地球は世界のまんなか…じゃないらしい

異世界感高まってます １

母さん到着。
で...キースさんは...颯爽と別室に連れて行かれた。
 
え？ウチのおかん最強説？
いつもの天然ぽやぽやの母親からは想像もできない笑を..浮かべてたなぁ…。
いやいやあれは怒ってたのか？
人生経験が少ないオレでも、あの手の笑みを浮かべた女には近寄っちゃいけないくらいは判る。
例え母親であろうとも。
 
ぽやぽやしてるのしか見たことないから、若干ではあるが、怖いもの見たさで覗いてみたい気もするけど…オレの感が告げている...＂触らぬ神に祟りなし＂だ。
 
 
で、肝心の夏樹はと言うと…気を張りすぎてオーバーヒートしちまったのか、無防備にもオレの腕の中でスヤスヤと寝息をたてている。
オレも一応は健全な男子高校生なんだけど。
なんてオレの中の欲を呟いてみたりして。
 
美人だけど可愛くて。外見だけならモテモテなのに、境遇故の警戒心持ち。
今こうしていられるのは、幼馴染だからだ。
 
まだ先の事だし…と思って誰にも、もちろん夏樹にも言ってなかったけど、オレの人生設計にはこいつも必要なんだよな。
 
けど...な、どうしたものか。
オレの＂引越し＂は確定事項。
孤児だけど...オレが勝手に決めたパートナーだけど、連れて行くのは無理だと思っていた……が、どうも関係者っぽいんだよな。
 
どうすべきか。
このままの流れに乗ってしまうと、夏樹の心の平穏は遥か彼方だ。
 
とりあえず、キースさんと母親の打合せ(いや...あれはO・HA・NA・SI だな)次第か……。
まぁとりあえず、問題は一旦棚上げして、夏樹の寝顔を堪能...いやいや...見守るとしよう(汗)
時間はもう少しある。
連れて行くにも置いていくにも、時間を掛けて夏樹の心を守らなくちゃな。
 
 
 
 
 
⚫〇⚫〇⚫
 
 
 
 
それから1時間……。
やはり＂O・HA・NA・SI＂だったかと、誰もが見てわかる萎れっぷりのキースさんを引き連れ、母さんが戻ってきた。
 
 
「ナツキ様、カイト殿...その...申し訳なかった！！」
 
絶賛土下座中のキースさん。
あの鎧はどこいった？とか、その服自前？とか、耳は？耳は？
という色々な疑問は、多分恐らく＂Oh、ファンタジー＂の一言で片付けても良い問題なんだろう。
と...母さんの目が語っている。
聞いちゃいけないらしい...まぁ、少なくとも今は。
 
とりあえず、人が多いので我が家に移動して話す事になった。
もちろん夏樹も連れて。
 
夏樹が休んでいる間、準備していたどら焼きを持って、孤児院の隣の大家のばあちゃん家に行ってきた。
＂引越し＂の件と...もちろん夏樹の事も。
相談大事...これ絶対。
なんてったって、ばあちゃんはこの地球での夏樹のお母さんだから。
根回しはしっかりしないとね。
(腹黒じゃないよ…決して)
 
連れて行くにも、置いていくにも。
傍にいてもいなくても、大事な女性だから。
自分で言ってて恥ずかしいけど。
 
この歳でこんな重大な決断をする羽目になるとは思わなかったけど。
まぁ、多分、遅いか早いか位の差だろう。
夏樹の事が好きなのは、もう随分前からの事だから。
 
願わくは、夏樹も同じ想いであって欲しい...というのはオレの我儘かもしれないけど。
 
今はとにかく、何よりも先に、夏樹に話さないと。
はっきり言うとプロポーズに近い...からな。
異世界に一緒に行ってそれで終わりじゃない。
 
オレの気持ち。
夏樹の気持ち。
これからの事。
そして恐らく…夏樹の出自も。
 
泣くかな？
引くかもしれないなぁ？
呆れられるかな？
オレの気持ち、受け取ってくれるかな？
 
オレも不安。
夏樹も...きっと不安だろうな。