人外さんに選ばれたのは私でした ～それでも私は人間です～

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会社にピザを持ってきたら、デスクに突っ伏して眠る社長がいた。
最近は凄く忙しそうで、私と別行動が多かった。
別行動が多かったせいもあり、社長がどこに行きどんな仕事をしているかは大まかにしか把握していない。
都築川さんに聞けば教えてくれるんだろうけど、ここしばらくは私も頭の中がごちゃごちゃしていたこともあり、わざと確認していなかった。


最近、妖精バージョンの社長をみていないかも……


ふと思い、都築川さんが言っていたことを思い出す。
人間バージョンを保っていられるってことは、きっと力が完全に戻っているってことなんだろうけど、たまに見たくなるので、時々は戻ってくれると嬉しいなぁ…などと考えながら、給湯室にお湯を沸かしに行きお茶を入れる。


「社長…社長っ。風邪ひきますよ」


デスクに突っ伏す社長を揺り起こしながら、転寝している人定番の声かけをして、人外さんって風邪ひいたりするんだろうか？なんて考える。


この際、色々聞いたり見たりして人外さんのこと、会社の事を知った方が良いのかもしれない。
なかなか起きない社長に諦めて、自分のデスクの引き出しからひざ掛けを持ってきて社長に掛ける。
無理無理起こしてもしょうがないか…と思い、デスクの隅にピザとメモを置いて帰る事にした。


『また明日―…』



●○●○



仕事の為、どたきゃんになった食事会はいまだ再決行されず既に一ヶ月。
色々と時間が惜しいので、ムードもへったくれも無かったけれど、社長と二人っきりのオフィスで自分の気持ちを打ち明けた。そして、今の自分を取り巻く環境の変化や考えている事も告げる。
おじいちゃんの会社の事は、今度私の両親に挨拶に行った際に話をしたいとの事だったので、おじいちゃんと母に話の手回しと、会うセッティングをした。


ちなみに……父は相変わらず海外を飛び回っているので後回しだ。
一応連絡はしたけどね。


弟の勇樹は今現在、父のところに行っているらしい。
進路を考えるうえで実体験ができるならした方が良いので、快く送り出した。
お姉ちゃんにはメールで伝えた。
スマホで撮った社長の写真も付けて。


すっごい喜んでくれたし、社長の事もイケメンだと騒いでいた……と思う。
メールを読んだ限りでは……。


そうそう…社長と都築川さんに伯父さんと聡さんの事を話したよ。
考えてみれば都築川さんとナヅナさんが親子で、ナヅナさんのお母さんがミヤコさん。
でもって、聡さんのお母さんがミヤコさん……ってことは、この四人って家族なのね…と今更理解した私。
都築川さん曰く、聡さんは人間の仕事をしたいと出たきり五年程会っていないと言うことだった。
意外な所で意外な結びつきに、すっごい驚いた。