って両思いになった。
でも、十四歳の時にフェリックス様だけが公爵家に戻ったことにより自然消滅した。
そして、同時期に私はロン様と婚約させられたのだ。
ミオ様は今も別邸にいて、結婚してからも手紙のやり取りは続けていた。
助けを求めればミオ様は助けてくれるでしょう。
どうしようもなくなった時にだけ連絡して、お邸のメイドに雇ってもらえないか頼んでみよう。
こんなことを思うなんて友人失格だわ。
自己嫌悪に陥りながら書き終えると、メイドに手紙を渡して、すぐにミオ様宛に送ってもらった。
その後、荷造りをしていると、部屋の扉がノックされた。
こちらが返事をする前に、扉の向こうから声が聞こえてくる。
「シェリルさん、聞いたわよ! あなた、ロンの優しさを否定しただけでなく、離婚だなんて馬鹿なことを言い出したそうね! そんな勝手な嫁は部屋からは出しません! 食事もしばらくは抜きです! しっかり反省しなさい!」
お義母様の声だった。
こうなることを予想して、ロン様が義母を呼んでいたようだった。
慌てて、部屋から出ようとして外に開くタイプの扉を押した。
だけど、扉の前に物が置かれているのか、扉は少しも動かない。
「最悪だわ」
扉に額を当てて呟いた時、扉の向こうで人の気配がした。
「シェリル、愛しているよ。君も僕のことを愛しているなら、僕のために何でもできるだろう? 離婚だなんて馬鹿なことを考えるのはやめて、デイクスとの子供をうむんだ」
「あなたこそ、どうして私との子供を望んでくれないのですか! それが無理だというのなら離婚してください!」
「嫌だ」
ロン様はそう答えたあと「あとは頼む」と見張りの騎士に声をかけて去っていった。
愛しているなら、ロン様のために何でもできるだろうですって?
それなら、離婚してくれないロン様は、私のことを愛していないということよね。
そう言って差し上げようと思っていたのに、ロン様は丸一日経っても、私に会いに来ようとはしなかった。
「デイクス、子作りをすることはロン様に認めてもらっているんだから、お姉様が嫌がったとしても押し倒してでも、するべきことをすれば良いと思うわ」
「ほ、本当に良いのかな」
デイクスが期待に満ちた目で私を見つめてきたので応える。
「良いわけないでしょう。絶対に嫌よ」
「シェリル、頼むよ。彼との子供を作ってくれ! ミシェルが生んだ子であっても、僕の血が流れていて君が可愛がって育ててくれるなら、その子は僕たちの子だよ!」
「私が子供を生めない体であれば、その子を可愛がることはできたかもしれませんが、今の状態では、何の罪のないその子を憎んでしまいそうです。そして、ロン様、あなたには嫌悪感しか湧かないでしょう」
言いたいことを言い終えてから、ロン様を睨みつけて尋ねる。
「他の女性に子供を生ませてまで、私を妻にしておく必要はありますか?」
「だから言っているだろう! 今回の選択は君を愛してるからだ! 君に痛みを与えるような男にはなりたくないし、君を満足させられない男にもなりたくないんだ!」
ロン様はそう言うと、その場に膝をついて頭を下げる。
「離婚はしたくない! 君を妻にすることをずって夢に見てきたんだ! だから、頼む。聞き入れてくれないか」
「結婚は現実になりましたから、もう夢は叶いましたでしょう」
冷たく言葉を返すと、ロン様は顔を上げて首を何度も横に振る。
「その夢は叶った。でも、夢はそれで終わりじゃない! 僕の次の夢は君と子育てをすることなんだよ。頼むから別れるなんて言わないでくれ」
「私とロン様の子であるならば、可愛がって育てることができるでしょう。ですが、ミシェルの子では愛情を捧げられません」
私には姪っ子に当たるのだから、可愛いことは確かだと思う。
でも、実の娘と妹の娘では愛情のかけ方が違ってもおかしくない。
ロン様を睨みつけていると、ミシェルが挑戦的な口調で話しかけてくる。
「では、お姉様。子供を交換せずにそのまま育てますか? 血筋は変なことになっちゃいますけど、自分の子供ですから可愛いでしょう」
「ミシェル、代々受け継がれた血を簡単な気持ちで途絶えさせるようなことを言わないで。それに、そんなことは絶対にさせないわ」
「途絶えるわけではありません。それぞれ別の家で血を受け継いでいくんです」
「そんなことはさせないと言っているでしょう。私とロン様が離婚して、ロン様が新たに奥様を迎えて、その人との間に子供が生まれれば良いだけよ」
感情を優先させると、たとえ行く場所がなくたって、この家を出たほうが良いと思った。
別居生活を続ければ考え直してくれるかもしれないし、それが無理だとしても離婚はしてくれるでしょう。
跡継ぎがほしいことは確かだし、嫁が逃げたと知られたら、リグマ伯爵家の評判も悪くなる。
