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8 集まる動物たち
「セフィラ、私は別にあなたに聞いたのではないんだけれど?」
「どうして君が返事をするんだ?」
私とヒース殿下が同時にセフィラに尋ねると、彼女はなぜか必死になって言う。
「だって、ミーアは国外追放を言い渡されるような女性じゃないの! そんな人がキブズドーツの王太子殿下に誘われるだなんておかしいわ! ミーアは苦しまないといけないのに!」
「俺が誰を誘おうが勝手だろう。それに相手が国外追放されるというのなら尚更だ。逆に、君がどうこう言うものじゃないと思うが? あと、どうして彼女が苦しまないといけないんだ?」
「ミーアが私とオーランド殿下の仲を邪魔したからです!」
「オーランドはミーア嬢の婚約者だ。自分の婚約者に近付く女性に対して邪魔をする行為を取ったとしてもおかしいことじゃないんじゃないか?」
「そ、それは……」
相手は他国であれ王太子殿下なのだから、これ以上しつこく言ってはいけないと思ったのか、セフィラはオーランド殿下に助けを求めるかのように、殿下の胸に頬を寄せた。
そんな彼女を片手で抱きしめて、オーランド殿下は叫ぶ。
「ヒース、ミーアは罪人なんだぞ! 楽にさせる必要はないだろう!」
罪人という言葉に癪に障り、私は冷たい眼差しをオーランド殿下に向けて尋ねる。
「オーランド殿下、お聞きしますが、私は何の罪になるのでしょうか?」
「え? それは、そのヒースと浮気を……」
「私がヒース殿下と浮気をしていたとおっしゃるのですね? その言葉に間違いはありませんか?」
慌てた様子のオーランド殿下に冷たく尋ねると、殿下は視線を彷徨わせたあとに小さく頷く。
「そ、そうだ」
「事実とは異なりますが、おっしゃりたいことは理解できました。では、私がそのことを否定した場合、国際問題に発展する可能性があるということは理解しておられますでしょうか?」
「どういうことなんだ? どうして国際問題に発展するだなんて……」
「オーランド殿下のおっしゃられていることは、オーランド殿下という婚約者がいる私とヒース殿下が密かに会っていたとおっしゃりたいのでしょう?」
尋ね返すと、オーランド殿下も私の言おうとしていることに気が付いたらしく、驚いたように口を大きく開けた。
同じような話をさっきもしていたはずなのに、どうして今頃気付くのかしら。
「婚約披露パーティーに来ているのに、主役と密会だなんておかしいだろ。もし、二人で話をしていたとしても何か理由があるはずだ」
ヒース殿下はそう言ってから、私に視線を送ってきた。
どうしてこちらを見てこられたのかと思ったけれど、オトシロちゃんのことを思い出す。
あの時、一緒にいるところを誰かに見られていたら誤解されている可能性もあるので、言われる前に伝えておく。
「先程、王妃陛下にはお話しましたが、ヒース殿下と私はパーティー会場の外の中庭でお会いしています。ですが、それは浮気をしているオーランド殿下とセフィラがヒース殿下の愛鳥に怪我をさせたからです。元々は二人が逢引していて、鳥を傷付けたんです 私は鳥の悲鳴で駆けつけて回復魔法をかけ、その時にヒース殿下にお会いしたのです」
「俺の鳥を助けてもらったんだから礼を言うのは当たり前だろう」
ヒース殿下はオーランド殿下とセフィラを睨みつけながら、声を一段と低くして言葉を続ける。
「思い出したら腹が立ってきた。戦争するのは国民を巻き込むのでできればしたくないが、王族だけでの戦いならいつでも受けるぞ。何なら今からやってもいいしな」
好戦的なヒース殿下にオーランド殿下は怯んだのか、首を横に振る。
「い、いや、それは」
「良かろう! では、戦おうではないか」
ここは年長者であり、ことを納めなければいけない立場である国王陛下が喧嘩を買ってしまった。
「何を考えていらっしゃるの?」
「本当にね」
思わず呟いた私の言葉に王妃陛下が呆れた顔で頷かれたあと、ヒース殿下に尋ねる。
「あなたは本気でやるつもりなのかしら?」
「馬鹿にされたままではいられません。一応、国の代表で来ていますので。ただ、国民は関係ありません。このままだと本当に国際問題になり、国と国との戦いになります。それは避けたいと思います」
「そうね。こんなバカバカしいことに国民を巻き込むなんてしてはいけないことよ」
王妃陛下は納得するように頷かれた。
