47 / 61
45 悪あがきする公爵令嬢②
しおりを挟む
ポスティム公爵令嬢は足を止めた私に話しかけてくる。
「キャスティー子爵令嬢、わたくしから話がありましてよ」
「申し訳ございませんが、今からダンスのレッスンがあるんです。お話を聞くのは、その後からでもよろしいでしょうか」
「駄目に決まっているでしょう! わたくしの話をを後回しにすると言うつもりなの!?」
「では、私に約束を破れとおっしゃるのですか?」
「どういうことよ!」
ヒステリックになって聞いてくるので、無礼だとわかっていながらも、私は大きく息を吐いてから答える。
「ダンスの先生とは時間をお約束しているのです。ポスティム公爵令嬢とお話しておりましたら、その時間に遅れてしまう可能性があります。そうなった場合、私は約束を破った人間になりますわよね」
「わたくしが相手なのだから、そんなことは気にしなくて良いのです!」
「どうして気にしなくて良いのか理由がわかりません」
「わたくしよりも優先しなければならない用事などないからです」
ポスティム公爵令嬢は強気の笑みを浮かべて言った。
私は冷静になるように心がけながらも言い返す。
「それは、ポスティム公爵家内での話であり、外の世界ではそれがまかり通るとは思えません」
「本当に生意気な女ね! 少なくとも子爵令嬢のお前よりもわたくしのほうが格上なのよ! 不敬罪だと言われたくなければ、わたくしの言うことを聞きなさい!」
ポスティム公爵令嬢は顔を歪めて、声を荒らげた。
主張が無茶苦茶だわ。
さすがに彼女の周りに立っているメイドたちも不安そうな顔をしている。
ただでさえ、ミゲスダット家が流したと思われる噂で、彼女の立場は悪い状況なのに、それ以上、悪化させるようなことをしているのだから、メイドたちにしてみれば気が気ではないでしょうね。
最悪の場合、自分たちは仕事を失うことになるんだもの。
甘い密を吸ってきたのなら余計に辛いはずだわ。
「このお話はロキアス殿下にお伝えさせていただきますが、その覚悟はお有りですか?」
話を終わらせるために尋ねると、ポスティム公爵令嬢はびくりと体を震わせた。
言い返されると思っていなかったのかしら。
まさか、私のことをロキに報告しないお人好しだと思っていたわけじゃないわよね?
「ポスティム公爵令嬢、私は自分がどうこう言われるのはかまいません。気にしなければ良いことですので。でも、私を悲しませるために、他の人間を巻き込むことは許せません。あなたが他の人を巻き込むというのであれば、私も他の人を巻き込むだけです。そして、巻き込む相手がロキアス殿下だということをお忘れなきよう、お願いいたします」
そこまで言って立ち去ろうとしたけれど、言い忘れていたことがあったので付け加える。
「それから、ロキアス殿下にお話するのは、相手がエレイン様であっても同じです。あなたも私も王太子妃候補なんですから、王太子殿下に事実をお伝えするのも義務だと思います」
「ま、待って! 馬鹿なことをするのはやめなさい!」
「馬鹿なことではありません。あなたが始めたことでしょう。私は決められたルール内で競うつもりでした」
「待ちなさい! わたくしは何も関係ないわ!」
「関係ないのであれば、そんなに焦らなくてもよろしいかと思います」
にこりと微笑んでから、私は歩き始めた。
背後から叫ぶ声が聞こえてきたけれど、私は足を止めることも振り返ることもしなかった。
「キャスティー子爵令嬢、わたくしから話がありましてよ」
「申し訳ございませんが、今からダンスのレッスンがあるんです。お話を聞くのは、その後からでもよろしいでしょうか」
「駄目に決まっているでしょう! わたくしの話をを後回しにすると言うつもりなの!?」
「では、私に約束を破れとおっしゃるのですか?」
「どういうことよ!」
ヒステリックになって聞いてくるので、無礼だとわかっていながらも、私は大きく息を吐いてから答える。
「ダンスの先生とは時間をお約束しているのです。ポスティム公爵令嬢とお話しておりましたら、その時間に遅れてしまう可能性があります。そうなった場合、私は約束を破った人間になりますわよね」
「わたくしが相手なのだから、そんなことは気にしなくて良いのです!」
「どうして気にしなくて良いのか理由がわかりません」
「わたくしよりも優先しなければならない用事などないからです」
ポスティム公爵令嬢は強気の笑みを浮かべて言った。
私は冷静になるように心がけながらも言い返す。
「それは、ポスティム公爵家内での話であり、外の世界ではそれがまかり通るとは思えません」
「本当に生意気な女ね! 少なくとも子爵令嬢のお前よりもわたくしのほうが格上なのよ! 不敬罪だと言われたくなければ、わたくしの言うことを聞きなさい!」
