24 / 34
第六章 元婚約者たちの悪あがき
2
私が彼になびくわけがないと、どうして、わからないのかしら。
ロゼリアは、ルディウスを睨みつけているラブックを見てそう思った。
ラブックはロゼリアを信じなかったことについて悪いと思っている。それ以外にも首を絞めたという事実があるだけに、ロゼリアを責められない。
だから、ルディウスを悪者にしようとした。
ルディウスを自分よりも悪い人間だと思わせることで、彼よりも自分のほうがマシであると、ロゼリアに思わせようとした。
そうすれば、ロゼリアがリンツに婚約者の変更を願うのではないかと考えたのだ。
そんな浅はかな考えなど、ロゼリアたちにはお見通しだった。
「ラブック殿下、今日は私とルディウス殿下の婚約のお披露目パーティーです。祝福できないとおっしゃるのであれば、無理やりにでも出ていってもらうように、国王陛下にお願いしますが?」
ロゼリアが話しかけても、ラブックは彼女に目を向けることなく、ルディウスを睨んだままだった。
呆れ返った顔をして、周りが自分を見つめていることなど、まったく気に留める様子はない。
本人は気がついていないようだけど、私が好きという気持ちよりも、ルディウス殿下に負けたくない気持ちのほうが強いみたい。
ラブックを無言で睨み返しているルディウスに目を向けたあと、ロゼリアはリンツに話しかける。
「国王陛下、申し訳ございませんが、命令していただいてもよろしいでしょうか」
「もちろんだ。頼まれずともそのつもりだったからな」
リンツは口元に笑みを浮かべてうなずき、穏やかな口調でラブックに話しかける。
「今日はロゼリアとルディウスが主役の日だ。いくら、ルディウスの兄といえど、邪魔をしてもいいわけではない。ラブック、追い出されたくなければ、自分の足で出ていけ」
「ち、父上! どうしてルディウスばかり贔屓するのですか!?」
「贔屓?」
リンツの声色が明らかに変わった。そのことに、ラブックも気がつかないはずもない。
慌てて頭を下げてから訴える。
「あ、いえ、言葉が過ぎました。申し訳ございません。あの、父上、話を聞いていただけませんか?」
「……わかった。話くらいは聞こう。だが、パーティーが終わってからだ。ラブック、とりあえずお前は出ていけ」
「承知いたしました」
名残惜しそうにロゼリアを見つめたラブックだったが、彼女に睨まれて視線を逸らした。
「兄上、あなたはロゼリアと俺の婚約を解消させて、自分がロゼリアと再婚約をしたいようですが、俺から彼女との婚約を解消したいと願い出ることはありません」
「そうだろうな。……でも」
ラブックは期待の眼差しをロゼリアに向けた。
この期に及んで、まだ私に気持ちが届くと思っているらしい。
ロゼリアは首を横に振って口を開く。
「ラブック殿下、私はルディウス様と未来を共に歩んでいくことを決めました。そして、何があってもあなたと再婚約するつもりはありません。あなたは、私に執着せず、愛するノエルファ様と幸せになってください」
ロゼリアが言い終えると同時に、騎士がラブックの両腕をつかんだ。
「や、やめろ! ロゼリア! 悪かった! 何度でも謝るから許してくれ!」
「本当に悪いと思っているのなら、許してもらえないことを理解できているはずですわ」
「ロゼリア! 本当に反省しているんだ!」
「早く連れて行け」
リンツに命令された騎士たちは、必死に抵抗するラブックを会場から追い出した。
ロゼリアは、ルディウスを睨みつけているラブックを見てそう思った。
ラブックはロゼリアを信じなかったことについて悪いと思っている。それ以外にも首を絞めたという事実があるだけに、ロゼリアを責められない。
だから、ルディウスを悪者にしようとした。
ルディウスを自分よりも悪い人間だと思わせることで、彼よりも自分のほうがマシであると、ロゼリアに思わせようとした。
そうすれば、ロゼリアがリンツに婚約者の変更を願うのではないかと考えたのだ。
そんな浅はかな考えなど、ロゼリアたちにはお見通しだった。
「ラブック殿下、今日は私とルディウス殿下の婚約のお披露目パーティーです。祝福できないとおっしゃるのであれば、無理やりにでも出ていってもらうように、国王陛下にお願いしますが?」
ロゼリアが話しかけても、ラブックは彼女に目を向けることなく、ルディウスを睨んだままだった。
呆れ返った顔をして、周りが自分を見つめていることなど、まったく気に留める様子はない。
本人は気がついていないようだけど、私が好きという気持ちよりも、ルディウス殿下に負けたくない気持ちのほうが強いみたい。
ラブックを無言で睨み返しているルディウスに目を向けたあと、ロゼリアはリンツに話しかける。
「国王陛下、申し訳ございませんが、命令していただいてもよろしいでしょうか」
「もちろんだ。頼まれずともそのつもりだったからな」
リンツは口元に笑みを浮かべてうなずき、穏やかな口調でラブックに話しかける。
「今日はロゼリアとルディウスが主役の日だ。いくら、ルディウスの兄といえど、邪魔をしてもいいわけではない。ラブック、追い出されたくなければ、自分の足で出ていけ」
「ち、父上! どうしてルディウスばかり贔屓するのですか!?」
「贔屓?」
リンツの声色が明らかに変わった。そのことに、ラブックも気がつかないはずもない。
慌てて頭を下げてから訴える。
「あ、いえ、言葉が過ぎました。申し訳ございません。あの、父上、話を聞いていただけませんか?」
「……わかった。話くらいは聞こう。だが、パーティーが終わってからだ。ラブック、とりあえずお前は出ていけ」
「承知いたしました」
名残惜しそうにロゼリアを見つめたラブックだったが、彼女に睨まれて視線を逸らした。
「兄上、あなたはロゼリアと俺の婚約を解消させて、自分がロゼリアと再婚約をしたいようですが、俺から彼女との婚約を解消したいと願い出ることはありません」
「そうだろうな。……でも」
ラブックは期待の眼差しをロゼリアに向けた。
