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30 フェルナンディ家が終わるきっかけ
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放課後、私が教室から出ようとすると、担任の先生から呼び止められた。
「ミゼライト、ちょっといいかな」
「何でしょうか」
「実は……」
先生は周囲を見回し、他の生徒が近くにいないことを確認してから、小声で話しかけてくる。
「守衛から連絡があったんだが、昼休みにガラの悪そうな連中が君を訪ねて来ていたらしいんだ」
「……私をですか」
フェルナンディ卿のことを思い出して眉根を寄せる。
「ああ。噂になっているから、ミゼライトも知ってるかもしれないが、Eクラスのフェルナンディの家はとある人たちに追われているらしいんだよ。その関係みたいだな」
「そうなんですか。でも、どうして、その人たちが私を訪ねてくるんでしょうか」
「それがフェルナンディ子爵がミゼライトに頼めば、彼女がお金を払ってくれると言ったらしい。ほら、お前はミーグスと付き合っているんだろう?」
「……はい」
先生が言いにくそうにしながらも話を続ける。
「公爵令息の彼女なら手っ取り早く、お金を回収できると思ったんだろう。フェルナンディの元婚約者である君を探しているらしい」
「元婚約者でしかないのに、私にフェルナンディの借金を返す筋合いはありません!」
「それは普通の人間の思考だ。残念ながら、彼らは取れるところから取れればいいんだよ。正規の金貸し以外から借りているから、こんなことになる」
「そんな……」
「君を責めているわけじゃない。請求されても君が払う筋合いはないが、声を掛けようとされていることは確かだ。学園周りをウロウロしている奴らについては、学園側から警察に連絡を入れている。警察の一部が彼らと繋がっている可能性もあるから、そうなると対応は遅くなるだろう。だから学園の敷地内から外に出ないほうがいいだろう」
先生の言葉に返す言葉が出てこなくて、黙って頷いた。
「君の借金じゃないから、そのうち諦めるだろう。少しの辛抱だ」
去っていく先生の背中を見て、鼻がツンと痛くなるのを感じた。
人を殺してまでお金を奪う人たちが諦めるわけがない。
このままじゃ危険でバイトにも行けない。
行けたとしても、迷惑をかけてしまう。
私は関係ないのに、どうして私に借金を払わせようとするのよ。
ミーグスと付き合っているフリをしてるから、お金があると思われてるのはわかるけど、フェルナンディ子爵はいつまで私を苦しめるの。
涙をこらえて鞄を取りに自分の席に戻ろうとして気が付いた。
誰もいないと思っていた教室内に、まだ人がいた。
しかも、ミーグスだ。
ミーグスは自分の席に座ったまま、私を見つめていた。
「どうして帰ってないのよ」
「君を待ってた」
「待たなくていいのに」
「待ってて良かった」
ミーグスは立ち上がり、私のカバンを持って教壇の横にいる私のところにやって来た。
どうしてこんな時にミーグスと2人きりなのよ。
「僕のせい?」
「ミーグスのせいじゃない!」
「じゃあ、君にそんな顔させたのは誰のせい?」
先生の話は聞こえていなかったようで、そう尋ねてくるミーグスの大きな手が私の頬に触れた。
優しくしないでほしい。
私は断ったんだから、そんな資格はないのよ。
私はミーグスの手を自分の頬から離して言う。
「何でもない。もう帰るから」
「何でもなくない。フェルナンディが原因?」
「それ以外に何かある!?」
「消そうか?」
「……え!?」
「冗談だよ」
絶句した私を見たミーグスは苦笑してから話を続ける。
「そんなことをさせたくないなら、ちゃんと教えてよ」
「……教えなかったら、物騒なことをするつもりなの?」
「君を苦しめるならね」
「何で今までそんな素振りを見せなかったのに、いきなり優しくなるのよ!?」
「ちゃんと説明したつもりだったけど、もう一度言おうか?」
「……ごめん。八つ当たりした」
素直に謝ると、ミーグスは私の頭を優しく撫でる。
「悪いと思うなら、何度も言うけどちゃんと教えて」
「ミーグスに言ってもしょうがないじゃない」
「君をオトすって言ったでしょ。出来ることなら何でもやるよ。両親からも許可を得たし」
「なんですって!?」
「母上はちょっと渋ってたけどね。母上も君が僕にされているのと同じで父上に追われたみたいだから、気持ちはわかるし本当に嫌なら、相談に乗るって言ってたよ」
そう言ったあと、ミーグスは微笑む。
「まあ、成功例がすぐ近くにあるから、余計に諦められないんだけど」
「ミーグス、わかってると思うけど、私、そういうのに免疫がないのよ」
「知ってる。だから、わざとだよ」
「ムカつく」
「何も思われないよりはいい。その時は僕のことを考えてるんだろうし」
「この性悪公爵令息!」
「それ、僕を喜ばせるだけだけど」
悪口を言われて喜ぶってどうなの?
眉根を寄せてミーグスを見上げると、彼は口を開く。
「僕の母上は父上と喧嘩したら、この性悪公爵! って叫んでるんだけど、令息時代は、この性悪公爵令息! って叫んでたみたいだから」
「……あなたがお父様似なのはわかったわ。でも、女性の趣味は似ていないんじゃない?」
「そうかな。僕は女性の好みも父上と似てると思うよ」
観念した私は、とりあえず先生から先程、話をされた内容をミーグスに話したのだった。
「ミゼライト、ちょっといいかな」
「何でしょうか」
「実は……」
先生は周囲を見回し、他の生徒が近くにいないことを確認してから、小声で話しかけてくる。
「守衛から連絡があったんだが、昼休みにガラの悪そうな連中が君を訪ねて来ていたらしいんだ」
「……私をですか」
フェルナンディ卿のことを思い出して眉根を寄せる。
「ああ。噂になっているから、ミゼライトも知ってるかもしれないが、Eクラスのフェルナンディの家はとある人たちに追われているらしいんだよ。その関係みたいだな」
「そうなんですか。でも、どうして、その人たちが私を訪ねてくるんでしょうか」
「それがフェルナンディ子爵がミゼライトに頼めば、彼女がお金を払ってくれると言ったらしい。ほら、お前はミーグスと付き合っているんだろう?」
「……はい」
先生が言いにくそうにしながらも話を続ける。
「公爵令息の彼女なら手っ取り早く、お金を回収できると思ったんだろう。フェルナンディの元婚約者である君を探しているらしい」
「元婚約者でしかないのに、私にフェルナンディの借金を返す筋合いはありません!」
「それは普通の人間の思考だ。残念ながら、彼らは取れるところから取れればいいんだよ。正規の金貸し以外から借りているから、こんなことになる」
「そんな……」
「君を責めているわけじゃない。請求されても君が払う筋合いはないが、声を掛けようとされていることは確かだ。学園周りをウロウロしている奴らについては、学園側から警察に連絡を入れている。警察の一部が彼らと繋がっている可能性もあるから、そうなると対応は遅くなるだろう。だから学園の敷地内から外に出ないほうがいいだろう」
先生の言葉に返す言葉が出てこなくて、黙って頷いた。
「君の借金じゃないから、そのうち諦めるだろう。少しの辛抱だ」
去っていく先生の背中を見て、鼻がツンと痛くなるのを感じた。
人を殺してまでお金を奪う人たちが諦めるわけがない。
このままじゃ危険でバイトにも行けない。
行けたとしても、迷惑をかけてしまう。
私は関係ないのに、どうして私に借金を払わせようとするのよ。
ミーグスと付き合っているフリをしてるから、お金があると思われてるのはわかるけど、フェルナンディ子爵はいつまで私を苦しめるの。
涙をこらえて鞄を取りに自分の席に戻ろうとして気が付いた。
誰もいないと思っていた教室内に、まだ人がいた。
しかも、ミーグスだ。
ミーグスは自分の席に座ったまま、私を見つめていた。
「どうして帰ってないのよ」
「君を待ってた」
「待たなくていいのに」
「待ってて良かった」
ミーグスは立ち上がり、私のカバンを持って教壇の横にいる私のところにやって来た。
どうしてこんな時にミーグスと2人きりなのよ。
「僕のせい?」
「ミーグスのせいじゃない!」
「じゃあ、君にそんな顔させたのは誰のせい?」
先生の話は聞こえていなかったようで、そう尋ねてくるミーグスの大きな手が私の頬に触れた。
優しくしないでほしい。
私は断ったんだから、そんな資格はないのよ。
私はミーグスの手を自分の頬から離して言う。
「何でもない。もう帰るから」
「何でもなくない。フェルナンディが原因?」
「それ以外に何かある!?」
「消そうか?」
「……え!?」
「冗談だよ」
絶句した私を見たミーグスは苦笑してから話を続ける。
「そんなことをさせたくないなら、ちゃんと教えてよ」
「……教えなかったら、物騒なことをするつもりなの?」
「君を苦しめるならね」
「何で今までそんな素振りを見せなかったのに、いきなり優しくなるのよ!?」
「ちゃんと説明したつもりだったけど、もう一度言おうか?」
「……ごめん。八つ当たりした」
素直に謝ると、ミーグスは私の頭を優しく撫でる。
「悪いと思うなら、何度も言うけどちゃんと教えて」
「ミーグスに言ってもしょうがないじゃない」
「君をオトすって言ったでしょ。出来ることなら何でもやるよ。両親からも許可を得たし」
「なんですって!?」
「母上はちょっと渋ってたけどね。母上も君が僕にされているのと同じで父上に追われたみたいだから、気持ちはわかるし本当に嫌なら、相談に乗るって言ってたよ」
そう言ったあと、ミーグスは微笑む。
「まあ、成功例がすぐ近くにあるから、余計に諦められないんだけど」
「ミーグス、わかってると思うけど、私、そういうのに免疫がないのよ」
「知ってる。だから、わざとだよ」
「ムカつく」
「何も思われないよりはいい。その時は僕のことを考えてるんだろうし」
「この性悪公爵令息!」
「それ、僕を喜ばせるだけだけど」
悪口を言われて喜ぶってどうなの?
眉根を寄せてミーグスを見上げると、彼は口を開く。
「僕の母上は父上と喧嘩したら、この性悪公爵! って叫んでるんだけど、令息時代は、この性悪公爵令息! って叫んでたみたいだから」
「……あなたがお父様似なのはわかったわ。でも、女性の趣味は似ていないんじゃない?」
「そうかな。僕は女性の好みも父上と似てると思うよ」
観念した私は、とりあえず先生から先程、話をされた内容をミーグスに話したのだった。
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