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41 ミドレス王国の神様は見守ってくれている
ハリー様は頭を強く打ったからか気を失ってしまったため、聖なる力を使って傷だけ治してみた。
普通なら意識も戻るはずなのだけど、ハリー様は気絶したままだったので、神様がそこまでしてあげなくても良いと判断したのだと考え、騎士にハリー様を教会から出してもらった。
ハリー様は国外追放を言い渡されているから、彼が眠っている間に予定されている地に運ばれていくのだろうと思われる。
目が覚めた時には知らない場所にいるというのは残酷かもしれないけれど、連れて行かれる時の恐怖は感じなくて済むから、神様なりの優しさなのかもしれない。
「どうして、いきなりハリーは怒り出したんだろう」
ハリー様が運び出されたあと、泣いていたテナミ様が情けない顔をして、わたしに尋ねてきた。
それについては、わたしもわからない。
神様が今のタイミングだと思ったのかもしれないし、たまたま、あのタイミングで我に返っただけなのかもしれない。
わたしが何も答えないでいると、テナミ様はまた尋ねてくる。
「このままだと、俺もハリーみたいになってしまうのか?」
「わたしにしつこく付きまとうようなら、そうなる可能性が高いですわね」
「……どうしたら助けてもらえるんだろう」
ううう、とテナミ様がまた泣き始めた。
前々から思っていたけれど、この人は根は悪い人ではない。
自分のことばかり考えているけれど、自分以外の他人が不幸になっても良いとまでは考えていない。
でも、国王には向いていない。
「テナミ殿下、ここは教会です。神様に祈りを捧げて、これからの自分がどうすれば良いか、神様に道を示していただいてはどうでしょうか」
黙って見守っていたアクス様がテナミ様に優しい声音で話しかけた。
「うう、うん。わかった」
テナミ様はそう言って服の袖で涙を拭うと、教会の奥にある背中に大きな羽を持つ男性と女性の体つきをした石膏像に近付いていく。
そして、目の前まで行くと、その場に跪いて祈りを捧げ始めた。
少しの間、アクス様たちと一緒に離れた所からテナミ様を見守っていると、彼のボロボロだった服や傷が少しずつ綺麗になり傷も癒えていった。
テナミ様は自分が今のままでは国王にふさわしくないとわかってくれたのね。
「神様はテナミ様に許しを与えたんですね」
わたしがアクス様に話しかけた時だった。
「ぐあぁっ!」
テナミ様が突然、お腹を押さえて床に倒れ込んだ。
「テナミ殿下!」
アクス様が駆け寄って介抱する。
「しっかりしてください!」
「うう! お腹が、お腹が痛い!」
「神様の目の前でこんなことになっているということは、言ってはいけないようなことを言ってしまったんだろう」
「……ということは反省していないということですね」
もがき苦しんでいるテナミ様を見下ろし、わたしは小さく息を吐いた。
「お腹が痛い! おへそを引っ張られてる感じがするんだ! 助けて!」
叫ぶテナミ様の言葉を聞いて、わたしとアクス様は思わず顔を見合わせた。
もしかして、神様は罰としてテナミ様からおへそを取ろうとしているように見せかけているのかもしれないと思った。
*****
その後、テナミ様は城に連れ帰られて、お医者様に診てもらうことになった。
お医者様は冷たいもので、わたしの聖なる力でも治せないものを治せるわけがないと諦めて腹痛を抑える薬を出すだけだった。
そんなある日、彼の腹痛がなくなったらしく、彼は真面目に公務を始めた。
でも、仕事をサボると、また腹痛が復活するということが起きた。
テナミ様は神様に悪い意味で目をつけられてしまったようだった。
そのこともあり、テナミ様がわたしに接触しようとすることはなくなった。
ロザンナの勉強も進み、手紙のやり取りをしているロブとの関係も上手く運び始めた頃、両陛下から呼び出され、わたしは謁見の間に向かった。
