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第68話 遺跡攻略⑭ 悪堕ち勇者
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「悪いがしばらくそこで大人しくしててくれよ! 《時間展延》……ドラァッ! もいっちょ、ウラァッ!! ……パレルモも、そこまでだ! いったん退避!」
「りょーかーいっ」
『ギイイィッ!?』
俺は《時間展延》による衝撃圧縮を用い、イリナの脚部と胴体の大部分を破壊した。
イリナが苦悶の声を上げ、屍龍の部分がジタバタともがいているが、身体の再生に手一杯な様子で、攻撃を仕掛けてくることはない。
その様子に俺も感じることがないとは言わないが、これも致し方なしだ。
本体部分には傷をつけていないし、こうでもしなければ必要な時間が稼げない。
俺はすぐに後ろに下がり、待機しているアイラたちのもとへ戻った。
「ちょっとまっててねー! ほいほいっと!」
『ウガアアァッ!?』
パレルモも、クラウスに魔術を十数発ほど一息で撃ち込み、同様に行動不能状態にしてから戻ってきた。
「おいライノ、どうしたんだ? まだ戦闘の途中だろう」
広間の壁に背中を預けてすっかりと観戦モードのサムリが尋ねてくるが、今はコイツに返事をするヒマはない。
「ビトラ、ちょっといいか」
アイラと一緒に俺たちの様子を見守っていたビトラを呼び寄せる。
「む。こっちはすでに準備万端。そっちは?」
こちらに駆け寄ってきたビトラがうずうずしたようにそう言ってくる。
やるべきことはあらかじめ説明していたから、サムリにしたように、二人に魔術を行使する準備はできているようだ。
だが、それはもうちょっと先の話だな。
「悪い。そっちはまだだ。……ちょっとこっちで話そうか。パレルモも、こっちだ」
「む。了解」
「ほーい」
俺はサムリをちらりと見てから、少し離れたところで三人で固まった。
今サムリに話を聞かれるのはよろしくないからな。
「……?」
サムリはこっちを見てまだ怪訝な顔をしている。
が、ただの作戦会議だと思っているらしい。
まあ、作戦会議は作戦会議なのだが。
(パレルモ、そっちの状況はどうだ?)
(なかなか倒せないよー。あのオヤジさん、切っても切ってもつながっちゃうよ)
はふー、と大きなため息を交えつつ、パレルモがそうこぼす。
確かに声色には、疲れの色が滲んでいるな。
まあ、それも当然だ。
彼女の様子を戦いの合間に見ていたが、ものすごい数の空間断裂魔術を撃ち込んでいたからな。
相当魔力を消費しているのは間違いない。
そういう意味では、ここらで休憩を取ったのは正解だったようだ。
(こっちも同じ状況だ。アイツラは正面から殴り合ってもダメだ。だから、別の作戦を取ろうと思ってな)
(作戦? どんなの?)
(む。私も気になる)
二人は興味津々のようだ。
(この作戦には、ビトラの協力が不可欠だ)
(む、頑張る。何をすればいい?)
ビトラがずいっと顔を近づけてきた。
まあ、サムリのこともあるし、ひとりだけ戦闘に参加させていなかったからな。
(今からサムリに掛けている魔術を解除しようと思う。ビトラ、できるか?)
