新任チート魔王のうまうま魔物メシ~勇者パーティーを追放された死霊術師、魔王の力『貪食』と死霊術でらくらく無双&快適メシライフを満喫する~

だいたいねむい

文字の大きさ
30 / 141

第30話 魔王と巫女

しおりを挟む
「ほらよ」

 とりあえず俺はパレルモからゲソ串を三本ほど奪い、ビトラに差し出す。

 隣でパレルモが「ああー! わたしのおやつがああぁぁぁ」と涙目になっているが、とりあえずここは放っておく。

 この串は、彼女が昨日の晩飯をこっそり、しかし大量に《ひきだし》に忍ばせていたのを没収したヤツだ。

 朝にモリモリ食ってたのは見て見ぬ振りをしてやったが、それでも晩飯に焼いた串の数と計算があまりにも合わなかったからな。

 もしかして、とそのことを指摘したら「ん? なんのことかナー?」と目を逸らされた。
 が、そんなことで納得する俺ではない。
 つーか冷や汗ダラダラで目が泳ぎまくってたしな。

 で、もしかして、と思ってさらに問い詰めたらコレだよ。

 無理矢理 《ひきだし》を開かせてみれば、中には昨日俺がせっせと焼いていたゲソ串とやらキモ串やらが、みっしりと詰まっていたというわけだ。

 まあ、別に食べ物をこっそり取っておくのは構わん。

 だが、彼女の《ひきだし》は別に防腐機能とか保冷機能が付いているワケじゃない。
 ただの、空間だ。
 それでは当然、調理済みの料理は一日か、せいぜい二日程度しか保たない。
 それを、こんな食べきれるか分からん量を貯め込むとは……

 もちろんパレルモは毒に対して強力な耐性を獲得済みだ。
 だから、常温で放置され悪くなった料理を食べたところでどうということはないだろう。
 すでに多少の毒程度じゃちょっと苦いかなー、程度にしか感じないはずだ。

 だが。

 だがそれでも、だ。

 食べ物を粗末にする子を、俺は許さん。

 料理を作った身としては、いくら食べられるとはいえ、腐って味もクソもなくなった料理を食べて欲しいとは絶対に思わない。

 まあ、大食いどころじゃないパレルモのことだから、今日中に全部が彼女の腹に収まる可能性もゼロとは言えないんだが……

 そこはそれ、ケジメというヤツだな。

「……む。挑戦者、これは? とてもいい匂い」

 手渡されたゲイザーのゲソ串を、しげしげと眺めるビトラ。
 クンクンと鼻をひくつかせて、串の匂いを嗅ぐ。

 が、口に運ぶことはない。

 腹が減っているのは確かみたいだが、案の定警戒されているようだ。
 まあ、そらそーか。
 勢い余ってメシの要求はしたものの、初対面のヤツがその場で食事を出してきたら、何事かと思うわな。  
 しかも行動食みたいな保存食でもなく、いきなり串焼きだし。

「ね、ねえビトラ。それ食べないなら、わたしが食べてもいーんだよ?」

 で、それ(串)をまるで飢えた獣のような目で凝視するパレルモ。
 口の端からは、何かが垂れてきている。
 ……いい加減それを引っ込めよーぜ、パレルモ。

 いや、そんなに欲しいならお前も《ひきだし》から取り出して食えばいいだろ。
 まだまだたくさんあるのはきっちり確認済みだぞ。

「それは魔物の肉だよ。ちゃんと毒抜き処理をしてある。だから安心していいぞ」

「む。魔物……? 私に毒は効かない。でも、本当にいいの? その子の食べ物のようだけど。『巫女』は奪わない。与えることこそ、『巫女』の役目」

 ビトラが地面に視線を落とし、言った。
 彼女の蔦状の髪が少しウネウネと蠢く。
 これは、遠慮しているのか?
 そういう風に見える。

 食い物を要求したわりに、ずいぶんと謙虚だな。

 が、彼女の顔からは表情が全く読めない。
 というか表情がない。
 植物の亜人のようだから、そのせいだろうか。

 種族的には……見た感じ草人アルラウネ、あるいは樹人ドリアードだろうか。
 そのどの種もかなり辺境の樹海で引きこもって暮らしていてあまり出会うことがないから、本当のところは分からない。
 樹魔トレントのような理性の欠片もない凶暴な魔物ではないのは間違いないが。

 もっとも目が半分ほど閉じられたままなので、眠そうだなー、ということは分かる。
 だが、それだけだ。
 さらに声の調子も平坦だし。
 見た目はパレルモにも勝るとも劣らない美少女だが。
 だがコロコロと表情が変わる彼女とは違い、ビトラと話しているとまるで人形に向かって話しかけているような気分になる。

「そうはいってもな。与える与えないは置いておいて、腹減ったままじゃ動くに動けないだろ? おまけに寝起きだ。それに、俺もビトラに聞きたいことがあるんだ。その串はそれと交換、ということでどうだ?」

