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異世界編

(6)保護②

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~シヴァ目線~


 俺が【古代語】で話しかけたとき、子供は反応を示した。
 子供のあの時の反応は、見知らぬ土地でやっと親を見つけた時の迷子の顔だった。

 なんでこんな十歳ぐらいの子供が【古代語】の意味を理解できるのかがわからねぇが、訳ありで保護が必要なことには変わりねぇ。
 とりあえず、知っている単語でも保護することを伝えれる単語があるからそれで保護することを伝えるか。
 
 アルには、騎士団本部にいるジョゼフに子供のことを伝えるため、【伝達魔法】をかけた手紙に子供のことを書き飛ばしてもらっている。
 気づかないところに怪我をしている可能性があるし、訳ありの子供であれば今までまともな生活をしていなかった可能性もある。
 その面では健康診断を受けなければいけない。


「〈俺、保護、する〉」


 俺がお前を保護する。

 その意味の【古代語】を思い出しながら子供に話すと、子供が驚いた表情を浮かべた後に何かを考えるように俯いている。
 もしかしたら、大人を警戒しているのかもしれない。
 ジョゼフが保護した子供も他人を警戒するような行動をしていたようだから、その可能性は高いな。

 せめて危害を加えるつもりはないと子供の顔を真っ直ぐに見ていれば、俯いていた子供が真剣な表情を浮かべて顔を上げた。


『痛い、しない?』
「〈お前、危害、あげない〉」


 多分、痛いことはしない?という意味なのだろう。

 俺はお前に危害を加えない。

 その意味の【古代語】を思い出しながら、子供に伝える。
 もしかしたら、伝わりきらなかったのかもしれない。
 子供が安心できるように、もう一度今度はしっかりと伝わるように思い出しながら言う。
 もしかしたら、危害という言葉の意味が分からなかったのかもしれない。


「〈殺す、しない。安心、する。怪我、しない〉」


 殺すつもりはない。
 安心していい。
 危害を加えない。

 俺はそう子どもに伝えると子供は何かを考えた後、途端に鬱々としたくらい表情を浮かべた。
 俺は、その子供の表情に驚いた。

 なぜ、子供がそんな暗い表情を浮かべる?
 子どもは明るく、時には泣き、そうしていろいろなことを体験しながら成長するものだ。
 子供が、そんな暗い表情を浮かべるべきではない。

 心の中でショックを受けながらも、この危険な場所から子供を早く遠ざけた方がいいと思いなおす。

 
「〈保護、する。いい?〉」
『……………………保護、お願い』


 俺がそう聞けば、子供は暗い表情ながらも言う。
 俺はその言葉に、是の意味を伝えるため力強くうなずいた。

 子供を抱き上げれば、あまりの軽さに驚いてしまった。
 獣人の子供でももう少しあるもんだぞ?
 
 そう思っていると、子供からスース―という吐息が聞こえてくる。
 

 せめて、今はゆっくりと眠り休んでくれ。

 俺はそう思いながら、こちらを見るアルの元へ向かった。
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