(む。解除するのは簡単。でも、そうするとあの少年の体内にいるトレントが、また暴れ出すはず)
(それでいい。それが狙いだからな)
サムリはさっき俺と戦ったさいに、妙な剣技というか、魔術を繰り出してきた。
あれは、イリナとは毛色が違うものの、たしかに魔法剣の一種だった。
『吸収』。
サムリは、そう言っていた。
効果は、そのままの『魔力吸収』。
同じ系統の魔術は聞いたことがないから、おそらくはサムリ固有の魔術だ。
だが、俺はサムリと一時期パーティーを組んでいたが、あんな凶悪な技を使っているのを見たことがなかった。
俺がパーティーを離れることきっかけになった、魔物の群れに襲われたときですら、だ。
もちろん当時は使えなかったが、俺がいなくなってから新たに習得した可能性はある。
だが、祭壇の広間からここまでの間、正気に戻ったサムリはちょっと強い魔物と戦うときも、他の剣技を使い大量に魔力を消費したときも、あの魔術を一度たりとも使わなかった。
あんな便利な魔術だというにも関わらず、だ。
察するに、素面というか正気のサムリでは使えない術なのだと思う。
だが、あの魔術は今この局面ではうってつけの能力なのだ。
これを今、活用しない手はない。
遺跡から大量の魔力が供給されているのなら、それを根こそぎ吸い取ってやればいい。
いくらなんでも、魔力の流入量には限りがあるはずだからな。
そうして再生を遅らせた二人から魔物の肉体を切り離し、ビトラの魔術により元凶のトレントを封印する。
それが、この作戦の概要だ。
そんなわけで、ちょっとだけサムリの理性のタガをハズしてやることにする。
(よし。いいかビトラ。俺はあそこでのんきに観戦を決め込んでいるサムリにも戦闘を手伝ってもらうことに決めた。今からヤツを前線に放り込むから、ビトラは慌てず騒がず、俺が合図をしたのと同時に、サムリに施している植物操作の魔術を解除してくれ)
(……む。本当に、いいの)
ビトラは少し躊躇したような表情をした。
まあ、彼女からしても、サムリがせっかくまともになったのに、また元に戻すのは不安があるのだろう。命の危険があると思っているのかも知れない。
まあ、当然の反応ではある。
(大丈夫、アイツは勇者だ。ああ見えて普通の人間よりかなり頑丈だから問題ない。壁にめり込んでも、ピンピンしてただろ?)
正確には瀕死の重傷を負っていたが、細かいことはスルーだ。
そもそも普通の人間はあれほどの勢いで石壁に激突すれば、めり込んだりせずに壁のシミになるだけだ。
(……む。ライノがそう言うならば、私は構わない)
俺がプランを説明すると、ビトラは少しだけ考え込んでから、頷いた。
ビトラは話が早くて助かるな。
そのほかに二人に簡単な指示を出して、作戦会議は完了だ。
「よし! じゃあ、作戦開始だ」
小声で話す必要がなくなった俺は、そう言ってサムリの方に歩き出す。
「こーどーかいし! だよっ」
「む。私はいつでも大丈夫」
パレルモが素早く所定の位置につく。
ビトラはすぐ側で、俺の合図を待っている。
そして、サムリは……
「お。作戦会議は済んだのか?」
「ああ。バッチリだ」
何も知らないサムリは行動食をほおばりながら、のんきな顔をしている。
俺はグッと親指を立て、笑顔でそれに応えてやる。
それから……俺はサムリの正面に立った。
「……そうか? で、なんでお前は僕の襟を掴んでいるんだ? フフッ、さては僕の行動食が欲しいんだな? 確かに戦闘中は腹が減るからな。でもダメだぞ? これは僕の分だ」
サムリが口をもぐもぐさせながらそんなことを言ってくる。
今から俺が何をしようとしているのか、まったく気づいていないようだ。
まあ、それでいい。
土壇場で抵抗されても面倒だからな。
「にいさま……」
サムリとは対照的に、アイラは俺とビトラが何をしようとしているか察したらしい。
一瞬だけサムリに哀れみの視線を向けたあと、大きなため息をついた。
「サムリ、まだまだ食い足りないだろ? というわけで、二人の魔力を根こそぎ喰らい尽くしてくれ! ふん……そいやっ!」
「は? お前はなにを――ああああああああぁぁぁっ!?」
呆けた面のままサムリを身体ごと持ち上げ、反対側にスイング。
その勢いを利用して、俺はサムリを思いっきりぶん投げた。
サムリの声が尾を引きながら、イリナとクラウスのもとへ一直線に飛んでゆく。
