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第4章 切らなければならない縁
6
お母様の形見ならまだしも、選んでくれたシャツで泣かなくても良いような気がするわ。
それに、そんなに大事なものなら、どうして普段着にしているのかしら。
そんなことを思っていると、お姉様がソレーヌ様に向かって叫ぶ。
「あなたが悪いのよ! ロビースト様からすぐに離れないから!」
「え? あ、え?」
ソレーヌ様はお姉様の言葉よりも、ロビースト様に殴られたことのほうがショックのようだった。
自分の身に何が起こったのかわからない様子で、頬を押さえてロビースト様を見つめている。
「おい、行くぞ。俺たちには関係ない」
「そうですね」
シード様に促されて、今度こそ屋敷を出ようとする。
「あなたたち、二人共に許せません! どうしてくれるんですか!」
ロビースト様はお姉様の頬まで叩き、二人を叱責し始めた。
「気にしないでいいから行くぞ」
シード様が二の足を踏んでいるわたしの腕を掴む。
「わかりました」
迷う気持ちを振り払って歩き出すと、シード様は掴んでいた手を放してくれた。
すると、ソレーヌ様が叫ぶ。
「シード様! 助けてください!」
「……は?」
歩き出したわたしだったけれど、今度はシード様の足が止まった。
これ以上ここにいて、お姉様が殴られるのは見たくない。
そう思って、わたしだけ先に出ようと歩を進める。
「待って! セフィリア様! 私を置いていかないで!」
ソレーヌ様はわたしの所へ駆け寄ってくると、必死に訴えてくる。
「やっぱり、わたしはシード様と結婚したくなりました! だから、ロビースト様はあなたにあげます!」
「わたしは最初からロビースト様なんていらないんです!」
ソレーヌ様から距離を取りながら叫ぶ。
すると、ロビースト様の怒りはなぜかわたしに向けられた。
「あなたが大人しくわたくしの妻になろうとしないからいけないんです! 公爵令嬢という肩書がなければ、ただの無価値な女のくせに!」
「あなたにとって無価値だというのなら、わたしはそのほうが嬉しいです! もう、わたしにかまわないで!」
「この!」
ロビースト様はソレーヌ様を横に押しやり、わたしに向かってきた。
また殴られるのかと思って身構えたと同時、わたしとロビースト様の間にシード様が割って入った。
そして、無言でロビースト様のお腹に拳を一発叩き込んだ。
「ぐっ!」
ロビースト様は両手でお腹をおさえ、苦悶の表情を浮かべて、カーペットの上に膝から崩れ落ちた。
「セフィリアに近づくな」
シード様は床に寝転がって苦しんでいるロビースト様を見下ろして忠告する。
「セフィリアに何かするなら、次はこんなもんでは済まさねぇぞ」
ロビースト様は涙目でシード様を見つめている。
お姉様とソレーヌ様は黙って、その様子を見守っていた。
シード様はわたしのほうに顔を向ける。
「足を止めさせて悪かった。行くぞ」
「はい」
「待って、シード様! 私も連れて行ってください!」
「連れて行くわけねぇだろ。自分で何とかしろ」
シード様は冷たく言い放つと、今度こそ、わたしを連れて屋敷の外に出た。
「待って! やっぱり嫌です! ロビースト様の妻になんかなりたくない!」
ソレーヌ様は追いすがってきたけれど、騎士によって止められる。
「大人しくしなさい!」
「嫌よ! こんな家に住みたくない! 助けて!」
「お前が選んだ道だろ? 俺は忠告しようとしたぞ?」
待たせていた馬車に乗り込む際、シード様はソレーヌ様に言った。
「嫌! 暴力をふるわれるだなんて思っていなかったんです! 助けてください! お願いです!」
馬車に乗り込んでしまうと、ソレーヌ様の泣き叫ぶ声だけ聞こえてきた。
お姉様。
今ならまだ間に合うわ。
そう思って、開いている馬車の扉から屋敷のほうを見た。
少し待ったけれど、お姉様は出てくる様子はなかった。
扉が閉められて馬車が動き出す。
「さようなら、お姉様」
口にすると、涙が一気に溢れて頬に流れた。
「泣くなよ」
シード様が隣に座り、自分のほうにわたしの体を引き寄せてきた。
わたしはシード様の胸に顔を埋めて泣いた。
最近のお姉様は自分勝手なことばかり言っていた。
それでもわたしは馬鹿だから、お姉様を信じていたかった。
昔の優しいお姉様に戻ってくれると思っていた。
シード様はわたしの背中を撫でながら優しく言う。
「ロビーストをこのままで終わらせるつもりはねぇから。奴を潰せば、フィーナ嬢も目を覚ますかもしれない。だけど、今はもう忘れろ。もう、彼女は姉じゃない」
「はい」
頷いたものの、涙が止まらなくて、シード様が「しょうがねぇな。笑わせてやる」と言い出した。
何をするのかと思ったら、シード様は歌を歌い始める。
わたしも知っている歌のはずなんだけど、あまりにも原曲と違っていて、失礼だとわかっていながらも笑ってしまう。
すると、シード様の声はもっと大きくなって、御者と一緒に前に乗っていたシード様の付き人らしき人が「何の罰ゲームなんですか!」と叫ぶ声が聞こえた。
※
どんな歌声か気になる方は下へスクロール願います。