ポスティム公爵令嬢は顔を歪めて、声を荒らげた。
主張が無茶苦茶だわ。
さすがに彼女の周りに立っているメイドたちも不安そうな顔をしている。
ただでさえ、ミゲスダット家が流したと思われる噂で、彼女の立場は悪い状況なのに、それ以上、悪化させるようなことをしているのだから、メイドたちにしてみれば気が気ではないでしょうね。
最悪の場合、自分たちは仕事を失うことになるんだもの。
甘い密を吸ってきたのなら余計に辛いはずだわ。
「このお話はロキアス殿下にお伝えさせていただきますが、その覚悟はお有りですか?」
話を終わらせるために尋ねると、ポスティム公爵令嬢はびくりと体を震わせた。
言い返されると思っていなかったのかしら。
まさか、私のことをロキに報告しないお人好しだと思っていたわけじゃないわよね?
「ポスティム公爵令嬢、私は自分がどうこう言われるのはかまいません。気にしなければ良いことですので。でも、私を悲しませるために、他の人間を巻き込むことは許せません。あなたが他の人を巻き込むというのであれば、私も他の人を巻き込むだけです。そして、巻き込む相手がロキアス殿下だということをお忘れなきよう、お願いいたします」
そこまで言って立ち去ろうとしたけれど、言い忘れていたことがあったので付け加える。
「それから、ロキアス殿下にお話するのは、相手がエレイン様であっても同じです。あなたも私も王太子妃候補なんですから、王太子殿下に事実をお伝えするのも義務だと思います」
「ま、待って! 馬鹿なことをするのはやめなさい!」
「馬鹿なことではありません。あなたが始めたことでしょう。私は決められたルール内で競うつもりでした」
「待ちなさい! わたくしは何も関係ないわ!」
「関係ないのであれば、そんなに焦らなくてもよろしいかと思います」
にこりと微笑んでから、私は歩き始めた。
背後から叫ぶ声が聞こえてきたけれど、私は足を止めることも振り返ることもしなかった。
125
あなたにおすすめの小説
【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる
仙冬可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。
清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。
でも、違う見方をすれば合理的で革新的。
彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。
「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。
「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」
「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」
仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます
氷雨そら
恋愛
本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。
「君が番だ! 間違いない」
(番とは……!)
今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。
本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。
小説家になろう様にも投稿しています。
お転婆令嬢は、大好きな騎士様に本性を隠し通す
湊一桜
恋愛
侯爵令嬢クロエは、二度も婚約破棄をされた。彼女の男勝りで豪快な性格のせいである。
それに懲りたクロエは、普段は令嬢らしく振る舞い、夜には”白薔薇”という偽名のもと大暴れして、憂さ晴らしをしていた。
そんな彼女のもとに、兄が一人の騎士を連れてきた。
彼の名はルーク、別名”孤高の黒薔薇”。その冷たい振る舞いからそう呼ばれている。
だが実は、彼は女性が苦手であり、女性に話しかけられるとフリーズするため勘違いされていたのだ。
兄は、クロエとルークのこじらせっぷりに辟易し、二人に”恋愛の特訓”を持ちかける。
特訓を重ねるうちに、二人の距離は少しずつ近付いていく。だがクロエは、ルークに”好きな人”がいることを知ってしまった……
恋愛なんてこりごりなのに、恋をしてしまったお転婆令嬢と、実は優しくて一途な騎士が、思い悩んで幸せになっていくお話です。
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる