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13話

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 このイレギュラーであろう青年の情報は小さいものでもいいから少しでも欲しい。そのためにはこの強固な檻から脱出しなければならないが、少しでも体に力を入れようものならすぐに青年が起きてしまうだろう。
 何も良案が浮かばず、もうヤケクソ気味でリラックス効果のある魔法をかけてみることにした。浅い眠りだろうと、今は気が抜けているはず。そのわずかな緩みに多少の効果を得ることができれば御の字である。
 もう祈るように魔法をかける。青年にかけた魔法は無自覚に弟のカインが幼い頃になかなか寝付けずぐずっていた時などにかけていたものと同じものをかけていた。
 少しでも効いてくれればと念じながらかけた魔法は、驚くほど青年に馴染み次第に深く呼吸をし始める。青年は安心して熟睡していく。表情もおだやかなあどけないものになっており、体の力も少しだけ抜けている様子である。口元も少し口角が上がり、油断したように薄く開いている。
 幸せそうなその表情にニヴェンの顔も緩む。あれほど鬼気迫る表情をして、辛そうにニヴェンの体を貪っていた人物と同じであるとはなかなか思えないほどである。
 しばし青年の端正な寝顔に見とれていたが、カインのためにこの青年の情報を集めなければと、自身の体に回復魔法をかけて少しでも力を取り戻す。ゆっくりとなら動けるようになった体に鞭を打って、重量感のある筋肉で覆われている腕を持ち上げて抜け出す。すると、普段なら秘された場所に違和感を感じた。足が絡め取られて動かせないいのはわかるが、腰から動かせないのである。嫌な予感が頭を過ぎり、そんなわけはないとゆっくりと下をみる。
 現実は無情である。嫌な予感ほどよく当たると言った偉人は誰だと八つ当たりなことを思いながら、今度こそ大きなため息をついた。
 青年の逸物がニヴェンの秘所に栓をするように突き刺さったままであった。
 寝ているはずなのに青年の逸物は大きく硬く、熱い。むしろ今まで気がつかなかった方がおかしいのだと言わんばかりの確かな存在感に困惑したように眉尻が下がってしまった。
 青年から抜き出すには腕から逃れる時よりも大きな労力が必要となった。


 まず、少しでも動くと中が擦れそこから快感が体を熱くさせる。青年の激しい愛に慣らされてしまった体は少しの熱に反応し、青年を起こさんと積極的に動き始める。そんな全てを放り出して快感にふけりたい欲望を打ち捨てて、心を鬼にして青年の逸物と戦う。
 ゆっくりとだが少しずつ抜いていく。その間にもニヴェンの媚肉は中にいる青年の逸物を愛でることをやめない。逸物の方もいい具合に収まっていたのに、可愛らしく愛でられ、機嫌よく存在感を増していき、男らしさをアピールしてくる。中で答えるようにビクビクと動き始めてしまう。逸物が動き回るたびに小さくも快感が生まれ、抜けた奥が寂しそうに泣いている。引き抜いた腰にまた逸物を奥までうずくめたくなってしまう。
 ニヴェンの口から漏れ出る吐息は熱っぽい。これを青年が聞いたらニヴェンの行き先は快楽絶頂コースだろう。
 長い時間をかけて青年からほとんどを抜き出したが、最後逸物のエラが入り口に引っかかり、抜こうとすれば快感が体を走り力が抜けてしまい思うようにいかない。何度挑戦しても気持ちよっくて力が入らず、最後が抜けない。
 立ちはだかった大きな壁に為す術なく、ニヴェンの瞳に涙が滲む。
 くいくいと何度も腰を動かしてしまっているが、青年は逸物以外起きる気配はない。魔法が良く効いて深く熟睡しているようだ。
 ニヴェンはやさぐれた気持ちを入れ替えようと少し休憩していた時、青年の逞しい胸が目に入る。まだ若々しく針もある肌は汗をかいてベタついていてもいいはずなのに、潤いがあるだけですべすべとした感触を伝えてくる。
 前世が女性であっただけに、綺麗な肌というのは羨ましい。ましてやこの肌の持ち主は男性である。理不尽さを感じてしまう。気分を入れ替えようと休憩していたのに、逆に心はむくれてしまった。小さなささくれをくれた青年の胸に少し仕返しをするように青年の胸に跡を残そうと口づけをする。
 滑らかな肌は気持ちがいい。唇という敏感な場所を通して青年の肌の気持ちよさが伝わってくる。青年の肌の感触を確かめるように何度も口づけを落としていくうちに、心に刺さったささくれは綺麗さっぱり無くなっていた。
 自分を不快にさせた相手から機嫌を取られてしまった事態に思わず苦笑してしまう。
 左の胸を集中的に狙って跡を残そうと奮闘するも、若々しく弾力のある肌はニヴェンが思い切り吸い付いてもしっかりと跡が残らない。よく見ないとわからないほどささやかな赤みに、むしろその方が自分らしいと思えてしまい満足する。こんな僅かな赤みでは青年が起きる頃には消えてしまっているかもしれない。青年にとっての自分はその程度である事のように自然と思ってしまった。