 べつに交換でもなんでもなく、食事を提供するのはやぶさかじゃない。
 が、こうすれば罪悪感なく食べてくれるだろう。

 ついでにビトラが『魔王の巫女』というならば、この機会に聞いておきたいこともあるしな。さっきのペッコの使っていた魔術やスキルのことも含めて。

「……む」 

 ビトラは少しだけ迷っているようだ。
 髪がウネウネと動いたり、止まったりする。

 彼女の顔は全く表情を読み取れないが、髪は存外に饒舌のようだ。
 
 しばらくして、ビトラが口を開いた。

「仕方ない。これは交換条件」

 仕方ない、という割には淡々と語るビトラ。

 だが、俺は見てしまった。
 無表情なビトラの口の端に、キラリと光るソレを。
 あと、髪がせわしなく蠢いているのを。

「……あむ」

 ビトラが小さな口を精一杯開き、ゲイザーのゲソ串にかぶりつく。

 しばらく味わうようにもぐもぐと口を動かしたあと、彼女の動きがピタリ、と止まった。
 それからプルプルと震え出す。

 お? 大丈夫かな?
 一応ケリイがバクバク食べても問題なかったレベルで毒抜きはしといたはずだし、ビトラが自称するに、毒は大丈夫のハズだが。

 もしかしてビトラは植物の亜人っぽいから、肉は受け付けなかったとか?
 それにしては盛大にかぶり付いた気がしたが。

「……む。むむむむむ。これは。これは」

 が、すぐにゴクンと口の中のものを呑み込むと、かじりかけのゲソ串にかぶりついた。
 おお。
 蔦髪がすごい勢いでワシャワシャしてる。

 あっという間に串だけになる。

 もう一本。
 がぶり。もぐもぐ。
 もう一本。
 がぶり。もぐもぐ。

 あっという間に三本の串が、串だけになった。

 それからビトラは「はう……」と無表情のままため息をつくと、

「足りない」

「は?」

 思わず聞き返す。

「む。足りない。挑戦者、貴方は交換と言った。私に聞きたいことがあるならば、もっとこの香ばしい匂いの食べ物を差し出すことが必要」

 ふんす、と鼻息荒くおかわりを所望するビトラ。
 相変わらず表情の変化はないが、蔦髪がすごいことになってるな。

 まあ、それはいい。

「分かった。まだ食い物はたくさんある。好きなだけ食え。パレルモ、《ひきだし》」

 差し出した俺の手を見てパレルモが絶望的な顔になるが、知らんな。

 結局ビトラは《ひきだし》内の串のほとんど全てを食い尽くしてしまった。
 さらには、パレルモ秘蔵の大蛇肉のローストさえも……

 そのせいでパレルモがシオシオになり、その場で崩れ落ちたのは言うまでもないな。

 まあ、俺も別に悪魔じゃない。
 街に戻ったら好きなだけ屋台なり飯屋なりで腹一杯食わせてやろう。
 なんだかんだで、パレルモは今回かなり頑張っていたからな。

 と、そうだ。
 ビトラには言い忘れていたな。

「ビトラ。お前にいろいろ聞く前に、自己紹介をしておこうと思う。まず、俺たちはもう・・挑戦者じゃない。名前はライノ・トゥーリ。どうやら『貪食』の魔王、ってことらしい。こっちは『魔王の巫女』パレルモだ」

 俺は無心になって大蛇肉のローストにがっついているビトラに声をかけた。
 正直、俺とパレルモのことをどう言おうかどうか迷ったんだが……
 彼女も『魔王の巫女』と名乗ったことだし、こちらも正体を偽ることはあまり意味がなさそうだったからだ。
 なにより、フェアじゃない気がしたからな。

 もちろん、最悪の場合として彼女が敵対することを考えなかったわけではない。
 だが、まあ……こっちの出した料理をこんなに思いっきりがっついている時点で、警戒心ゼロになってるからな。

「……む。そう。よろしく、『貪食の魔王』ライノ。そしてその『巫女』パレルモ」

 と、それを聞いたビトラが食べるのをやめ、無表情のまま顔を上げる。
 そして、彼女はさらに続けてこう言った。

 今度は、首をかしげて。

「……でも、不思議。魔王がここいるのなら、なぜ巫女が生きている。魔王ライノ。なぜ生け贄であるはずの巫女パレルモを喰らわないの」




 沈黙。




 …………んん?




 どゆこと?
 今、ビトラは何て言った?


 食べる?
 誰が、誰を?



 ええと、アレだ。




 俺はしばらく黙考し、そして一つの答えを得る。



 なるほど。
 そういうことか。
 ビトラちゃんはおませさんだなぁ。

 だが、彼女はいたって真面目な顔だ。
 無表情とも言うが。

 だから俺も真面目な顔を作り、話しかける。

「ビトラ。それは、その……性的に、って意味でか? さすがにそれはちょっとまだ早――」

「ライノのバカ!」

 バチン!

 顔を真っ赤にしたパレルモに、横っ面を思いっきり張られた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...