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21 王女の誤算 ④
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次の日の朝早くにエルンたちが宿屋を出ていったと連絡があり、シアルリアは胸を撫で下ろした。その日の午後にはチモチノモ王国の遣いが早馬がやって来て、イヨトが国に戻ったところで、ガズクの退位が正式に決まり、国民にも発表されると連絡してくれた。
(ネノナカル王国は喜ばしい話題が多いけれど、チモチノモ王国は散々ね。マロックとエルン王女が浮気をしなければ、こんなことにならなかったわけだし、私は気にしなくていいわよね)
エルンが婚約者の変更を申し出たことがきっかけで、ブレイズの時間が動き始めた。そして、シアルリアとの交流が彼の心を解きほぐした。婚約者がエルンのままではブレイズはまだ子供の精神のままだったと思われる。
(もしも、婚約者がエルン王女のままだったら、今頃はどうなっていたのかしら)
窓辺に置かれている安楽椅子に座り、そんなことを考えていると扉がノックされた。考えることをやめて返事をすると、侍女が中に入って来た。手には白い封筒が握られており、ミナダ公爵家の封蝋が押されていることがわかった。
「ありがとう。思ったよりも早く帰って来たのね。かなり急いでくれたのかしら」
封筒を受け取り、中から手紙を取り出す。定型文の挨拶と息子の非礼についての詫び。婚約と結婚へのお祝いの言葉が書かれたあとに、シアルリアからの質問に対する回答が書かれていた。その答えに満足した彼女は、内容を伝えるためにブレイズの執務室へと向かった。
◇◆◇◆◇◆
ネノナカル王国の宿屋を出て三日後にはチモチノモ王国に入国した二人は、立会人を雇い、お互いの親からの了承を得ることもなく結婚した。そのままミナダ公爵家に向かい、はじめから父ではなく母を呼び出した。どうしても話したいことがあると伝えると、ミナダ公爵夫人が手配した宿屋の一室で話を聞いてくれることになり、三人で宿屋に移動した。
案内された部屋のソファに座り、マロックは母に必死に訴える。
「母上、助けてください。男爵として新たな人生を歩んでいきたいので、どうか、僕に領地を任せるように父にお願いしてもらえませんか」
「マロック」
公爵夫人は憐れむような目で息子を見つめて尋ねる。
「領地を任せるようにお願いしてくれと言ったわね? 頼むことはできるわ。だけどあなた、領地の管理をどんな風にするか知っているの?」
「……そ、それは、その教えてもらえたらと」
「誰に?」
「は、母上は知らないのですか?」
「私は邸内でできることしかしていないわ。だから、全てを教えてあげることはできない」
はあと大きなため息を吐いてから、彼女は立ち上がる。
「あなたは現実を甘く見過ぎている。自分たちのことだけでなく、領民のことを考えられるようになってから、もう一度来なさい」
「そんな! 母上、どうしてそんなひどいことを言うんですか!」
「ひどいことと思っている間は無理ね」
そう言って、公爵夫人は部屋を出た。扉の向こうからエルンがマロックを叱責する声が聞こえてきたので、彼女は耳をふさぐ。本当は可愛い息子を助けてやりたかった。でも、できなかった。
こうなることを予想していたシアルリアが、先手を打っていたからだった。
(ネノナカル王国は喜ばしい話題が多いけれど、チモチノモ王国は散々ね。マロックとエルン王女が浮気をしなければ、こんなことにならなかったわけだし、私は気にしなくていいわよね)
エルンが婚約者の変更を申し出たことがきっかけで、ブレイズの時間が動き始めた。そして、シアルリアとの交流が彼の心を解きほぐした。婚約者がエルンのままではブレイズはまだ子供の精神のままだったと思われる。
(もしも、婚約者がエルン王女のままだったら、今頃はどうなっていたのかしら)
窓辺に置かれている安楽椅子に座り、そんなことを考えていると扉がノックされた。考えることをやめて返事をすると、侍女が中に入って来た。手には白い封筒が握られており、ミナダ公爵家の封蝋が押されていることがわかった。
「ありがとう。思ったよりも早く帰って来たのね。かなり急いでくれたのかしら」
封筒を受け取り、中から手紙を取り出す。定型文の挨拶と息子の非礼についての詫び。婚約と結婚へのお祝いの言葉が書かれたあとに、シアルリアからの質問に対する回答が書かれていた。その答えに満足した彼女は、内容を伝えるためにブレイズの執務室へと向かった。
◇◆◇◆◇◆
ネノナカル王国の宿屋を出て三日後にはチモチノモ王国に入国した二人は、立会人を雇い、お互いの親からの了承を得ることもなく結婚した。そのままミナダ公爵家に向かい、はじめから父ではなく母を呼び出した。どうしても話したいことがあると伝えると、ミナダ公爵夫人が手配した宿屋の一室で話を聞いてくれることになり、三人で宿屋に移動した。
案内された部屋のソファに座り、マロックは母に必死に訴える。
「母上、助けてください。男爵として新たな人生を歩んでいきたいので、どうか、僕に領地を任せるように父にお願いしてもらえませんか」
「マロック」
公爵夫人は憐れむような目で息子を見つめて尋ねる。
「領地を任せるようにお願いしてくれと言ったわね? 頼むことはできるわ。だけどあなた、領地の管理をどんな風にするか知っているの?」
「……そ、それは、その教えてもらえたらと」
「誰に?」
「は、母上は知らないのですか?」
「私は邸内でできることしかしていないわ。だから、全てを教えてあげることはできない」
はあと大きなため息を吐いてから、彼女は立ち上がる。
「あなたは現実を甘く見過ぎている。自分たちのことだけでなく、領民のことを考えられるようになってから、もう一度来なさい」
「そんな! 母上、どうしてそんなひどいことを言うんですか!」
「ひどいことと思っている間は無理ね」
そう言って、公爵夫人は部屋を出た。扉の向こうからエルンがマロックを叱責する声が聞こえてきたので、彼女は耳をふさぐ。本当は可愛い息子を助けてやりたかった。でも、できなかった。
こうなることを予想していたシアルリアが、先手を打っていたからだった。
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