私も異世界に転生してみたい ~令嬢やめて冒険者になります~

こひな

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42、魔力と精霊

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「マルスさん……何見てんですか?」


考え事しながら手当り次第薬草を取っていたら、マルスさんが私をじーっと見ていることに気が付いて聞いてみた。
多分……変な行動してないと思うんだけど。


「いや……お前凄いな。それ全部薬草か?」


右手にシャベル左手に薬草の状態で言われたので返事をすると、どうやって見分けているのかを聞かれた。
聞かれたけど……これって説明して大丈夫なのかな?と思いながらマルスさんに教える。


「なんて言えば良いんですかね……んーっと……こう…眼にチカラを入れるというか、魔力を込めるんですけど……そうすると植物とかの周りがうっすら光って見えませんか?」


うまく説明出来ず、どもりどもりだけど大丈夫だよね?
それでもって目の前には、眉間にシワを寄せうんうん言いながらマルスさんが頑張っている。
ちょっとカッコイイかも♪
っていうか、こういうのって一般的じゃないのかな?
なんて思っていたら……


「やはり、お前の魔力の使い方は独特だな?誰から習った?貴族だろうから学院か?」


眉間にシワを寄せ一点を見つめながら発した『貴族』『学院』というワード……。
やっぱり知っていたんだなぁ……と自嘲。
でも、それでもこうして一緒にいられるなら良いかと思い、話を続ける。


「学院ではまぁ、親を呼ばれない程度に勉強してましたけど、魔力の操作についてはほぼ独学ですよ?学校では魔術しか教えないし、そもそも入学時点で魔力操作は覚えているのが普通なんじゃないんですか?」


話をしながら、いつもの如く地中深くに根を伸ばす薬草採取の為、地中に魔力を流す。
今日もあっさり希少薬草をゲットして顔を上げると、文字通り『は?』という顔をしたマルスさんと目が合った。


は?
私、なんか変なこと言った?





●〇●〇●



『今回の子はどうなの?』


ジュリにくっついて来た僕は、久しぶりに森の奥の湖に来た。
フェンリル姿の僕に水の精霊オンディーヌは笑っていたけど、『そんな姿も可愛いわねぇ』と言いながら僕の周りを飛び始めた。言いたいことは分かる。だってこの姿、フェンリルは風の精霊の眷属だ。
光の精霊である僕が……とは思ったのだけど、ジュリの…彼女の心の中を少し覗いたときに見えたのがこの姿だったのでしょうがない。人間らしく言えば『お陰様で無事受け入れてもらえたよ』という感じだ。


『ところで、今度の子には名前は呼んでもらえそうなのかしら?』


精霊は本来、大精霊以外名を持たない。
けど、僕には名前がある。
何故かは分からない。
けど、光の大精霊は知っているようだった。


『選ばれた子よ、あなたの好きに動きなさい。そして、あなたの名を呼べる人の子を導きなさい。さすれば世は光に包まれるでしょう』


そうお告げみたいに言われたけど、良くわからないのでとりあえず、好きに生きてみることにしたんだ。
この間の子は、最初はピカピカした魔力の持ち主で、すっごく傍にいるのが楽しかったんだけど、あっという間に光らなくなっちゃった。名前も呼べなかったし……。


けどけど、今度の子はすぐに名前を呼んでくれたんだよねぇ~♪
うれしかったんだぁ。
けど……


『ねぇ、オンディーヌ。今度の子はね、何にも欲しがらないんだよ。どうしたらいいと思う?僕にはね、ソラが一緒にいてくれるだけで癒されるっていうだけなんだよ?』


今までの子はみんな、魔力が欲しいとか、番の心が欲しいとかって言ってたのに。
前の子は……確か、この国の王妃になりたいって言ってたなぁ。
だから、好きな男の周りの女を排除すれば王妃になれそうだねって言ったら、『実行に移せるチカラが欲しい』って言われた。そんなチカラ、望んでしまった時点で終わりなのにね……。


『あらあら、前の子には意地悪しちゃったの?』


クスクスと笑いながら言う彼女は、僕の言いたいことは分かるらしい。


『人間は欲深いものね……』


そう……人間は欲深い。
ジュリは……どうだろう?
僕の名前を呼んでくれた二人目の人間の子。
今度こそ………。
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