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『第二十二話・4 : 再臨せし破壊神──裏切りの弟子ラムタフ』
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森を覆っていた残光の霞が、ゆるやかに沈んでいく。
紅晶兵の断末魔は途絶え、焦げた匂いと崩れ落ちた鎧の残骸だけが残った。
「……ようやく、静かになったか」
リリア──いや、颯太は肩で荒く息をつき、剣を収める。
だが、静けさは安らぎではなかった。
砦の奥から、心臓を叩くような衝撃が幾度も響き、大地を震わせる。
それは、何かが目を覚まそうとしている合図だった。
セラフィーが目を細め、光刃を握る指に力を込める。
「……嫌な気配。これは兵士を操る程度の力じゃない」
「なぁなぁ! この揺れ、地震ちゃうよな!? やばいフラグ立っとるやんかぁぁ!」
ブッくんが墨を散らしながら悲鳴をあげる。
一瞬の沈黙が落ちた。空気が張りつめ、声すら呑み込まれるように。
次の瞬間、砦の最奥に据えられた紅晶の祭壇が、轟音を立てて裂けた。
赤黒い光が奔流のごとく噴き上がり、夜空を突き抜けて流星のように散る。
その中から、ひとりの男が姿を現した。
狂気の笑みを浮かべ、紅晶の奔流を背に立つその影。
「……っ! ラムタフ……!」
リリアが思わず剣を握り締める。
セラフィーの瞳が鋭く細まる。
「……やっぱり姿を現したわね。かつて勇者に仕えた誇りを、ここまで汚すなんて」
「もう、あの頃のあなたはいない……」
「うわっ……! ほんまに出おったで……!」
ブッくんが墨をばたつかせる。
「いや、話には聞いとったけどな!? “借金返せんで闇堕ちした勇者の弟子”とか、酒場の笑い話やと思てたんや! まさか実物おるとかシャレにならんわぁぁ!!」
颯太は無言で息を呑む。胸の奥にざらつくような嫌悪感が走った。言葉にできない、裏切られた痛みだけが残る。
ラムタフはその嘲りを愉快そうに受け止め、片手を高く掲げ、叫んだ。
「見よ!! これこそ神々すら恐れ、封じられし絶望ッ!!
世界の三分の一を踏み潰し、三年前、哀れにもお前に封じられた破壊神が──今ここに再臨するのだ!!」
地鳴りが増し、砦の基盤が崩壊していく。
紅晶の鎖を引き裂きながら、巨影がゆっくりと立ち上がった。
地平線が歪む。呼吸するだけで胸が焼けるような圧力が押し寄せ、ただ立っていることすら試練に思えた。
その一歩ごとに、大地は沈み、森の根が断ち割られ、砦の石壁は砂のように砕け散った。
空気は圧力で悲鳴を上げ、呼吸すら許さぬ重苦しさが場を覆う。
禍々しいその頭部には、ただひとつの眼。
単眼が彗星のように輝き、森も砦も赤々と照らし出す。
その光は星々をかき消し、夜空そのものを塗り替えていった。
《世界殲滅神──デモリオン》
リリアは剣を構えたが、腕の震えを抑えきれなかった。
「ありえない……! あれは……私が、確かに倒して、封じたはずなのに……!!」
(デモリオン……マジかよ……!
ゲームでも“時間制限付きの鬼畜イベントボス”だったやつだろ!?
三分動かしただけでサーバー全域が崩壊した……あの悪夢の……!ログアウトボタンがない今、シャレにならねぇ……!)
(今リアルで出てきちゃ一番ダメなやつだって!!)
ラムタフの高笑いが砦を揺らす。
「封印の地を見つけ出すことなど造作もなかった!
そして私は選んだのだ……この世界を焼き直す力として!
神殺しの勇者すら凌駕する存在をッ!!
──哀れな師よ! 封印に縋るしかなかったあなたには、理解すらできんでしょう?
だからこそ、私は超えたのだ……あなたを!」
(……いや、“超えた”って言うか、“ラスボス召喚でイキってるだけの課金廃プレイヤー”じゃねぇか! 真面目に育成して勝負挑めよ、師弟関係の冒涜やろ!!)
