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第一章 誰かの代わりになるのはもうやめました!
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昨日の夕食時、トーショは夜勤の騎士たちに腹痛をもよおす薬を盛っていた。我慢しきれなくなった男性が、トーショにその場を任せ用を足しに行っている間にノエルファが部屋を出た。
その後は、誰かに見られても一緒にいるのはロゼリアだと言って誤魔化し、無事に外に出ることに成功した。
説明を聞いた時、トーショが自分を婚約者にしたのは、この時のためだったのだろうかと悲しい気持ちになった。
トーショからの手紙に気を取られていたが、ノエルファはロゼリア宛に手紙を残していた。
ロゼリア以外の誰かに読まれるとわかっているので、ノエルファなりに下手に出ている内容だった。
【 親愛なるロゼリアへ。
勝手なことをしてしまって本当にごめんなさい。とても反省しています。
今まで私が嫌だと思ってきたことは、全部ロゼリアがやってくれたわよね。だから、私がいなくなってもあなたが立派に代役を果たしてくれるでしょう。
すべてあなたに任せるわ。あなたが困らないようにレフス王国側にも手紙を送っておくわね。
最後にあなたの婚約者を奪ってしまってごめんなさい。
その分幸せになるから、私たちのことはどうか、探さないでください】
なんて自分本位な手紙なんだろうか。
親愛なるという言葉が定型文だとわかっていても、ロゼリアには不快だった。
部屋にやって来た宰相から、今回のことについての大まかな説明を受けたあと、ロゼリアは宰相と共に国王のプライベートルームに向かった。
国王の部屋は城の最上階にあり、そのフロアは王族しか使うことができない。ロゼリアは今までに一度も部屋に入ったことはなく、緊張しながら足を踏み入れた。
左側に寝室、右側に執務室に続く扉があり、廊下に出なくても行き来が可能になっている。プライベートルームには執務机と応接セットと仮眠用のベッド。廊下側の壁には本棚がいくつも並んでいる。
応接セットの茶色の一人掛けのソファに足を組んで座っている国王からテーブルを挟んだ場所に、アンジェリカと宰相は立たされていた。
元貴族とは思えないほどに精悍な体つきをした国王のザッハは、苦虫を噛み潰したような顔をして宰相に叫ぶ。
「元王女だというのに、こんな馬鹿なことをしたらズキチーケ王国がどうなるのか理解できないのか!? 彼女はどんな神経をしているんだ!」
「ノエルファ様は自分にとって都合のいい言葉しか信じない御方でした。そうだな?」
小柄な老齢の宰相は、肩をすくめて隣に立っていたロゼリアに同意を求めた。
正直に答えていいものかと迷ったが、どうせ帰ってこない人物だし、帰ってきたとしても彼女に居場所はない。
そう結論づけたロゼリアだったが、すぐに答えることはできなかった。
やはり、保身は大事である。あとから問題になっても困るため確認を入れておくことにした。
「正直にお話したいのですが、不敬に当たらないでしょうか」
「私が許可する。本当のことを言ってくれ」
国王の許可が出たのなら、怖いものはない。
「承知いたしました。では、包み隠さずに申し上げますが、ノエルファ様は聞きたいことだけを聞き、見たいものだけを見る方でした」
「例を挙げて話してくれ」
「実際にあったことをお話しいたしますが、ノエルファ様が友人の結婚式に出席しようとした際、白いドレスを着ようとしていたのです。侍女が止めたのですが、かまわずに出席なさいました。参席した人たちは非常識だと思っていても相手は王女です。褒めることしかできなかったようです。そのため、ノエルファ様は助言をした侍女を解雇しました」
「なんだって? 先代の国王陛下は止めなかったのか?」
訝しむ様子のザッハに、ロゼリアは大きくうなずく。
「両陛下はノエルファ様の決めたことに異論を唱える方たちではありませんでした」
「それがどんなに非常識なことであってもか?」
「はい。ノエルファ様の言うことはすべて正しいとおっしゃっていました」
「話は聞いていたが、ここまでとは思っていなかったな」
ザッハは目を閉じて、こめかみを親指で押さえた。
ズキチーケ王国の新国王は公爵家の当主の中から選ばれたが、その中でも一番、王家と関わりの少なかった公爵が選ばれていた。
ザッハは先代の国王と方針が合わなかったため、距離を取っており、そのことが評価されていた。
彼は国王になってから詳しい事情を知り、悪しき風習はすべて変えていった。ロゼリアの環境を改善してくれたのも彼だった。
「レフス王国にはどう伝えるおつもりなのですか?」
「起きた話を伝えただけだが?」
ロゼリアが尋ねると、ザッハは不思議そうな顔をして彼女を見つめた。
不思議なのはこちらのほうだと思いながら、彼女は質問を変える。
「……私がノエルファ様の代わりをしなくてもいいのですか?」
「ああ、そういうことか。どちらにしても私が責任を取ることになる。それなら、正直に話すほうがいい。それに、彼女はレフス王国に手紙を送ったと書いていただろう?」
「……そうですね」
ノエルファ様とトーショが勝手なことをしたのに、国王陛下が責任を取らないといけないなんて!
