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87~義姉の出産~
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美里は姉の美琴が双子を腹に抱えていると判ってからだいぶナーバスになっていた。
おそらく、自分と重ねている部分も多大にあるだろう。
「社長、渡利様の体調がただ今不安定になっておられます。恐らく何らかの出来事がきっかけで、もしかしてですが、身体が変化しているのかもしれません」
そう忠告され戸惑った。
変化にはまだ早い。もしこのまま変化が一気に進みだしてしまったらそれは、美里の人間の生の終わりだ。
人間の生の終わりー…
俺と…人外の俺と伴侶の契りを結んだ美里にとって、確実な『死』ではないけれど、多分きっとそれは違うのだと思う。できれば普通に人間としての生を終えてから、再び俺との…人外としての生を歩んで欲しいと思っている。
ならその憂いを晴らしてやればいい……。
そう悩んでいると、ツヅキが一つ提案をしてきた。
「では……渡利様の甥御か姪御様になるかと思いますが、弱っている赤子に力を…ほんの少し注いでみてはいかがですか?通常の人間にとっては強すぎる力ですが、弱った赤子になら生き延びた後は他の人間より多少強く…多少長く生きる程度になるかと思いますよ?」
そう言って、美里の姉…俺の義理の姉の入院先を記入したメモをよこした。
ニッコリと胡散臭い笑みを見せ、『いってらっしゃいませ』と一言いって俺を送り出した。
●○●○
「美里……応援に来たぞ。俺は腹の中の赤ん坊を少し手伝ってやるくらいしか出来ないが……」
眉間にしわを寄せ、ジッと処置室を見ている美里に…人間には目視出来ない姿で囁いた。
そしてそのまま処置室に行き、義姉の元に飛ぶ。
青ざめた顔で診察台に横たわる義姉と、少し離れた所に同じように青ざめた顔で立ち尽くす義母。
どちらも、顔色だけ見ると負けず劣らずの体調かも知れない……けど。
「先生、胎動も少なくなっています…それと、胎児の心音が微弱です」
何やら色々な機械で赤子の様子を見ていたと思われる看護師が叫ぶ。
だいぶ危ない事がすぐに分かり、急ぎ義姉のところに飛ぶ。
人間とはまた違う身体だけど、腹の中に入って赤子に直接触れられるわけではない。
それに、透視を使えるわけでもない。
人外にも色々いるが、俺はきっと無力な方だ。
魔法のような力も無いしな……けど。
雑念を払い、手のひらに力を集中させる。
さっきエコー画像を覗き見た時に覚えた、弱っている赤子を頭に思い浮かべ、義姉の腹に手を当ててゆっくりゆっくり力を注ぐ。
「先生!胎児の心音が確認できました。胎動も僅かですが確認できました」
力を注いだせいかすぐに効果が表れた。
次いで、義姉の陣痛がおさまったと確認が取れた時、医師が義母に状況確認とこれからの処置について話す。
今の状態での帝王切開なら、赤子の命の助かる確率が増えるらしいと聞いて、義母は青い顔をしつつ頷き、義姉はストレッチャーに乗せられ、手術室に向かった。
おそらく、自分と重ねている部分も多大にあるだろう。
「社長、渡利様の体調がただ今不安定になっておられます。恐らく何らかの出来事がきっかけで、もしかしてですが、身体が変化しているのかもしれません」
そう忠告され戸惑った。
変化にはまだ早い。もしこのまま変化が一気に進みだしてしまったらそれは、美里の人間の生の終わりだ。
人間の生の終わりー…
俺と…人外の俺と伴侶の契りを結んだ美里にとって、確実な『死』ではないけれど、多分きっとそれは違うのだと思う。できれば普通に人間としての生を終えてから、再び俺との…人外としての生を歩んで欲しいと思っている。
ならその憂いを晴らしてやればいい……。
そう悩んでいると、ツヅキが一つ提案をしてきた。
「では……渡利様の甥御か姪御様になるかと思いますが、弱っている赤子に力を…ほんの少し注いでみてはいかがですか?通常の人間にとっては強すぎる力ですが、弱った赤子になら生き延びた後は他の人間より多少強く…多少長く生きる程度になるかと思いますよ?」
そう言って、美里の姉…俺の義理の姉の入院先を記入したメモをよこした。
ニッコリと胡散臭い笑みを見せ、『いってらっしゃいませ』と一言いって俺を送り出した。
●○●○
「美里……応援に来たぞ。俺は腹の中の赤ん坊を少し手伝ってやるくらいしか出来ないが……」
眉間にしわを寄せ、ジッと処置室を見ている美里に…人間には目視出来ない姿で囁いた。
そしてそのまま処置室に行き、義姉の元に飛ぶ。
青ざめた顔で診察台に横たわる義姉と、少し離れた所に同じように青ざめた顔で立ち尽くす義母。
どちらも、顔色だけ見ると負けず劣らずの体調かも知れない……けど。
「先生、胎動も少なくなっています…それと、胎児の心音が微弱です」
何やら色々な機械で赤子の様子を見ていたと思われる看護師が叫ぶ。
だいぶ危ない事がすぐに分かり、急ぎ義姉のところに飛ぶ。
人間とはまた違う身体だけど、腹の中に入って赤子に直接触れられるわけではない。
それに、透視を使えるわけでもない。
人外にも色々いるが、俺はきっと無力な方だ。
魔法のような力も無いしな……けど。
雑念を払い、手のひらに力を集中させる。
さっきエコー画像を覗き見た時に覚えた、弱っている赤子を頭に思い浮かべ、義姉の腹に手を当ててゆっくりゆっくり力を注ぐ。
「先生!胎児の心音が確認できました。胎動も僅かですが確認できました」
力を注いだせいかすぐに効果が表れた。
次いで、義姉の陣痛がおさまったと確認が取れた時、医師が義母に状況確認とこれからの処置について話す。
今の状態での帝王切開なら、赤子の命の助かる確率が増えるらしいと聞いて、義母は青い顔をしつつ頷き、義姉はストレッチャーに乗せられ、手術室に向かった。
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