そして、そこで現在のハリー様とわたしのこれからについての話をされたのだった。
普通なら意識も戻るはずなのだけど、ハリー様は気絶したままだったので、神様がそこまでしてあげなくても良いと判断したのだと考え、騎士にハリー様を教会から出してもらった。
ハリー様は国外追放を言い渡されているから、彼が眠っている間に予定されている地に運ばれていくのだろうと思われる。
目が覚めた時には知らない場所にいるというのは残酷かもしれないけれど、連れて行かれる時の恐怖は感じなくて済むから、神様なりの優しさなのかもしれない。
「どうして、いきなりハリーは怒り出したんだろう」
ハリー様が運び出されたあと、泣いていたテナミ様が情けない顔をして、わたしに尋ねてきた。
それについては、わたしもわからない。
神様が今のタイミングだと思ったのかもしれないし、たまたま、あのタイミングで我に返っただけなのかもしれない。
わたしが何も答えないでいると、テナミ様はまた尋ねてくる。
「このままだと、俺もハリーみたいになってしまうのか?」
「わたしにしつこく付きまとうようなら、そうなる可能性が高いですわね」
「……どうしたら助けてもらえるんだろう」
ううう、とテナミ様がまた泣き始めた。
前々から思っていたけれど、この人は根は悪い人ではない。
自分のことばかり考えているけれど、自分以外の他人が不幸になっても良いとまでは考えていない。
でも、国王には向いていない。
「テナミ殿下、ここは教会です。神様に祈りを捧げて、これからの自分がどうすれば良いか、神様に道を示していただいてはどうでしょうか」
黙って見守っていたアクス様がテナミ様に優しい声音で話しかけた。
「うう、うん。わかった」
テナミ様はそう言って服の袖で涙を拭うと、教会の奥にある背中に大きな羽を持つ男性と女性の体つきをした石膏像に近付いていく。
そして、目の前まで行くと、その場に跪いて祈りを捧げ始めた。
少しの間、アクス様たちと一緒に離れた所からテナミ様を見守っていると、彼のボロボロだった服や傷が少しずつ綺麗になり傷も癒えていった。
テナミ様は自分が今のままでは国王にふさわしくないとわかってくれたのね。
「神様はテナミ様に許しを与えたんですね」
わたしがアクス様に話しかけた時だった。
「ぐあぁっ!」
テナミ様が突然、お腹を押さえて床に倒れ込んだ。
「テナミ殿下!」
アクス様が駆け寄って介抱する。
「しっかりしてください!」
「うう! お腹が、お腹が痛い!」
「神様の目の前でこんなことになっているということは、言ってはいけないようなことを言ってしまったんだろう」
「……ということは反省していないということですね」
もがき苦しんでいるテナミ様を見下ろし、わたしは小さく息を吐いた。
「お腹が痛い! おへそを引っ張られてる感じがするんだ! 助けて!」
叫ぶテナミ様の言葉を聞いて、わたしとアクス様は思わず顔を見合わせた。
もしかして、神様は罰としてテナミ様からおへそを取ろうとしているように見せかけているのかもしれないと思った。
*****
その後、テナミ様は城に連れ帰られて、お医者様に診てもらうことになった。
お医者様は冷たいもので、わたしの聖なる力でも治せないものを治せるわけがないと諦めて腹痛を抑える薬を出すだけだった。
そんなある日、彼の腹痛がなくなったらしく、彼は真面目に公務を始めた。
でも、仕事をサボると、また腹痛が復活するということが起きた。
テナミ様は神様に悪い意味で目をつけられてしまったようだった。
そのこともあり、テナミ様がわたしに接触しようとすることはなくなった。
ロザンナの勉強も進み、手紙のやり取りをしているロブとの関係も上手く運び始めた頃、両陛下から呼び出され、わたしは謁見の間に向かった。
そして、そこで現在のハリー様とわたしのこれからについての話をされたのだった。
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