4 / 44
4 夫の裏切り ③
ジゼル公爵家は、現当主と長男のラフリード様はとても厳しい人だが、公爵夫人と次男のアリム様は穏やかな性格だと知られている。
夫人とアリム様のおかげで、公爵家はバランスが取れているのだと、国王陛下がおっしゃっていたというのは有名な話だ。
トータムはアリム様が優しいから、浮気のことなど責めたりもしないし、誰にも話さないと思い込んだのでしょう。
でも、それは違う。
優しい人だからこそ、誰かを傷つけることになる浮気は許せないものだ。
知らなかったとはいえ、浮気に加担してしまったと思ったアリム様がファルナ様に相談して発覚したとのことだった。
「アリム様以外の公爵家の方は、そのことをご存知なのですか?」
「アリム様が気づいたくらいですから知らないわけがないと思いますわ」
「では……」
「近いうちにあなたにもジゼル公爵家から話がいくと思いますわ。先に私のほうからあなたは今まで詳しいことは知らなかったけれど、浮気については薄々気づいていたことを話しておいても良いかしら?」
「かまいません」
ジゼル公爵家を敵に回すだなんて、どうしたら良いの。
浮気だけでもありえないのに、浮気をする場所に公爵家を使っていたなんて信じられない。
……そうよ。浮気だけじゃない。体の関係まで持っていたなんて。
悲しい。
悔しい。
許せない。
ファルナ様の前だというのに、涙が止まらなくなった。
「申し訳……っ、ございませんっ。泣いたって意味がないのにっ……」
「あなたが謝ることじゃなくってよ! それに泣いてスッキリすることもありますわ! 今は泣けるだけ泣いてしまいなさい!」
「……ありがとうございます」
ハンカチを取り出して、ひたすら泣いたあと、ファルナ様に詫びようと顔を上げる。すると、彼女は私以上に怒っていた。
「私のお友達を傷つけるなんて許しませんわ! けちょんけちょんにしてやらないと気が済みません!」
けちょんけちょんにするなんて、初めて人の口から聞いた気がする。
そう思ったら、気が抜けて笑みがこぼれた。
「ありがとうございます。まずは夫に確認してみることにします。浮気を認めて平然としているようなら、離婚に向けて動きます」
「相手が謝ったからといってすぐに許してはいけませんわよ?」
「わかっています。私と離婚したくないのなら浮気はやめてくれるはずですが、そうじゃないのに離婚を認めない場合は証拠を集め、社会的制裁を与えるつもりです」
堂々と人の家に連れ込んでいるんだもの。きっと、他の場所でも浮気の証拠を残しているに違いないわ。
前菜を食べ終えたファルナ様が厳しい表情で話しかけてくる。
「エアリナさん。伝えておきますが、浮気をする人や浮気を肯定する人はされたほうに原因があると言うでしょう! ですが、自分を責めてはいけませんわよ! 多くの人は浮気や不貞行為をする前に別れるのです! それができない人たちが悪いのです!」
「浮気を正当化することや、私に改善を求めずに浮気することが良くないということですね?」
「そうです! もし、クズ夫があなたのことを責めるような発言をするならば、逃げるのではなく引くのです! そして、彼らには精神的に痛い目に遭ってもらいましょう」
にたりと笑うファルナ様に尋ねる。
「精神的に痛い目というのは、どういうものですか?」
「それは彼らの反応次第ですわ。それに、あなたが考えて実行しなければならないことです」
「私が……?」
「ええ。傷つけられたのはあなたでしょう? もちろん、相談にはのりますわよ」
ファルナ様に微笑まれ、私は深呼吸をする。
そうだ。
こんなことは人任せにするものじゃない。
「ファルナ様、ありがとうございます。自分にできる限りのことをしてみようと思います」
「その意気ですわ! きっと近いうちに、怖い人が訪ねてくるかと思います。彼はあなたの味方になってくれるでしょうから素直に頼るようにしてくださいな」
「わかりました」
怖い人って、ジゼル公爵かラフリード様のことよね。
公爵家に頼るのもどうかと思うけど、自分一人でどうにもならない時は頼らせてもらうことにしよう。
そう決めたあとは、これからのことについてファルナ様と話をしたのだった。
その日の夜、トータムとフララさんに浮気について問い詰めると、彼らは悪びれるどころか失笑した。
「浮気じゃないよ。たまたま出会って、アリムの家にお邪魔させてもらったんだ」
「やだぁ! もしかして妹に嫉妬しているんですかぁ? 心せまーい!」
トータムの執務室にあるソファに、彼と並んで座っているフララさんは、トータムの腕にしがみついて訴える。
「ね? 前にも言ったでしょう? わたし、ミアリナ様に嫌われているんです。お義姉様って呼ぼうとしたら、気安く呼ぶなって怒られてぇ」
「そんなことを言った覚えはないわ!」
否定すると、トータムは私を睨みつける。
「……ミアリナ、君は最低な女性だったんだね」
「言っていないって言っているでしょう!」
「フララが嘘をつくわけがないだろう! 君は見た目だけでなく心も醜かったんだな!」
そう叫ぶと、トータムはフララ様を連れて執務室から出て行く。
付き合い始めてから今まで、彼に怒鳴られたことはなかった。
彼の心の中に、私はもういないのだ。
その日の晩のトータムは、彼女の部屋から出てくることはなかった。
二人きりの部屋で彼らが何をしているかは、容易に想像がつく。
完全に私は馬鹿にされている。
このままでは終われない。離婚も絶対条件だけれど、舐められたままで終わりたくない!
