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第28話 アバホカ陛下の叫び
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「そんな話をするつもりで、ここまで来た訳じゃねえんだ。俺はリーシャと話をしに来た。今更、シルフィーなんていらねぇよ」
中での話が聞こえていた様で、あれ、というと今は分かりづらいので、アバホカ陛下は部屋の中に入ってくると、私の所へ向かって歩いてきましたが、すぐにライト様が間に割って入ってくださいました。
すると、アバホカ陛下は不服そうな声で言います。
「おい、そこを退け」
「アバホカ陛下、彼女は私の妻です。たとえ陛下であっても必要以上に近付く事はご遠慮願います」
「遠慮ってことは、絶対にやめろというわけじゃないだろ」
「我が国では、常識のある人間でしたらしないで下さいという意味でもあります」
ライト様の言葉にアバホカ陛下は舌打ちをすると、顔だけ彼に見せている私と目を合わせて言います。
「いつまで意地を張ってるんだ。俺が迎えに来てやったんだから一緒に帰れ」
「何を言っておられるんですか? 私はライト様の妻です。あなたと一緒に帰る気はありません」
「お前こそ何を言ってるんだ! お前は俺の婚約者だっただろう!? 俺と過ごした期間の方が長いのに、そんなに簡単に俺の事を忘れたのか!?」
「何を言ってらっしゃるんですか? あなたと過ごした期間なんてほとんどありません! 話をしたといっても私の仕事中にフラッと現れては、不快になる話だけして去っていくくらいしかなかったじゃないですか!」
私の言葉にアバホカ陛下はなぜか悲しそうな顔をして言います。
「不快になる話だけだと?」
「そうです。あなたは私の目の前に仕事が山積みになっているにも関わらず、私の隣に立って仕事を止めろと言っては、自分がどんな女性と遊んだとかいう話を」
「それはお前を休ませたかったんだ!」
アバホカ陛下は必死になって訴えてきます。
「お前は仕事してばかりで顔色も悪いのに、そんな事にも気付かないくらいだった。だから、少しは休ませようと思ったんだよ!」
「なら、仕事を手伝ってくだされば良かったのでは!?」
「全部、お前の仕事だと思ったんだ! まさか他の人間から仕事を押し付けられているだなんて思ってもいなかった! それに愛人達に手伝わせる様にしたし、仕事のペースが遅いのも疲れてるからだと思ったんだ!」
「本当に私の仕事のペースが遅いと思っておられたんですか…?」
ショックでした。
あんなにも一生懸命頑張っていたのに、アバホカ陛下は憎まれ口ではなく、本気で私の仕事が遅いと思っておられたようです。
「では、フローレンス様に代わってからは仕事が溜まる事などはなくなったのでしょうね」
「だから、違うんだ! 仕事が遅いのは疲れているからだと思ったって言ってんだろ!? だけど、フローレンスにやらせるようになってわかった。リーシャの仕事が遅かったんじゃない。仕事の量が多すぎたんだ!」
アバホカ陛下は何だか偉そうに言われてますが、気付くのが遅すぎませんか?
この方、本当に私の事を好きだったんでしょうか?
全く信じられません。
好きだったなら、もっと私の事を見ていてくれてもいいはずです。
「とにかくアバホカ陛下。場所を変えましょう。ここでは病人の部屋ですから」
ライト様が促すと、アバホカ陛下は舌打ちをした後、シルフィーの方を睨んで言います。
「お前が余計な事をしなければ…」
「私が何をしたんですか!?」
シルフィーが驚いた顔をして言い返しました。
いや、したでしょう。
逃げたじゃないですか。
と言おうとしたところで、アバホカ陛下が言葉を返します。
「逃げた事もそうだが、フローレンスに余計な話をしやがって!」
「そ、それは…!」
「フローレンスが俺を狙ったのはお前のせいだったんだ! 逃げるだけじゃ飽き足りずに余計な事をしやがって!」
「ですが、それは陛下がフローレンスと浮気しなければよかっただけなのでは!?」
シルフィーがまともな事を言い返したので、つい、ライト様を見上げると、ライト様も同じ事を思った様で呆れた顔をして私を見て首を傾げられました。
どの口が言うんだと言った感じでしょうか。
「あいつのせいで国はめちゃくちゃなんだ! おい、リーシャ、何でもいい。とにかく帰ってきてくれ。お前の俺への信頼を回復できるように帰ってきてくれるなら一緒に頑張るからよ」
「意味がわかりません。あなたは国王なのですよ? 私は他国の国民です。私の事を気にされるよりも自国の国民の事を考えて下さいませ」
「そんな事はわかってるよ! だけど、お前がいないと俺は頑張れねぇんだ!」
「甘ったれた事を言わないで下さい! そんなに情けない事を仰るのでしたら国王を退位されてはどうです!?」
「何だと!?」
さすがに言い過ぎたのか、アバホカ陛下は憤怒の表情で私を睨み、そして私を庇うように立っているライト様に叫びます。
「おい、アーミテム公爵! そこを退け! リーシャの今の発言はあまりにも無礼な発言だぞ!」
「申し訳ございませんでした。ですが、私はあなたの元へ戻るつもりはございません」
「妻が無礼な発言をしてしまい申し訳ございませんでした。私からもお詫び申し上げます」
「謝って許される問題じゃないぞ! 処刑だ! 俺の元に帰ってこないと言うなら処刑してやる!」
アバホカ陛下の事です。
帰らないといえば、私を処刑しようとするでしょう。
「処刑とはやりすぎではないでしょうか」
「いや! 他国とはいえ王族に失礼な発言をしたんだ! 俺の言う通りにしないなら処刑してやる」
ライト様の言葉にアバホカ陛下が叫んだ時でした。
「えらく物騒な話をされておられるな」
この場にいる人間ではない、落ち着いた声が耳に届いたかと思うと、扉が開かれ、中に入ってこられたのはナトマモ陛下だったのです。
中での話が聞こえていた様で、あれ、というと今は分かりづらいので、アバホカ陛下は部屋の中に入ってくると、私の所へ向かって歩いてきましたが、すぐにライト様が間に割って入ってくださいました。
すると、アバホカ陛下は不服そうな声で言います。
「おい、そこを退け」
「アバホカ陛下、彼女は私の妻です。たとえ陛下であっても必要以上に近付く事はご遠慮願います」
「遠慮ってことは、絶対にやめろというわけじゃないだろ」
「我が国では、常識のある人間でしたらしないで下さいという意味でもあります」
ライト様の言葉にアバホカ陛下は舌打ちをすると、顔だけ彼に見せている私と目を合わせて言います。
「いつまで意地を張ってるんだ。俺が迎えに来てやったんだから一緒に帰れ」
「何を言っておられるんですか? 私はライト様の妻です。あなたと一緒に帰る気はありません」
「お前こそ何を言ってるんだ! お前は俺の婚約者だっただろう!? 俺と過ごした期間の方が長いのに、そんなに簡単に俺の事を忘れたのか!?」
「何を言ってらっしゃるんですか? あなたと過ごした期間なんてほとんどありません! 話をしたといっても私の仕事中にフラッと現れては、不快になる話だけして去っていくくらいしかなかったじゃないですか!」
私の言葉にアバホカ陛下はなぜか悲しそうな顔をして言います。
「不快になる話だけだと?」
「そうです。あなたは私の目の前に仕事が山積みになっているにも関わらず、私の隣に立って仕事を止めろと言っては、自分がどんな女性と遊んだとかいう話を」
「それはお前を休ませたかったんだ!」
アバホカ陛下は必死になって訴えてきます。
「お前は仕事してばかりで顔色も悪いのに、そんな事にも気付かないくらいだった。だから、少しは休ませようと思ったんだよ!」
「なら、仕事を手伝ってくだされば良かったのでは!?」
「全部、お前の仕事だと思ったんだ! まさか他の人間から仕事を押し付けられているだなんて思ってもいなかった! それに愛人達に手伝わせる様にしたし、仕事のペースが遅いのも疲れてるからだと思ったんだ!」
「本当に私の仕事のペースが遅いと思っておられたんですか…?」
ショックでした。
あんなにも一生懸命頑張っていたのに、アバホカ陛下は憎まれ口ではなく、本気で私の仕事が遅いと思っておられたようです。
「では、フローレンス様に代わってからは仕事が溜まる事などはなくなったのでしょうね」
「だから、違うんだ! 仕事が遅いのは疲れているからだと思ったって言ってんだろ!? だけど、フローレンスにやらせるようになってわかった。リーシャの仕事が遅かったんじゃない。仕事の量が多すぎたんだ!」
アバホカ陛下は何だか偉そうに言われてますが、気付くのが遅すぎませんか?
