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15 父と婚約者
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私とトゥインプ伯爵令息との婚約の解消については、アーク殿下とポールが動いてくれる事になったのだけれど、私は私で、自分の事なのだから自分も何かしなければいけないと考え、行きたくはなかったけれど、休みの日に実家に行く事にした。
一応、事前に行く事を伝えておいたのが良かったのか悪かったのか、私が朝に実家に着くと、家族全員が談話室に揃っていた。
そして、なぜか、その輪の中に問題になっている令息もいた。
トゥインプ伯爵令息の姿を認めて立ち止まると、お母様は立ち上がって私の所へ来てくれる。
「おかえりなさい、ルルア」
「お母様、あの方は…」
「ごめんね、ルルア。あなたのお父様が勝手にあなたの婚約をすすめてしまったの。それに関しては、王妃様には伝えているわ。だから、アーク殿下も知ってらっしゃるはずよ」
お父様に聞こえないように、私を抱きしめた状態で耳元で小さな声で教えてくれた。
「ありがとうございます、お母様」
王妃様が私の婚約が進められている事を知っておられる事はわかっていた。
なぜなら、ピクニックの日に渡された封筒の中に、王妃様直々に書いてくださった、王妃マニュアルがと一緒に手紙が入っていたから。
王妃マニュアルに関しては、実際、そんなマニュアルなどないのだろうけれど、自分が実際に体験している出来事などを、わかりやすく書いてくださっていた。
手紙には『こんな事を書いてごめんなさいね。でも、アークにはあなたしかいないの。アークの事が嫌いじゃないのなら、あの子のお嫁さんになってあげてほしい。あの子をどうしても好きになれないのなら拒否して当然だけれど、王妃が嫌だという理由で断るのだけはやめてあげてほしい。あなたがアークを選んでくれるなら、今の婚約者に関しては解消するように私から動くわ』と抜粋した内容ではあるけれど、こんな感じの事が書いてあった。
これに関しては、王妃になるのが嫌だからという理由で、お断りするのは不誠実かもしれないと、改めて思わせてもらったし、王妃様への息子への愛情が伝わってきた。
息子の恋路に介入しようとしているから、親バカなところがあるのかもしれないけど。
ただ、母ってそんなものなのかしら?
「お母様はトゥインプ伯爵の話はご存知なんですか?」
「話は聞いたわ。一応、あなたのお父様にもお話はしたんだけど…」
「おい、何をコソコソ話をしてる!」
父が私の方を見て文句を言う。
「婚約者が来てくれているというのに、挨拶もしないとはな。公爵家はどんな躾をしているのか」
「常識が足りないところは、あなたの血が混じっているせいでしょうね」
「まったく可愛げがない!」
「躾の件に関しては、ガルシア公爵閣下には、あなたの先程の発言を、お話させていただきますから」
「やめろ!」
公爵家を敵に回したくない様で、父はソファーから立ち上がって叫んだ。
「お客様の前ですよ」
冷たく言い返したあと、部屋に入ってすぐに1人掛けのソファーがあるのだけれど、そこに座っているトゥインプ伯爵令息を見る。
彼は小刻みに身体を揺らしながら、身を縮こまらせていた。
「あの」
話しかけると、トゥインプ伯爵令息は飛び上がるようにして立ち上がり、私に向かって深々と頭を下げた。
「は、はじめまして、ワイズ・トゥインプと申します」
「はじめまして、ルルア・ウィンスレットと申します」
カーテシーをすると、彼は小さめの丸い眼鏡を押し上げながら言う。
「ワイズとお呼び下さい。ルルア様の婚約者になれて幸せです。あなたをこれから守らせて下さい」
「その件なのですが…」
ワイズ様に言葉を返そうとした時、父が彼に話し掛けた。
「ワイズくん」
「は、はい」
「君の家が反王家派だというのは本当か?」
父の言葉を聞き、お母様は頭を抱えてしまった。
なんで本人に聞くのよ!?
