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3 夫の裏切り ②
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ディーラス公爵家の長女であるファルナ様は、トータムの親友である公爵令息の婚約者だ。友人のいない私にトータムが紹介してくれて、仲良くなってから二年近くになる。
彼女は私と同い年で、ゆるやかなウェーブのかかった濃い赤色の髪に同じ色の瞳を持つ、いかにも気の強そうに見える美人だ。
見た目は義母と同じタイプだが、中身はまったく違う。彼女ははっきり物を言うのは、曲がったことが大嫌いだということや、相手のことを思うからだ。
彼女とは、なかなか予約の取れないと噂のレストランの個室で待ち合わせをした。
というのも、彼女の父がこのレストランの所有者なので、営業日は必ず、自分たちが来たくなった時のために一室は確保してあるそうだ。
私とファルナ様は、挨拶を交わし再会を喜びあった。
その後は、白いテーブルクロスが敷かれた四角いテーブルに向かい合って腰を下ろす。
飲み物と前菜を運んできた給仕が出て行くと、ファルナ様は眉根を寄せて口を開く。
「はっきり言わせていただきますけど、あなたの夫、浮気していますわよ」
「……相手は義妹ですか?」
「まあ! 知っていたんですの?」
「気づかないほうがおかしいくらいの行動をしていますから」
わかってはいたけれど、自分以外の人から言われると、やはりダメージがきた。
私が俯いたからか、ファルナ様は早口で話し始める。
「どんな理由があるかはわかりませんが、義妹と浮気しても良いだなんてことはありえません! 問い詰めたらいかがです!?」
「怪しいと訴えても、妻が夫を信じないなんてありえないと言われるのです」
「ありえないのは夫のほうですわよ!」
ファルナ様は立ち上がって訴える。
「あなたがどういう判断をするかは自由ですが、私は友人のあなたに幸せになってほしいから遠慮なく言いますわよ! すぐに別れなさい! あなたの夫は最低なクズ野郎です! あなたの夫がいつもどこに行っているのか知っています!?」
「仕事だと聞いていますが……、義妹とデートしているのでしょう?」
「デートでも許せませんが、もっと酷いことですわ!」
「酷いこと?」
聞き返すと、怒りで興奮しているファルナ様は、肩で息をしながら確認してくる。
「あなたの夫と私の婚約者が仲が良いことは知っていますわよね」
「もちろんです」
ファルナ様の婚約者はジゼル公爵家の次男のアリム様だ。とても純粋な優しい人で、私にも良くしてくれてる。
「アリム様は気づかないうちに、あなたの夫の浮気に加担してしまっていたのです!」
「ど……どういうことですか?」
動揺する気持ちを必死に抑えて尋ねた。
「あなたのクズ夫は仕事場に行く途中に、一緒に付いてきていた義妹の体調が悪くなったから休ませてあげてほしいと言って、アリム様を頼り、公爵家に立ち寄っていたのです!」
「ま……まさか」
ファルナ様の怒り具合で、トータムが何をしたのか見当がついた。
「……友人の家を浮気をする場所に使っていたのですか?」
「そうです! しかも、一度や二度ではありません! さすがにおかしいと思ったアリム様が彼らのいる部屋に向かうと、おぞましい声と会話が聞こえてきたそうですわ!」
おぞましい声と会話。
きっとそれは、体を重ねている時のものなのだろう。
そう思った私は、目の前が真っ暗になった気がした。
夫と義妹の不貞行為。それだけでもショックなのに、浮気場所に公爵家を使っていただなんて――
彼女は私と同い年で、ゆるやかなウェーブのかかった濃い赤色の髪に同じ色の瞳を持つ、いかにも気の強そうに見える美人だ。
見た目は義母と同じタイプだが、中身はまったく違う。彼女ははっきり物を言うのは、曲がったことが大嫌いだということや、相手のことを思うからだ。
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というのも、彼女の父がこのレストランの所有者なので、営業日は必ず、自分たちが来たくなった時のために一室は確保してあるそうだ。
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「酷いこと?」
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「もちろんです」
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