人外さんに選ばれたのは私でした ～それでも私は人間です～

６３ ～人外も恋をする～

週末が来た。


美里が帰る時に宿泊の準備もしてくるよう言ったけど、急だっただろうか。
本当はきっと美里も思っているように、式場を見に行きその後に食事に行き、きちんとプロポーズしようと思っていた。けれど、先日のあのことがあって、プランを変えた。


予定より少し早いけれど、プロポーズをして伴侶の契りの儀式をする。
美里には言っていないけれど、遅かれ早かれ儀式をすることは美里も承知している。
ただ、その時期が結婚式と重なるかズレるかの差だ……と思っている。


「おはようございます。社長」


インターホンを押すと間もなく美里が出てきた。
早くから準備してくれていたのか、手には少し大きめのバッグがあり、出発準備も出来ているようだ。


「これ、変じゃないですか？」


仕事ではほぼパンツスーツで、私服もあまりスカートは履かないと言っていたけれど、今日はシンプルなワンピースと、ウエスト丈のレザージャケットを組み合わせた、今まであまり見たことがない雰囲気だ。


「社長？やっぱり変ですか？ワンピースの上着って、組み合わせが難しくて…やっぱり変えてこようかな…」


ぶつぶつ言いながら部屋に引き返そうとする美里を引き留め、忘れ物がないか確認させ、駐車した車に向かう。
何も話さない俺に焦れたのか、助手席に座ってどうしたのか聞かれたが……


「わるい…あんまりかわいいもんで見惚れた」


お互いにとって言い慣れない・言われ慣れていない言葉だったせいか、思わず二人で赤面してしまった。
恥ずかしくて思わず下を向いてしまったけれど、チラッと見えた美里の赤面した顔がかわいくて…


「美里…かわいい……」


心の声がそのまま声に出てしまった。