 気分良くちゅっちゅっとしていた時、急に青年が動きた。
 熟睡していると思って油断しており、ニヴェンの体が固まる。
 青年は腕を動かし、自分の腕から逃げた愛しい人を手探りで見つけると、空いた隙間が寒いとまた自分の方へ引き寄せる。
 寝ているとは思えないほど強い力で引き寄せられる。バランスを崩し青年の胸に倒れこむが、青年はさらに密着しようとニヴェンの体を抱き寄せ密着する。するとせっかく後少しのところまで来ていた腰まで引き寄せられ、抜けていた分をまた奥まで押し込められる。一気に奥まで入ってきた逸物に今まで溜まっていた快感が弾け飛び絶頂を迎えてしまう。思わず叫び出しそうな声を唇を噛み締め押し殺す。
 それでもビクビクと痙攣する体は止められなくて、中に入ってきた逸物に喜ぶように群がり、精を搾り取らんと逸物をしごくように媚肉が動く。
 青年の逸物もむくむくと成長していたこともあり、青年の体は無意識に腰を前後に動かし始め、快感を得ていく。青年の動きは緩やかでも、小さな動きでもしっかりと快感を得るとこができる動きをしている。ニヴェンの体は絶頂に達するとなかなか戻ってこれず結構な時間体に力が入ったままになっている。中の力も入りっぱなしのため、青年が中で少し動くだけでも大きな快感を得ることができようになっている。
 青年の動きが奥に押し付けるような動きになっていき、逸物もビクビクと限界を迎えようとしている。
 心なしか鼻息も少し大きく荒い気がする。耳元で聴こえるふんふんっという鼻息にすらニヴェンの体はピクンと反応する。
 青年も時間をかけずに絶頂を迎える。最後はニヴェンの体をぎゅうっと力一杯抱き締め、逸物を奥に押し付けるように絶頂に達する。起きている時と変わらない勢いの白濁を奥にかけられ、ニヴェンの体は再度絶頂を迎える。
 絶頂でビクつく体を青年は慰めるように背をさする。ニヴェンの体が落ち着くと自然と青年の手も止まっていき、呼吸も元の深く落ち着いたものになる。また深い夢の世界に戻っていった青年に、ニヴェンは体の緊張を解く。またやり直しの状況に軽く絶望しながら、深いため息をついて気分を入れ替える。


 ニヴェンは青年が少々の事では起きないことを確信した。少し手荒というか足グセが悪いが、逸物をできる限り抜き、今度は自分で抜こうとせず、青年が横向きになっていることをいいことに、青年の胸と腰に手と足を添えて力を入れて押す。青年の体はぐらつき、ニヴェンの力に抵抗することなく、仰向けに倒れる。
 青年の逸物も本体につられて動き、ついにニヴェンの中から抜けてしまう。
 先ほどの苦労も知らずに、呆気なく抜けてしまった逸物に拍子抜けしてしまった。暫く呆然としてしまうが、秘所からたらりと溢れでる感触に意識を取り戻す。
 長時間大きな逸物を入れっぱなしにされていた秘所は括約筋が麻痺してしまい、閉じられなくなっている。ニヴェンの奥に腹が膨れるぐらい注がれた青年の白濁が栓が抜けてしまったことを契機に流れ出てしまっている。力を入れても入り口は閉じてくれず、逆に白濁が腹圧で流れてしまうという悪循環である。
 ずっと手で押さえておくわけにもいかず、途方にくれて、何かいいものはないかとあたりを見渡してみる。
 ニヴェンと青年が使っていたベッドの周りにはお互いの衣服や、乱れて落ちてしまったシーツ、風呂上がりに使用したタオル、ニヴェンの体を諌めていたおもちゃ、滑りを良くする香油、小さなチェストである。
 最悪布を詰めるか、とだいぶ思い詰めているが、香油の置かれているチェストに引き棚が付いている。何かないかと開けてみると、確かにイイモノが入っていた。
 引き棚の中は大人のおもちゃが行儀よく陳列されていた。前世のラブホテルのような仕様にどこの世界も変わらないものなのだなと、変なところで感心してしまった。
 思わず好奇心から陳列されているおもちゃたちを観察してしまっていた。その中には男性器を模した張型がある。大きさが各種取り揃えられており、可愛らしいサイズから確実に裂けてしまうであろうという恐怖を覚えてしまうような凶悪なサイズのものまでよりどりみどりである。
 そして思い詰めていたニヴェンはまた思い詰めたことを考えついてしまう。可愛らしいサイズの張型が女性の生理用品のように見えてしまった。前世ではタンポン派だったらしい。タンポンに見えてしまった張型をじっと眺め、これなら栓になるのではないかと、愚考している。
 ニヴェンの緩んだ後孔でも抜けたりしないような、ほどほどのサイズの張型を選び真剣に見つめる。

