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来訪者は突然に 2
しおりを挟む滅多な事では声を荒らげる事のない夏樹の悲鳴に似た声。
何事!?
えっ?もしかして強盗とか!?
どうするっ?どうするっ⁉
平和と普通を愛するオレなのにっ!
ここ最近、オレなんかしたか!?っつーのばっかなんですけど?
なんて考えてもしょうがない!
とにかく突撃あるのみ!
行けっオレッ!!!!
と……勢いつけてきたオレって場違いかも…
と思い始めてまだ数分。
なんでしょう…これ。
いざ気合いを入れて開け放した扉の中では、角に集まる子供を背に、動きやすいピンクのジャージ (職員の制服) を身にまとった、夏樹。
その夏樹の前に跪き、何かを訴えているかのような鎧騎士。
そう…鎧騎士(よろいきし)ですよ奥さん。
まだ夢でも見てるんじゃないかと思って、ほっぺを抓(つね)って見たけど痛かった…(涙)
気を取り直して、もう一度鎧騎士を見る。
どうみてもコスプレとは違う本物感。
夢でもなんでもなく…これ間違いなく、十中八九異世界関係者ですよね…。
思わず、唸りながら頭を抱えたオレを誰も責められないよね?これ…。
⚫〇⚫〇⚫
ピンクジャージに鎧騎士...。
え?ハロウィン?学祭の仮装?
なんとなく正体に推測をつけてるオレには、かなりシュールな図だけど…見ず知らずの夏樹や孤児院のガキ共から見たら…...。
不審者以外に何もないわな…。
にしても……どうなってんの?これ?
母さん呼んだ方が良いか?
と思考回路フル回転してたら、乱入してきたオレに気が付いた夏樹と鎧騎士が同時に叫んだ。
「カイト!」「ハルト殿!」
「ん?ハルト??」
数分前まではかなり緊迫していたはずの孤児院が、動物園みたいになってる...のは、気のせいでもなんでもない。
さっきまで夏樹の前に跪いていた鎧騎士の正体は、なんと獣人でした。それも熊。
頭部の鎧(兜で良いのか?)を外したら、なんと...短く刈り込んだ頭髪の間からブラウンの丸い耳がひょっこり。
おう...なんてファンタジー……。
体格も相俟って、威圧感バリバリかと思いきや、孤児院のガキ共のジャングルジムみたいになってるし。
ふれあい動物園?そんな感じ。
で、当の夏樹はオレに隠れてフーフー言っている...。
どっちかってぇと、こっちの方が獣人(猫)っぽく感じるのはオレだけか?
まぁ、夏樹は昔から警戒心が強くて人見知りだったし。
仲良くなれた頃には、卒業ってパターンの夏樹には十分警戒の対象だよな。
「で...不躾で申し訳ないのですが…ハルト...殿ではないのですか?」
キースさん(鎧騎士)が切り出した。
ん~...ハルト...ねえ?もしかして、オレの父ちゃんか?
「その話はマリアが来てから聞いてくれるか?実際オレも、そちらさんの事情やら何やら、あんま聞いてないしさ」
知らない人の名前を出されてもね。
母親にも、その辺はデリケートそうだったので聞けてなかったし。
とにかく、今は夏樹だ。
なんだか夏樹も関係者っぽいし。
落ち着かせないと、パニック起こしそうだしな。
「夏樹?もう大丈夫だからな?一緒だから、そんな警戒すんな」
フーフー言ってる夏季を軽く抱きしめて、ゆっくり頭を撫でる。
こうやってると、いつも警戒心を解いていく夏樹。
鎧騎士がなんかあわあわしてるが、気にしない。
気にしたら負けです。
今は夏樹優先で……。
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