この期に及んで、まだ私に気持ちが届くと思っているらしい。
ロゼリアは首を横に振って口を開く。
「ラブック殿下、私はルディウス様と未来を共に歩んでいくことを決めました。そして、何があってもあなたと再婚約するつもりはありません。あなたは、私に執着せず、愛するノエルファ様と幸せになってください」
ロゼリアが言い終えると同時に、騎士がラブックの両腕をつかんだ。
「や、やめろ! ロゼリア! 悪かった! 何度でも謝るから許してくれ!」
「本当に悪いと思っているのなら、許してもらえないことを理解できているはずですわ」
「ロゼリア! 本当に反省しているんだ!」
「早く連れて行け」
リンツに命令された騎士たちは、必死に抵抗するラブックを会場から追い出した。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので、もう頑張りません 〜静かな公爵に放っておかれたら、本当の人生が始まりました〜
あう
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。
元婚約者様へ。私は決して復縁はいたしませんよ
柚木ゆず
恋愛
他国で開かれた世界的なピアノコンクールで最高位の賞に輝き、史上最年少で文化勲章を授与された伯爵令嬢ステラス。彼女にはかつて婚約者である侯爵家の嫡男ルーラルトに裏切られ傷つき、専属調律師であるザクターによって救われた過去がありました。
かつて策略によってステラスに好意を抱かせ、挙句心変わりをして捨てた元婚約者ルーラルト。そんな彼は――
「ステラス・レルアユス。俺が愛すべき人は、やはり貴方でした」
ステラスが一躍有名人になったと知るや、反省していると嘯き復縁を求め接触を始めたのでした。
また上手く振る舞えば、あの時のように簡単に騙せてヨリを戻せる。そう確信していたルーラルトでしたが、それは叶いません。
なぜならば、ステラスを公私で支える専属調律師のザクターにはとある秘密があって――
私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果
柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。
姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。
ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。
お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました
柚木ゆず
恋愛
侯爵令嬢のファスティーヌ様が自分に好意を抱いていたと知り、即座に私との婚約を解消した伯爵令息のガエル様。
そんなガエル様は「お前なんかに会いに来ることは2度とない」と仰り去っていったのですが、それから1年後。ある日突然、私を訪ねてきました。
しかも、なにやら必死ですね。ファスティーヌ様と、何かあったのでしょうか……?
困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?
柚木ゆず
恋愛
「アン! お前の礼儀がなっていないから夜会で恥をかいたじゃないか! そんな女となんて一緒に居られない! この婚約は破棄する!!」
「アン君、婚約の際にわが家が借りた金は全て返す。速やかにこの屋敷から出ていってくれ」
新興貴族である我がフェリルーザ男爵家は『地位』を求め、多額の借金を抱えるハーニエル伯爵家は『財』を目当てとして、各当主の命により長女であるわたしアンと嫡男であるイブライム様は婚約を交わす。そうしてわたしは両家当主の打算により、婚約後すぐハーニエル邸で暮らすようになりました。
わたしの待遇を良くしていれば、フェリルーザ家は喜んでより好条件で支援をしてくれるかもしれない。
こんな理由でわたしは手厚く迎えられましたが、そんな日常はハーニエル家が投資の成功により大金を手にしたことで一変してしまいます。
イブライム様は男爵令嬢如きと婚約したくはなく、当主様は格下貴族と深い関係を築きたくはなかった。それらの理由で様々な暴言や冷遇を受けることとなり、最終的には根も葉もない非を理由として婚約を破棄されることになってしまったのでした。
ですが――。
やがて不意に、とても不思議なことが起きるのでした。
「アンっ、今まで酷いことをしてごめんっ。心から反省しています! これからは仲良く一緒に暮らしていこうねっ!」
わたしをゴミのように扱っていたイブライム様が、涙ながらに謝罪をしてきたのです。
…………あのような真似を平然する人が、突然反省をするはずはありません。
なにか、裏がありますね。
どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね
柚木ゆず
恋愛
※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。
あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。
けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。
そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。
お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~
柚木ゆず
恋愛
今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。
お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?
ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――