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31 復縁を求める元婚約者
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借金取りの話を聞いたミーグスは「僕に任せて」と微笑んだあと、私を寮の入り口まで送ってくれた。
「送ってくれてありがとう」
「どういたしまして。今日はバイトはないよね」
「ええ。バイトには当分、行けそうにないけれど」
「バイトの出勤日は明後日だよね」
以前、バイトの日にちをミーグスに教えていたから、それで覚えてくれていたようだった。
「それまでには何とかするから安心していいよ。あと、フェルナンディのこともね」
ミーグスは笑顔で言った。
迷惑をかけてばかりいて、私は何も返せていない。
「……ディラン」
「どうかした?」
「やっぱり、なんでもない」
苦笑してから首を横に振る。
ミーグスは眉根を寄せて、私の手を掴んだ。
「逃げるなよ」
「何から?」
「僕から」
「逃げたりなんかしないわよ」
「そうかな。まあいいよ。君が逃げても嫌われていない間は追いかけるから」
ミーグスは真剣な表情でそう言うと、私の手を離して距離を取ると手を振る。
「じゃあ、また明日」
ミーグスの姿が見えなくなってから両頬を押さえる。
「おかしい。顔がすごく熱い」
絶対、ミーグスのせいだわ。
どうしてこんな気持ちになるのよ!
って、ああ、あいつは私をこんな気持ちにさせようとしてるんだった。
ふらふらとした足取りで、自分の部屋に向かいながら考える。
この関係は終わらせないといけないわ。
フェルナンディ卿をどうにかしてしまえば、私とミーグスの関係も卒園後には絶対に切れる。
ミーグスだって私と関わらなくなれば冷静に戻るはずよ。
これは逃げなんかじゃない!
気持ちを切り替えるために立ち止まって、自分の両頬を手で叩く。
「しっかりしなさい、ビアラ。私には恋愛にかまけている時間はないわ。やらないといけないことがあるんだから!」
そう気合いを入れてから、すでにエアリスが帰っているであろう部屋に向かった。
*****
次の日、ミーグスは登園してこなかった。
何かあったのかと心配になって、昼休みに担任の先生に彼が休んだ理由を尋ねてみた。
「私用って言ってたな」
「私用、ですか」
「使いの人から連絡が来ただけで、本人とは話せてないんだ、悪いな」
「いえ。ありがとうございました」
何か、良くないことがあったわけじゃないわよね。
先生の言葉を聞いて不安になった。
ミーグスが来ていない理由に昨日の話が関係がなければ良いんだけど、そのせいで休んでいるとしか思えない。
借金取りたちは公爵令息に何かする様なバカではないと思いたいけど、常識が通じる人たちじゃない。
なんとなく落ち着かない、学園での1日を終えて帰り支度を始めた。
色々と考えながらだったから、気が付いたら教室には人がいなくなっていた。
ノノレイたちに手を振った覚えはあるから、長い間、ぼんやりしていたのかもしれない。
「ビアラ、やっぱりお前は金を隠し持っていたんだな!?」
帰ろうと思って立ち上がると、フェルナンディ卿が教室に入ってきて叫んだ。
「何の話をしているの?」
「しらばっくれるなよ。俺を追い回していた奴らの姿が見えなくなったんだ。しかも実家にいた奴らもいなくなったと聞いた。こんなことができるなら、なぜ、こんなに物事が大きくなるまで放っておいたんだ! 最初から払っておけばいいものを!」
「あなた、ディランから私に近付くなと言われていたでしょう。また、忘れたの。本当に寝たら忘れる頭ね」
鼻で笑うと、フェルナンディ卿が怒り始める。
「そんなことはいい! あとは、俺の寮費代を支払えよ」
「払うわけないでしょう」
相手にしていられないのでフェルナンディ卿の横を通り過ぎ、彼を置いて教室を出る。
「おい、待てよ! お前まで冷たくするのか!?」
フェルナンディ卿が追いかけてきて訴えてくる。
「ここのところ、フレシアがおかしいんだ! 両親に反対されているから駄目だとか、怪しい奴らに付きまとわれてるから嫌だとか言って、俺のことを相手にしてくれないんだ!」
「フレシア様が目を覚まされたみたいで良かったわ」
店長の存在があるから目を覚ました可能性が高いけど、むくわれるかはどうかはおいておいて、フレシア様の男性の好みがマシになったみたいで何よりだわ。
そんな風に考えていると、フェルナンディ卿が私の両腕を掴んで叫ぶ。
「ビアラ、やり直そう!」
「はい? やり直すも何も始まってもいなかったでしょう。婚約者といっても名ばかりだったわけだし」
「じゃあ、始めよう」
「嫌よ」
私はフェルナンディ卿の手を振り払い、距離を取ってから続ける。
「私にはお金はないの! 今まで払ってくれたのはディランよ! 今回も借金取りがいなくなったというのなら、ディランのおかげだろうから感謝するならディランにだし、何か始めたいならディランと始めたら?」
吐き捨てるように言ったあと、フェルナンディ卿に背を向ける。
フェルナンディ卿は何も言わずに、呆気にとられた顔をして、追いかけてくることはなかった。
まさか、ディランにのりかえるとか言わないわよね?
