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第58話 遺跡攻略④ ド派手な新技
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「そ、そんな……よりによって、樹魔がいるなんて」
扉から向こうの広間を覗き込んだアイラが、ヘナヘナと崩れ落ちた。
「それも、あんな大型のが、さ、三体も……! ど、どう考えても勝てっこないわ」
絶望を滲ませた震え声で、そう呟く。
たしかに、広間を徘徊しているトレントは、どれもかなりの大型だ。
普通のトレントは人間の倍くらいのサイズだが、ヤツらはそのさらに倍はある。
宿主だったヤツは相当強い冒険者だったのだろう。
ただ、そのせいか、巨大すぎる魔力核が樹皮から露出している。
図体はでかいが、あれじゃただの的だな。
「たった三体だろ? 別に大したことないだろ。イリナなんてあの倍くらいの群れを瞬殺してただろ」
「それはねえさまの魔法剣あってのことでしょ! だいたいあんな大型トレントを目の前にして、『大したことない』ですって? 私が目を離していた隙に、にいさまは気でも触れてしまったのかしら」
俺が言うと、アイラがまるで俺を狂人でも見るような目つきになった。
この毒舌を、『治癒天使』とか持て囃す他の冒険者に聞かせてやりたい。
「それに、だわ!」
アイラはパレルモとビトラを交互に眺めつつ、さらに続ける。
「一応他のパーティーの事情だから黙っていたけど、パレルモちゃんもビトラちゃんもまともな武器を装備していないじゃない。それで、トレントをどうやって倒すわけ? いくら魔術師だといっても、杖すらないのはどういうことかしら?」
今さらそれを言うのか……
確かにアイラの言う通り、二人には特に武器は持たせていない。
一応最低限の装備として、小さなナイフや行動食、それに回復薬や解毒剤など一般的なダンジョン探索用の装備は持たせているが、完全にお守りがわりだ。
そもそも二人は能力の関係上、武器はまったく必要ないからな。
素手で殴り合ったとしても並の魔物より強いと思うし。
もちろん、それをあえて試させようととは思わないが。
もちろんパーティーメンバーでもないのに二人の心配をしてくれるアイラの気持ちは素直にありがたいと思う。
だが、二人の実力を口で説明するのは面倒だし、アイラの話に付き合っていたら日が暮れてしまうからな。
ここは、さっさと行動で示した方がよさそうだ。
俺は「ガルルル……」とまだ噛みつきそうな顔でこっちを見ているアイラから視線を外すと、その様子をハラハラした顔で見守っていたパレルモとビトラに声を掛けた。
「……パレルモ、ビトラ、さっさと片付けて上の階層に向かうぞ。二人はそれぞれ左右のヤツを頼む。俺は真ん中のをやる」
「りょーかーい。じゃあ、わたしは左のだねー」
「む。では私は右のを担当する」
二人とも、やる気十分のようだ。
「じゃあライノー、どの子を出すのー?」
パレルモが、《ひきだし》の用意をしながら聞いてきた。
俺が死霊術で魔物を操って戦うと思って、気を利かせてくれたようだ。
「ああ、今回は大丈夫だ。アイツらは、魔物は使役しないで倒す」
《ひきだし》に収納している魔物は一応食材だからな。
空を飛ばすくらいなら問題ないが、さすがに戦闘を行えば傷んでしまう。
それでも使役すべき時ももちろんあるが、それは今じゃない。
「そーなの? ならいいけどー」
きょとんとした顔で《ひきだし》を消すパレルモ。
「ああ、ありがとうな。だが、ちょっと試したいことがあるんでな。……よし。パレルモ、ビトラ、行くぞ!」
「ほーい!」
「む。了解」
「ちょっ、待っ……!」
アイラが慌てた顔で俺を制止しようとしてくるが、もう遅い。
俺は扉を勢いよく開くと、祭壇の広間に飛び出した。
そのすぐ後ろをパレルモとビトラがついてくる。
『『『――イイイイィィィッ!』』』
一瞬遅れて、トレントがこちらに気づいた。
人の頭ほどもある巨大な眼球をこちらにぎょろりと向けてきた。
耳障りな鳴き声を上げ、蔦や木の枝で俺たちに攻撃を加えてくるが……遅い。
「まずはわたしからだよー! そおーい!」
バスン!
