必要ないものは「いりません」と言うことにしました

風見ゆうみ

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29 自分なりに考えた最良

「寮って、どういうこと?」

 ロブが訝しげな顔をして聞いてきたので答える。

「両親からもロザンナからも離れた学園で、色々と学んできなさい。長期休暇の時は両親の元へ戻っても大丈夫よ」
「そんな! 僕、勉強なんてしたことないのに!」
「大丈夫よ。まだ学期は始まったばかりだから、みんな、あなたと似たようなものだと思う」

 学園に通うことは義務ではない。
 でも、大体の子供は遅くとも8歳までには学園に通うようになる。
 ロブはまだ7歳だから、少し早いほうなので、絶対についていけないレベルではないはず。

 ロザンナがメイドに文字を教えてもらっている時に、ロブも一緒に覚えていたらしく、文字の読み書きができるのは本当に助かった。

「どうしてそんな大事なことを勝手に決めちゃうんだよ!」
「あなたに確認はしたわ」
「したかもしれないけど、そんな所に行かされるなんて思ってなかったよ!」
「学園はそんな所って言うものじゃない。病弱だとか事情がない限り、貴族はみんな学園に通っているんだから」
「ロザンナお姉様は通ってなかったよ!」
「通うために必死に勉強しているじゃないの!」
「嫌だよ! 僕は行きたくない!」

 これ以上、話をしても理解は得られないと感じて、座っていた椅子から立ち上がる。
 すると、ロブの後ろに立っていた看守がロブに近づいて話しかけた。

「面会は終わりだ。行くよ」
「嫌だ! 僕は帰るんだよ!」
「ロブ、あなたはわたしのことが嫌いなのよね? それなのに、わたしの所に戻って来るの?」
「そんな、意地悪言わないでよ。謝るから」

 ポロポロとロブは大粒の涙を流し始めた。

 可哀想だとは思う。
 でも、両親を釈放させて、3人で暮らしたからといって、ロブが幸せになるとは限らない。

 現在、ソナルナ伯爵家の仕事は、他の伯爵家が代理でしてくれている。
 このままいけば、ソナルナ伯爵家は没落するでしょう。

 わたしに付いてきたロザンナは、陛下からわたしに与えられる姓を名乗れば良い。
 
 でも、ロブはどうなるの? 
 学もないのでは、生きていくことだって辛くなるでしょう。
 そう思ったから、わたしはロブを全寮制の学園に通わせることに決めた。

 礼儀などにも厳しい学園だと聞いているから、ロブも色々と学んでくれたら良いと思う。

 ロブが無理やり看守に連れて行かれるのを見送ったあと、小さく息を吐いた。
 何が正しいのかはわからない。
 でも、悪い道ではないと信じたい。

「大丈夫か?」

 アクス様が顔を覗き込んできたので、笑顔を作って頷く。

「はい」
「彼のためを思っての行動だということを、彼も成長すればわかるようになるだろう」
「……そうだと良いのですが」
「言い方は悪いが、本当に彼が悪い子なら、この国の神様は君の家の火事の時に彼を巻き込んでいたと思う」

 アクス様に言われて、そう納得することにした。

「そうですよね。ロブが良い子に育ってくれるから、神様は命を奪わなかったんだと思うようにします。ロブの場合に限ってですが」

 ソナルナ伯爵夫妻の命を奪わなかったのは、彼らにとっては、生きているよりも死のほうが楽な道だからかもしれない。
 それに、ロブとロザンナをわたしの所へ連れて来る人が必要だったのもしれないわね。

「これから、ソナルナ伯爵夫妻には罰が当たるでしょうか」
「そうだな。それに、君の元婚約者や友人たちもどうなるだろうな」

 アクス様に言われて思い出す。
 テナミ様やムーニャ、ハリー様だって、良くないことをしている。
 神様が見ているのであれば、彼らにも罰が当たってよいはずだわ。


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