次の日の朝から、私はトータムとフララさんの浮気の証拠を集め始めることにした。
夫人とアリム様のおかげで、公爵家はバランスが取れているのだと、国王陛下がおっしゃっていたというのは有名な話だ。
トータムはアリム様が優しいから、浮気のことなど責めたりもしないし、誰にも話さないと思い込んだのでしょう。
でも、それは違う。
優しい人だからこそ、誰かを傷つけることになる浮気は許せないものだ。
知らなかったとはいえ、浮気に加担してしまったと思ったアリム様がファルナ様に相談して発覚したとのことだった。
「アリム様以外の公爵家の方は、そのことをご存知なのですか?」
「アリム様が気づいたくらいですから知らないわけがないと思いますわ」
「では……」
「近いうちにあなたにもジゼル公爵家から話がいくと思いますわ。先に私のほうからあなたは今まで詳しいことは知らなかったけれど、浮気については薄々気づいていたことを話しておいても良いかしら?」
「かまいません」
ジゼル公爵家を敵に回すだなんて、どうしたら良いの。
浮気だけでもありえないのに、浮気をする場所に公爵家を使っていたなんて信じられない。
……そうよ。浮気だけじゃない。体の関係まで持っていたなんて。
悲しい。
悔しい。
許せない。
ファルナ様の前だというのに、涙が止まらなくなった。
「申し訳……っ、ございませんっ。泣いたって意味がないのにっ……」
「あなたが謝ることじゃなくってよ! それに泣いてスッキリすることもありますわ! 今は泣けるだけ泣いてしまいなさい!」
「……ありがとうございます」
ハンカチを取り出して、ひたすら泣いたあと、ファルナ様に詫びようと顔を上げる。すると、彼女は私以上に怒っていた。
「私のお友達を傷つけるなんて許しませんわ! けちょんけちょんにしてやらないと気が済みません!」
けちょんけちょんにするなんて、初めて人の口から聞いた気がする。
そう思ったら、気が抜けて笑みがこぼれた。
「ありがとうございます。まずは夫に確認してみることにします。浮気を認めて平然としているようなら、離婚に向けて動きます」
「相手が謝ったからといってすぐに許してはいけませんわよ?」
「わかっています。私と離婚したくないのなら浮気はやめてくれるはずですが、そうじゃないのに離婚を認めない場合は証拠を集め、社会的制裁を与えるつもりです」
堂々と人の家に連れ込んでいるんだもの。きっと、他の場所でも浮気の証拠を残しているに違いないわ。
前菜を食べ終えたファルナ様が厳しい表情で話しかけてくる。
「エアリナさん。伝えておきますが、浮気をする人や浮気を肯定する人はされたほうに原因があると言うでしょう! ですが、自分を責めてはいけませんわよ! 多くの人は浮気や不貞行為をする前に別れるのです! それができない人たちが悪いのです!」
「浮気を正当化することや、私に改善を求めずに浮気することが良くないということですね?」
「そうです! もし、クズ夫があなたのことを責めるような発言をするならば、逃げるのではなく引くのです! そして、彼らには精神的に痛い目に遭ってもらいましょう」
にたりと笑うファルナ様に尋ねる。
「精神的に痛い目というのは、どういうものですか?」
「それは彼らの反応次第ですわ。それに、あなたが考えて実行しなければならないことです」
「私が……?」
「ええ。傷つけられたのはあなたでしょう? もちろん、相談にはのりますわよ」
ファルナ様に微笑まれ、私は深呼吸をする。
そうだ。
こんなことは人任せにするものじゃない。
「ファルナ様、ありがとうございます。自分にできる限りのことをしてみようと思います」
「その意気ですわ! きっと近いうちに、怖い人が訪ねてくるかと思います。彼はあなたの味方になってくれるでしょうから素直に頼るようにしてくださいな」
「わかりました」
怖い人って、ジゼル公爵かラフリード様のことよね。
公爵家に頼るのもどうかと思うけど、自分一人でどうにもならない時は頼らせてもらうことにしよう。
そう決めたあとは、これからのことについてファルナ様と話をしたのだった。
その日の夜、トータムとフララさんに浮気について問い詰めると、彼らは悪びれるどころか失笑した。
「浮気じゃないよ。たまたま出会って、アリムの家にお邪魔させてもらったんだ」
「やだぁ! もしかして妹に嫉妬しているんですかぁ? 心せまーい!」
トータムの執務室にあるソファに、彼と並んで座っているフララさんは、トータムの腕にしがみついて訴える。
「ね? 前にも言ったでしょう? わたし、ミアリナ様に嫌われているんです。お義姉様って呼ぼうとしたら、気安く呼ぶなって怒られてぇ」
「そんなことを言った覚えはないわ!」
否定すると、トータムは私を睨みつける。
「……ミアリナ、君は最低な女性だったんだね」
「言っていないって言っているでしょう!」
「フララが嘘をつくわけがないだろう! 君は見た目だけでなく心も醜かったんだな!」
