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コンビニからの風景
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自宅から歩いてすぐの堤防沿いに大きめのコンビニが出来た。
入り口からすぐ横にテーブルと椅子を備えた飲食専用コーナーがあって、気分転換に時折そこでカフェラテを飲みながらのんびりスマホをいじったり外の風景を見たりするようになった。
温かいカフェラテを啜りながら目の前の道路に色々な車が通り過ぎて行くのや、道路を挟んである堤防でジョギングや犬の散歩をしている人々を見ているとなんとなく浮世離れした気分になる。
そんなある日。
コンビニ側から信号を渡ると堤防に上がれる入り口があるのだが、坂道を上り下りする人々とは別に一匹の犬がいつも何かを待っているように座っている事に気づいた。
ジャーマン・シェパード・ドッグだ。
一般的にはシェパードとだけ呼ばれていて警察犬のイメージが強い犬種である。
赤い首輪をつけていてそれには見覚えがあった。
近所に住んでいた吉田さんが飼っていたジョンだ、何度か触らせてもらった事もある。
でも、その吉田さんとジョンは1年ほど前にひき逃げにあって亡くなったはずだ。
ちょうどそこの信号で。
だから最初はよく似た別の犬だと思っていた。
だけど、近づいて確かめようとしたらいつの間にかいなくなっていたり、ある時はジョギングをしている人がそこに犬なんて居ないかのようにそのまま通り抜けていったりするのを見てその子がこの世のものではないのがわかったし、やはり見覚えのある首輪をつけた幽霊のシェパードとなるとジョンだなと確信した。
しばらくはコンビニでカフェラテを飲む度にジョンを見ては懐かしいような切ないような気持ちになっていたが、そんな日々に終わりが訪れた。
その日もいつも通りぼんやりとジョンを見ながらカフェラテを飲んでいたが、ジョンが急に道路に飛び出し猛スピードで走っていた車の運転席に向かって飛びついた。
車は勢い良くガードレールに突っ込むと動かなくなった。
予想外の出来事に驚いて少しの間体が固まっていたが、誰かが既に通報していたのか遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
平静を取り戻してから事故現場をじっくり見てみる。
車の前半分は完全にグシャリと潰れている。
あれでは恐らく運転手は即死だろう。
車はよく見ると派手な改造が行われていて、いかにも普段から派手に飛ばしていそうな感じだ。
実際にさっきも明らかに常軌を逸したスピードで走っていたし。
もしかすると、この車の主が吉田さんとジョンを轢いた犯人なのかもしれない。
ジョンがずっとここに居たのは主人の仇討ちの機会を待っていたからだったのか。
その日の夜。
干しっぱなしにしていた洗濯物をしまいに窓を開けたら吉田さんとジョンが散歩をしているのを見かけた。
この世への未練がなくなったジョンを吉田さんが迎えに来たのだろうか?
なんだか少し涙が出た。
後日、またコンビニでカフェラテを飲みながら外を見ているとそこにはもうジョンは居なかった。
その代わり、体が不自然にぺしゃんこになっている血まみれの男が虚ろな目付きでフラフラと歩いているのが見えた。
それからはカフェラテはお持ち帰りにしている。
入り口からすぐ横にテーブルと椅子を備えた飲食専用コーナーがあって、気分転換に時折そこでカフェラテを飲みながらのんびりスマホをいじったり外の風景を見たりするようになった。
温かいカフェラテを啜りながら目の前の道路に色々な車が通り過ぎて行くのや、道路を挟んである堤防でジョギングや犬の散歩をしている人々を見ているとなんとなく浮世離れした気分になる。
そんなある日。
コンビニ側から信号を渡ると堤防に上がれる入り口があるのだが、坂道を上り下りする人々とは別に一匹の犬がいつも何かを待っているように座っている事に気づいた。
ジャーマン・シェパード・ドッグだ。
一般的にはシェパードとだけ呼ばれていて警察犬のイメージが強い犬種である。
赤い首輪をつけていてそれには見覚えがあった。
近所に住んでいた吉田さんが飼っていたジョンだ、何度か触らせてもらった事もある。
でも、その吉田さんとジョンは1年ほど前にひき逃げにあって亡くなったはずだ。
ちょうどそこの信号で。
だから最初はよく似た別の犬だと思っていた。
だけど、近づいて確かめようとしたらいつの間にかいなくなっていたり、ある時はジョギングをしている人がそこに犬なんて居ないかのようにそのまま通り抜けていったりするのを見てその子がこの世のものではないのがわかったし、やはり見覚えのある首輪をつけた幽霊のシェパードとなるとジョンだなと確信した。
しばらくはコンビニでカフェラテを飲む度にジョンを見ては懐かしいような切ないような気持ちになっていたが、そんな日々に終わりが訪れた。
その日もいつも通りぼんやりとジョンを見ながらカフェラテを飲んでいたが、ジョンが急に道路に飛び出し猛スピードで走っていた車の運転席に向かって飛びついた。
車は勢い良くガードレールに突っ込むと動かなくなった。
予想外の出来事に驚いて少しの間体が固まっていたが、誰かが既に通報していたのか遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
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その代わり、体が不自然にぺしゃんこになっている血まみれの男が虚ろな目付きでフラフラと歩いているのが見えた。
それからはカフェラテはお持ち帰りにしている。
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