この方、本当に私の事を好きだったんでしょうか?
全く信じられません。
好きだったなら、もっと私の事を見ていてくれてもいいはずです。
「とにかくアバホカ陛下。場所を変えましょう。ここでは病人の部屋ですから」
ライト様が促すと、アバホカ陛下は舌打ちをした後、シルフィーの方を睨んで言います。
「お前が余計な事をしなければ…」
「私が何をしたんですか!?」
シルフィーが驚いた顔をして言い返しました。
いや、したでしょう。
逃げたじゃないですか。
と言おうとしたところで、アバホカ陛下が言葉を返します。
「逃げた事もそうだが、フローレンスに余計な話をしやがって!」
「そ、それは…!」
「フローレンスが俺を狙ったのはお前のせいだったんだ! 逃げるだけじゃ飽き足りずに余計な事をしやがって!」
「ですが、それは陛下がフローレンスと浮気しなければよかっただけなのでは!?」
シルフィーがまともな事を言い返したので、つい、ライト様を見上げると、ライト様も同じ事を思った様で呆れた顔をして私を見て首を傾げられました。
どの口が言うんだと言った感じでしょうか。
「あいつのせいで国はめちゃくちゃなんだ! おい、リーシャ、何でもいい。とにかく帰ってきてくれ。お前の俺への信頼を回復できるように帰ってきてくれるなら一緒に頑張るからよ」
「意味がわかりません。あなたは国王なのですよ? 私は他国の国民です。私の事を気にされるよりも自国の国民の事を考えて下さいませ」
「そんな事はわかってるよ! だけど、お前がいないと俺は頑張れねぇんだ!」
「甘ったれた事を言わないで下さい! そんなに情けない事を仰るのでしたら国王を退位されてはどうです!?」
「何だと!?」
さすがに言い過ぎたのか、アバホカ陛下は憤怒の表情で私を睨み、そして私を庇うように立っているライト様に叫びます。
「おい、アーミテム公爵! そこを退け! リーシャの今の発言はあまりにも無礼な発言だぞ!」
「申し訳ございませんでした。ですが、私はあなたの元へ戻るつもりはございません」
「妻が無礼な発言をしてしまい申し訳ございませんでした。私からもお詫び申し上げます」
「謝って許される問題じゃないぞ! 処刑だ! 俺の元に帰ってこないと言うなら処刑してやる!」
アバホカ陛下の事です。
帰らないといえば、私を処刑しようとするでしょう。
「処刑とはやりすぎではないでしょうか」
「いや! 他国とはいえ王族に失礼な発言をしたんだ! 俺の言う通りにしないなら処刑してやる」
ライト様の言葉にアバホカ陛下が叫んだ時でした。
「えらく物騒な話をされておられるな」
この場にいる人間ではない、落ち着いた声が耳に届いたかと思うと、扉が開かれ、中に入ってこられたのはナトマモ陛下だったのです。
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