そう叫ぶと、トータムはフララ様を連れて執務室から出て行く。
付き合い始めてから今まで、彼に怒鳴られたことはなかった。
彼の心の中に、私はもういないのだ。
その日の晩のトータムは、彼女の部屋から出てくることはなかった。
二人きりの部屋で彼らが何をしているかは、容易に想像がつく。
完全に私は馬鹿にされている。
このままでは終われない。離婚も絶対条件だけれど、舐められたままで終わりたくない!
次の日の朝から、私はトータムとフララさんの浮気の証拠を集め始めることにした。
あなたにおすすめの小説
魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
真実の愛の取扱説明
ましろ
恋愛
「これは契約結婚だ。私には愛する人がいる。
君を抱く気はないし、子供を産むのも君ではない」
「あら、では私は美味しいとこ取りをしてよいということですのね?」
「は?」
真実の愛の為に契約結婚を持ち掛ける男と、そんな男の浪漫を打ち砕く女のお話。
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
・話のタイトルを変更しました。
幼馴染を溺愛する婚約者を懇切丁寧に説得してみた。
ましろ
恋愛
この度、婚約が決まりました。
100%政略。一度もお会いしたことはございませんが、社交界ではチラホラと噂有りの難物でございます。
曰く、幼馴染を溺愛しているとか。
それならばそのお二人で結婚したらいいのに、とは思いますが、決まったものは仕方がありません。
さて、どうしましょうか?
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
王子の婚約者は逃げた
ましろ
恋愛
王太子殿下の婚約者が逃亡した。
13歳で婚約し、順調に王太子妃教育も進み、あと半年で結婚するという時期になってのことだった。
「内密に頼む。少し不安になっただけだろう」
マクシミリアン王子は周囲をそう説得し、秘密裏にジュリエットの捜索を命じた。
彼女はなぜ逃げたのか?
それは───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
旦那様、離婚してくださいませ!
ましろ
恋愛
ローズが結婚して3年目の結婚記念日、旦那様が事故に遭い5年間の記憶を失ってしまったらしい。
まぁ、大変ですわね。でも利き手が無事でよかったわ!こちらにサインを。
離婚届?なぜ?!大慌てする旦那様。
今更何をいっているのかしら。そうね、記憶がないんだったわ。
夫婦関係は冷めきっていた。3歳年上のキリアンは婚約時代から無口で冷たかったが、結婚したら変わるはずと期待した。しかし、初夜に言われたのは「お前を抱くのは無理だ」の一言。理由を聞いても黙って部屋を出ていってしまった。
それでもいつかは打ち解けられると期待し、様々な努力をし続けたがまったく実を結ばなかった。
お義母様には跡継ぎはまだか、石女かと嫌味を言われ、社交会でも旦那様に冷たくされる可哀想な妻と面白可笑しく噂され蔑まれる日々。なぜ私はこんな扱いを受けなくてはいけないの?耐えに耐えて3年。やっと白い結婚が成立して離婚できる!と喜んでいたのに……
なんでもいいから旦那様、離婚してくださいませ!
婚約者様は大変お素敵でございます
ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。
あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。
それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた──
設定はゆるゆるご都合主義です。
【書籍化決定】アシュリーの願いごと
ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」
もしかして。そう思うことはありました。
でも、まさか本当だっただなんて。
「…それならもう我慢する必要は無いわね?」
嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。
すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。
愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。
「でも、もう変わらなくてはね」
この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。
だって。私には願いがあるのだから。
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻1/19、タグを2つ追加しました
✻1/27、短編から長編に変更しました
✻2/2、タグを変更しました