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8 それぞれの決意
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「姉が妹を心配することは普通のことなのではないでしょうか? それなのに迷惑だなんて!」
お姉様がヒステリックに叫ぶと、エディ様ではなく閣下が口を開く。
「保護者が必要だと言うなら気にしなくて良い。私と妻がリネの保護者になろう」
「ニーソン公爵夫妻がですか!?」
お母様が声を上げると、閣下は頷いてから、どうすれば良いのかわからずに立ち尽くしている私を急かす。
「リネ、こちらは良いから早く行きなさい」
「リネ、また後でね」
エディ様には名残惜しそうな表情で見送られ、慌ててキノン伯爵令嬢と一緒に応接間から出た。
でも、やっぱりエディ様たちの様子が気になって、ついキノン伯爵令嬢に聞いてしまう。
「閣下やエディ様は、私の両親にどんなお話をされるのでしょうか」
「そうですね。閣下やエディ様はリネ様を公爵家に連れて帰られる予定です。そのことについて文句を言えないようにしようとなさるのではないでしょうか」
「そんなことはできるのでしょうか? しかも、今、決められたことですよね? ニーソン公爵夫人にもご迷惑が……」
あんな人たちでも実の親だから、私を連れて行かせたくないと断られたら終わりだわ。
それに他にも心配はある。
私を無事に連れ帰れても、公爵夫人が私を拒否されたら、私はどうなるの?
「大丈夫です。奥様は絶対にお喜びになりますし、エディ様たちが勝利を勝ち取ってくださいます」
「……あの、しつこくお聞きして申し訳ないのですが、本当に夢ではないのでしょうか?」
「リネ様はどうしてそんなに夢だと思われるのですか?」
不思議そうなキノン伯爵令嬢に苦笑して答える。
「エディ様が私をあんなに思ってくださるだなんて、私の願望でしかないのではないかと思いまして」
「ご心配なさらないでください。エディ様のリネ様への愛は本物で病的です」
「病的……」
それは心配しなくてはいけないのでは?
口に出したいけれど、せっかく優しい態度を取ってくれているキノン伯爵令嬢の機嫌を損ねたくないわ。
主人のことを悪く言われるのは嬉しくないでしょうし、ここは黙っておく。
すると、キノン伯爵令嬢が慌てて言葉を補足する。
「もちろん、良い意味でです! それから、お願いなのですが、こんなことを言っていたとエディ様には言わないでいただけないでしょうか」
「もちろんです」
「二人だけの秘密ということでお願いします」
口に人差し指を当ててキノン伯爵令嬢は苦笑したあと、にっこりと微笑む。
本当に可愛らしい方だわ。
こんなに可愛らしい方が近くにいらっしゃるのに、エディ様は何とも思わないのかしら?
「リネ様、私のことはエレインとお呼びください」
「エレイン様ですね。では、私のことはリネとお呼びください」
「すでにリネ様とお呼びさせていただいております。私のことはエレインでかまいません」
「ですが!」
「リネ様はエディ様の奥様となられるお方です。今から、私のことをエレインと呼んでくださったほうが後々のことを考えましたら、そのほうが良いかと思われます」
「で、では……、エレイン……さん」
「さんもいりません! エレイン、でお願いします!」
エレインさんは学校内でも社交界でも美少女で有名で、男性からの人気も高い。
だから、エレインだなんて馴れ馴れしく呼んでしまったりしたら、エレインさんを好きな人からいじめられてしまうわ。
「……リネ様、これは夢です。夢の中なのですから、私のことをエレインとお呼びください」
エレインさんが真剣な口調でお願いしてきた。
さすがの私も夢じゃないことくらいはわかってきたわ。
だけど、これは良い機会よね。
夢だと思えば勇気が出るんだもの。
少しずつ、強くなって自分の言いたいことは、はっきり言えるようにならなくちゃ。
こんなやり取りをしていると、私の部屋にたどり着いた。