「おぼふっっ!? おいライノ貴様、これは一体どういうつもりだ!」
イリナとクラウスの中間地点に見事な顔面着地(?)を決めたサムリが起き上がり、怒りの声を上げた。
だが今はそれを聞いてやる暇はない。
もうイリナとクラウスの再生はほぼ終わり、新たな参戦者に視線が釘付けだ。
数秒もかからず、全力でサムリに襲いかかるだろう。
「よしビトラ! 今だ! サムリの魔術を解除しろ!」
「む、了解。――《植物操作》、解除」
「なっ!? ウソだろ!? ちょっと待ああああぁぁ―――」
ここに至り、ようやく自分が何をされようとしているのかを悟り焦るサムリ。
だが時すでに遅し、だ。
まばゆい閃光が迸り、渦巻く魔力がサムリの絶叫を覆い尽くした。
「おお、壮観だな」
どうやらビトラが抑えていたトレントが魔術を解除したせいで暴走を始め、その影響でサムリから大量の魔力が漏出しているらしい。
なかなかド派手な光景だ。
「にいさまはやっぱり魔王だわ……」
その様子を俺の隣で見守っていたアイラが眉間をぐりぐりしている。
彼女はド派手な演出で目がくらんでしまったらしい。
……最後の呟きはよく聞こえんな。
魔力の奔流が消えると、サムリの姿が現れた。
「うわああああぁぁぁ…………あはァッ♪」
全身から迸る、ちょいワルどころじゃない禍々しいオーラ。
聖剣をダルそうに肩に担いだ、オラついた感じの態度。
もちろん目つきも首の角度もヤバい。
おっと、おもむろに聖剣をペロペロしだしましたね。
血走って瞳孔ガン開きの目といい、悪ポイント高いですね。
うん、間違いない。
あれは祭壇の広間で見かけた『悪サムリ』ですね。
作戦は、成功だ。
「へえ……ずいぶんと美味そうな匂いをした肉塊じゃないかァ」
両脇にそびえたつイリナとクラウスの巨躯を眺め、ゆらりと聖剣を構えるサムリ。
その様子は実にちょいワルで、なかなかサマになっている。
しかも、なぜか正気のときより隙がない。
……個人的には、舌はお口の中にしまった方がいいと思うが。
「あはァ。こいつは楽しめそうじゃないかァ。もちろん僕の獲物なんだよねェ?」
ちなみにサムリが舌なめずりしながらブツブツ呟いているが、そのセリフは俺たちに向けたモノじゃない。
全部独り言だ。
あさっての方向を向いてるし。
『アアアアアァァァ……』
『ガアアァァァゥゥ……』
理性のないはずのイリナとクラウスが攻撃をせずに、ちょっと引き気味でサムリを見ている。
すでに効果はバツグンだ。
何の効果かは知らないが。
「――――」
となりのアイラが無言で頭を抱えだしたが、知らんな。
「りょーかーいっ」
『ギイイィッ!?』
俺は《時間展延》による衝撃圧縮を用い、イリナの脚部と胴体の大部分を破壊した。
イリナが苦悶の声を上げ、屍龍の部分がジタバタともがいているが、身体の再生に手一杯な様子で、攻撃を仕掛けてくることはない。
その様子に俺も感じることがないとは言わないが、これも致し方なしだ。
本体部分には傷をつけていないし、こうでもしなければ必要な時間が稼げない。
俺はすぐに後ろに下がり、待機しているアイラたちのもとへ戻った。
「ちょっとまっててねー! ほいほいっと!」
『ウガアアァッ!?』
パレルモも、クラウスに魔術を十数発ほど一息で撃ち込み、同様に行動不能状態にしてから戻ってきた。
「おいライノ、どうしたんだ? まだ戦闘の途中だろう」
広間の壁に背中を預けてすっかりと観戦モードのサムリが尋ねてくるが、今はコイツに返事をするヒマはない。
「ビトラ、ちょっといいか」
アイラと一緒に俺たちの様子を見守っていたビトラを呼び寄せる。
「む。こっちはすでに準備万端。そっちは?」
こちらに駆け寄ってきたビトラがうずうずしたようにそう言ってくる。
やるべきことはあらかじめ説明していたから、サムリにしたように、二人に魔術を行使する準備はできているようだ。
だが、それはもうちょっと先の話だな。
「悪い。そっちはまだだ。……ちょっとこっちで話そうか。パレルモも、こっちだ」
「む。了解」
「ほーい」
俺はサムリをちらりと見てから、少し離れたところで三人で固まった。
今サムリに話を聞かれるのはよろしくないからな。
「……?」
サムリはこっちを見てまだ怪訝な顔をしている。
が、ただの作戦会議だと思っているらしい。
まあ、作戦会議は作戦会議なのだが。
(パレルモ、そっちの状況はどうだ?)