鈍い音がして、向かって左手にいたトレントの体躯が、魔力核ごとまっぷたつになった。
『――イイィィィ……』
魔力核を粉砕され、一瞬で沈黙する左トレント。
「む。やはり我が家は魔力が馴染む。これなら、腕だけでも十分」
今度は右側からビトラの声が聞こえたかと思うと、何かとてつもなく巨大な物体が俺の脇をものすごい速度で通過していく。
ゴゴン!
次の瞬間、轟音がとどろき、その破城槌を思わせる巨大な物体が右のトレントを粉砕した。
文字通り、バラバラだ。
魔力核も原形を留めないくらいに粉々になっている。
左トレントは断末魔を上げる暇さえなく、沈黙した。
「む、ふー。ライノ、どう。私の力」
そんなドヤ顔のビトラの脇には遺跡の支柱のごとき太さを誇る巨大な腕が生え、ガッツポーズを決めている。
もちろん、ビトラの魔術《繁茂》《植物操作》により生み出された植物で編み上げたものだ。
――おお……我が魔王の巫女ズ、強ぇ……
一応、二人とも多少は手こずるとは思っていたぞ。
それが、まさかの瞬殺とはな。
これは俺も負けてられないな!
『イイイィィィッ!』
俺は正面でムチのように木の枝や蔦をしならせるトレントを見据える。
さて、俺も見せ場を作るとしようか。
「――《時間展延》」
スキルを発動。
ぴたり、と周囲が静止する。
音もない。
とても静謐な世界だ。
「さて、ここからが本番だな。うまくいくといいんだが」
俺は独り言を呟きながら、動きを止めたトレントのすぐ前まで歩いてゆく。
走る必要なんてない。
というか、この世界でむやみに走るのは、あまりよろしくない。
「よし。実証実験といこうか」
今にも襲いかかってきそうな形相のトレントを、間近でよく観察する。
トレントは、ごくわずかにだが、動いてはいる。
このスキルは完全に時を止めるものではないからな。
だが、それで問題はない。
むしろ、だからこそ利用価値があるのだ。
この《時間展延》というのは、端的に言えば周りの時間経過を数千倍ほど引き延ばすスキルだ。
それはつまり、俺の知覚を数千倍に加速するスキルと言い換えることもできる。
というか、ただそれだけのスキルなのだ。
だがそれにもかかわらず、俺はこの非常にゆっくりとした時間経過の中でも普通に行動できる。
それはなぜか?
答えはシンプル極まりないものだ。
つまり……その数千倍に加速した世界でも、思考したとおりに行動できるだけの身体能力が、今の俺には備わっている。
要するに、そういうことだ。
そして、これが意味することとは?
これもまた、非常にシンプルだ。
「……オラッ!」
俺は、トレントの魔力核を殴りつけた。
もちろん、極限まで身体能力を引き上げたうえでの渾身の力をもって、だ。
トレントの方には、ほとんど変化はない。
殴った箇所の少し手前の中空に、殴った軌道に沿って同心円状に広がる白いもやのようなものが発生しただけだ。
それが、徐々に広がっていく。
うん上出来だ。これでいい。
思った通りの手応えだ。
「……オラ! オラ! オラオラオラオラ!」
実証がうまくいってちょっとテンションが上がった俺は、魔力核を中心に何度も何度も拳を打ち付ける。
拳に痛みはない。
もちろん殴りつけた感触はあるが、それだけだ。
防御力の方も、数千倍に引き上げられているみたいだからな。
「オラオラオラオラオラ!」
――ミシッ
調子に乗って殴り続けていると、魔力核に小さなヒビが入り始めた。
それが、徐々にだが広がってきている。
破壊が魔力核に浸透したらしい。
よし、ここまでだな。
「ここにいるとマズイか」
俺はトレントから十歩ほど離れた。
巻き添えはゴメンだからな。
しかし、少し引いた場所から見ると、なかなかに壮観だ。
俺の放った音速を超えた打撃のせいで、トレントの前面を覆い尽くすように衝撃破でできた白いもやの壁が出現している。
しかし……ちょっとオーバーキルすぎるかな?
それに、これはどう考えても盗賊職や死霊術師の決め技ではない気がするが……まあ、せっかくなのであまり深く考えないようにしよう。
二人には派手さでも負けたくないからな。
「よし。――解除」
別にこのスキルを解除するために言葉は必要ないのだが、なんとなくノリだ。
そして、時間が元に戻るやいなや……
バギン!
