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85~姉の出産~
しおりを挟むマークを叱咤激励し、さっさと同意書を出てこいと物理的に背中を叩き、送り出してから二日目の夜、マークから連絡が入った。
「美琴が出血した」
え?時期的にはまだ早いよね?
カレンダーを見て確認し、今の状況を聞く。
入院しているのだから、手遅れなんてことにはならないだろうけど……
⚫〇⚫〇
「急に腹が痛くなって出血したらしい」
マークから連絡を受けてすぐにアパートを出た。
タクシーで実家により母を拾い病院へ。
念の為、父や勇樹にも連絡をする。
駆け付けられなくとも、きっと知らされなければ怒るだろうし…そして、雪斗さんにも。
「雪斗さん?遅くにごめんね…。姉が出血してしまったの……うん…このまま帝王切開になるかもしれなくて……」
明日、出勤は難しいかもしれないので、そのこともお願いした。
何があるのか分からない状態で仕事出来ない気がするから…。
検査をして…このまま危ないようなら、処置から緊急の帝王切開に切り替えるそうだ。
ドキドキする心臓が痛い……気がつけば看護師さんの手術室への出入りが多くなってきた。
多分、このまま帝王切開になるんだろうな…ぼんやりと『手術室』と書かれた点灯版を見る。
多分…お姉ちゃんとあと一人の子は無事朝を迎えられるだろうと思う……けど。
思わずため息が出てしまい、ハッとして周囲を見て、誰も私を見ていないことに、ちょっとホッとする。今は私が不安になっていてはいけない。
マイナスな考えはマイナスを引き寄せてしまう。本当はそんなことはないのかもしれないけれど、少しでも良い方向に行くように……。
私より不安であろうマークは、祈るように組んだ手を、額にあて何かを呟くマークが見えた。
彼は彼なりにお姉ちゃんと赤ちゃんを応援しているんだ……。そう思った時、耳元で自分の名を呼ばれた気がして視線を上げたら、定位置となっていた右肩に久しぶりに気配を感じた。
『美里……応援に来たぞ。俺は腹の中の赤ん坊を少し手伝ってやるくらいしか出来ないが……』
そう言って、妖精バージョンの雪斗さんが処置室の中に消えていた
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