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第三章 蜘蛛女
狼さんは許さない
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油断しきっているミカが上機嫌でリカを捕まえていた時、ユウトの体に異変が起こっていた。華奢な少年の体が逞しく盛り上がっていきユウトを縛っていた蜘蛛の糸がはち切れて、みるみるうちに成人男性の姿になっていく。使い魔の儀式の副作用で少年時代の姿になっていたユウトが本来の姿に戻ったのだ。
意識を取り戻したユウトの耳には、リカに語りかけるミカの残酷な言葉が聞こえてくる。
(なんてひどい事を……。許せない……)
許せないという気持ちが強くなるにつれ、ユウトの肉体はさらに逞しく盛り上がり、頭には獣の耳が、手足には鋭い爪と体毛が生えてきた。
その姿はまさしく狼人間であった。
立ち上がりミカの方へと近づく。
「許さない……俺はおまえを許さない!」
こちらを向いたミカの頭を大きな手で掴む。強い力でそのまま持ち上げられたミカは思わずリカを離していた。
ユウトはミカをドアとは反対側の壁に向かって、大きく振りかぶって投げた。壁へと激突して大の字になっているミカは、まるでハエ叩きで潰されたハエのようであった。
「ユウトくん……だよね?」
「リカちゃんは早く逃げるんだ」
「私……」
ユウトはリカの返事を待たずにミカの方を向く。ミカは咳き込みながらも既に立ち上がっていた。
「ゲホッ……狼? よく分からないけど――!」
そう言ってミカは蜘蛛の糸を放つ。
その糸をユウトは右腕を前に出して受け止め絡ませた。
それから腕を振り上げる。
それによりミカが宙に浮く。
次にユウトは思い切り腕を振り下ろしてミカを床に叩きつけた。続けて右にも、左にも叩きつける。
このままでは完全に叩き潰されるという所でミカは、意識を失う前になんとか爪で糸を切断して体勢を立て直そうとする。
倒れているミカに追い打ちをかけようとユウトが軽く飛んで拳を打ち下ろす、が、ミカは間一髪転がって避けて、そのまま窓の外へと逃げる。
急いで後を追おうとするユウト。
「駄目!」
リカが叫んだ。と、同時に生まれて初めて蜘蛛の糸を発射していた。ユウトに糸を絡ませて後ろへと引っ張る。
ユウトがリカに引っ張られて尻餅をついたその時であった。
「ガアアア!」
窓の外からミカが大きく口を開けて、ついさっきまでユウトの頭があった位置に飛び出してきていた。
もしも、リカがユウトを後ろに引っ張っていなければ、今頃はミカに噛みつかれて顔から消化液を注入され、頭の中身をグズグズに溶かされていただろう。
ユウトは床を蹴って後ろへ飛び、距離をとってから立ち上がった。
ミカも立ち上がりユウトを見据える。
「あんただって人間じゃない癖に……。狼が正義の味方気取ってんじゃないよ!」
ミカが勢いよく飛びかかる。
フーコはマンションに向けて車を走らせていた。
「フーちゃん、ここで停めて」
リリカに言われてフーコは公園の近くで車を停めた。サラリーマンがミカに食べられた公園である。
「どうしたの? ママ?」
「ここから狙うわ。サポートお願いね」
リリカは公園の中で一番大きな木を指差した。作戦を理解したフーコが頷くとリリカはすぐに木の頂上へ飛び乗り、左手をスコープ付きのスナイパーライフルへと変化させてマンションの方角へ構える。
フーコは意識を集中してユウトの見ている光景を見る。ミカがユウトの足に六本腕でしがみつき噛みつこうとしているのをなんとか押し止めている所であった。
「フーちゃん、準備できたわ。ユウトくんに伝えて」
「わかった、ママ」
リリカの狙撃の準備が出来たようだ。フーコはテレパシーでユウトに伝える。
「ユウトくん、そのまま動かないで。後、目をつむった方がいいかも」
ユウトは不思議に思いながらも指示に従い、ミカを押さえたまま動かないでいた。すると、鋭く風を切る物がミカの頭に当たった。リリカの狙撃が成功したのだ。
特別な弾丸は頭から体の中心へと移動する。その際にミカの体は異常な痙攣を起こす。そして弾丸は破裂し、ターゲットの肉体だけを爆発四散させる。