イケメンですが、某国民的アニメのジャイ○ンです。
すごい破壊力があります。
それに、そんなに大事なものなら、どうして普段着にしているのかしら。
そんなことを思っていると、お姉様がソレーヌ様に向かって叫ぶ。
「あなたが悪いのよ! ロビースト様からすぐに離れないから!」
「え? あ、え?」
ソレーヌ様はお姉様の言葉よりも、ロビースト様に殴られたことのほうがショックのようだった。
自分の身に何が起こったのかわからない様子で、頬を押さえてロビースト様を見つめている。
「おい、行くぞ。俺たちには関係ない」
「そうですね」
シード様に促されて、今度こそ屋敷を出ようとする。
「あなたたち、二人共に許せません! どうしてくれるんですか!」
ロビースト様はお姉様の頬まで叩き、二人を叱責し始めた。
「気にしないでいいから行くぞ」
シード様が二の足を踏んでいるわたしの腕を掴む。
「わかりました」
迷う気持ちを振り払って歩き出すと、シード様は掴んでいた手を放してくれた。
すると、ソレーヌ様が叫ぶ。
「シード様! 助けてください!」
「……は?」
歩き出したわたしだったけれど、今度はシード様の足が止まった。
これ以上ここにいて、お姉様が殴られるのは見たくない。
そう思って、わたしだけ先に出ようと歩を進める。
「待って! セフィリア様! 私を置いていかないで!」
ソレーヌ様はわたしの所へ駆け寄ってくると、必死に訴えてくる。
「やっぱり、わたしはシード様と結婚したくなりました! だから、ロビースト様はあなたにあげます!」
「わたしは最初からロビースト様なんていらないんです!」
ソレーヌ様から距離を取りながら叫ぶ。
すると、ロビースト様の怒りはなぜかわたしに向けられた。
「あなたが大人しくわたくしの妻になろうとしないからいけないんです! 公爵令嬢という肩書がなければ、ただの無価値な女のくせに!」
「あなたにとって無価値だというのなら、わたしはそのほうが嬉しいです! もう、わたしにかまわないで!」
「この!」
ロビースト様はソレーヌ様を横に押しやり、わたしに向かってきた。
また殴られるのかと思って身構えたと同時、わたしとロビースト様の間にシード様が割って入った。
そして、無言でロビースト様のお腹に拳を一発叩き込んだ。
「ぐっ!」
ロビースト様は両手でお腹をおさえ、苦悶の表情を浮かべて、カーペットの上に膝から崩れ落ちた。
「セフィリアに近づくな」
シード様は床に寝転がって苦しんでいるロビースト様を見下ろして忠告する。
「セフィリアに何かするなら、次はこんなもんでは済まさねぇぞ」
ロビースト様は涙目でシード様を見つめている。
お姉様とソレーヌ様は黙って、その様子を見守っていた。
シード様はわたしのほうに顔を向ける。
「足を止めさせて悪かった。行くぞ」
「はい」
「待って、シード様! 私も連れて行ってください!」
「連れて行くわけねぇだろ。自分で何とかしろ」
シード様は冷たく言い放つと、今度こそ、わたしを連れて屋敷の外に出た。
「待って! やっぱり嫌です! ロビースト様の妻になんかなりたくない!」
ソレーヌ様は追いすがってきたけれど、騎士によって止められる。
「大人しくしなさい!」
「嫌よ! こんな家に住みたくない! 助けて!」
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待たせていた馬車に乗り込む際、シード様はソレーヌ様に言った。
「嫌! 暴力をふるわれるだなんて思っていなかったんです! 助けてください! お願いです!」
馬車に乗り込んでしまうと、ソレーヌ様の泣き叫ぶ声だけ聞こえてきた。
お姉様。
今ならまだ間に合うわ。
そう思って、開いている馬車の扉から屋敷のほうを見た。
少し待ったけれど、お姉様は出てくる様子はなかった。
扉が閉められて馬車が動き出す。
「さようなら、お姉様」
口にすると、涙が一気に溢れて頬に流れた。
「泣くなよ」
シード様が隣に座り、自分のほうにわたしの体を引き寄せてきた。
わたしはシード様の胸に顔を埋めて泣いた。
最近のお姉様は自分勝手なことばかり言っていた。
それでもわたしは馬鹿だから、お姉様を信じていたかった。
昔の優しいお姉様に戻ってくれると思っていた。
シード様はわたしの背中を撫でながら優しく言う。
「ロビーストをこのままで終わらせるつもりはねぇから。奴を潰せば、フィーナ嬢も目を覚ますかもしれない。だけど、今はもう忘れろ。もう、彼女は姉じゃない」
「はい」
頷いたものの、涙が止まらなくて、シード様が「しょうがねぇな。笑わせてやる」と言い出した。
何をするのかと思ったら、シード様は歌を歌い始める。
わたしも知っている歌のはずなんだけど、あまりにも原曲と違っていて、失礼だとわかっていながらも笑ってしまう。
すると、シード様の声はもっと大きくなって、御者と一緒に前に乗っていたシード様の付き人らしき人が「何の罰ゲームなんですか!」と叫ぶ声が聞こえた。
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