その瞬間、胸の奥で何かが軋んだ。怒りとも悔しさとも違う。名前を持たない感情が、熱となって血管を駆け上がっていく。
だが、リリアの胸裏に、魔法を教えた夜の記憶が一瞬だけよぎる。
焚き火を囲んで笑った声。互いに交わした未来への約束。
そのすべてを、自ら踏みにじって弟子は闇に堕ちた──その事実が怒りを灼熱に変える。
もう、隣に並んでいた時間は幻影でしかない。
デモリオンの咆哮が、夜空を裂いた。
灼熱の吐息は稲妻と共に森を薙ぎ払い、木々は瞬時に白灰へと変わる。
大地は震え、月すら霞むほどの光が空を覆った。
その咆哮は音というより刃。空間そのものを切り裂き、鼓膜を貫く衝撃で頭蓋が割れそうになる。
「くっ……!」
リリアは即座に跳び、剣を掲げる。
「ラムタフ! あんた……こんなものまで蘇らせて……!!」
「三年前、私が命懸けで封じたものを……自分の手で復活させて、誇るなんて。師を超えたんじゃない……人間をやめただけよ!」
(ふざけんな、ラムタフ!マジで許せねぇ……! 俺があのとき、死ぬかと思いながら封印したのに……!ってか、普通は“師を超える”って修行して強くなる方向やろ!?
“封印壊して世界滅ぼします”でドヤ顔って、どんなクソゲールートだよ!師弟の縁を汚すだけじゃなく、世界まで踏みにじる気か!?)
怒りが声を震わせる。
紅晶兵との戦いで疲弊した身体を無視し、リリアは一直線に駆けた。
その一歩は恐怖を踏み砕くための一歩。
世界を再び地獄に沈めぬための一歩。
ただの足掻きかもしれない。
だけど、震える脚で、それでも前へ。
沈黙の中に、自分の心臓の音だけがやけに大きく響いていた。それは恐怖ではなく──戦う意思の証だった。
(絶対に許さない……! 世界を踏み潰した破壊神を……再び解き放つなんて!!
これは、ゲームじゃない! 本当に、人が死ぬんだぞ……!)
紅晶兵の断末魔は途絶え、焦げた匂いと崩れ落ちた鎧の残骸だけが残った。
「……ようやく、静かになったか」
リリア──いや、颯太は肩で荒く息をつき、剣を収める。
だが、静けさは安らぎではなかった。
砦の奥から、心臓を叩くような衝撃が幾度も響き、大地を震わせる。
それは、何かが目を覚まそうとしている合図だった。
セラフィーが目を細め、光刃を握る指に力を込める。
「……嫌な気配。これは兵士を操る程度の力じゃない」
「なぁなぁ! この揺れ、地震ちゃうよな!? やばいフラグ立っとるやんかぁぁ!」
ブッくんが墨を散らしながら悲鳴をあげる。
一瞬の沈黙が落ちた。空気が張りつめ、声すら呑み込まれるように。
次の瞬間、砦の最奥に据えられた紅晶の祭壇が、轟音を立てて裂けた。
赤黒い光が奔流のごとく噴き上がり、夜空を突き抜けて流星のように散る。
その中から、ひとりの男が姿を現した。
狂気の笑みを浮かべ、紅晶の奔流を背に立つその影。
「……っ! ラムタフ……!」
リリアが思わず剣を握り締める。
セラフィーの瞳が鋭く細まる。
「……やっぱり姿を現したわね。かつて勇者に仕えた誇りを、ここまで汚すなんて」
「もう、あの頃のあなたはいない……」
「うわっ……! ほんまに出おったで……!」
ブッくんが墨をばたつかせる。
「いや、話には聞いとったけどな!? “借金返せんで闇堕ちした勇者の弟子”とか、酒場の笑い話やと思てたんや! まさか実物おるとかシャレにならんわぁぁ!!」
颯太は無言で息を呑む。胸の奥にざらつくような嫌悪感が走った。言葉にできない、裏切られた痛みだけが残る。
ラムタフはその嘲りを愉快そうに受け止め、片手を高く掲げ、叫んだ。
「見よ!! これこそ神々すら恐れ、封じられし絶望ッ!!
