生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな

文字の大きさ
111 / 135

111

しおりを挟む



その夜、カール殿下が魔力暴走の末昏睡状態におちいったと連絡がきた。


今日は城下にある農園の視察に行ったらしいのだが、そこでご側室様の手の物と思われる集団に襲撃されたらしい。


護衛もそれなりにいたので無事切り抜けられるように思われたが、最後の最後で敷地内の孤児院に火をかけられ、それの鎮火の為に魔法を使った際に魔力暴走を起こしたらしい。

医者の見立てでは、興奮し疲労したところに大きな魔力を操った為、体内の魔力の制御が上手くできなかったのではないか……との事だった。


「お兄さまはここ暫く、ミーリア様との婚約を結ぶ為に、忙しくしておりました。疲れも溜まっていたのだと思います」


消沈したシャーロット王女に何も言えない私……。カール殿下のことはシャーロット王女が直接知らせに来てくれたのだけれど……。


「すみません…ミーリア様が隠しておられた髪色の変化ですが、身内より漏れていたようです」


王城の守りも穴だらけですね…と悲しそうに笑った。


そして……もし可能なら兄を見舞ってはくれないか…もし私達王族を許してくれるなら、お兄さまに手を差し伸べてもらえないか……と。



⚫〇⚫〇


シャーロット王女との話の後、メアリを伴いカール殿下を見舞いに、殿下が眠る寝室へと足を運んだ。


いくら情報が漏れているとはいえ、堂々ととは出来ないので、メアリ特製の不可視のベールを被り、胸から上全体を覆っている。


私からは見えるが、外からは厚い布のように見える、マジックミラーの布バージョンだ。


「ねぇ…メアリ……殿下は…好きな人はいたの?」


自分に自信が持てなくて……でも数日前の真純君の言葉が引っかかっていて、前にも後ろにも行けず立ち止まっている自分をどうにかしたくて、メアリに…まさきにいに聞いた。


「私の見解で良ければ…お嬢様は好かれておいでだと思います。感情表現がとても下手なようですが…」


周囲に人がいることもあり、控えめに小さな声で答えてくれた。


そう言えば…前世むかしから自分の感情を表に出せず、自分の中に留めてしまう人だったなぁと思い出す。


きっと、魔力と共に感情までも暴発させてしまったのだろう…眠っている殿下からは魔力の揺らぎも何も感じない。


「真純君はいると思う?」


王城に間借りしている自室に戻り、メアリに聞く。さぁ…?と言いつつも笑顔のメアリが怖い。


さっさと行って連れ戻して来た方が、私と真純君の身のためかもしれない。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。 その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界! 物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて… 全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。 展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m

腹ペコ令嬢は満腹をご所望です【連載版】

古森きり
恋愛
前世は少食だったクリスティア。 今世も侯爵家の令嬢として、父に「王子の婚約者になり、次期王の子を産むように!」と日々言いつけられ心労から拒食気味の虚弱体質に! しかし、十歳のお茶会で王子ミリアム、王妃エリザベスと出会い、『ガリガリ令嬢』から『偏食令嬢』にジョブチェンジ!? 仮婚約者のアーク王子にも溺愛された結果……順調に餌付けされ、ついに『腹ペコ令嬢』に進化する! 今日もクリスティアのお腹は、減っております! ※pixiv異世界転生転移コンテスト用に書いた短編の連載版です。 ※ノベルアップ+さんに書き溜め読み直しナッシング先行公開しました。 改稿版はアルファポリス先行公開(ぶっちゃけ改稿版も早くどっかに公開したい欲求というものがありまして!) カクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェ、ツギクル(外部URL登録)にも後々掲載予定です(掲載文字数調整のため準備中。落ち着いて調整したいので待ってて欲しい……)

【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。 自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。 このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく── ─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜

みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。 悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。 私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私はただのモブ。 この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。 ……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……? ※2025年5月に副題を追加しました。

たいした苦悩じゃないのよね?

ぽんぽこ狸
恋愛
 シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。    潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。  それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。  けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。  彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。

処理中です...