王族同士だけで戦うにしても、ヒース殿下はこの場では一人だし、コロール王国側が王妃陛下を含めて三人もいる。
本当に戦うつもりなのかはわからないし、そうなった場合に役に立てるかはわからないけれど、私も参戦させてもらうことにする。
「ヒース殿下、私は国外追放の身ですので、もう公爵令嬢ではありません。私怨もありますので援護させていただいてもよろしいでしょうか」
「怪我をしないのなら」
「したとしても治せます。それに、どさくさ紛れにでも一発は殴らせていただかないと気が済みません」
「代わりに殴るが?」
「自分で殴らなければスッキリしません」
「……任せた」
「光栄ですわ」
私とヒース殿下の話がつくと同時に、国王陛下が王妃陛下を呼ぶ。
「おい、エトワ。お前はこっちに来るんだ」
「嫌ですわ」
「い、嫌だと!? 何をワガママなことを言っているんだ!」
「ワガママで済ますおつもりですか? ああ、本当に腹が立ってきましたわ」
王妃陛下は一度下を向き、大きく息を吐いてから顔を上げられた。
何かが吹っ切れたような強い決意を持った目で、王妃陛下は口を開く。
「陛下やオーランドたちの言っていることは、ミーアとヒース殿下が浮気をしていて、それをオーランドとそこにいる女性に見られた。ここまでは合っておりますわね?」
「そ、そうだ」
代表して陛下が頷く。
「見られてしまったから、ミーアたちはオーランドたちを殺そうとしたと言いたいんですわね?」
「そうです、母上!」
オーランド殿下が大きく頷くと、王妃陛下は眉を落とす。
「オーランド、あなたは私にとって可愛い子だけれど、もう一緒にいられないわ」
「ど、どういうことです!?」
「陛下、オーランドとそこの娘を結婚させるおつもりですか?」
オーランド殿下の問いかけには答えずに、王妃陛下が今度は国王陛下に質問された。
「もちろんだ。オーランドはこの娘の純血を……」
そこまで言われないと気が付かないのですか?
心の中で問いかけて、大きくため息を吐く。
同時にヒース殿下、王妃陛下、お母様も同じようにため息を吐いていた。
「あ、その、それはきっと、そうだ。浮気を見る前に、その、だな」
しどろもどろになる国王陛下を呆れた顔で王妃陛下は見つめる。
「どういうことです? 彼女の純血を奪いながら、ヒース殿下とミーアの密会を見ていたとでも?」
「う、うるさい! エトワ、細かいことは良い! 早くこっちに来るんだ!」
「嫌だと言っていますでしょう!」
王妃陛下が拒否すると、国王陛下は逆上してヒース殿下に当たり始める。
「貴様が私のエトワを誘惑したんだな!? 許せん! この糞野郎が!」
「そうだぞ、ヒース! お前のような厄介者はこの世から消えてなくなればいい!」
オーランド殿下と国王陛下が臨戦態勢をとったので、私も構えようとしたけれど、ヒース殿下に手で制される。
「どうかされましたか?」
「防御魔法を頼めるか?」
「それは、大丈夫ですが」
「彼らの後ろを見てくれ」
ヒース殿下は前を見据えたまま私に頼んでくる。
そのため、私もヒース殿下の視線の先を追うと、驚きで声が出そうになってしまった。
オーランド殿下たちの後ろには数えきれないくらい、たくさんの動物たちがいた。
小動物だけではなく、明らかに肉食動物だと思われる動物もいる。
「ど、どうやって城の敷地内に……?」
「付いていくとうるさいから、何台かの荷馬車に乗せて城に連れてきた。馬車の中で待たせていたんだが、どうやら、オトシロたちが知らせたらしい」
オトシロちゃんたちが止まっているはずの木を見ると「呼んだ?」と言わんばかりに、オトシロちゃんとメトシロちゃんが飛んできて、私の肩に止まった。
「オトシロちゃんたちが呼んできたの?」
「ピイィー!」
「ピィッ」
二匹とも、えっへんといわんばかりに胸を張った。
可愛い。
……と、そんなことを言っている場合ではないわね。
「おい! 何なんだ。どうした、エトワ。どうして笑うんだ」
動物たちが集まっていることに、私の家族は驚きで固まってしまっていたけれど、王妃陛下は優しい表情でになり、ころころと笑ってからヒース殿下に尋ねる。
「オーランドの後ろにいる可愛いのか、奇妙なのかわからない動物は何かしら?」
「カンガルーのガルオです」
「カンガルー? あまり聞いたことはないわね。息子が悪いのは確かだけれど、さすがに殺したりはしないわよね?」
「もちろんです」
ヒース殿下が王妃陛下の質問に答えたと同時に、カンガルーという二本足で立っている大きな動物はぴょんと飛び上がったかと思うと、オーランド殿下の腰辺りに前蹴りを放った。
