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後始末はしっかりね? 2

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「何がどうなってこうなってんの?」
 
 
素直なオレの心の呟きが口に出てしまった。
あんぐりしてるオレを見て、夏樹が笑ってる。
 
 
「あっ!カイト!こっちこっち!」
 
 
航太がオレ達を見つけて、ピョンピョンしながら手を振っている。
お前は女子高生かって突っ込みたくなる…いかつい男がやらないだけましか…と思いつつ、武道館の壁伝いを歩き、航太がいる場所…ハルトさん側の応援席?に来た。
 
 
ちなみに…女子高生に交じり、事務のおばちゃんや女の先生も一緒になってきゃあきゃあしながら試合を観戦しているのはなぜなんだろう。
 
 
疑問が顔に出たのか、航太が色々と説明してくれた。
「いやね…校内の見学してる時にね、やっぱり目立っちゃってさ。見学終わってあとは部活だけちらっと見て帰ろうかと思ってたんだけどね…」
 
 
そう言った航太の視線の先には居合部のコーチと顧問が、実にいい笑顔でサムズアップしていた。
 
 
マジですか…って感じ。
 
 
オレ達が卒業してまだ1月位しか経っておらず、今はちょうど新入生の入部申し込み時期。
毎年勧誘せずとも程々入部のある合気道部だけれど、今年はなぜか入部希望者があまりおらず、おまけに、今までいた部員も辞めてしまったりして、廃部まではいかなくとも愛好会になってしまうんではないかという人数までに減ってしまったらしい。
 
 
コーチ曰く…多分、原因は長峰率いる取り巻きの影響がかなり大きいのではないかとの事。
本来、合気道は相手の力を利用して戦う競技で、よく女の人が護身術で習ったりもしていて、オレやコーチが所属していた団体にも、女の人が結構いた気がする。
 
 
なのに…である。
新入生歓迎会の部活動のアピールの時に、あろうことか柔道部か応援団の間違いなんじゃないの?というアピールをやったらしい。
おまけに、その歓迎会に向けての練習が原因で、今までいた部員がごっそり抜けたらしい。
まぁ、その辺の事情は卒業生のオレ達の関わる事ではないのだけれど…人数が減ると、個人戦はなんとか行けても、団体戦は出られない…それがあり随分悩んでいたそうだ。
 
 
愛好会になってしまうと、おのずと学校からの補助も減り、ほぼボランティアで来てもらっているとはいえ、コーチを頼むこともできなくなるらしい。
コーチはまだいいが、顧問にとっては大問題である。
なにしろ、オレ達の時もそうだけど、そもそも居合の経験者だっていう先生に会ったことがない。なので、部活に顔は出せても指導はできず…今の状態では、どちらかというと、生徒に指導される立場になってしまう。
 
 
まぁ…これじゃあ普通はダメなわけで…。
コーチと顧問とで悩んでいたところに、航太とイケメン外国人がタイミングよく現れ…客寄せパンダよろしく、体験入部的な事をやった結果が今のこれ。
 
 
 
説明されてもイマイチ、なぜにこの状態なのか理解できないオレだけど…判る事は一つある。ハルトさんが楽しそうだってことだ。
 
 
ここに来る前に、航太が事前に説明をしていたようで、‶武道″にすっごく興味を持っていたらしい。オレが段持ちだと言ったら、自分もやりたいとノリノリで貸してもらった道着に着替えたらしい。
 
 
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