あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ

文字の大きさ
10 / 52
第2章 新たな婚約者

 どうして、こんな訳のわからない展開になるのよ!

 叫びたい気持ちを抑えて、お父様に訴える。

「お父様、お姉様はラソウエ公爵を愛しているんですよ!」
「それなら、なぜ痩せない?」
「そんなに簡単に痩せられるものではありません!」
「……そうなのか?」

 お父様がお姉様のほうを見て尋ねる。
 お姉様は唇を噛んだだけで、何も言い返さない。

「痩せる努力をしてないみたいだぞ? 妹のお前が姉の責任を取るのはおかしくはない。このままだと、ラソウエ公爵の婚約者がいなくなってしまうからな」
「どうしてもラソウエ公爵の婚約者が必要だとおっしゃるのであれば、お姉様が痩せるまで、もう少し待ってもらうか、このままのお姉様を愛してもらえるようにお願いしてください! 私が婚約するだなんて、お父様は家族の仲を壊したいんですか!」
「私を責めるなよ。責めるのなら、勝手な約束をしていたフィーナを責めるんだな」

 お父様に鼻で笑われた。
 責めるつもりはないけれど、お姉様のほうを振り返る。
 すると、ラソウエ公爵が満面の笑みを浮かべて、わたしに近づいてきた。
 公爵相手に失礼だとはわかっていながらも、彼を睨みつけて尋ねる。

「あなたは姉に対して悪いという気持ちはないのですか!?」
「フィーナ嬢が一番悪いことは確かでしょう? それに、あなただって悪い」
「……わたしが悪い?」
「そうです。わたくしが細い女性が好きだと知っていたなら、あなたも太るべきだったのですよ」
「何を言っているんですか! わたしは姉の婚約者の女性の好みなんて把握しておりません!」
「あははは。照れておられるんですか? セフィリア嬢、本当は、わたくしと結婚したかったのでしょう?」

 どうして、そんなことになるのよ!?

 ロビースト様がわたしの顎に触れようとした時だった。

「ああぁぁ、だっる」

 言葉通りの気怠げな声が聞こえて、一斉に声のした方向に視線が向けられた。

 いつ、部屋に入ってきていたのかはわからない。
 わたしの視線の先には、シルバーの前髪を全て後ろに上げ、長い後ろ髪を一つにまとめた男性が、黒のロングブーツを履いた長い足を組んで、ソファーでふんぞり返っていた。
 
 声の主は、少し前にラソウエ公爵家の養子になり、ロビースト様の弟になったというシード様だ。
 パーティー会場では正装だったから、どこかで着替えてこられたようで、ラフな格好だった。
 シード様は整った顔立ちではあるけれど、吊り目気味の目を細め、綺麗な赤色の瞳をこちらに向けて言う。

「俺が呼ばれたのは誕生日パーティーだったんだけど? クソ共が集まって、くだらねぇ話をするって集まりなら、最初からそう言えや」

 クソ共。
 しかも言葉遣いが貴族のものとは思えない。
 
 驚いて目を丸くしていると、シード様は私と目を合わせて言う。

「これは失礼。あんたはまともだったな」
「……ありがとうございます」

 何と返せば良いのかわからなかったので、お礼を言ってしまった。

 シード様は大きく息を吐いて立ち上がると、わたしを促す。

「この場での、兄さんとセフィリア嬢との婚約は俺が認めねぇ。話は終わりだ。セフィリア嬢、今日はもう部屋に戻れ。今回は助けてやるが、これからのことは自分でどうにかしろよ」
「えっ!?」

 そんな事で、この話が落ち着くの?

「承知いたしました」

 そう思った時、お父様がソファから立ち上がって頭を下げ、ロビースト様も悔しそうな表情はしていたけれど、何も言わずに頷いた。

感想 145

あなたにおすすめの小説

【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます

コトミ
恋愛
 セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。 「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」  困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。

クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。 そんなある日クラスに転校生が入って来た。 幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新不定期です。 よろしくお願いします。

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

【完結】婚約破棄に感謝します。貴方のおかげで今私は幸せです

コトミ
恋愛
 もうほとんど結婚は決まっているようなものだった。これほど唐突な婚約破棄は中々ない。そのためアンナはその瞬間酷く困惑していた。婚約者であったエリックは優秀な人間であった。公爵家の次男で眉目秀麗。おまけに騎士団の次期団長を言い渡されるほど強い。そんな彼の隣には自分よりも胸が大きく、顔が整っている女性が座っている。一つ一つに品があり、瞬きをする瞬間に長い睫毛が揺れ動いた。勝てる気がしない上に、張り合う気も失せていた。エリックに何とここぞとばかりに罵られた。今まで募っていた鬱憤を晴らすように。そしてアンナは婚約者の取り合いという女の闘いから速やかにその場を退いた。その後エリックは意中の相手と結婚し侯爵となった。しかしながら次期騎士団団長という命は解かれた。アンナと婚約破棄をした途端に負け知らずだった剣の腕は衰え、誰にも勝てなくなった。

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!