親が子供の責任を取るように、身分が上の人間が下の責任を取ることはそう珍しくはない。そうだとしてもばかばかしい。
頭では理解していても、ロゼリアの心の中には負の感情が満ちていった。
ノエルファがどんな内容の手紙を送ったかは、今のロゼリアたちにはわからない。下手に嘘を書いた手紙を送れば辻褄が合わなくなる可能性もあり、ザッハは真実を伝える手紙を持たせ、早馬を走らせるように指示していた。
「向こうから返事が来るまでは、すぐに動けるように部屋で待機しておいてくれ」
「承知いたしました」
ロゼリアが部屋から去ろうとすると、宰相はザッハに問いかける。
「陛下、ノエルファ様とトーショが見つかった場合、どうされるおつもりですか?」
「トーショは良くて無期限の労役だろう。あまり命を奪うようなことはしたくはないが、レフス王国のことを考えれば処刑が妥当だろうな。ノエルファの場合はレフス王国次第だ」
処刑という言葉を聞いて、ロゼリアは胸が重くなるのを感じた。
まだ、あんな人のことが気になるのか。
ロゼリアは自分自身を殴りたくなった。
彼は嘘つきだった。代わりじゃないと言っておきながら、私をノエルファ様のかわりにするつもりだった。
ノエルファ様にもそうだけど、絶対に彼に情けなんてかけない。
ロゼリアは胸の前で手を握りしめて、心に誓った。
ロゼリアがザッハの部屋をあとにしてすぐ、レフス王国から書状が届いた。
ラブックからではなく国王からのもので、ノエルファではなく、ロゼリアを王子の妻に迎え入れたいと書かれていた。
※
次のお話はレフス王国側の話になります。
近いうちに登場人物紹介も投稿予定です。
その時は投稿から少しあとになるかもしれませんが、お知らせいたしますので、気になる方は読んでやってくださいませ!
その後は、誰かに見られても一緒にいるのはロゼリアだと言って誤魔化し、無事に外に出ることに成功した。
説明を聞いた時、トーショが自分を婚約者にしたのは、この時のためだったのだろうかと悲しい気持ちになった。
トーショからの手紙に気を取られていたが、ノエルファはロゼリア宛に手紙を残していた。
ロゼリア以外の誰かに読まれるとわかっているので、ノエルファなりに下手に出ている内容だった。
【 親愛なるロゼリアへ。
勝手なことをしてしまって本当にごめんなさい。とても反省しています。
今まで私が嫌だと思ってきたことは、全部ロゼリアがやってくれたわよね。だから、私がいなくなってもあなたが立派に代役を果たしてくれるでしょう。
すべてあなたに任せるわ。あなたが困らないようにレフス王国側にも手紙を送っておくわね。
最後にあなたの婚約者を奪ってしまってごめんなさい。
その分幸せになるから、私たちのことはどうか、探さないでください】
なんて自分本位な手紙なんだろうか。
親愛なるという言葉が定型文だとわかっていても、ロゼリアには不快だった。
部屋にやって来た宰相から、今回のことについての大まかな説明を受けたあと、ロゼリアは宰相と共に国王のプライベートルームに向かった。
国王の部屋は城の最上階にあり、そのフロアは王族しか使うことができない。ロゼリアは今までに一度も部屋に入ったことはなく、緊張しながら足を踏み入れた。
左側に寝室、右側に執務室に続く扉があり、廊下に出なくても行き来が可能になっている。プライベートルームには執務机と応接セットと仮眠用のベッド。廊下側の壁には本棚がいくつも並んでいる。
応接セットの茶色の一人掛けのソファに足を組んで座っている国王からテーブルを挟んだ場所に、アンジェリカと宰相は立たされていた。
元貴族とは思えないほどに精悍な体つきをした国王のザッハは、苦虫を噛み潰したような顔をして宰相に叫ぶ。
「元王女だというのに、こんな馬鹿なことをしたらズキチーケ王国がどうなるのか理解できないのか!? 彼女はどんな神経をしているんだ!」
「ノエルファ様は自分にとって都合のいい言葉しか信じない御方でした。そうだな?」
小柄な老齢の宰相は、肩をすくめて隣に立っていたロゼリアに同意を求めた。
正直に答えていいものかと迷ったが、どうせ帰ってこない人物だし、帰ってきたとしても彼女に居場所はない。
そう結論づけたロゼリアだったが、すぐに答えることはできなかった。
