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第7章 それぞれの執着心
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ロビースト様は一体、何がしたいのかしら。
お姉様がいなくなってもソレーヌ様がいるんだから、わたしにこだわらなくてもソレーヌ様に結婚してもらえばいいと思うんだけど?
口には出さずに、ランシード様を見ると、わたしの言いたいことをわかってくれたようで眉根を寄せる。
「ロビーストはソレーヌ嬢は解放してやったんだろうか。ちょっと確認してみる」
「もしかして、わたしがランシード様と婚約したのが気に入らないだけでしょうか?」
「なきにしもあらずってとこかもしれないな」
ふうと小さく息を吐いて、ランシード様は穏やかな表情を作り、馬車の窓を小さく開けて中から騎士に声を掛ける。
「ラソウエ公爵をどうして近づかせたんだ?」
「申し訳ございません。先頭を歩いていた騎士の前に現れたようです」
「そうか」
騎士の答えを聞いたランシード様は眉尻を下げてわたしに謝ってくる。
「嫌な思いをさせてごめん」
「わたしのせいですから、ランシード様は悪くありません」
「ロビーストは何でセフィリアに付きまとうんだろう」
「わたしに婚約を破棄されたことが気に入らないのかもしれません」
ロビースト様は無駄なところでプライドが高そうだもの。
お姉様には好き勝手やってしまったという自覚があるのかもしれないけれど、彼の中では、わたしに悪いことをしたという自覚がないのだと思う。
だから、それくらいで婚約破棄されるなんて、プライドが許さないのかもしれない。
「でも、婚約破棄されるようなことをしたのは、ロビーストのほうだろ?」
「ロビースト様にとって、わたしにしたことは暴力ではなく躾なんだと思います。だから、それを悪いと思っていないのではないでしょうか」
「本当に彼がセフィリアのことを好きだったとかいうことはないんだな?」
「それはありえません。今回のことがあるまで、わたしとロビースト様に接点はありません」
ランシード様の言葉を否定すると、彼は胸の前で腕を組んでから難しい顔をする。
この短い間でなんとなくわかってきたのだけど、ランシード様とシード様の切り替えは、不機嫌かどうかによって変わるのだと思った。
不機嫌な時はシード様モードになる。
だから、今もシード様に切り替わった。
「面倒くせぇな。かといって、あいつ潰しても混乱を招くだけなんだよな」
「どうしてですか? 跡継ぎがいないからですか?」
「それもあるけど、他国の王族が口を出すのもどうかと思うだろ」
「ラソウエ公爵家を現在の王家と一緒に失脚させてしまうことはできないんでしょうか?」
「それについては出来ないことはない。っていうか、他国の王族が云々は関係ないか。婚約者にちょっかいかけられてんだから、少しくらい乱暴にしてもいいよな」
ランシード様が出て行こうとするので慌てて止める。
「ちょ、ちょっとお待ちください! どうするおつもりですか?」
「人のいない所に連れて行って話をつけてくる」
「どうして人のいないところなのです?」
「どうしてだろうな」
悪い笑みを浮かべるランシード様の腕を掴んでお願いする。
「ランシード様に何かあったら嫌なんです。ですから、今は出ないでください。賊がいないとは限りません」
「……わかった」
ランシード様は少し考えはしたけれど頷いてくれた時、ロビースト様の叫ぶ声が聞こえた。
「セフィリア嬢! いや、セフィリア! 今すぐに出てきて、自分が悪かったとわたくしに詫びなさい! そうしなければ絶対に許しません! このわたくしがあなたに婚約を破棄されるなどありえないのですから!」
「道をお開けください!」
ランシード様に指示された騎士たちがロビースト様を追い払ったらしく、馬車が動き始めた。
「許しませんよ! セフィリア! 覚えていなさい! 絶対に後悔させてやりますから!」
「それはこっちのセリフだ」
ロビースト様の言葉を聞いたランシード様がわたしの手を握り、窓の外を見て小さく呟いた。
その後、家に送り届けてもらってしばらくすると、ロビースト様から手紙が届いた。
テックとお父様に手紙の内容を確認してもらうと、自分がどれだけ素敵な男性であるのかということが書かれてあり、そんなロビースト様をわたしごときが嫌えるはずがないということが書かれていたのだった。
お姉様がいなくなってもソレーヌ様がいるんだから、わたしにこだわらなくてもソレーヌ様に結婚してもらえばいいと思うんだけど?
口には出さずに、ランシード様を見ると、わたしの言いたいことをわかってくれたようで眉根を寄せる。
「ロビーストはソレーヌ嬢は解放してやったんだろうか。ちょっと確認してみる」
「もしかして、わたしがランシード様と婚約したのが気に入らないだけでしょうか?」
「なきにしもあらずってとこかもしれないな」
ふうと小さく息を吐いて、ランシード様は穏やかな表情を作り、馬車の窓を小さく開けて中から騎士に声を掛ける。
「ラソウエ公爵をどうして近づかせたんだ?」
「申し訳ございません。先頭を歩いていた騎士の前に現れたようです」
「そうか」
騎士の答えを聞いたランシード様は眉尻を下げてわたしに謝ってくる。
「嫌な思いをさせてごめん」
「わたしのせいですから、ランシード様は悪くありません」
「ロビーストは何でセフィリアに付きまとうんだろう」
「わたしに婚約を破棄されたことが気に入らないのかもしれません」
ロビースト様は無駄なところでプライドが高そうだもの。
お姉様には好き勝手やってしまったという自覚があるのかもしれないけれど、彼の中では、わたしに悪いことをしたという自覚がないのだと思う。
だから、それくらいで婚約破棄されるなんて、プライドが許さないのかもしれない。
「でも、婚約破棄されるようなことをしたのは、ロビーストのほうだろ?」
「ロビースト様にとって、わたしにしたことは暴力ではなく躾なんだと思います。だから、それを悪いと思っていないのではないでしょうか」
「本当に彼がセフィリアのことを好きだったとかいうことはないんだな?」
「それはありえません。今回のことがあるまで、わたしとロビースト様に接点はありません」
ランシード様の言葉を否定すると、彼は胸の前で腕を組んでから難しい顔をする。
この短い間でなんとなくわかってきたのだけど、ランシード様とシード様の切り替えは、不機嫌かどうかによって変わるのだと思った。
不機嫌な時はシード様モードになる。
だから、今もシード様に切り替わった。
「面倒くせぇな。かといって、あいつ潰しても混乱を招くだけなんだよな」
「どうしてですか? 跡継ぎがいないからですか?」
「それもあるけど、他国の王族が口を出すのもどうかと思うだろ」
「ラソウエ公爵家を現在の王家と一緒に失脚させてしまうことはできないんでしょうか?」
「それについては出来ないことはない。っていうか、他国の王族が云々は関係ないか。婚約者にちょっかいかけられてんだから、少しくらい乱暴にしてもいいよな」
ランシード様が出て行こうとするので慌てて止める。
「ちょ、ちょっとお待ちください! どうするおつもりですか?」
「人のいない所に連れて行って話をつけてくる」
「どうして人のいないところなのです?」
「どうしてだろうな」
悪い笑みを浮かべるランシード様の腕を掴んでお願いする。
「ランシード様に何かあったら嫌なんです。ですから、今は出ないでください。賊がいないとは限りません」
「……わかった」
ランシード様は少し考えはしたけれど頷いてくれた時、ロビースト様の叫ぶ声が聞こえた。
「セフィリア嬢! いや、セフィリア! 今すぐに出てきて、自分が悪かったとわたくしに詫びなさい! そうしなければ絶対に許しません! このわたくしがあなたに婚約を破棄されるなどありえないのですから!」
「道をお開けください!」
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「許しませんよ! セフィリア! 覚えていなさい! 絶対に後悔させてやりますから!」
「それはこっちのセリフだ」
ロビースト様の言葉を聞いたランシード様がわたしの手を握り、窓の外を見て小さく呟いた。
その後、家に送り届けてもらってしばらくすると、ロビースト様から手紙が届いた。
テックとお父様に手紙の内容を確認してもらうと、自分がどれだけ素敵な男性であるのかということが書かれてあり、そんなロビースト様をわたしごときが嫌えるはずがないということが書かれていたのだった。
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