世界の三分の一を踏み潰し、三年前、哀れにもお前に封じられた破壊神が──今ここに再臨するのだ!!」
地鳴りが増し、砦の基盤が崩壊していく。
紅晶の鎖を引き裂きながら、巨影がゆっくりと立ち上がった。
地平線が歪む。呼吸するだけで胸が焼けるような圧力が押し寄せ、ただ立っていることすら試練に思えた。
その一歩ごとに、大地は沈み、森の根が断ち割られ、砦の石壁は砂のように砕け散った。
空気は圧力で悲鳴を上げ、呼吸すら許さぬ重苦しさが場を覆う。
禍々しいその頭部には、ただひとつの眼。
単眼が彗星のように輝き、森も砦も赤々と照らし出す。
その光は星々をかき消し、夜空そのものを塗り替えていった。
《世界殲滅神──デモリオン》
リリアは剣を構えたが、腕の震えを抑えきれなかった。
「ありえない……! あれは……私が、確かに倒して、封じたはずなのに……!!」
(デモリオン……マジかよ……!
ゲームでも“時間制限付きの鬼畜イベントボス”だったやつだろ!?
三分動かしただけでサーバー全域が崩壊した……あの悪夢の……!ログアウトボタンがない今、シャレにならねぇ……!)
(今リアルで出てきちゃ一番ダメなやつだって!!)
ラムタフの高笑いが砦を揺らす。
「封印の地を見つけ出すことなど造作もなかった!
そして私は選んだのだ……この世界を焼き直す力として!
神殺しの勇者すら凌駕する存在をッ!!
──哀れな師よ! 封印に縋るしかなかったあなたには、理解すらできんでしょう?
だからこそ、私は超えたのだ……あなたを!」
(……いや、“超えた”って言うか、“ラスボス召喚でイキってるだけの課金廃プレイヤー”じゃねぇか! 真面目に育成して勝負挑めよ、師弟関係の冒涜やろ!!)
その瞬間、胸の奥で何かが軋んだ。怒りとも悔しさとも違う。名前を持たない感情が、熱となって血管を駆け上がっていく。
だが、リリアの胸裏に、魔法を教えた夜の記憶が一瞬だけよぎる。
焚き火を囲んで笑った声。互いに交わした未来への約束。
そのすべてを、自ら踏みにじって弟子は闇に堕ちた──その事実が怒りを灼熱に変える。
もう、隣に並んでいた時間は幻影でしかない。
デモリオンの咆哮が、夜空を裂いた。
灼熱の吐息は稲妻と共に森を薙ぎ払い、木々は瞬時に白灰へと変わる。
大地は震え、月すら霞むほどの光が空を覆った。
その咆哮は音というより刃。空間そのものを切り裂き、鼓膜を貫く衝撃で頭蓋が割れそうになる。
「くっ……!」
リリアは即座に跳び、剣を掲げる。
「ラムタフ! あんた……こんなものまで蘇らせて……!!」
「三年前、私が命懸けで封じたものを……自分の手で復活させて、誇るなんて。師を超えたんじゃない……人間をやめただけよ!」
(ふざけんな、ラムタフ!マジで許せねぇ……! 俺があのとき、死ぬかと思いながら封印したのに……!ってか、普通は“師を超える”って修行して強くなる方向やろ!?
“封印壊して世界滅ぼします”でドヤ顔って、どんなクソゲールートだよ!師弟の縁を汚すだけじゃなく、世界まで踏みにじる気か!?)
怒りが声を震わせる。
紅晶兵との戦いで疲弊した身体を無視し、リリアは一直線に駆けた。
その一歩は恐怖を踏み砕くための一歩。
世界を再び地獄に沈めぬための一歩。
ただの足掻きかもしれない。
だけど、震える脚で、それでも前へ。
沈黙の中に、自分の心臓の音だけがやけに大きく響いていた。それは恐怖ではなく──戦う意思の証だった。
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