【完結】どうぞ他をあたってください

風見ゆうみ

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19  公爵令息の来訪 ②

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 ラフリード様はきょとんとした顔でトータムを見つめると、すぐに失笑した。
 爽やか青年がそんな態度はとらないと言いたいところだがやめておく。
 もうバレても良いと思っているんでしょうね。

「ど、どうして笑うんだ!? 失礼だろう!?」
 
 トータムが顔を真っ赤にして怒ると、ラフリード様は眼鏡を外して答える。

「失礼なのはそっちだろう」
「いくらジゼル公爵家からの使者だからって偉そうにするな!」
「これが俺のいつもの態度だよ」
「なんだと!?」
「うわあ! なんかイメージ違います! 目つきが悪くても素敵ですね!」

 怒るトータムを押し退けて、フララ様は部屋に入ってくると、ラフリード様を見て目を輝かせる。

「……目つきが悪い?」

 トータムはそう呟くと、ラフリード様を二度見し、口をぽかんと開けた。

 やっと気がついたみたいね。

「う……嘘だろ」
「何を思ったのか教えてくれ」

 ラフリード様がにやりと笑うと、トータムは額から汗を流しながら答える。

「ま……、まさか、あの、あなたは、ラフリード様、でしょうか」
「その通りだ。そういえばまだ挨拶をしていなかったな」
「申し訳ございません! わざわざ足をお運びいただきありがとうございます!」

 背筋をぴんと伸ばしてトータムは頭を下げると、不思議そうにしているフララさんに話しかける。

「フララ、彼は駄目だ」
「えぇ? どうして? 偉い人ならぜひお近づきになりたいわ」
「駄目だって言っているだろう!」
「えぇ! やだあ!」

 フララさんは駄々をこねて、トータムの腕を掴んで何度も揺さぶる。それを見たラフリード様が口を開く。

「仲が良いんだな。……そうか。うちの家を休憩所に使ってまで二人きりになりたいくらいの関係だものな」
「ご、誤解です! 体調の悪い妹を看病していただけです!」
「アリムが医者を呼ぼうとしたのに拒んだそうだが?」
「それはジゼル公爵家にご迷惑をおかけしたくないからです!」
 
 訴えるトータムに黙っていられなくなり、私は口を挟む。

「部屋をお借りする時点で迷惑をかけているわ。大体、何度もお邪魔するなんて信じられない。この家にもお抱えの医者がいるのよ。何度も体調不良になるわりに、医者に診てもらった気配はないし、どうしてあなたはフララさんに家にいるように言わなかったの」
「それは……」
 
 フララさんと浮気を始めた頃から、謎の出費が増えていたけれど、自粛するようになってからは嘘みたいに減っている。

 二人で出かけて買い物をして、ほしいものを買ってくれたお礼に、フララさんが体を差し出していたのではないかと思う。

 これも浮気の証拠として突きつけるつもりだが、やはり、言い逃れできない証拠がほしい。

 ラフリード様が立ち上がって尋ねる。

「俺の正体がわかったから、もう話は終わりでいいか?」
「あ……、は、はい。申し訳ございません」

 トータムは気が抜けたような顔をして、ペコペコと頭を下げる。

 お咎めなしだと思ってホッとしているみたい。でも、気を抜くのはまだ早かった。

「あの、ラフリード様。よろしければ二人きりでお話したいのですが……」
 
 フララさんの度胸は半端なく、公爵令息であるラフリード様をロックオンしたようだった。

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