凄まじい破裂音が耳をつんざく。
強烈な音だ。
「おわっ!?」
思わず耳を押さえる。
キーン……と耳の奥が痺れる。
おっと、一瞬ビビッて目をつむってしまったぜ。
目を開くと、トレントが消滅していた。
跡形もない。
「……すげ」
一呼吸置いて、バラバラとトレントの残りの部位である枝や蔦の破片が降ってくる。
それを全身に浴びながら、俺は自分のしでかしたことなのに思わずため息が漏らした。
タネはシンプルの極みだ。
最大限まで知覚と身体能力を引き上げて、何十、何百発とブン殴る。
ただそれだけだ。
それがまさか、ここまでの威力とはな。
つーかこれ、ドラゴンすら瞬殺できるんじゃね?
魔王の力、ちょっと舐めてたわ。
まあこれはこれで莫大な魔力を消費するから、調子に乗って何度も使えるモノじゃないが……
「ライノ、すご……すご……っ!!」
「む。ライノ、さっきの魔術はなに。まったく見えなかった。トレントが消えてしまった」
二人とも、俺の新技を目撃してテンションがマックスのようだ。
パレルモはこっちを見て口をぽかんと開けたまま「すご……すご!」と言い続けているし、ビトラはビトラで蔦髪がフサァ~と広がっている。
極めつけは、二人とも、憧れに満ちたものっすごいキラキラの瞳なことなのだが……
……う、うむ。
確かに期待した通りの反応だが、意外とこれ、恥ずかしいな。
――どさり
「……ん?」
今度は何だ。
何かが倒れるような音がしたので、後ろを振り返る。
「おい、アイラ!?」
アイラが白目を剥いて、ぺたんと床にへたり込んでいた。
が、一応意識はあるらしい。
プルプルと震える指を、こちらに向けている。
もしかしてトレントとの戦闘で余波でも喰らったのか?
だとすれば、すぐに手当てをしないと!
そう思って慌てて駆け寄ったのだが……
俺が側に行くと、アイラはカッ! と目を見開き大声で叫んだ。
「なんて……なんてことなのっ!? にいさまが……にいさまが本当に魔王になってしまったわ!」
お、おう。
こっちはこっちで、期待した以上の反応を引き出してしまったようで、何よりだ。
とりあえず怪我ではないようなので、少しホッとした。
扉から向こうの広間を覗き込んだアイラが、ヘナヘナと崩れ落ちた。
「それも、あんな大型のが、さ、三体も……! ど、どう考えても勝てっこないわ」
絶望を滲ませた震え声で、そう呟く。
たしかに、広間を徘徊しているトレントは、どれもかなりの大型だ。
普通のトレントは人間の倍くらいのサイズだが、ヤツらはそのさらに倍はある。
宿主だったヤツは相当強い冒険者だったのだろう。
ただ、そのせいか、巨大すぎる魔力核が樹皮から露出している。
図体はでかいが、あれじゃただの的だな。
「たった三体だろ? 別に大したことないだろ。イリナなんてあの倍くらいの群れを瞬殺してただろ」
「それはねえさまの魔法剣あってのことでしょ! だいたいあんな大型トレントを目の前にして、『大したことない』ですって? 私が目を離していた隙に、にいさまは気でも触れてしまったのかしら」
俺が言うと、アイラがまるで俺を狂人でも見るような目つきになった。
この毒舌を、『治癒天使』とか持て囃す他の冒険者に聞かせてやりたい。
「それに、だわ!」
アイラはパレルモとビトラを交互に眺めつつ、さらに続ける。
「一応他のパーティーの事情だから黙っていたけど、パレルモちゃんもビトラちゃんもまともな武器を装備していないじゃない。それで、トレントをどうやって倒すわけ? いくら魔術師だといっても、杖すらないのはどういうことかしら?」
今さらそれを言うのか……
確かにアイラの言う通り、二人には特に武器は持たせていない。
一応最低限の装備として、小さなナイフや行動食、それに回復薬や解毒剤など一般的なダンジョン探索用の装備は持たせているが、完全にお守りがわりだ。
そもそも二人は能力の関係上、武器はまったく必要ないからな。
素手で殴り合ったとしても並の魔物より強いと思うし。
もちろん、それをあえて試させようととは思わないが。
もちろんパーティーメンバーでもないのに二人の心配をしてくれるアイラの気持ちは素直にありがたいと思う。