「どうして君が返事をするんだ?」
私とヒース殿下が同時にセフィラに尋ねると、彼女はなぜか必死になって言う。
「だって、ミーアは国外追放を言い渡されるような女性じゃないの! そんな人がキブズドーツの王太子殿下に誘われるだなんておかしいわ! ミーアは苦しまないといけないのに!」
「俺が誰を誘おうが勝手だろう。それに相手が国外追放されるというのなら尚更だ。逆に、君がどうこう言うものじゃないと思うが? あと、どうして彼女が苦しまないといけないんだ?」
「ミーアが私とオーランド殿下の仲を邪魔したからです!」
「オーランドはミーア嬢の婚約者だ。自分の婚約者に近付く女性に対して邪魔をする行為を取ったとしてもおかしいことじゃないんじゃないか?」
「そ、それは……」
相手は他国であれ王太子殿下なのだから、これ以上しつこく言ってはいけないと思ったのか、セフィラはオーランド殿下に助けを求めるかのように、殿下の胸に頬を寄せた。
そんな彼女を片手で抱きしめて、オーランド殿下は叫ぶ。
「ヒース、ミーアは罪人なんだぞ! 楽にさせる必要はないだろう!」
罪人という言葉に癪に障り、私は冷たい眼差しをオーランド殿下に向けて尋ねる。
「オーランド殿下、お聞きしますが、私は何の罪になるのでしょうか?」
「え? それは、そのヒースと浮気を……」
「私がヒース殿下と浮気をしていたとおっしゃるのですね? その言葉に間違いはありませんか?」
慌てた様子のオーランド殿下に冷たく尋ねると、殿下は視線を彷徨わせたあとに小さく頷く。
「そ、そうだ」
「事実とは異なりますが、おっしゃりたいことは理解できました。では、私がそのことを否定した場合、国際問題に発展する可能性があるということは理解しておられますでしょうか?」
「どういうことなんだ? どうして国際問題に発展するだなんて……」
「オーランド殿下のおっしゃられていることは、オーランド殿下という婚約者がいる私とヒース殿下が密かに会っていたとおっしゃりたいのでしょう?」
尋ね返すと、オーランド殿下も私の言おうとしていることに気が付いたらしく、驚いたように口を大きく開けた。
同じような話をさっきもしていたはずなのに、どうして今頃気付くのかしら。
「婚約披露パーティーに来ているのに、主役と密会だなんておかしいだろ。もし、二人で話をしていたとしても何か理由があるはずだ」
ヒース殿下はそう言ってから、私に視線を送ってきた。
どうしてこちらを見てこられたのかと思ったけれど、オトシロちゃんのことを思い出す。
あの時、一緒にいるところを誰かに見られていたら誤解されている可能性もあるので、言われる前に伝えておく。
「先程、王妃陛下にはお話しましたが、ヒース殿下と私はパーティー会場の外の中庭でお会いしています。ですが、それは浮気をしているオーランド殿下とセフィラがヒース殿下の愛鳥に怪我をさせたからです。元々は二人が逢引していて、鳥を傷付けたんです 私は鳥の悲鳴で駆けつけて回復魔法をかけ、その時にヒース殿下にお会いしたのです」
「俺の鳥を助けてもらったんだから礼を言うのは当たり前だろう」
ヒース殿下はオーランド殿下とセフィラを睨みつけながら、声を一段と低くして言葉を続ける。
「思い出したら腹が立ってきた。戦争するのは国民を巻き込むのでできればしたくないが、王族だけでの戦いならいつでも受けるぞ。何なら今からやってもいいしな」
好戦的なヒース殿下にオーランド殿下は怯んだのか、首を横に振る。
「い、いや、それは」
「良かろう! では、戦おうではないか」
ここは年長者であり、ことを納めなければいけない立場である国王陛下が喧嘩を買ってしまった。
「何を考えていらっしゃるの?」
「本当にね」
思わず呟いた私の言葉に王妃陛下が呆れた顔で頷かれたあと、ヒース殿下に尋ねる。
「あなたは本気でやるつもりなのかしら?」
「馬鹿にされたままではいられません。一応、国の代表で来ていますので。ただ、国民は関係ありません。このままだと本当に国際問題になり、国と国との戦いになります。それは避けたいと思います」
「そうね。こんなバカバカしいことに国民を巻き込むなんてしてはいけないことよ」
王妃陛下は納得するように頷かれた。
王族同士だけで戦うにしても、ヒース殿下はこの場では一人だし、コロール王国側が王妃陛下を含めて三人もいる。
本当に戦うつもりなのかはわからないし、そうなった場合に役に立てるかはわからないけれど、私も参戦させてもらうことにする。