部屋中にミカだったモノの血と肉と内臓が飛び散った。それらはしばらくすると黒い灰に変化し、風に舞って消えていった。
「さよなら、お姉ちゃん……」
意識を取り戻したユウトの耳には、リカに語りかけるミカの残酷な言葉が聞こえてくる。
(なんてひどい事を……。許せない……)
許せないという気持ちが強くなるにつれ、ユウトの肉体はさらに逞しく盛り上がり、頭には獣の耳が、手足には鋭い爪と体毛が生えてきた。
その姿はまさしく狼人間であった。
立ち上がりミカの方へと近づく。
「許さない……俺はおまえを許さない!」
こちらを向いたミカの頭を大きな手で掴む。強い力でそのまま持ち上げられたミカは思わずリカを離していた。
ユウトはミカをドアとは反対側の壁に向かって、大きく振りかぶって投げた。壁へと激突して大の字になっているミカは、まるでハエ叩きで潰されたハエのようであった。
「ユウトくん……だよね?」
「リカちゃんは早く逃げるんだ」
「私……」
ユウトはリカの返事を待たずにミカの方を向く。ミカは咳き込みながらも既に立ち上がっていた。
「ゲホッ……狼? よく分からないけど――!」
そう言ってミカは蜘蛛の糸を放つ。
その糸をユウトは右腕を前に出して受け止め絡ませた。
それから腕を振り上げる。
それによりミカが宙に浮く。
次にユウトは思い切り腕を振り下ろしてミカを床に叩きつけた。続けて右にも、左にも叩きつける。
このままでは完全に叩き潰されるという所でミカは、意識を失う前になんとか爪で糸を切断して体勢を立て直そうとする。
倒れているミカに追い打ちをかけようとユウトが軽く飛んで拳を打ち下ろす、が、ミカは間一髪転がって避けて、そのまま窓の外へと逃げる。
急いで後を追おうとするユウト。
「駄目!」
リカが叫んだ。と、同時に生まれて初めて蜘蛛の糸を発射していた。ユウトに糸を絡ませて後ろへと引っ張る。
ユウトがリカに引っ張られて尻餅をついたその時であった。
「ガアアア!」
窓の外からミカが大きく口を開けて、ついさっきまでユウトの頭があった位置に飛び出してきていた。
もしも、リカがユウトを後ろに引っ張っていなければ、今頃はミカに噛みつかれて顔から消化液を注入され、頭の中身をグズグズに溶かされていただろう。
ユウトは床を蹴って後ろへ飛び、距離をとってから立ち上がった。
ミカも立ち上がりユウトを見据える。
「あんただって人間じゃない癖に……。狼が正義の味方気取ってんじゃないよ!」
ミカが勢いよく飛びかかる。
フーコはマンションに向けて車を走らせていた。
「フーちゃん、ここで停めて」
リリカに言われてフーコは公園の近くで車を停めた。サラリーマンがミカに食べられた公園である。
「どうしたの? ママ?」
「ここから狙うわ。サポートお願いね」
リリカは公園の中で一番大きな木を指差した。作戦を理解したフーコが頷くとリリカはすぐに木の頂上へ飛び乗り、左手をスコープ付きのスナイパーライフルへと変化させてマンションの方角へ構える。
フーコは意識を集中してユウトの見ている光景を見る。ミカがユウトの足に六本腕でしがみつき噛みつこうとしているのをなんとか押し止めている所であった。
「フーちゃん、準備できたわ。ユウトくんに伝えて」
「わかった、ママ」
リリカの狙撃の準備が出来たようだ。フーコはテレパシーでユウトに伝える。
「ユウトくん、そのまま動かないで。後、目をつむった方がいいかも」
ユウトは不思議に思いながらも指示に従い、ミカを押さえたまま動かないでいた。すると、鋭く風を切る物がミカの頭に当たった。リリカの狙撃が成功したのだ。
特別な弾丸は頭から体の中心へと移動する。その際にミカの体は異常な痙攣を起こす。そして弾丸は破裂し、ターゲットの肉体だけを爆発四散させる。
部屋中にミカだったモノの血と肉と内臓が飛び散った。それらはしばらくすると黒い灰に変化し、風に舞って消えていった。
「さよなら、お姉ちゃん……」
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