やはり、保身は大事である。あとから問題になっても困るため確認を入れておくことにした。
「正直にお話したいのですが、不敬に当たらないでしょうか」
「私が許可する。本当のことを言ってくれ」
国王の許可が出たのなら、怖いものはない。
「承知いたしました。では、包み隠さずに申し上げますが、ノエルファ様は聞きたいことだけを聞き、見たいものだけを見る方でした」
「例を挙げて話してくれ」
「実際にあったことをお話しいたしますが、ノエルファ様が友人の結婚式に出席しようとした際、白いドレスを着ようとしていたのです。侍女が止めたのですが、かまわずに出席なさいました。参席した人たちは非常識だと思っていても相手は王女です。褒めることしかできなかったようです。そのため、ノエルファ様は助言をした侍女を解雇しました」
「なんだって? 先代の国王陛下は止めなかったのか?」
訝しむ様子のザッハに、ロゼリアは大きくうなずく。
「両陛下はノエルファ様の決めたことに異論を唱える方たちではありませんでした」
「それがどんなに非常識なことであってもか?」
「はい。ノエルファ様の言うことはすべて正しいとおっしゃっていました」
「話は聞いていたが、ここまでとは思っていなかったな」
ザッハは目を閉じて、こめかみを親指で押さえた。
ズキチーケ王国の新国王は公爵家の当主の中から選ばれたが、その中でも一番、王家と関わりの少なかった公爵が選ばれていた。
ザッハは先代の国王と方針が合わなかったため、距離を取っており、そのことが評価されていた。
彼は国王になってから詳しい事情を知り、悪しき風習はすべて変えていった。ロゼリアの環境を改善してくれたのも彼だった。
「レフス王国にはどう伝えるおつもりなのですか?」
「起きた話を伝えただけだが?」
ロゼリアが尋ねると、ザッハは不思議そうな顔をして彼女を見つめた。
不思議なのはこちらのほうだと思いながら、彼女は質問を変える。
「……私がノエルファ様の代わりをしなくてもいいのですか?」
「ああ、そういうことか。どちらにしても私が責任を取ることになる。それなら、正直に話すほうがいい。それに、彼女はレフス王国に手紙を送ったと書いていただろう?」
「……そうですね」
ノエルファ様とトーショが勝手なことをしたのに、国王陛下が責任を取らないといけないなんて!
親が子供の責任を取るように、身分が上の人間が下の責任を取ることはそう珍しくはない。そうだとしてもばかばかしい。
頭では理解していても、ロゼリアの心の中には負の感情が満ちていった。
ノエルファがどんな内容の手紙を送ったかは、今のロゼリアたちにはわからない。下手に嘘を書いた手紙を送れば辻褄が合わなくなる可能性もあり、ザッハは真実を伝える手紙を持たせ、早馬を走らせるように指示していた。
「向こうから返事が来るまでは、すぐに動けるように部屋で待機しておいてくれ」
「承知いたしました」
ロゼリアが部屋から去ろうとすると、宰相はザッハに問いかける。
「陛下、ノエルファ様とトーショが見つかった場合、どうされるおつもりですか?」
「トーショは良くて無期限の労役だろう。あまり命を奪うようなことはしたくはないが、レフス王国のことを考えれば処刑が妥当だろうな。ノエルファの場合はレフス王国次第だ」
処刑という言葉を聞いて、ロゼリアは胸が重くなるのを感じた。
まだ、あんな人のことが気になるのか。
ロゼリアは自分自身を殴りたくなった。
彼は嘘つきだった。代わりじゃないと言っておきながら、私をノエルファ様のかわりにするつもりだった。
ノエルファ様にもそうだけど、絶対に彼に情けなんてかけない。
ロゼリアは胸の前で手を握りしめて、心に誓った。
ロゼリアがザッハの部屋をあとにしてすぐ、レフス王国から書状が届いた。
ラブックからではなく国王からのもので、ノエルファではなく、ロゼリアを王子の妻に迎え入れたいと書かれていた。
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その時は投稿から少しあとになるかもしれませんが、お知らせいたしますので、気になる方は読んでやってくださいませ!
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