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第1章 入学
災難を乗り越えて
しおりを挟む20分ほど車に乗ると、学校が見えてきた。
「ごめんね、この子中学の時からお昼はパンなのよね。近くのコンビニで降ろしていいかしら?」
「構いません。むしろここまで送ってくださってありがとうございました」
「はーい、次からはバスに乗り遅れないようにしなさいねー」
「…はい、すみません。ありがとうございました」
送ってもらえたことは有難いが、緊張で20分という時間が長く感じられた。明日からはちゃんとバスに乗らないと。
コンビニで降ろされると母親は手を振ってそのまま来た道でない方へ運転して行った。仕事に向かうのかな、と思いつつ少し頭を下げる。
「それじゃ、あなたもここで」
一緒に来た少女も俺にさよならと言う。ちょっと待て。俺も大事なことに気付いてしまった。
「いや、俺もパンを買うよ。入学式の日に昼食がいるなんて知らなかったし」
経験上、学校の式は午前中で終わるために昼食がいらなかったのだ。思い込みって怖い。
「プリントに書いてあったでしょう?午前中に入学式で、午後から全校生徒で始業式があるのよ」
「そ、そうだっけかな…」
プリントなんていつの間に…。自分の知らないところで配布されていたのか。家のポスト係の瑞希よ、兄貴は絶対に許さないからなー。
コンビニに入り、所持金を確認すると、なんと380円。なんで俺は学校初日にお金を持ってきてないんだろうか。カゴにメロンパンとカフェオレを入れ、レジに持っていく。お金も無いし、2つだけにしておこう。
少女の方を見るとまだパンを選んでいるようだ。
「まだ決まってないのか」
「関係ないわね、先に行っててちょうだい」
「なんでだよ、学校すぐそこだろ?」
「…恥ずかしいからよ」
俺は不覚にも可愛いと思ってしまったが少女は全く恥じている様子はない。騙された…。深くは追求しないで、学校へ向かうのことにし、店を出た。少女の恥じていたものとは何だったのだろうか。まあ、一緒に学校に行っているのを見られることか、そのカゴに入った大量の菓子パンのことか。まあ後者だろう。
少し歩き学校へたどり着く。ここまで災難はあったが時間に間に合った。この門を潜ると新しい高校生活が始まる。
今、俺、伊宮友樹の高校生活が始まる…!
と心の奥で思いつつ、急いで入学式の会場へと向かった。
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