その後はエレインと一緒に荷造りを始めたのだった。
※
次の話は姉視点になります。
お姉様がヒステリックに叫ぶと、エディ様ではなく閣下が口を開く。
「保護者が必要だと言うなら気にしなくて良い。私と妻がリネの保護者になろう」
「ニーソン公爵夫妻がですか!?」
お母様が声を上げると、閣下は頷いてから、どうすれば良いのかわからずに立ち尽くしている私を急かす。
「リネ、こちらは良いから早く行きなさい」
「リネ、また後でね」
エディ様には名残惜しそうな表情で見送られ、慌ててキノン伯爵令嬢と一緒に応接間から出た。
でも、やっぱりエディ様たちの様子が気になって、ついキノン伯爵令嬢に聞いてしまう。
「閣下やエディ様は、私の両親にどんなお話をされるのでしょうか」
「そうですね。閣下やエディ様はリネ様を公爵家に連れて帰られる予定です。そのことについて文句を言えないようにしようとなさるのではないでしょうか」
「そんなことはできるのでしょうか? しかも、今、決められたことですよね? ニーソン公爵夫人にもご迷惑が……」
あんな人たちでも実の親だから、私を連れて行かせたくないと断られたら終わりだわ。
それに他にも心配はある。
私を無事に連れ帰れても、公爵夫人が私を拒否されたら、私はどうなるの?
「大丈夫です。奥様は絶対にお喜びになりますし、エディ様たちが勝利を勝ち取ってくださいます」
「……あの、しつこくお聞きして申し訳ないのですが、本当に夢ではないのでしょうか?」
「リネ様はどうしてそんなに夢だと思われるのですか?」
不思議そうなキノン伯爵令嬢に苦笑して答える。
「エディ様が私をあんなに思ってくださるだなんて、私の願望でしかないのではないかと思いまして」
「ご心配なさらないでください。エディ様のリネ様への愛は本物で病的です」
「病的……」
それは心配しなくてはいけないのでは?
口に出したいけれど、せっかく優しい態度を取ってくれているキノン伯爵令嬢の機嫌を損ねたくないわ。
主人のことを悪く言われるのは嬉しくないでしょうし、ここは黙っておく。
すると、キノン伯爵令嬢が慌てて言葉を補足する。
「もちろん、良い意味でです! それから、お願いなのですが、こんなことを言っていたとエディ様には言わないでいただけないでしょうか」
「もちろんです」
「二人だけの秘密ということでお願いします」
口に人差し指を当ててキノン伯爵令嬢は苦笑したあと、にっこりと微笑む。
本当に可愛らしい方だわ。
こんなに可愛らしい方が近くにいらっしゃるのに、エディ様は何とも思わないのかしら?
「リネ様、私のことはエレインとお呼びください」
「エレイン様ですね。では、私のことはリネとお呼びください」
「すでにリネ様とお呼びさせていただいております。私のことはエレインでかまいません」
「ですが!」
「リネ様はエディ様の奥様となられるお方です。今から、私のことをエレインと呼んでくださったほうが後々のことを考えましたら、そのほうが良いかと思われます」
「で、では……、エレイン……さん」
「さんもいりません! エレイン、でお願いします!」
エレインさんは学校内でも社交界でも美少女で有名で、男性からの人気も高い。
だから、エレインだなんて馴れ馴れしく呼んでしまったりしたら、エレインさんを好きな人からいじめられてしまうわ。
「……リネ様、これは夢です。夢の中なのですから、私のことをエレインとお呼びください」
エレインさんが真剣な口調でお願いしてきた。
さすがの私も夢じゃないことくらいはわかってきたわ。
だけど、これは良い機会よね。
夢だと思えば勇気が出るんだもの。
少しずつ、強くなって自分の言いたいことは、はっきり言えるようにならなくちゃ。
こんなやり取りをしていると、私の部屋にたどり着いた。
その後はエレインと一緒に荷造りを始めたのだった。
※
次の話は姉視点になります。
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