(なかなか倒せないよー。あのオヤジさん、切っても切ってもつながっちゃうよ)
はふー、と大きなため息を交えつつ、パレルモがそうこぼす。
確かに声色には、疲れの色が滲んでいるな。
まあ、それも当然だ。
彼女の様子を戦いの合間に見ていたが、ものすごい数の空間断裂魔術を撃ち込んでいたからな。
相当魔力を消費しているのは間違いない。
そういう意味では、ここらで休憩を取ったのは正解だったようだ。
(こっちも同じ状況だ。アイツラは正面から殴り合ってもダメだ。だから、別の作戦を取ろうと思ってな)
(作戦? どんなの?)
(む。私も気になる)
二人は興味津々のようだ。
(この作戦には、ビトラの協力が不可欠だ)
(む、頑張る。何をすればいい?)
ビトラがずいっと顔を近づけてきた。
まあ、サムリのこともあるし、ひとりだけ戦闘に参加させていなかったからな。
(今からサムリに掛けている魔術を解除しようと思う。ビトラ、できるか?)
(む。解除するのは簡単。でも、そうするとあの少年の体内にいるトレントが、また暴れ出すはず)
(それでいい。それが狙いだからな)
サムリはさっき俺と戦ったさいに、妙な剣技というか、魔術を繰り出してきた。
あれは、イリナとは毛色が違うものの、たしかに魔法剣の一種だった。
『吸収』。
サムリは、そう言っていた。
効果は、そのままの『魔力吸収』。
同じ系統の魔術は聞いたことがないから、おそらくはサムリ固有の魔術だ。
だが、俺はサムリと一時期パーティーを組んでいたが、あんな凶悪な技を使っているのを見たことがなかった。
俺がパーティーを離れることきっかけになった、魔物の群れに襲われたときですら、だ。
もちろん当時は使えなかったが、俺がいなくなってから新たに習得した可能性はある。
だが、祭壇の広間からここまでの間、正気に戻ったサムリはちょっと強い魔物と戦うときも、他の剣技を使い大量に魔力を消費したときも、あの魔術を一度たりとも使わなかった。
あんな便利な魔術だというにも関わらず、だ。
察するに、素面というか正気のサムリでは使えない術なのだと思う。
だが、あの魔術は今この局面ではうってつけの能力なのだ。
これを今、活用しない手はない。
遺跡から大量の魔力が供給されているのなら、それを根こそぎ吸い取ってやればいい。
いくらなんでも、魔力の流入量には限りがあるはずだからな。
そうして再生を遅らせた二人から魔物の肉体を切り離し、ビトラの魔術により元凶のトレントを封印する。
それが、この作戦の概要だ。
そんなわけで、ちょっとだけサムリの理性のタガをハズしてやることにする。
(よし。いいかビトラ。俺はあそこでのんきに観戦を決め込んでいるサムリにも戦闘を手伝ってもらうことに決めた。今からヤツを前線に放り込むから、ビトラは慌てず騒がず、俺が合図をしたのと同時に、サムリに施している植物操作の魔術を解除してくれ)
(……む。本当に、いいの)
ビトラは少し躊躇したような表情をした。
まあ、彼女からしても、サムリがせっかくまともになったのに、また元に戻すのは不安があるのだろう。命の危険があると思っているのかも知れない。
まあ、当然の反応ではある。
(大丈夫、アイツは勇者だ。ああ見えて普通の人間よりかなり頑丈だから問題ない。壁にめり込んでも、ピンピンしてただろ?)
