新任チート魔王のうまうま魔物メシ~勇者パーティーを追放された死霊術師、魔王の力『貪食』と死霊術でらくらく無双&快適メシライフを満喫する~

だいたいねむい

文字の大きさ
59 / 141

第59話 遺跡攻略⑤ 食事にする

しおりを挟む
「そろそろ、食事にしようか」

 三体のトレントを殲滅し、広間の安全を確認できたタイミングで、俺は三人にそう切り出した。

 早朝に出発してから、すでに数時間が過ぎている。
 昼と言うには少々早いが、キリがいい。

「そーいえばお腹へったねー」

「む。私も空腹。今日は朝ご飯はまだだったから」

 ビトラの言う通り、俺たちはまだ食事らしい食事を取っていない。
 まず遺跡ここに到着することを優先したからな。
 それに先の戦闘で少なくない魔力を消費した俺は、すっかり腹ぺこだ。

 ……もっともパレルモとビトラがワイバーンの背中で、こっそり串焼きをもぐもぐしていたのを俺はちゃんと見ていたがな!

 まあ、今更そこをツッコむのは野暮というものだ。
 というか恒例行事なのでもう慣れた。

 で、問題の調理場所なんだが……

「ビトラ、この広間のどこかに自分の部屋ってあるんだよな?」

「む。ある。けれども私はすぐに祭壇の裏で眠ってしまった。もう自室には千年以上立ち入っていないから、今内部がどうなっているのかわからない。それに、パレルモの遺跡のようなキッチンはない。そもそも、巫女は食事を要しない」

「……確かにそうだったな」

 そういえばパレルモも、俺と出会うまでは数千年間絶食状態だったんだっけ。
 今では隙あらば何かをモグっているから、すっかり忘れていた。

 パレルモの遺跡に場違いなほど調理設備が整っていたのは、『貪食』の力を司っていたからなのかもしれないな。

 どのみち、ビトラが自室に千年以上立ち入っていないならば、仮にキッチンがあったとしても埃まみれだろうし、すぐには使えない。

 となれば、ここで準備をするしかないな。

「パレルモ、ビトラ、その辺のツタを集めてくれ。なるべく枯れて乾いたやつがいい。まき代わりにする」

「ほいさー!」

「む。了解」

 二人が俺の指令を受けて、テンションマックスで蔦を拾い出す。
 俺はたきぎ用のかまど作りだな。
 
「ちょっとにいさま! 早くねえさまたちを探さないといけないのに、一体何をしているのかしら!?」

 そうして俺たちが食事の準備を進めていると、アイラが血相を変えて詰め寄ってきた。

「何って、食事の準備だが?」

「食事? 行動食なら、ここにあるでしょ?」

 言って、アイラが自分の腰にさげた袋を叩いた。
 
「行動食は食べないぞ。マズイし」

 アレはあくまでも最悪の事態のための備えというか、お守り代わりだ。

「なら、他に何を食べるというの? まさか、あそこに転がっているトレントでも焼いて食べるつもりなのかしら?」

 冗談めかしてアイラが言うが、なかなかいい線をついているな。
 もちろん、さすがに元人間のトレントなんて食べるわけがないが。

「まあ、すぐに準備が終わる。少し待ってろ」

「だから、準備って何を?」

 アイラが怪訝な顔をするが、イチイチ説明をするのも面倒だ。

 俺は壊れた祭壇の小さな破片や壁から剥がれ落ちた石片を拾ってきて積み上げていく。
 その上に持ってきた折りたたみ式の金網を載せれば、即席のかまどの完成だ。

「ライノー、これくらいでいーい?」

「む。抱えられるだけ持ってきた」

 そこに、枯れ蔦をたくさん抱えた二人が戻ってきた。

「おう、十分だぞ。パレルモは……そうだな、あまり時間もないし一種類だけ出してくれ。だが、お前の好きなのでいいぞ」

「わーい! じゃあ……今日はこれっ!」

 パレルモが《ひきだし》から甘辛タレに漬け込んだワイバーンの骨付き肉チョップを取り出した。
 このチョップは、あらかじめ肉部分を少し削り骨部分を持てるようにしてあるから、野営時でも食べやすい。
 パレルモは、なかなか『分かってる』チョイスをするな。

「さて、さっさと焼いていこうか」

 かまどに火をおこすとパレルモから受け取った肉をどんどん金網に置いていく。
 薪は火力の調節がきかないから、タレの絡んだワイバーンチョップは焦がさないように気を付ける必要がある。

「ちょ、ちょっと待ってにいさま。それは一体どこから出てきたの!?」

 その様子を怪訝な様子で見ていたアイラが、ワイバーンチョップを指さしながらたずねてきた。

「パレルモのことは来る途中に説明したろ? ワイバーンを出したところだって見ただろーが」

「確かにそれは今朝聞いたし、ワイバーンを出したところも確かに見たわ。時空魔術……だったかしら? そもそもそんな魔術系統、初耳なのだけれど……」

 アイラは納得のいかない顔で続ける。

「というか……まさかその時空魔術で料理を保管していたってこと? あんな強力な魔術を、そんなことに? し、信じられない……もう、何がなんだか意味が分からないわ!」

 アイラが頭を抱えて叫びだした。

「だいたい、にいさまはトレントを一瞬で消し飛ばすし、パレルモちゃんとビトラちゃんもありえない戦闘力だし……あああ、何からツッコんでいいのか分からなくなってきたわ!」

 おっと、目がグルグルしてますね。
 完全に混乱状態だ。

 さすがにアイラには刺激が強すぎたか。
 確かに俺はアイラに今までのことをざっと説明したし、その力の一端を見せつけた。
 だが、それをアイラの心が受け入れるかどうかというと、それはまた話が別だからな。

