才能なんて必要ない!

クレハ@WME

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最終話

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【才能なんて必要ない!】

十六話(ラスト)

 ヒントはかなり少ないが多分、あの先生のことだ。きっと俺の彼女になにか悪いことをさせるかさせてるかなんかしらのアクションを起こしているはずだ。なら、早く見つけて助けてやらないと!
 俺は彼女の行った方向で聞きこみ調査を始める。彼女はいい意味で目立つので目撃情報は多く助かった。どうやら学校の方へと行ったらしい。
 夏休みに行く必要なんて微塵もない。そこに行ったってことはやっぱり先生絡みだろう。
 俺は急いで学校へと向かった。
 本当に全く手のかかる校長だ。
 学校へ向かうと校門が人が入れるくらいだけ空いていた。いつもなら全開か閉まってるかなのに。やっぱり来たんだろう。
 その時、俺に嫌な予感が脳裏を過ぎった。まさか!
「間違えであってくれ!」
 そんな祈りに近いことを呟きつつ、できるだけ早く足を動かし、ひたすら走った。
 俺のその予感は見事に的中し、二人は傷を負いながらもコロシアムで決闘を行っていた。
「もうやめろよ!」
 客席から声を荒らげ二人を見やると、酷くボロボロで先生は火傷のような傷がついていたり片目がほとんど開いてなかったりする。白銀は先生よりかは酷くなさそうだが、左腕を右手で抑えてところを見るになにかしらの怪我があるに違いない。
「……これは君には関係ないよ」
「何がないってんだよ!先生の戦ってる相手は俺の彼女なんだよ!だからやめてくれ!」
「……うるさいな。一旦死んでてよ」
 殺気立った声が俺に刺さり、身体が一瞬にして金縛りにあったが如く動かなくなった。
「ま、またこれか……だが、俺もそこまで弱くない!」
 俺はそれを解除し「待ってろ!今助ける!」と、声を上げたが白銀はゆっくりと首を横に振った。
「……せんせー。続きしましょう。まーくんは見てて。私も気持ち見せてあげるから」
「だって!」
「ノープログレム!」
 その強く逞しい声に俺は何も言えなくなり頷くしかなかった。あんなに本気なみことなんてみたことない。彼女がそう言うなら俺は手を出さない方がいい。
 俺も決心し観客席に腰を下ろした。
「……言うね。君。私を先生だって知っててそんなこと言ってるの?悪いけど彼は貰うから」
「そんなことさせるわけないでしょ?あーしだってストロング」
 視線が絡み合い激しい火花が散っていた。
 そして、また戦いが始まった。
 いや、戦いというよりかはぶつかり合いだ。先生も白銀も才能なんて使ってない。拳と拳のぶつかり合いだ。
 二人が殴り殴られ端正な顔が痣や青タンが着き、腕も足も服もボロボロになっていく。
 今すぐ飛び出していきたいが、さっきの目を思い出し動けなくなる。
 多分、俺はこれを見なければいけない。見たくないが目に焼き付けなければダメなんだ。じゃないとあの二人に悪い。
「あーしは昔っからまーくんのことめっちゃ好きじゃけん!誰にだって取られたくないんよ!」
「私だって好きだよ!松岡くんは私を友達みたいに扱ってくれた!怒ってくれた!ずっと私浮いてたから。才能だけで生きてきた私に人として接してくれた。だからっ!」
「「負けられないんだ!」」
 二人の息がその時だけは合い、互いの左ストレートが互いの右頬に入った。
 そして、フラフラと何歩か後ろにたじろいだ後、同時にバタリと倒れた。
 静かなコロシアムで蝉の声だけがする。
 KOの概念はない。先に立ち上がった方の勝ちだ。なら、俺にだって出来ることがある!
「……白銀!俺もお前が好きだ!俺の彼女なら立ち上がってくれ!」
 蝉の音一つしないコロシアムで俺は必死に彼女の名を叫んだ。
 でも、先にピクリと身体を動かしたのは先生の方だった。
「白銀!立ってくれ!お願いだ!」
 さっき思いっきり才能を使ったせいで腹が痛いし、喉も潰れそうだ。だが、そんなのは関係なかった。声が枯れ潰れようとも俺は彼女の名を叫ぶ。
 先生は意識が戻ったのか片腕をまっすぐ空に向けてあげ、掴むような仕草をした。
「……私の事は呼んでくれないんだね君は……」
「みことぉぉ!立ってくれぇ!」
 何度目の呼びかけだろうか?やっと、俺の思いが伝わったのか彼女も体を動かし、ゴロンとうつ伏せになり、膝を震わせながら、ゆっくりと立ち上がった。
 先生は手を顔に当てながら横になったままだ。
「やった……やったぞ!みこと!」
 雌雄は決した。俺は直ぐに彼女に駆け寄るとぎゅっと強く抱き締めた。
「……ま、まーくん痛いんだけど」
「あ、そ、そうか!ごめん。大丈夫か?」
「うん。アイムファイン!」
 腫れた目や青アザだらけの身体を見るにどう考えたって大丈夫な訳が無い。早く応急処置くらいはしてやらないといけない。
 ふと視線を先生の方にやるとそこには先生の姿はなく、代わりに救急箱とその下に一枚の紙切れが落ちていた。
 とりあえず、すぐに救急箱から必要なものを取り出して彼女に手当てをする。