「ヒース殿下、私は国外追放の身ですので、もう公爵令嬢ではありません。私怨もありますので援護させていただいてもよろしいでしょうか」
「怪我をしないのなら」
「したとしても治せます。それに、どさくさ紛れにでも一発は殴らせていただかないと気が済みません」
「代わりに殴るが?」
「自分で殴らなければスッキリしません」
「……任せた」
「光栄ですわ」
私とヒース殿下の話がつくと同時に、国王陛下が王妃陛下を呼ぶ。
「おい、エトワ。お前はこっちに来るんだ」
「嫌ですわ」
「い、嫌だと!? 何をワガママなことを言っているんだ!」
「ワガママで済ますおつもりですか? ああ、本当に腹が立ってきましたわ」
王妃陛下は一度下を向き、大きく息を吐いてから顔を上げられた。
何かが吹っ切れたような強い決意を持った目で、王妃陛下は口を開く。
「陛下やオーランドたちの言っていることは、ミーアとヒース殿下が浮気をしていて、それをオーランドとそこにいる女性に見られた。ここまでは合っておりますわね?」
「そ、そうだ」
代表して陛下が頷く。
「見られてしまったから、ミーアたちはオーランドたちを殺そうとしたと言いたいんですわね?」
「そうです、母上!」
オーランド殿下が大きく頷くと、王妃陛下は眉を落とす。
「オーランド、あなたは私にとって可愛い子だけれど、もう一緒にいられないわ」
「ど、どういうことです!?」
「陛下、オーランドとそこの娘を結婚させるおつもりですか?」
オーランド殿下の問いかけには答えずに、王妃陛下が今度は国王陛下に質問された。
「もちろんだ。オーランドはこの娘の純血を……」
そこまで言われないと気が付かないのですか?
心の中で問いかけて、大きくため息を吐く。
同時にヒース殿下、王妃陛下、お母様も同じようにため息を吐いていた。
「あ、その、それはきっと、そうだ。浮気を見る前に、その、だな」
しどろもどろになる国王陛下を呆れた顔で王妃陛下は見つめる。
「どういうことです? 彼女の純血を奪いながら、ヒース殿下とミーアの密会を見ていたとでも?」
「う、うるさい! エトワ、細かいことは良い! 早くこっちに来るんだ!」
「嫌だと言っていますでしょう!」
王妃陛下が拒否すると、国王陛下は逆上してヒース殿下に当たり始める。
「貴様が私のエトワを誘惑したんだな!? 許せん! この糞野郎が!」
「そうだぞ、ヒース! お前のような厄介者はこの世から消えてなくなればいい!」
オーランド殿下と国王陛下が臨戦態勢をとったので、私も構えようとしたけれど、ヒース殿下に手で制される。
「どうかされましたか?」
「防御魔法を頼めるか?」
「それは、大丈夫ですが」
「彼らの後ろを見てくれ」
ヒース殿下は前を見据えたまま私に頼んでくる。
そのため、私もヒース殿下の視線の先を追うと、驚きで声が出そうになってしまった。
オーランド殿下たちの後ろには数えきれないくらい、たくさんの動物たちがいた。
小動物だけではなく、明らかに肉食動物だと思われる動物もいる。
「ど、どうやって城の敷地内に……?」
「付いていくとうるさいから、何台かの荷馬車に乗せて城に連れてきた。馬車の中で待たせていたんだが、どうやら、オトシロたちが知らせたらしい」
オトシロちゃんたちが止まっているはずの木を見ると「呼んだ?」と言わんばかりに、オトシロちゃんとメトシロちゃんが飛んできて、私の肩に止まった。
「オトシロちゃんたちが呼んできたの?」
「ピイィー!」
「ピィッ」
二匹とも、えっへんといわんばかりに胸を張った。
可愛い。
……と、そんなことを言っている場合ではないわね。
「おい! 何なんだ。どうした、エトワ。どうして笑うんだ」
動物たちが集まっていることに、私の家族は驚きで固まってしまっていたけれど、王妃陛下は優しい表情でになり、ころころと笑ってからヒース殿下に尋ねる。
「オーランドの後ろにいる可愛いのか、奇妙なのかわからない動物は何かしら?」
「カンガルーのガルオです」
「カンガルー? あまり聞いたことはないわね。息子が悪いのは確かだけれど、さすがに殺したりはしないわよね?」
「もちろんです」
ヒース殿下が王妃陛下の質問に答えたと同時に、カンガルーという二本足で立っている大きな動物はぴょんと飛び上がったかと思うと、オーランド殿下の腰辺りに前蹴りを放った。
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