幸せなお飾りの妻になります!

風見ゆうみ

文字の大きさ
68 / 69
第二部

18 自分自身の考え

しおりを挟む
 その後は、私達もお祭りどころではなくなり、支払いもすでに済まされていたので、店をあとにした。
 宮殿に行き、ディール殿下とセーラ様の様子を確かめようとも思ったけれど、その日は諦めて宿に戻った。

 本来ならば、次の日の朝に出発するつもりだったのだけれど、ディール殿下にどうしても伝えたいことがあったので、出発前に話す時間をもらえないかと伝言をお願いすると、了承を得ることが出来た。
 私達がすぐに宮殿に向かうと応接間に通され、私とリアムは横に並んで部屋にあるソファーに座り、ディール殿下を待っていると、しばらくして部屋に入ってこられた。

「昨日は取り乱してしまって本当に申し訳なかった」
「とんでもございません。もっと早くに私の考えをお伝えできていれば、今回の件は起こらなかったかもしれませんし……」
「どういうことかな?」

 向かい側に座ったディール殿下が不思議そうにされるので、今度こそ、思っていたことを伝えることにする。

「セーラ様なのですが、リアムを良いなと思ったのは嘘ではないかもしれませんが、今回、執着しているのはリアムだったからだと思っていて、妻の私が言うのもなんなのですが、リアムだからこそ、ディール殿下に焦りを与えられることが出来たのではないかと思うんです」
「……マオニール公爵が貴族の女性達に人気があるのは知っているけど、関係があるのかな?」
「今までの相手ですと、ディール殿下は危機感を覚えられなかったのではないでしょうか?」

 私の言葉に、ディール殿下が目をキョトンとされたので、そのまま言葉を続ける。

「その、ディール殿下はとても魅力的な方だと思います」

 隣のリアムの膝が動いて、私の膝に当ててきたのがわかったけれど、反応はせずに、ディール殿下から視線をそらさないようにする。

「セーラ様はディール殿下に自分以外を見ないでほしいと言ってもらいたかったんじゃないでしょうか」
「……え?」
「ディール殿下は、セーラ様が愛人を持たれてもいいと、最初から考えていらっしゃいますよね? セーラ様はそうじゃなくて、ヤキモチを妬いたりしてほしかったんじゃないでしょうか」
「え、ちょっと待ってくれ。その感じだと、セーラは僕にヤキモチを妬かせるために、色々とやってたってことかな?」

 困惑の表情を浮かべたディール殿下に、大きく頷く。

「そうではないかと思うんです。好きな人に、浮気していいよ、って言われて、いい気分にならないのではないかな、なんて思ってしまいます。実際、ディール殿下もそうでしたよね? 昨日のセーラ様の様子を見ますと、ディール殿下に距離を置こうと言われて泣きそうになっておられました。それって、自分の思っていた結末とは全く違ったからじゃないでしょうか」

 なぜ、こんなことを思ったかというと、リアムが私とディール殿下のデートをとても嫌がったからだ。
 もちろん、私だって嫌だった。
 だけど、王族が相手だからしょうがないと思った。
 ディール殿下も嫌だと思っていても、最初から仕方がないことだと諦めて、セーラ様に伝えなかったのではないかと思う。

「今までの女王陛下が気の多い女性だったのかもしれません。でも、セーラ様はセーラ様なんですよ。一度、お話したほうがよろしいのではないかと思います。腹を割ってお話をして、それでもディール殿下がセーラ様を許せない場合は…」

 親しくもない私が、ディール殿下に離婚をすすめるのもなんなので言葉を止めると、その先は言わなくてもわかって下さったみたいで頷いてくれた。

「ありがとう、そうするよ。セーラと話してみて、今までのように彼女を愛しいと感じたなら、やり直そうと思う。だけど、そうじゃなかったら……」
「王配という立場ですし、離婚すれば国民に迷惑をかけてしまうかと考えてしまわれる気持ちはわかります。ですが、今回くらいは誰かのことを考えるのではなく、自分の気持ちを大切になさって下さい」
「……ありがとう」

 リアムの言葉に、ディール殿下が悲しそうな笑顔で頷いた。
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

【完結】金貨三枚から始まる運命の出会い~家族に虐げられてきた家出令嬢が田舎町で出会ったのは、SSランクイケメン冒険者でした~

夏芽空
恋愛
両親と妹に虐げられ続けてきたミレア・エルドール。 エルドール子爵家から出ていこうと思ったことは一度や二度ではないが、それでも彼女は家に居続けた。 それは、七年付き合っている大好きな婚約者と離れたくなかったからだ。 だがある日、婚約者に婚約破棄を言い渡されてしまう。 「君との婚約を解消させて欲しい。心から愛せる人を、僕は見つけたんだ」 婚約者の心から愛する人とは、ミレアの妹だった。 迷惑料として、金貨三枚。それだけ渡されて、ミレアは一方的に別れを告げられてしまう。 婚約破棄されたことで、家にいる理由を無くしたミレア。 家族と縁を切り、遠く離れた田舎街で生きて行くことを決めた。 その地でミレアは、冒険者のラルフと出会う。 彼との出会いが、ミレアの運命を大きく変えていくのだった。

【完結】ご期待に、お応えいたします

楽歩
恋愛
王太子妃教育を予定より早く修了した公爵令嬢フェリシアは、残りの学園生活を友人のオリヴィア、ライラと穏やかに過ごせると喜んでいた。ところが、その友人から思いもよらぬ噂を耳にする。 ーー私たちは、学院内で“悪役令嬢”と呼ばれているらしいーー ヒロインをいじめる高慢で意地悪な令嬢。オリヴィアは婚約者に近づく男爵令嬢を、ライラは突然侯爵家に迎えられた庶子の妹を、そしてフェリシアは平民出身の“精霊姫”をそれぞれ思い浮かべる。 小説の筋書きのような、婚約破棄や破滅の結末を思い浮かべながらも、三人は皮肉を交えて笑い合う。 そんな役どころに仕立て上げられていたなんて。しかも、当の“ヒロイン”たちはそれを承知のうえで、あくまで“純真”に振る舞っているというのだから、たちが悪い。 けれど、そう望むのなら――さあ、ご期待にお応えして、見事に演じきって見せますわ。

好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……? ※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり
恋愛
 ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。  けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。  バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

処理中です...