人外さんに選ばれたのは私でした ~それでも私は人間です~

こひな

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少し気温が下がってきたような感じがしたので、姉の車いすを押して病室に戻る。
涙を堪えているのだろう姉は、キッと唇に力を入れ俯いたまま……。


一見鷹揚に見える姉だけど、実はかなり細かい性格で我慢強い。まぁ、父と母の子で長女だ。昔から今と変わらずほぼ家にいない父に代わり、必然的に母のフォローをするようになった。


私個人的には、なるべく良い子でいたつもりだけど……どうだっただろう?あまり自信が無い。弟の勇樹は末っ子を地でいったタイプで、甘え上手でやんちゃ。


姉は私と三歳しか離れていないのに、母に上手く甘えられない私を、上手に誘導してくれたりしていた。姉はその頃から私と勇樹の前で泣かなくなっていた気がする。


さすがに、母方の祖母…おばあちゃんが亡くなった時には大泣きしていたが、私が覚えているのはそれぐらいだ。
きっとその頃から、私達妹弟きょうだいにも母にも弱音を吐かずいたのだろうから、今回もきっとその口だろう。


「お姉ちゃん…私も結構いい歳だと思うのよ。だから、お姉ちゃんの弱音ぐらい聞けるからね」


きっと、姉にとって私はまだ頼りないのだとは思うけれど、愚痴や弱音は聞ける。


「私が大変な時はまたお姉ちゃんを頼るから……ね?」


今のうちにめいっぱい恩を売って、あとで回収するからよろしく!と言ったら、俯いたまま涙をポトポト落としながら何度も頷いてくれた。


その夜はアパートに帰らず実家に帰った。
もちろん、姉のことを話す為に。
鉄は熱いうちに…善は急げというからね。



食後にリビングのソファで母に話したところ、姉の様子が少しおかしいことには気が付いていたそうだ。でも、家族限定で発動する意地っ張りもあったので、何となく聞けずにいたようだ。


美琴みこちゃんには今はマークさんがいるでしょ?あの子達、ホントに良い夫婦で、破れ鍋に綴じ蓋?っていうの?そんな感じなの」


ぽつりと落とした母の一言。


母よ……言いたいことは良くわかる。
良くわかるけど……『破れ鍋に綴じ蓋』って…もうちょい言い方があるだろう……と心の中で突っ込みを入れ、明日も仕事なのでタクシーでアパートに帰った。


帰宅後、病院に行った時にマナーモードにしたままだったスマホをチェックすると、マークと雪斗さんからそれぞれSNSでメッセージが入っていた。


マークからは『(病院に行った日の)定期連絡がないけど、何かトラブルがあったのか?』という…まぁいつものやつだ。
とりあえず、"今日のお姉ちゃん"と題して写真添付で送った。


雪斗さんからは…
『ツヅキから聞いた。だいぶ気持ちが落ちていたようだと聞いたけど大丈夫か?病院に行くと聞いたので、今日はこれで先に休むけど、明日仕事が終わったら食事に行こう』


雪斗さんらしい絵文字も何もない文章に、ちょっと安らいだ。
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