「ど、どういう事ですか?」
「いや、君の家が反王家派だたなんていう、馬鹿な噂が流れているものだから」
「馬鹿はあんたもですよ」
これが父なのかと思うと情けなさすぎて、思わず口に出してしまった。
一応、事前に行く事を伝えておいたのが良かったのか悪かったのか、私が朝に実家に着くと、家族全員が談話室に揃っていた。
そして、なぜか、その輪の中に問題になっている令息もいた。
トゥインプ伯爵令息の姿を認めて立ち止まると、お母様は立ち上がって私の所へ来てくれる。
「おかえりなさい、ルルア」
「お母様、あの方は…」
「ごめんね、ルルア。あなたのお父様が勝手にあなたの婚約をすすめてしまったの。それに関しては、王妃様には伝えているわ。だから、アーク殿下も知ってらっしゃるはずよ」
お父様に聞こえないように、私を抱きしめた状態で耳元で小さな声で教えてくれた。
「ありがとうございます、お母様」
王妃様が私の婚約が進められている事を知っておられる事はわかっていた。
なぜなら、ピクニックの日に渡された封筒の中に、王妃様直々に書いてくださった、王妃マニュアルがと一緒に手紙が入っていたから。
王妃マニュアルに関しては、実際、そんなマニュアルなどないのだろうけれど、自分が実際に体験している出来事などを、わかりやすく書いてくださっていた。
手紙には『こんな事を書いてごめんなさいね。でも、アークにはあなたしかいないの。アークの事が嫌いじゃないのなら、あの子のお嫁さんになってあげてほしい。あの子をどうしても好きになれないのなら拒否して当然だけれど、王妃が嫌だという理由で断るのだけはやめてあげてほしい。あなたがアークを選んでくれるなら、今の婚約者に関しては解消するように私から動くわ』と抜粋した内容ではあるけれど、こんな感じの事が書いてあった。
これに関しては、王妃になるのが嫌だからという理由で、お断りするのは不誠実かもしれないと、改めて思わせてもらったし、王妃様への息子への愛情が伝わってきた。
息子の恋路に介入しようとしているから、親バカなところがあるのかもしれないけど。
ただ、母ってそんなものなのかしら?
「お母様はトゥインプ伯爵の話はご存知なんですか?」
「話は聞いたわ。一応、あなたのお父様にもお話はしたんだけど…」
「おい、何をコソコソ話をしてる!」
父が私の方を見て文句を言う。
「婚約者が来てくれているというのに、挨拶もしないとはな。公爵家はどんな躾をしているのか」
「常識が足りないところは、あなたの血が混じっているせいでしょうね」
「まったく可愛げがない!」
「躾の件に関しては、ガルシア公爵閣下には、あなたの先程の発言を、お話させていただきますから」
「やめろ!」
公爵家を敵に回したくない様で、父はソファーから立ち上がって叫んだ。
「お客様の前ですよ」
冷たく言い返したあと、部屋に入ってすぐに1人掛けのソファーがあるのだけれど、そこに座っているトゥインプ伯爵令息を見る。
彼は小刻みに身体を揺らしながら、身を縮こまらせていた。
「あの」
話しかけると、トゥインプ伯爵令息は飛び上がるようにして立ち上がり、私に向かって深々と頭を下げた。
「は、はじめまして、ワイズ・トゥインプと申します」
「はじめまして、ルルア・ウィンスレットと申します」
カーテシーをすると、彼は小さめの丸い眼鏡を押し上げながら言う。
「ワイズとお呼び下さい。ルルア様の婚約者になれて幸せです。あなたをこれから守らせて下さい」
「その件なのですが…」
ワイズ様に言葉を返そうとした時、父が彼に話し掛けた。
「ワイズくん」
「は、はい」
「君の家が反王家派だというのは本当か?」
父の言葉を聞き、お母様は頭を抱えてしまった。
なんで本人に聞くのよ!?
「ど、どういう事ですか?」
「いや、君の家が反王家派だたなんていう、馬鹿な噂が流れているものだから」
「馬鹿はあんたもですよ」
これが父なのかと思うと情けなさすぎて、思わず口に出してしまった。
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