長期戦にはならないはずだ。
応接室を出ていこうとすると、ロン様が引き止めてくる。
「待ってくれ、シェリル! 話し合おう!」
「ミシェルと関係を持つ前であれば話し合う気になれましたが、関係を持ったと聞いてしまった以上は無理です」
「お姉様、駄目よ。諦めてちょうだい。お姉様はデイクスに抱かれて女になるのよ」
高圧的なミシェルの態度に苛立つ。
「私は夫以外の男性と結ばれたくなんてないのよ。何らかの事情があるならまだしも、ミシェルとロン様のやったことは、ただの不貞行為よ」
「うわあああ」
何が悲しいのかわからないけれど、ロン様が突然泣き叫んだ。
子供みたいに泣きわめきたいのはこちらのほうなのに、どうして彼が泣くのよ。
わあわあ泣き続けるロン様を見て、ミシェルが大きな息を吐く。
「お姉様、夫が夫がと言いながら、その夫に悲しい思いをさせるなんて最低ね」
「ミシェルに言われたくないわ。あなた、自分の夫が他の女性と関係を持とうとしているのに何も思わないの?」
「思わないわ。だって、わたしだってロン様と色んなことをしてるんだから。ロン様に抱いてもらえない、お姉様は可哀相」
「抱いてもらえないよりも浮気されたほうがショックだわ」
吐き捨てるように言うと、私はロン様たちを残して応接室から出た。
ロン様の情けない泣き声が聞こえるからか、廊下に立っていた騎士やメイドが驚いた顔をして見つめてきた。
「しばらく放っておいて大丈夫よ」
そう伝えると、騎士たちは詳しく聞いてくることなく「わかりました」と頷いた。
簡単に離婚は認めてもらえそうになさそう。
だから、自分で行動を起こさなくちゃいけないわ。
実家は頼れない。
手持ちのお金だって大してあるわけじゃない。
無計画だとわかっていても、この邸をすぐにでも出たかった。
部屋に戻り、荷造りをする前に親友の公爵令嬢に簡単に手紙を書いた。
『色々と事情があってリグマ伯爵家を出ます。でも、心配しないでください。落ち着いたら連絡します』
公爵令嬢のミオ様とは幼い頃に、彼女の話し相手として、同じ年の私が抜擢されたことで知り合った。
その頃のミオ様は病弱だったから、私の実家のすぐ近くにある別邸で静養していたのだ。
仲良くなったミオ様から、彼女と一緒に別邸に来ていた、二つ年上の兄であるフェリックス様を紹介してもらった。
外見は優しそうな美少年なのに、言葉遣いが悪くて公爵令息らしくなかった。
ぶっきらぼうだけど、私にはとても優しくて、私が彼のことを好きになるのに時間はかからなかった。
私とフェリックス様は、私が十二歳の頃に思いを伝え合って両思いになった。
でも、十四歳の時にフェリックス様だけが公爵家に戻ったことにより自然消滅した。
そして、同時期に私はロン様と婚約させられたのだ。
ミオ様は今も別邸にいて、結婚してからも手紙のやり取りは続けていた。
助けを求めればミオ様は助けてくれるでしょう。
どうしようもなくなった時にだけ連絡して、お邸のメイドに雇ってもらえないか頼んでみよう。
こんなことを思うなんて友人失格だわ。
自己嫌悪に陥りながら書き終えると、メイドに手紙を渡して、すぐにミオ様宛に送ってもらった。
その後、荷造りをしていると、部屋の扉がノックされた。
こちらが返事をする前に、扉の向こうから声が聞こえてくる。
「シェリルさん、聞いたわよ! あなた、ロンの優しさを否定しただけでなく、離婚だなんて馬鹿なことを言い出したそうね! そんな勝手な嫁は部屋からは出しません! 食事もしばらくは抜きです! しっかり反省しなさい!」
お義母様の声だった。
こうなることを予想して、ロン様が義母を呼んでいたようだった。
慌てて、部屋から出ようとして外に開くタイプの扉を押した。
だけど、扉の前に物が置かれているのか、扉は少しも動かない。
「最悪だわ」
扉に額を当てて呟いた時、扉の向こうで人の気配がした。
「シェリル、愛しているよ。君も僕のことを愛しているなら、僕のために何でもできるだろう? 離婚だなんて馬鹿なことを考えるのはやめて、デイクスとの子供をうむんだ」
「あなたこそ、どうして私との子供を望んでくれないのですか! それが無理だというのなら離婚してください!」
「嫌だ」
ロン様はそう答えたあと「あとは頼む」と見張りの騎士に声をかけて去っていった。
愛しているなら、ロン様のために何でもできるだろうですって?
それなら、離婚してくれないロン様は、私のことを愛していないということよね。
そう言って差し上げようと思っていたのに、ロン様は丸一日経っても、私に会いに来ようとはしなかった。
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