同性愛を否定するわけではないし、個人の勝手だとは思うけど。
そんなことを思いながら、私は学園をあとにした。
「送ってくれてありがとう」
「どういたしまして。今日はバイトはないよね」
「ええ。バイトには当分、行けそうにないけれど」
「バイトの出勤日は明後日だよね」
以前、バイトの日にちをミーグスに教えていたから、それで覚えてくれていたようだった。
「それまでには何とかするから安心していいよ。あと、フェルナンディのこともね」
ミーグスは笑顔で言った。
迷惑をかけてばかりいて、私は何も返せていない。
「……ディラン」
「どうかした?」
「やっぱり、なんでもない」
苦笑してから首を横に振る。
ミーグスは眉根を寄せて、私の手を掴んだ。
「逃げるなよ」
「何から?」
「僕から」
「逃げたりなんかしないわよ」
「そうかな。まあいいよ。君が逃げても嫌われていない間は追いかけるから」
ミーグスは真剣な表情でそう言うと、私の手を離して距離を取ると手を振る。
「じゃあ、また明日」
ミーグスの姿が見えなくなってから両頬を押さえる。
「おかしい。顔がすごく熱い」
絶対、ミーグスのせいだわ。
どうしてこんな気持ちになるのよ!
って、ああ、あいつは私をこんな気持ちにさせようとしてるんだった。
ふらふらとした足取りで、自分の部屋に向かいながら考える。
この関係は終わらせないといけないわ。
フェルナンディ卿をどうにかしてしまえば、私とミーグスの関係も卒園後には絶対に切れる。
ミーグスだって私と関わらなくなれば冷静に戻るはずよ。
これは逃げなんかじゃない!
気持ちを切り替えるために立ち止まって、自分の両頬を手で叩く。
「しっかりしなさい、ビアラ。私には恋愛にかまけている時間はないわ。やらないといけないことがあるんだから!」
そう気合いを入れてから、すでにエアリスが帰っているであろう部屋に向かった。
*****
次の日、ミーグスは登園してこなかった。
何かあったのかと心配になって、昼休みに担任の先生に彼が休んだ理由を尋ねてみた。
「私用って言ってたな」
「私用、ですか」
「使いの人から連絡が来ただけで、本人とは話せてないんだ、悪いな」
「いえ。ありがとうございました」
何か、良くないことがあったわけじゃないわよね。
先生の言葉を聞いて不安になった。
ミーグスが来ていない理由に昨日の話が関係がなければ良いんだけど、そのせいで休んでいるとしか思えない。
借金取りたちは公爵令息に何かする様なバカではないと思いたいけど、常識が通じる人たちじゃない。
なんとなく落ち着かない、学園での1日を終えて帰り支度を始めた。
色々と考えながらだったから、気が付いたら教室には人がいなくなっていた。
ノノレイたちに手を振った覚えはあるから、長い間、ぼんやりしていたのかもしれない。
「ビアラ、やっぱりお前は金を隠し持っていたんだな!?」
帰ろうと思って立ち上がると、フェルナンディ卿が教室に入ってきて叫んだ。
「何の話をしているの?」
「しらばっくれるなよ。俺を追い回していた奴らの姿が見えなくなったんだ。しかも実家にいた奴らもいなくなったと聞いた。こんなことができるなら、なぜ、こんなに物事が大きくなるまで放っておいたんだ! 最初から払っておけばいいものを!」
「あなた、ディランから私に近付くなと言われていたでしょう。また、忘れたの。本当に寝たら忘れる頭ね」
鼻で笑うと、フェルナンディ卿が怒り始める。
「そんなことはいい! あとは、俺の寮費代を支払えよ」
「払うわけないでしょう」
相手にしていられないのでフェルナンディ卿の横を通り過ぎ、彼を置いて教室を出る。
「おい、待てよ! お前まで冷たくするのか!?」
フェルナンディ卿が追いかけてきて訴えてくる。
「ここのところ、フレシアがおかしいんだ! 両親に反対されているから駄目だとか、怪しい奴らに付きまとわれてるから嫌だとか言って、俺のことを相手にしてくれないんだ!」
「フレシア様が目を覚まされたみたいで良かったわ」
店長の存在があるから目を覚ました可能性が高いけど、むくわれるかはどうかはおいておいて、フレシア様の男性の好みがマシになったみたいで何よりだわ。
そんな風に考えていると、フェルナンディ卿が私の両腕を掴んで叫ぶ。
「ビアラ、やり直そう!」
「はい? やり直すも何も始まってもいなかったでしょう。婚約者といっても名ばかりだったわけだし」
「じゃあ、始めよう」
「嫌よ」
私はフェルナンディ卿の手を振り払い、距離を取ってから続ける。
「私にはお金はないの! 今まで払ってくれたのはディランよ! 今回も借金取りがいなくなったというのなら、ディランのおかげだろうから感謝するならディランにだし、何か始めたいならディランと始めたら?」
吐き捨てるように言ったあと、フェルナンディ卿に背を向ける。
フェルナンディ卿は何も言わずに、呆気にとられた顔をして、追いかけてくることはなかった。
まさか、ディランにのりかえるとか言わないわよね?
同性愛を否定するわけではないし、個人の勝手だとは思うけど。
そんなことを思いながら、私は学園をあとにした。
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