 ま、しばらく行動をともにする以上、慣れて貰うしかないが。

「ねーライノー。お肉焼けてるよー? もう食べていいー?」

 そうこうしているうちに、肉が焼けたようだ。
 ワイバーンチョップに絡めたタレの焼ける香ばしい匂いが辺りに漂っている。

「ああ、焼けたヤツから取っていってくれ。熱いから一応気を付けろよ」

「はーい! いただきまーす!」

 パレルモがものすごい素早い動きでワイバーンチョップを両手に取った。
 熱くないのかお前は。

「む。では、私も早速いただくことにする」

 ビトラは持ち手が熱いのか、生み出した植物で肉を保持している。

「あふっ、あふっ。でも、おいしー!」

「ふう、ふう……はふ。む、美味」

 二人が各々料理にかぶり付く。
 パレルモはいつものごとく満面の笑みだ。
 ビトラもこのときばかりは無表情ではいられないらしく、終始ニヨニヨと頬が緩んでいる。

 うん。
 二人の幸せそうな様子を見ていると、俺も頑張って料理を仕込んだ甲斐があるというものだ。

 さて、俺も食べるとするか。

 と、俺が肉に手を伸ばそうとした、そのとき。

 きゅううぅぅ……

 可愛らしい音が俺の隣……というか、アイラのお腹あたりから聞こえてきた。

「ちっ違うの! これは、その、あの……」

 アイラが顔を真っ赤にしてわちゃわちゃと手を振って否定する。
 そんな彼女の手には、行動食が握りしめられている。

 というか、このシチュエーションで、アイラは自分の行動食を食べるつもりだったのか? あんな味付けもへったくれもない、ふかして潰したイモにただ塩を練り込んで乾燥させただけのものを?

 ……まったく。

「ちゃんとお前の分もあるぞ」

 言って、俺は手に取ったワイバーンチョップをアイラに差し出した。

「で、でも、さすがに人のパーティーに施してもらうのは、悪いわ。それに、早くねえさまを探さないと……」

 アイラは一瞬戸惑ったような表情をする。

 だが、そんなことを言いながらもアイラの視線は肉に釘付けだ。
 鼻もひくひくしているし、ごくり、と生唾を飲み込む様子もバレバレだ。

 ……まったく。

「水くさいこと言うなよ、アイラ。たしかに俺もイリナは心配だ。だが、そんなちっぽけな行動食じゃ腹は満たされんだろ。空腹のままじゃ体力が持たんし、集中力だって低下する。それに、パレルモの《ひきだし》には少なくとも一週間分以上の食材が保管してある。だからお前の行動食は、イザというときのために温存しとけ」

「そ、そう? なら、わ、私もいただこうかしら……」

 アイラはしばらく逡巡していたようだが、食欲には勝てなかったらしい。
 おずおずとワイバーンチョップを受け取った。

「はむっ。……なにこれ! ものすごくおいしいわ……」

 アイラは一口肉を囓りとると、ほっぺたを押さえつつ、感嘆のため息を漏らす。

「そうだろうそうだろう。肉はしっかり熟成させてあるし、研究に研究を重ねた特製タレに漬け込んであるからな」

「はふっ、あむっ、おいひっ、まはは、ほんはほほほへ……っ!」

「食べながらじゃ何言ってるかわからんぞ」

 だがまあ、アイラの瞳の煌めきようと、夢中で肉をほおばるその姿を見れば、何を言わんとしているのかは一目瞭然だ。

「もぐ、もぐ……ごくり。ふわぁ……こんなダンジョンの底で、こんな美味しいお肉を食べることができるなんて……にいさま、本当にありがとう」

 なんか感極まってるアイラ。
 まあ、美味しそうに食べてくれるならば、それはそれでいいんだけどな。

「まだあるから好きなだけ食べていいぞ。ただし、動けなくなるまで食うなよ」

「わ、分かってるわよ! ……じゃあ、もうひとついただこうかしら。あむっ。美味しい……幸せだわ……この独特の香味、しっかりとした歯ごたえ、それに口の中で溢れる肉汁の滋味……にいさま、これはどのお店で仕入れたお肉なの? 味からすると、とても上等な羊肉に思えるけど」

 確かに言われてみれば羊肉っぽいな、ワイバーン肉は。
 ハーブの調合もラムチョップを参考にしたからな。

「ああ、アイラも知っているはずだぞ。今朝、乗ってきたし」

「ケサ=ノッテキタシ? 珍しい屋号ね。異国の肉屋かしら?」

 なんか勘違いしているなコイツ。

「いや、今朝、アイラも乗っただろ? 厳密には、違う個体だけどな」

「……ああ! へえー。どおりで身が締まっているわけだわ! 空を飛ぶから、こんなに……んん?」

 ビキッ……と笑顔のまま、アイラが固まった。

「にいさま、このとても美味しいお肉は」

「ああ。ワイバーンだぞ」

「……ぶっ」

「あーっ! アイラちゃん、お肉! でもだいじょーぶ! 三秒ルール! 
三秒ルールだよっ!」

「む。アイラは涙目になるほど魔物肉が美味しかったと見える。たしかにライノの料理は絶品」

 このあとくアイラはしばらく発狂していたものの食欲には勝てなかったのか、網に乗った分は全部平らげましたとさ。



 ……………………。



 …………。



 さて、食事も無事終わったことだし、そろそろ本格的にダンジョン探索といこうか。


 と思った矢先。



「ん? ……おい、そこにいるのはアイラなのか? なんとか逃げおおせたはずの君が、どうしてこんな場所にいる」



 広間の奥から、声が響いてきた。


 男――というにはまだ若い。少年の声だ。



 忘れもしない。



 その妙に上から目線な声色は、勇者サムリのものだった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...