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しおりを挟むブライダルサロンでの事をすっかり忘れ、新幹線に乗ってとんぼ返りした私は、受付で都築川さんの所在を聞いて、急ぎ都築川さんが現在いるという、古書の店舗へ向かった。
「都築川さんっ!」
思わず大きな声で読んでしまって、慌てて口を閉じるも、当たり前だけど時すでに遅しで、都築川さんに『しーっ』っとやられた。
もう既にお客さんはいない時間だけど、遅番で残っているスタッフもいるのをすっかり忘れていた。
「渡利様…三日程泊まりだと聞いておりましたが、何か緊急事態でも?今朝出発したばかりですよね?」
そう言って、手に持っていた古書を棚に入れ、二人でフリースペースに向かう。
なんとなくだけど……もしかして、今会社に雪斗さんがいるのではないか?と感じた。
"今は会いたくない"という私の気持ちを汲んでくれたのだろう。
フリースペースのテーブルに座り、近くにいたスタッフにコーヒーをお願いして、少し落ち着くと、とんぼ返りしてきた理由を聞かれた。どういう風に説明したらいいのか、ここに来るまで考えたけれど、最終的に"考えてもしょうがない"という風に至った自分にがっかりしながら、今日会ったことを話した。
「ミヤコさんの姪という人に会ったのー…」
説明下手な私の話しを、最後まで黙って聞いた都築川さんは、最後に『なぜ渡利様が人外の私達と縁がある方だと思ったのでしょう?』と聞いたので、おそらく全員でないにしろ人外さんが見えているだろう事と、以前に行った際に、肩に乗った雪斗さんが見えていて、その雪斗さんの顔を見て、写真の男の子と似ていたことで、確実でないにしろ確信したらしい事も話した。
「ただね、ご病気らしくてあまり時間がないという事なの。二週間に手術らしいんだけど、それまでにそれらの行方を決めたいと……手術前に、その蔵の中を処分したいらしいの……」
それまで、私の話しをじっと聞いていた都築川さんは、一つため息をついて視線を上げる。
「解りました。まずはミヤコに聞いてみます。結果次第ではナヅナと聡を向かわせましょう。ミヤコ本人が行くのは難しいと思うので……」
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