(これはタンポン。タンポンだ、タンポン。怖いのも恥ずかしいのもないものだ。)

 自己暗示をかけるように呟き続ける。そして、思い込んでもそれは張型以外に他ならない。自分で後孔に入れることは恥ずかしいことである。事実は念じても変わりはしない。

 ニヴェンは覚悟を決めたかのように一つ大きく息を吐く。これから運命を共にする張型を手に取り、香油を少し拝借する。張型に満遍なく塗すと、後孔に挿入しやすいように軽く前屈みになりお尻を突き出す。
 意識して口で深呼吸をし、体の力を抜くようにする。緩みきっている後孔に押し当てゆっくりと押し込んでいく。
 ニヴェンの秘所はなにかを咥え込んでいることが通常になっていたため、無機質な張型相手であろうと、上手に咥え込んでいく。一番太さのある亀頭部を飲み込んだ後は潤滑油の助けもあり、するすると奥に入っていった。
 多少の違和感はあるものの、すられすぎて麻痺していたのもあり、次第に気にならなくなる。特に意識をしなくても落ちてこないフィット感に調子付く。秘所から白濁が溢れる心配をしなくてよくなった分、動きはスムーズになる。
 取り敢えず情報収集が先だ。着るものなんて、誰も見ていないから気にしなくていい。むしろ着ていた方が見つかった時に何をしていたと勘ぐられてしまうだろう。まずは手始めに青年の荷物から漁っていく。漁ることの罪悪感なんてとうの昔に無駄なプライドと一緒に放り捨てている。
 カバンの中身はありきたりなものしかない。青年の着替えと、回復薬各種、貴重品のみ。その貴重品に手掛かりになるようなものがないかと探すと、今回のパーティーの招待状があった。しかし不思議なことにその紹介状はどうやら偽物のようである。豚子爵の筆跡は把握済み、むしろ主要な人物にはニヴェン自身が豚子爵に成りすまして送っているのである。豚子爵は準備に目を回して、何をしていて何がまだなのか、はっきりと把握せずに動いていた。豚子爵の目を盗み、ニヴェンが尻尾を掴みたいがために出席していてもらいたい人たちにはこっそりとおくっていた。もちろん豚子爵は気がついていないだろう。
 そんなことをしていたから豚子爵も、ニヴェン自身もこの青年に紹介状を送ってはいない。しかもぱっと見ではなかなか偽物だと気がつかないような精巧さである。ますます不信感が募ってくる。
 この紹介状の宛先も恐らく架空であろう。このパーティー自体、仮面舞踏会なのだから正体がそう易々とわかってしまってはいけないものであるのだ。入場時も客の細かい詮索はされないから架空であってもバレる心配は少ない。

 青年の来ていた服もポケットなど探ってみる。入っていた貨幣は金貨ばかりである。羨ましい。
 パーティーに出席するためのカードも自作のものらしい。こちらも精巧に出来ている。
 後はカフスボタンなどによく家紋を入れているものなのだが、この模様が家紋かどうかよくわからない。もし家紋と仮定してもこの模様の家紋は心当たりがない。
 ポケットの中にはハンカチも入っていた。細かい刺繍が入れられているようだが、どうやら魔法が込められたものらしい。ニヴェンもよくするが、他にもしている人がいるとは、話が合いそうである。
 どんな効果が込められているか解析してみたいが、それはまた後ほど、時間が余ればにしよう。先に情報を少しでも集めなければ。

 しかしなかなかにこの青年は用心深いようである。
 服には暗器も収納されていた。どれも実用的で、効率がいいのもばかりである。暗殺者が職業ですかと尋ねたくなるレベルである。恐ろしい子っ!
 青年にバレないように慎重に元に戻しておく。

 後は壁に立て掛けられている青年の得物であろう、ロングソード。こちらも無駄な装飾はなく実用一辺倒。しかしこの無骨なまでの剣、どこかで見覚えがあるような………
 特徴のない剣を眺めて思い出そうとすると、鞘の部分にストラップのように飾り物が付いていた。
 シンプルな剣のイメージを邪魔しないようにそのストラップもシンプルで落ち着いたデザインである。そのストラップもミサンガのように組紐で作られていた。この紐の組み方にも意味がありそう。
 それよりもこのストラップの薄汚れた感じが気になる。くすんでいても出来る限り綺麗にしてくれていることがわかる。余程大切にしているのであろうと、長年愛用してきた感じの伝わる年季の入り方だ。
 ふと、鞘とストラップを繋げている紐が少し擦り切れているのが見えた。弟の衣食住に携わってきたニヴェンはこの切れてしまいそうな紐を見て思わず手を出してしまった。ニヴェンの来ていた服の一部を裂き、繊維状に戻したら、綻んでいたところに編み込み、組紐のデザインを邪魔しないように調整して紐を補強していく。

 満足気に息を吐き、青年の正体に思いを馳せる。




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