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しおりを挟むその夜、カール殿下が魔力暴走の末昏睡状態に陥いったと連絡がきた。
今日は城下にある農園の視察に行ったらしいのだが、そこでご側室様の手の物と思われる集団に襲撃されたらしい。
護衛もそれなりにいたので無事切り抜けられるように思われたが、最後の最後で敷地内の孤児院に火をかけられ、それの鎮火の為に魔法を使った際に魔力暴走を起こしたらしい。
医者の見立てでは、興奮し疲労したところに大きな魔力を操った為、体内の魔力の制御が上手くできなかったのではないか……との事だった。
「お兄さまはここ暫く、ミーリア様との婚約を結ぶ為に、忙しくしておりました。疲れも溜まっていたのだと思います」
消沈したシャーロット王女に何も言えない私……。カール殿下のことはシャーロット王女が直接知らせに来てくれたのだけれど……。
「すみません…ミーリア様が隠しておられた髪色の変化ですが、身内より漏れていたようです」
王城の守りも穴だらけですね…と悲しそうに笑った。
そして……もし可能なら兄を見舞ってはくれないか…もし私達王族を許してくれるなら、お兄さまに手を差し伸べてもらえないか……と。
⚫〇⚫〇
シャーロット王女との話の後、メアリを伴いカール殿下を見舞いに、殿下が眠る寝室へと足を運んだ。
いくら情報が漏れているとはいえ、堂々ととは出来ないので、メアリ特製の不可視のベールを被り、胸から上全体を覆っている。
私からは見えるが、外からは厚い布のように見える、マジックミラーの布バージョンだ。
「ねぇ…メアリ……殿下は…好きな人はいたの?」
自分に自信が持てなくて……でも数日前の真純君の言葉が引っかかっていて、前にも後ろにも行けず立ち止まっている自分をどうにかしたくて、メアリに…まさきにいに聞いた。
「私の見解で良ければ…お嬢様は好かれておいでだと思います。感情表現がとても下手なようですが…」
周囲に人がいることもあり、控えめに小さな声で答えてくれた。
そう言えば…前世から自分の感情を表に出せず、自分の中に留めてしまう人だったなぁと思い出す。
きっと、魔力と共に感情までも暴発させてしまったのだろう…眠っている殿下からは魔力の揺らぎも何も感じない。
「真純君はあそこにいると思う?」
王城に間借りしている自室に戻り、メアリに聞く。さぁ…?と言いつつも笑顔のメアリが怖い。
さっさと行って連れ戻して来た方が、私と真純君の身のためかもしれない。
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