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41 どうぞ他をあたってください ①
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現在時点でわかっていることなどを確認して整理し、準備をしている間に十日以上が過ぎた。トータムたちとの約束の日は、雨は降っていないが厚い雲が空を覆っていた。
待ち合わせの場所は今住んでいる場所から半日ほどで行ける場所で、ラフリード様と一緒に馬車で向かっているところだ。
トータムにラフリード様も一緒に話を聞くと伝えると『そのほうが助かる』という返事がきたので、もしかしたらすでに命の危険を感じているのかもしれない。
ビレディ侯爵家の使用人は信用できない人ばかりだったが、中には公平な動きをできる人もいた。その人たちにジゼル公爵家が接近して確認を取ったところ、やはりウララ様はおじ様の時のようにトータムを弱らせようとしているのだとわかった。
「元侯爵夫人は前回の件で味を占めたみたいだな」
「そんなことをしてバレないと思っているのでしょうか」
「馬鹿だから思っているんじゃないか? きっと彼女はビレディ侯爵のことも賢くないと思っているだろうからな」
「王妃陛下に忠告されたのですから、ビレディ侯爵も警戒しているはずなのですが、そうではないのでしょうか」
「警戒しているから、君に助けを求めたんだろう」
「私に助けを求められても困るんですけど」
一体、彼は何を考えているのかしら。王妃陛下に自分を助けてもらえるように私に頼んでもらうつもりとか?
「彼はあなたが自分に恩があると思い込んでいる。心当たりはあるか?」
「……そうですね。昔、彼がいたから学園に通えていたということでしょうか」
「そうだったのか?」
問われて、少し悩んでから答える。
「嘘ではないことは確かです。でも、今となっては頑張ったのは自分だなとも思い始めてきました」
「……そうだな。支えられていたのかもしれないが、頑張ったのはミアリナ本人だ」
「ありがとうございます」
優しく微笑んでくれたラフリード様に、私も笑みを返す。
ラフリード様とはやり取りをしているうちに、呼び方についての話もして、ミアリナと呼んでもらうことにした。ラフリード様が言うには、ファルナ様以外の女性を名前で呼ぶことは初めてらしい。
だからか、最初は照れていたのだけど、今はそうでもないみたいだ。
「これからも負けないように頑張ろうと思います」
「まずは目の前のことから片付けていけばいい」
「……そうですね」
トータムはまだしも、ウララさんは確実に罪を逃れようとするでしょう。でも、そうはさせない。人を巻き込んだり、使ったりするということは、それだけ秘密が漏れるリスクが増えるということなのだから――。
******
トータムたちと待ち合わせた場所は、高級宿の一室で、予約を取るのに苦労すると言われている部屋だった。
ウララさんたちはトータムと一緒に来ることを最初は嫌がったが、この部屋に泊まれると聞くと、喜んで行くと態度を変えた。
まずはトータムと話をすることにした私たちは、ウララさんたちにはベッドルームに監視付きで待っていてもらうことにした。
「ミアリナ……、本当に悪かった」
久しぶりに会ったトータムは心労のせいなのか、かなり痩せ細っていた。目はくぼみ頬はこけて、まるで別人のようにも見える。
まさか、ウララさんが毒の量を多くしているとか? でも、毒を入手していることはわかっているから、そのまま食べさせているはずがない。
隣に座るラフリード様を見ると、彼は私の疑問に気づいてくれたのか口を開く。
「たぶん精神的なものだ」
「そうですか」
頷くと、私たちの様子を見たトータムは、私を睨みつけてきた。
「僕がこんな思いをしているのに、君は幸せそうだな」
「幸せではないわ。あなたが離婚してくれたら別だけど」
「離婚なんてしたら僕は終わりだ!」
トータムは立ち上がって訴える。
「ミアリナ……、僕はこのままでは精神的に殺されてしまう。毎日毎日、フララたちは贅沢をして、侯爵家の財産を減らしていく……」
「あなたのお父様のものをウララさんが売った時点で、彼女がお金に汚いことに気づくべきだったでしょう」
「ああ、そうだよ! だけど、僕は悪くない! 被害者だ!」
トータムはボロボロと涙を流しながら、私を見つめる。
「頼むよ、ミアリナ。僕を助けてくれ。君なら僕を助けられる」
「助けてほしいことはわかったわ。そのかわり、私と別れてください。その条件をのんでくれるなら、あなたを助けるわ」
どうせ、ウララさんたちはこの後の話し合いで潰すつもりだ。だから、結果的にトータムを助けることになる。
それなら、離婚の条件にしておいたら、ちょうど良いわよね。
待ち合わせの場所は今住んでいる場所から半日ほどで行ける場所で、ラフリード様と一緒に馬車で向かっているところだ。
トータムにラフリード様も一緒に話を聞くと伝えると『そのほうが助かる』という返事がきたので、もしかしたらすでに命の危険を感じているのかもしれない。
ビレディ侯爵家の使用人は信用できない人ばかりだったが、中には公平な動きをできる人もいた。その人たちにジゼル公爵家が接近して確認を取ったところ、やはりウララ様はおじ様の時のようにトータムを弱らせようとしているのだとわかった。
「元侯爵夫人は前回の件で味を占めたみたいだな」
「そんなことをしてバレないと思っているのでしょうか」
「馬鹿だから思っているんじゃないか? きっと彼女はビレディ侯爵のことも賢くないと思っているだろうからな」
「王妃陛下に忠告されたのですから、ビレディ侯爵も警戒しているはずなのですが、そうではないのでしょうか」
「警戒しているから、君に助けを求めたんだろう」
「私に助けを求められても困るんですけど」
一体、彼は何を考えているのかしら。王妃陛下に自分を助けてもらえるように私に頼んでもらうつもりとか?
