地球は世界のまんなか…じゃないらしい

こひな

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異世界感高まってます 2

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「母さん、皆で話す前に夏樹にちょっと話があるんだけどいいか?」
 
玄関の鍵を開けている母親に話しかける。
「もぉ~カイちゃん、母さんじゃなくてマリリンでしょぉ~」
と、頬を膨らませプンプン怒っている。
かわいい...くはないぞ。
うん……きっと多分、あれが巷で噂の"美魔女"って奴だ。
オレは思った事なかったけど、確か学校の奴等言ってたな。
ウチの母親も美魔女だって。
当たらずも遠からず?いや、当たってた?
"魔女"じゃなくて"魔導士"だったけどな。
 
 
そもそも、母さんを見慣れているせいか、オレの美の基準が若干、周りの奴等より上方修正されているらしい(友人談)
自由登校前に、学校で1番かわいい女子(これも友人談)に告白されても、特に何とも思わず、はっきりスッパリ、即答で断った。
だってな、考えても見てくれ。
「ずっと好きだった」なら、なぜもっと前に言ってこない?受験前だなんだと言っていたが…その自由登校に入る前だって、受験前だろっ!って感じ。
( ※ ちなみにウチの学校は1月の中頃には自由登校。日数単位足りなかったり、テストの追試だったりはこれ以降個人対応なんだよね)
 
 
まぁ、そんな事もあったけど、何よりもオレの1番は夏樹なわけで...情けない...とは思わないけど、身も心も清らかな18年を送ってまいりましたよ。
興味が無かったわけじゃないよ…ホント。
正常ですよ。色々と。
雑誌とかネットとかね...まぁ、色々と手助けはあるからね…ゴニョゴニョ...。
 
 
この想い(重い?)が夏樹に伝われば…...なんて、思わず自分の世界にダイブしそうになっていたそんな邪眼よこしまなオレに、衝撃の出来事が...
 
 
「あの...カイ...ト?マリリンって...?」
と、オレのシャツの裾をつんつん引っ張る夏樹。シャツをツンツンするナツキ...シャツツンツン...
 
 
ヤバイ、カワイイ...
どうしよう...置いていける...手放せる自信がない。
 
 
この一瞬で置いていく選択肢が消えた事は言わずもがなである。
説得?アプローチ?いや、いっそプロポーズも有か。頑張れオレ!である。
 
 
 
⚫〇⚫〇⚫
 
 
 
 
気合を入れる。それとなく。
入れすぎると怖がられる...というか、ダメだった時のダメージがハンパない気がする。
 
 
まずは…お茶でも持ってオレの部屋か?
 
 
「夏樹、お茶でいい?先にちょっと話したい事あるんだけど」
 
 
裾を摘んだまま、若干挙動不審気味の夏樹を見る。
……やっぱかわいい。
おずおずと頷く夏樹。
結構レアである。
 
 
まずい...ニヤニヤしそうである。
 
 
 
平屋の戸建ての借家。
小さいけど母子2人暮らしなので、これでも自分の部屋はきちんとある。
小学生までならまだしも、それ以上の年齢で母親と一緒の部屋ってキツイよな。
友達は弟や兄貴と一緒だって言ってたけど、何かある時は追い出されるらしい。
特に、彼女だったり狙ってる女子が来たりした後は微妙な気分だそうだ。
 
 
兄弟がいる友達が羨ましいと思っていた時期もあったけど、それを聞いてしまうと結構どん引きである。
ひとりっ子でよかったかも。
ひとりっ子バンザイですよ。
 
 
お茶のペットボトルを持って部屋に行く。
嬉し恥ずかし、初めてのお部屋ご招待。
夏樹も、心なしそわそわしている。
 
 
「初めて来たかも...カイトの部屋」
 
 
ぼそっと呟いた。
気のせいか少し顔が赤い?え?照れてる?
夏樹の一挙手一同に、これからの事、今日の事...話したあとの返事を期待してしまう。
落ち着けオレ。早まんなオレ。
 
 
 
 
落ち着かない自分は置いておいて……
「夏樹...大丈夫か?少しは落ち着いた?」
 
 
言葉に出すと…なんか白々しい気がするけど、的確な言葉が見当たらない。
ちなみに...掃除は昨日やったばかりだ。
荷造りと共に同時進行中。
オレってできる男!
 
 
なんて心中自画自賛してたら、夏樹の視線が1箇所で止まって動かない。
Oh!荷造りした物が順調に積み上がってますよ。
"お引越し"の話はこれからなのにーっ!
まずい...不味いよ!夏樹の目が...目が座り始めてる!
 
 
「ねえ…カイト、進学予定の大学って、隣町の大学だって言ってたよね。それとも進路変更して県外とかにしたの?レベル的に、隣町の大学でも余裕だって言ってたよね?それとも突然バカになったの?」
 
 
普段なかなか聞けない夏樹の毒舌が、折り込まれてますよ。
ブラック夏樹降臨?
 
 
「いや...夏樹?今から説明するから落ち着け?な?」
 
 
ブラックになりつつも、少し涙目。
やっぱかわいい...
 
 
ニヤニヤしそうになるのを抑えて、ベッドに座る夏樹の前に……隣は...気持ち的にまずいので、床に座る。
目線はずれるけど、この方がいい。
 
 
「あのな?その事とか...まぁ、今日の事とか色々と話を聞いてもらいたいのと...オレの事とか……ん~~...とりあえず、順番に話するから、怒んな。泣くな。な?」
 
 
泣くのを我慢する夏樹に触れたくて、夏樹の前に跪くような格好になってしまったのは不可抗力だ。
だから、まるで結婚を申し込む様になってしまったのも狙ってではない...決して。
 
 
「あのな、突拍子もないって思うような事言うけど、冗談でもなんでもないから」
 
 
そう前置きをして、数日前に母親の記憶が戻ったこと。
実はこの世界の住人ではない事。
生まれた世界に帰らなくてはいけない事。
自分1人、こちらに残る選択肢もあったけれど、ここまで育ててもらった恩もあるし、親だから。迷ったけど、自分も一緒に行く決心をした事。
その事があり、受験・進学を取り止めた事。
今日はその事を話に、大家のばあちゃん家に行った事。
 
 
順を追って、なるべく端的に話した。
余計な言葉が入ると、ややこしくなりそうだったから。
夏樹は...口を挟まず、微動だにせず自分の膝の上に置いた、ぎゅっと握ったこぶしを見て視線を動かさない
夏樹の心の動きが判らず、これから話をする内容が、受け入れてもらえるのか…。
断られる事を考えると心が折れそうになる。
けど...
 
 
「でな?オレ...夏樹にも一緒に行ってもらいたいんだ。オレの我儘なのは解ってるんだ。けど、オレ...夏樹とはずっと一緒にいるもんだと思ってたんだ。断られるかも...とは思ったけど、言わないで会えなくなるのは嫌なんだ」
 
 
顔を上げ、目を見開いた夏樹と目が合う。
 
 
「こんな形で、これからどうなるか判らない状態で言っても呆れられるかもしれないけど…オレと結婚して、ずっと一緒にいてくれないか?オレのパートナーになってくれないか?」
 
 
見開いた目からポロポロと涙が零れる。
これはどういう意味の涙だろう。
判断がつかないけど…
 
「指輪も何もないけど、一緒にオレと異世界に行ってくれないか?」
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