正確には瀕死の重傷を負っていたが、細かいことはスルーだ。
そもそも普通の人間はあれほどの勢いで石壁に激突すれば、めり込んだりせずに壁のシミになるだけだ。
(……む。ライノがそう言うならば、私は構わない)
俺がプランを説明すると、ビトラは少しだけ考え込んでから、頷いた。
ビトラは話が早くて助かるな。
そのほかに二人に簡単な指示を出して、作戦会議は完了だ。
「よし! じゃあ、作戦開始だ」
小声で話す必要がなくなった俺は、そう言ってサムリの方に歩き出す。
「こーどーかいし! だよっ」
「む。私はいつでも大丈夫」
パレルモが素早く所定の位置につく。
ビトラはすぐ側で、俺の合図を待っている。
そして、サムリは……
「お。作戦会議は済んだのか?」
「ああ。バッチリだ」
何も知らないサムリは行動食をほおばりながら、のんきな顔をしている。
俺はグッと親指を立て、笑顔でそれに応えてやる。
それから……俺はサムリの正面に立った。
「……そうか? で、なんでお前は僕の襟を掴んでいるんだ? フフッ、さては僕の行動食が欲しいんだな? 確かに戦闘中は腹が減るからな。でもダメだぞ? これは僕の分だ」
サムリが口をもぐもぐさせながらそんなことを言ってくる。
今から俺が何をしようとしているのか、まったく気づいていないようだ。
まあ、それでいい。
土壇場で抵抗されても面倒だからな。
「にいさま……」
サムリとは対照的に、アイラは俺とビトラが何をしようとしているか察したらしい。
一瞬だけサムリに哀れみの視線を向けたあと、大きなため息をついた。
「サムリ、まだまだ食い足りないだろ? というわけで、二人の魔力を根こそぎ喰らい尽くしてくれ! ふん……そいやっ!」
「は? お前はなにを――ああああああああぁぁぁっ!?」
呆けた面のままサムリを身体ごと持ち上げ、反対側にスイング。
その勢いを利用して、俺はサムリを思いっきりぶん投げた。
サムリの声が尾を引きながら、イリナとクラウスのもとへ一直線に飛んでゆく。
「おぼふっっ!? おいライノ貴様、これは一体どういうつもりだ!」
イリナとクラウスの中間地点に見事な顔面着地(?)を決めたサムリが起き上がり、怒りの声を上げた。
だが今はそれを聞いてやる暇はない。
もうイリナとクラウスの再生はほぼ終わり、新たな参戦者に視線が釘付けだ。
数秒もかからず、全力でサムリに襲いかかるだろう。
「よしビトラ! 今だ! サムリの魔術を解除しろ!」
「む、了解。――《植物操作》、解除」
「なっ!? ウソだろ!? ちょっと待ああああぁぁ―――」
ここに至り、ようやく自分が何をされようとしているのかを悟り焦るサムリ。
だが時すでに遅し、だ。
まばゆい閃光が迸り、渦巻く魔力がサムリの絶叫を覆い尽くした。
「おお、壮観だな」
どうやらビトラが抑えていたトレントが魔術を解除したせいで暴走を始め、その影響でサムリから大量の魔力が漏出しているらしい。
なかなかド派手な光景だ。
「にいさまはやっぱり魔王だわ……」
その様子を俺の隣で見守っていたアイラが眉間をぐりぐりしている。
彼女はド派手な演出で目がくらんでしまったらしい。
……最後の呟きはよく聞こえんな。
魔力の奔流が消えると、サムリの姿が現れた。
「うわああああぁぁぁ…………あはァッ♪」
全身から迸る、ちょいワルどころじゃない禍々しいオーラ。
聖剣をダルそうに肩に担いだ、オラついた感じの態度。
もちろん目つきも首の角度もヤバい。
おっと、おもむろに聖剣をペロペロしだしましたね。
血走って瞳孔ガン開きの目といい、悪ポイント高いですね。
うん、間違いない。
あれは祭壇の広間で見かけた『悪サムリ』ですね。
作戦は、成功だ。
「へえ……ずいぶんと美味そうな匂いをした肉塊じゃないかァ」
両脇にそびえたつイリナとクラウスの巨躯を眺め、ゆらりと聖剣を構えるサムリ。
その様子は実にちょいワルで、なかなかサマになっている。
しかも、なぜか正気のときより隙がない。
……個人的には、舌はお口の中にしまった方がいいと思うが。
「あはァ。こいつは楽しめそうじゃないかァ。もちろん僕の獲物なんだよねェ?」
ちなみにサムリが舌なめずりしながらブツブツ呟いているが、そのセリフは俺たちに向けたモノじゃない。
全部独り言だ。
あさっての方向を向いてるし。
『アアアアアァァァ……』
『ガアアァァァゥゥ……』
理性のないはずのイリナとクラウスが攻撃をせずに、ちょっと引き気味でサムリを見ている。
すでに効果はバツグンだ。
何の効果かは知らないが。
「――――」
となりのアイラが無言で頭を抱えだしたが、知らんな。
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