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第六章 元婚約者たちの悪あがき
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私が彼になびくわけがないと、どうして、わからないのかしら。
ロゼリアは、ルディウスを睨みつけているラブックを見てそう思った。
ラブックはロゼリアを信じなかったことについて悪いと思っている。それ以外にも首を絞めたという事実があるだけに、ロゼリアを責められない。
だから、ルディウスを悪者にしようとした。
ルディウスを自分よりも悪い人間だと思わせることで、彼よりも自分のほうがマシであると、ロゼリアに思わせようとした。
そうすれば、ロゼリアがリンツに婚約者の変更を願うのではないかと考えたのだ。
そんな浅はかな考えなど、ロゼリアたちにはお見通しだった。
「ラブック殿下、今日は私とルディウス殿下の婚約のお披露目パーティーです。祝福できないとおっしゃるのであれば、無理やりにでも出ていってもらうように、国王陛下にお願いしますが?」
ロゼリアが話しかけても、ラブックは彼女に目を向けることなく、ルディウスを睨んだままだった。
呆れ返った顔をして、周りが自分を見つめていることなど、まったく気に留める様子はない。
本人は気がついていないようだけど、私が好きという気持ちよりも、ルディウス殿下に負けたくない気持ちのほうが強いみたい。
ラブックを無言で睨み返しているルディウスに目を向けたあと、ロゼリアはリンツに話しかける。
「国王陛下、申し訳ございませんが、命令していただいてもよろしいでしょうか」
「もちろんだ。頼まれずともそのつもりだったからな」
リンツは口元に笑みを浮かべてうなずき、穏やかな口調でラブックに話しかける。
「今日はロゼリアとルディウスが主役の日だ。いくら、ルディウスの兄といえど、邪魔をしてもいいわけではない。ラブック、追い出されたくなければ、自分の足で出ていけ」
「ち、父上! どうしてルディウスばかり贔屓するのですか!?」
「贔屓?」
リンツの声色が明らかに変わった。そのことに、ラブックも気がつかないはずもない。
慌てて頭を下げてから訴える。
「あ、いえ、言葉が過ぎました。申し訳ございません。あの、父上、話を聞いていただけませんか?」
「……わかった。話くらいは聞こう。だが、パーティーが終わってからだ。ラブック、とりあえずお前は出ていけ」
「承知いたしました」
名残惜しそうにロゼリアを見つめたラブックだったが、彼女に睨まれて視線を逸らした。
「兄上、あなたはロゼリアと俺の婚約を解消させて、自分がロゼリアと再婚約をしたいようですが、俺から彼女との婚約を解消したいと願い出ることはありません」
「そうだろうな。……でも」
ラブックは期待の眼差しをロゼリアに向けた。
この期に及んで、まだ私に気持ちが届くと思っているらしい。
ロゼリアは首を横に振って口を開く。
「ラブック殿下、私はルディウス様と未来を共に歩んでいくことを決めました。そして、何があってもあなたと再婚約するつもりはありません。あなたは、私に執着せず、愛するノエルファ様と幸せになってください」
ロゼリアが言い終えると同時に、騎士がラブックの両腕をつかんだ。
「や、やめろ! ロゼリア! 悪かった! 何度でも謝るから許してくれ!」
「本当に悪いと思っているのなら、許してもらえないことを理解できているはずですわ」
「ロゼリア! 本当に反省しているんだ!」
「早く連れて行け」
リンツに命令された騎士たちは、必死に抵抗するラブックを会場から追い出した。
ロゼリアは、ルディウスを睨みつけているラブックを見てそう思った。
ラブックはロゼリアを信じなかったことについて悪いと思っている。それ以外にも首を絞めたという事実があるだけに、ロゼリアを責められない。
だから、ルディウスを悪者にしようとした。
ルディウスを自分よりも悪い人間だと思わせることで、彼よりも自分のほうがマシであると、ロゼリアに思わせようとした。
そうすれば、ロゼリアがリンツに婚約者の変更を願うのではないかと考えたのだ。
そんな浅はかな考えなど、ロゼリアたちにはお見通しだった。
「ラブック殿下、今日は私とルディウス殿下の婚約のお披露目パーティーです。祝福できないとおっしゃるのであれば、無理やりにでも出ていってもらうように、国王陛下にお願いしますが?」
ロゼリアが話しかけても、ラブックは彼女に目を向けることなく、ルディウスを睨んだままだった。
呆れ返った顔をして、周りが自分を見つめていることなど、まったく気に留める様子はない。
本人は気がついていないようだけど、私が好きという気持ちよりも、ルディウス殿下に負けたくない気持ちのほうが強いみたい。
ラブックを無言で睨み返しているルディウスに目を向けたあと、ロゼリアはリンツに話しかける。
「国王陛下、申し訳ございませんが、命令していただいてもよろしいでしょうか」
「もちろんだ。頼まれずともそのつもりだったからな」
リンツは口元に笑みを浮かべてうなずき、穏やかな口調でラブックに話しかける。
「今日はロゼリアとルディウスが主役の日だ。いくら、ルディウスの兄といえど、邪魔をしてもいいわけではない。ラブック、追い出されたくなければ、自分の足で出ていけ」
「ち、父上! どうしてルディウスばかり贔屓するのですか!?」
「贔屓?」
リンツの声色が明らかに変わった。そのことに、ラブックも気がつかないはずもない。
慌てて頭を下げてから訴える。
「あ、いえ、言葉が過ぎました。申し訳ございません。あの、父上、話を聞いていただけませんか?」
「……わかった。話くらいは聞こう。だが、パーティーが終わってからだ。ラブック、とりあえずお前は出ていけ」
「承知いたしました」
名残惜しそうにロゼリアを見つめたラブックだったが、彼女に睨まれて視線を逸らした。
「兄上、あなたはロゼリアと俺の婚約を解消させて、自分がロゼリアと再婚約をしたいようですが、俺から彼女との婚約を解消したいと願い出ることはありません」
「そうだろうな。……でも」
ラブックは期待の眼差しをロゼリアに向けた。
この期に及んで、まだ私に気持ちが届くと思っているらしい。
ロゼリアは首を横に振って口を開く。
「ラブック殿下、私はルディウス様と未来を共に歩んでいくことを決めました。そして、何があってもあなたと再婚約するつもりはありません。あなたは、私に執着せず、愛するノエルファ様と幸せになってください」
ロゼリアが言い終えると同時に、騎士がラブックの両腕をつかんだ。
「や、やめろ! ロゼリア! 悪かった! 何度でも謝るから許してくれ!」
「本当に悪いと思っているのなら、許してもらえないことを理解できているはずですわ」
「ロゼリア! 本当に反省しているんだ!」
「早く連れて行け」
リンツに命令された騎士たちは、必死に抵抗するラブックを会場から追い出した。
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