「彼はあなたが自分に恩があると思い込んでいる。心当たりはあるか?」
「……そうですね。昔、彼がいたから学園に通えていたということでしょうか」
「そうだったのか?」
問われて、少し悩んでから答える。
「嘘ではないことは確かです。でも、今となっては頑張ったのは自分だなとも思い始めてきました」
「……そうだな。支えられていたのかもしれないが、頑張ったのはミアリナ本人だ」
「ありがとうございます」
優しく微笑んでくれたラフリード様に、私も笑みを返す。
ラフリード様とはやり取りをしているうちに、呼び方についての話もして、ミアリナと呼んでもらうことにした。ラフリード様が言うには、ファルナ様以外の女性を名前で呼ぶことは初めてらしい。
だからか、最初は照れていたのだけど、今はそうでもないみたいだ。
「これからも負けないように頑張ろうと思います」
「まずは目の前のことから片付けていけばいい」
「……そうですね」
トータムはまだしも、ウララさんは確実に罪を逃れようとするでしょう。でも、そうはさせない。人を巻き込んだり、使ったりするということは、それだけ秘密が漏れるリスクが増えるということなのだから――。
******
トータムたちと待ち合わせた場所は、高級宿の一室で、予約を取るのに苦労すると言われている部屋だった。
ウララさんたちはトータムと一緒に来ることを最初は嫌がったが、この部屋に泊まれると聞くと、喜んで行くと態度を変えた。
まずはトータムと話をすることにした私たちは、ウララさんたちにはベッドルームに監視付きで待っていてもらうことにした。
「ミアリナ……、本当に悪かった」
久しぶりに会ったトータムは心労のせいなのか、かなり痩せ細っていた。目はくぼみ頬はこけて、まるで別人のようにも見える。
まさか、ウララさんが毒の量を多くしているとか? でも、毒を入手していることはわかっているから、そのまま食べさせているはずがない。
隣に座るラフリード様を見ると、彼は私の疑問に気づいてくれたのか口を開く。
「たぶん精神的なものだ」
「そうですか」
頷くと、私たちの様子を見たトータムは、私を睨みつけてきた。
「僕がこんな思いをしているのに、君は幸せそうだな」
「幸せではないわ。あなたが離婚してくれたら別だけど」
「離婚なんてしたら僕は終わりだ!」
トータムは立ち上がって訴える。
「ミアリナ……、僕はこのままでは精神的に殺されてしまう。毎日毎日、フララたちは贅沢をして、侯爵家の財産を減らしていく……」
「あなたのお父様のものをウララさんが売った時点で、彼女がお金に汚いことに気づくべきだったでしょう」
「ああ、そうだよ! だけど、僕は悪くない! 被害者だ!」
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「頼むよ、ミアリナ。僕を助けてくれ。君なら僕を助けられる」
「助けてほしいことはわかったわ。そのかわり、私と別れてください。その条件をのんでくれるなら、あなたを助けるわ」
どうせ、ウララさんたちはこの後の話し合いで潰すつもりだ。だから、結果的にトータムを助けることになる。
それなら、離婚の条件にしておいたら、ちょうど良いわよね。
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