 が、これじゃ傷が残っちまうじゃないか!すぐに俺は病院まで送ると、白銀はここからは一人で大丈夫などと抜かした。あー見えてもなかなか意地っ張りな彼女にバレないように待合室に入って彼女が出てくるのを待つ。
 その間、さっきの紙を思い出してそれを開くと手紙だった。
『白銀みことさん松岡雄護くんへ。ごめんなさい。決闘の盟約に従い、私は君ら二人の前から消えよう。さようなら』
 そんなことが書いてあった。
「……松岡くん。ごめんね。消える前にひとつ訊いていいかな?なんで私を選んではくれないの?」
 殴られた傷はそのままの先生が、俺の目の前に立っていた。
「先生。俺は貴方を選ぶことは出来ません。白銀……いや、みことが好きなんです。だから、先生とは付き合えません」
「そっか……ありがとう。私に付き合ってくれて。さようなら」
 先生は涙を貯めながら無理に笑ってそう言い残すと、いつものように一瞬で消えた。
「俺がハッキリしなかったのがいけないんだ……クソ。だから二人はあんなことを……」
 またその紙をポケットに突っ込むと浮き足立つこのもどかしい感情を抑えつつ、待つ。
 そして、暫くしてから服の下はわからないが、包帯ぐるぐる巻きの彼女が出てきた。
「だ、だだだだ大丈夫か!?」
「まーくん。どったの?あーしはノンプログレム。それにフェニックス先生があと少ししたら治してくれるしね!」
「どこからどうみれば問題なく見えるんだよ!それに服の下は?」
「レディ看護師にやってもらいました!」
 そう言いながらブイサインを向けてきた。
「……そうか。あの先生なら大丈夫だな」
「んだ!それよりけーってまーくんのお部屋でゲームしたいな!」
「別にいいぞ。でも治ってからな」
 それからすぐにフェニックス先生が来ると、傷が一瞬でなくなった。
「マジすげえ……」
「褒めたってこのくらいしか出来ないわよ?」
「有難いですよ!さすがです先生!」
 先生にお礼を言うと俺らは二人で病院から外に出た。すると、見知った二人が血相変えてこちらに駆け寄ってきた。
「どったの?」
「どったのじゃないよ!みことちゃんなに!?何があったの!?」
 俺から白銀をかっさらうかのようにピンク髪の少女が横に入り込んできた。
「松岡が居ながらなにしてんだよ!彼女の一人守れんでどうするんだ!」
 相川の言うことも確かに正解だ。俺は見るだけで何もしてやれなかった。
「なんでお前らここに?」
「なんかメールが届いてね。全く知らない相手だったけど病院にみことちゃんがいるって」
「俺にも同じのが届いてな。病院前まで走ってきたらまつりちゃんもいたってわけだ」
 多分、メールの差出人は先生だろう。落ち着いてから連絡しようと思っていたけれど、まあ、助かったか。
「そっか。ありがとな。でも、心配ないぜ?今から俺の寮でこいつの面倒みるからさ」
「あーしは子供じゃないってのに!」
 そう言って頬をふくらませようとしたが、痛そうに頬を抑えた。
「大丈夫!?」
「ん、んだ……」
「まだ痛むのか?」
「ちょいとね!」
「そうか……」
「男女二人きりなんて破廉恥よ!だから私も行くし!」
「当然俺も行くぞ?彼女が変なやつに襲われない為にもな!」
「全く……けが人に手を出すほど俺もクズじゃねえしこいつ以外興味……やっぱ、なんでもない」
 にたぁっとした笑顔で二人から。あと一人は顔を赤く染めていた。
「あー!もう!帰るなら帰るぞ!」
 相川に後ろから首に手を回され、ニタニタ。
「なんか言いたいことあんなら言えよ!」
 そう言おうとも目を細めてうんうんと頷くだけ。その顔は終わらない。クソ!墓穴を掘ったな……
 でも、白銀はいや、彼女らは体を張って教えてくれた。だから俺もやらないといけないことがある。
 夏休みが明け、俺は一番人が登校してくるタイミングで屋上から垂れ幕を下げた。
『俺、松岡雄護は白銀みことと付き合ってます!』
 誰の目でも入るよう掲示板なんかにも同じことの書かれてるものを貼った。
「こらぁ!松岡ァ!」
「お、久しぶりですね鬼塚先生」
「久しぶりじゃねえ!なにしてんだよ!お前は!」
「俺も勘違いされっぱなしなのは嫌でしたから」
「……まあ、いい。でも、停学処分は受けてもらうぞ?」
「ですよねー」
 その日から一週間ほどの停学処分を受けることになった。
 でも、俺に後悔はない。俺はあいつに恥じない彼氏になりたい。という気持ちが残った。
 才能があろうとなかろうと関係ない。未来を切り開くのは自分自身なのだ。逃げてたら何も生まない。俺はもう何事からも逃げない。
 俺の両親は妹を殺し、俺を生かした。俺はそれを許せなかった。でも、本当は違った。もう、自分から逃げる訳には行かないんだ。
 我が妹や白銀とよく遊んだ公園を横目に、見知った家の前で深呼吸を何度か繰り返してから戸を開けた。
「……久しぶり。父さん母さん」
 久しぶりに実家に帰り、家の中に入るとなんだか見覚えのあるような懐かしい雰囲気のある真っ白な猫がぐるぐると喉を鳴らしてやってきた。

~ END ~
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