だが、二人の実力を口で説明するのは面倒だし、アイラの話に付き合っていたら日が暮れてしまうからな。
ここは、さっさと行動で示した方がよさそうだ。
俺は「ガルルル……」とまだ噛みつきそうな顔でこっちを見ているアイラから視線を外すと、その様子をハラハラした顔で見守っていたパレルモとビトラに声を掛けた。
「……パレルモ、ビトラ、さっさと片付けて上の階層に向かうぞ。二人はそれぞれ左右のヤツを頼む。俺は真ん中のをやる」
「りょーかーい。じゃあ、わたしは左のだねー」
「む。では私は右のを担当する」
二人とも、やる気十分のようだ。
「じゃあライノー、どの子を出すのー?」
パレルモが、《ひきだし》の用意をしながら聞いてきた。
俺が死霊術で魔物を操って戦うと思って、気を利かせてくれたようだ。
「ああ、今回は大丈夫だ。アイツらは、魔物は使役しないで倒す」
《ひきだし》に収納している魔物は一応食材だからな。
空を飛ばすくらいなら問題ないが、さすがに戦闘を行えば傷んでしまう。
それでも使役すべき時ももちろんあるが、それは今じゃない。
「そーなの? ならいいけどー」
きょとんとした顔で《ひきだし》を消すパレルモ。
「ああ、ありがとうな。だが、ちょっと試したいことがあるんでな。……よし。パレルモ、ビトラ、行くぞ!」
「ほーい!」
「む。了解」
「ちょっ、待っ……!」
アイラが慌てた顔で俺を制止しようとしてくるが、もう遅い。
俺は扉を勢いよく開くと、祭壇の広間に飛び出した。
そのすぐ後ろをパレルモとビトラがついてくる。
『『『――イイイイィィィッ!』』』
一瞬遅れて、トレントがこちらに気づいた。
人の頭ほどもある巨大な眼球をこちらにぎょろりと向けてきた。
耳障りな鳴き声を上げ、蔦や木の枝で俺たちに攻撃を加えてくるが……遅い。
「まずはわたしからだよー! そおーい!」
バスン!
鈍い音がして、向かって左手にいたトレントの体躯が、魔力核ごとまっぷたつになった。
『――イイィィィ……』
魔力核を粉砕され、一瞬で沈黙する左トレント。
「む。やはり我が家は魔力が馴染む。これなら、腕だけでも十分」
今度は右側からビトラの声が聞こえたかと思うと、何かとてつもなく巨大な物体が俺の脇をものすごい速度で通過していく。
ゴゴン!
次の瞬間、轟音がとどろき、その破城槌を思わせる巨大な物体が右のトレントを粉砕した。
文字通り、バラバラだ。
魔力核も原形を留めないくらいに粉々になっている。
左トレントは断末魔を上げる暇さえなく、沈黙した。
「む、ふー。ライノ、どう。私の力」
そんなドヤ顔のビトラの脇には遺跡の支柱のごとき太さを誇る巨大な腕が生え、ガッツポーズを決めている。
もちろん、ビトラの魔術《繁茂》《植物操作》により生み出された植物で編み上げたものだ。
――おお……我が魔王の巫女ズ、強ぇ……
一応、二人とも多少は手こずるとは思っていたぞ。
それが、まさかの瞬殺とはな。
これは俺も負けてられないな!
『イイイィィィッ!』
俺は正面でムチのように木の枝や蔦をしならせるトレントを見据える。
さて、俺も見せ場を作るとしようか。
「――《時間展延》」
スキルを発動。
ぴたり、と周囲が静止する。
音もない。
とても静謐な世界だ。
「さて、ここからが本番だな。うまくいくといいんだが」
俺は独り言を呟きながら、動きを止めたトレントのすぐ前まで歩いてゆく。
走る必要なんてない。
というか、この世界でむやみに走るのは、あまりよろしくない。
「よし。実証実験といこうか」
今にも襲いかかってきそうな形相のトレントを、間近でよく観察する。
トレントは、ごくわずかにだが、動いてはいる。
このスキルは完全に時を止めるものではないからな。
だが、それで問題はない。
むしろ、だからこそ利用価値があるのだ。
この《時間展延》というのは、端的に言えば周りの時間経過を数千倍ほど引き延ばすスキルだ。
それはつまり、俺の知覚を数千倍に加速するスキルと言い換えることもできる。
というか、ただそれだけのスキルなのだ。
だがそれにもかかわらず、俺はこの非常にゆっくりとした時間経過の中でも普通に行動できる。
それはなぜか?
答えはシンプル極まりないものだ。
つまり……その数千倍に加速した世界でも、思考したとおりに行動できるだけの身体能力が、今の俺には備わっている。
要するに、そういうことだ。
そして、これが意味することとは?
これもまた、非常にシンプルだ。
「……オラッ!」
俺は、トレントの魔力核を殴りつけた。
もちろん、極限まで身体能力を引き上げたうえでの渾身の力をもって、だ。
トレントの方には、ほとんど変化はない。
殴った箇所の少し手前の中空に、殴った軌道に沿って同心円状に広がる白いもやのようなものが発生しただけだ。
それが、徐々に広がっていく。
うん上出来だ。これでいい。
思った通りの手応えだ。
「……オラ! オラ! オラオラオラオラ!」
実証がうまくいってちょっとテンションが上がった俺は、魔力核を中心に何度も何度も拳を打ち付ける。
拳に痛みはない。
もちろん殴りつけた感触はあるが、それだけだ。
防御力の方も、数千倍に引き上げられているみたいだからな。
「オラオラオラオラオラ!」
――ミシッ
調子に乗って殴り続けていると、魔力核に小さなヒビが入り始めた。
それが、徐々にだが広がってきている。
破壊が魔力核に浸透したらしい。
よし、ここまでだな。
「ここにいるとマズイか」
俺はトレントから十歩ほど離れた。
巻き添えはゴメンだからな。
しかし、少し引いた場所から見ると、なかなかに壮観だ。
俺の放った音速を超えた打撃のせいで、トレントの前面を覆い尽くすように衝撃破でできた白いもやの壁が出現している。
しかし……ちょっとオーバーキルすぎるかな?
それに、これはどう考えても盗賊職や死霊術師の決め技ではない気がするが……まあ、せっかくなのであまり深く考えないようにしよう。
二人には派手さでも負けたくないからな。
「よし。――解除」
別にこのスキルを解除するために言葉は必要ないのだが、なんとなくノリだ。
そして、時間が元に戻るやいなや……
バギン!
凄まじい破裂音が耳をつんざく。
強烈な音だ。
「おわっ!?」
思わず耳を押さえる。
キーン……と耳の奥が痺れる。
おっと、一瞬ビビッて目をつむってしまったぜ。
目を開くと、トレントが消滅していた。
跡形もない。
「……すげ」
一呼吸置いて、バラバラとトレントの残りの部位である枝や蔦の破片が降ってくる。
それを全身に浴びながら、俺は自分のしでかしたことなのに思わずため息が漏らした。
タネはシンプルの極みだ。
最大限まで知覚と身体能力を引き上げて、何十、何百発とブン殴る。
ただそれだけだ。
それがまさか、ここまでの威力とはな。
つーかこれ、ドラゴンすら瞬殺できるんじゃね?
魔王の力、ちょっと舐めてたわ。
まあこれはこれで莫大な魔力を消費するから、調子に乗って何度も使えるモノじゃないが……
「ライノ、すご……すご……っ!!」
「む。ライノ、さっきの魔術はなに。まったく見えなかった。トレントが消えてしまった」
二人とも、俺の新技を目撃してテンションがマックスのようだ。
パレルモはこっちを見て口をぽかんと開けたまま「すご……すご!」と言い続けているし、ビトラはビトラで蔦髪がフサァ~と広がっている。
極めつけは、二人とも、憧れに満ちたものっすごいキラキラの瞳なことなのだが……
……う、うむ。
確かに期待した通りの反応だが、意外とこれ、恥ずかしいな。
――どさり
「……ん?」
今度は何だ。
何かが倒れるような音がしたので、後ろを振り返る。
「おい、アイラ!?」
アイラが白目を剥いて、ぺたんと床にへたり込んでいた。
が、一応意識はあるらしい。
プルプルと震える指を、こちらに向けている。
もしかしてトレントとの戦闘で余波でも喰らったのか?
だとすれば、すぐに手当てをしないと!
そう思って慌てて駆け寄ったのだが……
俺が側に行くと、アイラはカッ! と目を見開き大声で叫んだ。
「なんて……なんてことなのっ!? にいさまが……にいさまが本当に魔王になってしまったわ!」
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