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第96話 お引き取りください
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「……らっしゃい」
「おい兄ちゃん、酒だ! 酒もってこいや! ヒック!」
「クソ、狭いなこの店は。おい店主、ここのカウンターぶっ壊していいか?」
「おい店主、んな陰気なツラしてないで早くメシよこせや! ギャハハ!」
三者三様に、ゴロツキ冒険者たちが騒ぎ立てる。
先頭で入ってきたのは剣士風、次のガタイのいいのが重戦士風、三人目は狩人職だろうか。全員武器を身につけている。依頼帰りらしい。
最初に入ってきた男はすでに酔っ払っているようだ。
赤ら顔で、目の焦点が合っていない。
というか全員から酒の匂いがするな。
うーむ、この感じ……懐かしい。
最近はパレルモとビトラもいるしギルド併設の酒場にはほとんど行かなくなったが、夜になるとこの手合いがくだを巻いていたり、若手の冒険者たちに絡んでいたりしたものだ。
そんなやつらを相手にサムリとクラウスがケンカを買い、相手をボコボコのボコにしたうえトドメを刺そうとする二人を必死で止めたりしたっけかな。
まあ、良い思い出というヤツだ。
ちなみにそのときアイラに絡んだ連中は全員姉のイリナの剣の錆となった。
あな恐ろしや、姉妹愛。
もちろんそれについても、連中の息の根が止まる前に俺が止めたが。
……それはさておき。
どうする?
コイツら追っ払うか?
ただの酔いどれ三バカならば気にする必要もない。
適当にあしらって、お帰り頂くだけだ。
だが、問題は……
コイツらがペトラさんを追跡してきたとはいえ、ここまでたどり着いたという事実だ。
ただのルーキーやらゴロツキ冒険者ならば、とても『彷徨える黒猫亭』までたどり着くことは出来ないだろう。
つまりコイツらはAランクとは言わないまでも、少なくともBあるいはCランクの上位程度の追跡能力を有していることになる。
もちろん、それでも俺一人でどうとでもなる。
だが、冒険者としての戦闘力自体は決して侮れるものではない。
仮に暴れるコイツらをブチのめしたとして、それで店に被害が出るとあとで俺がペトラさんに怒られてしまう。
大人しく食事をして帰ってくれるならば、それが一番いいのだ。
「オイ店主! さっさとメニューくれやメニュー」
「……ほらよ」
というわけで、しばらく様子見だ。
「ああん? んだコレは。メシしかねーのかよ。オレは酒を注文してーんだよ! 普通分かんだろ!?」
剣士風の男がメニューをひったくるように奪い取ると、乱暴にページをめくり、それからビタン! とカウンターに叩きつけた。
「ギャハハ!」
それを見て、狩人職の男が耳障りな笑い声を上げる。
「…………」
ガマン、ガマンだ。
ここでブチ切れるほど、俺の心は狭くない。
オーケー、俺。ステイクール。
「チッ。狭いうえにしけた店だな。なんだ、シチューしかねーのか? 肉もってこいよ肉」
重戦士が太い腕をカウンターにドンと置き、顔を近づけながら凄んでくる。
う、うぜえ……
やはり、シメるか? シメちまうか?
自分でも、頬の辺りがピクピクしているのが分かる。
一応許可を得ようと厨房の下を見ると、ちょっと涙目のペトラさんがふるふると首を振っている。ここは堪えろということだろう。
ならば、もう少し我慢するとしよう……
コウガイも《隠密》スキルを発動したまま、静観の構えだ。
まだ、出番ではないと判断しているらしい。
「つーかよお。何か、臭わね?」
くんくんと鼻をひくつかせながら、今度は狩人職の男がそんなことを言ってくる。
「あぁ?」
思わずイラッとして反応してしまった。
クソ、まだ修行が足りん。何の修行か知らんが。
だが、そんな臭うか?
確かにカリーはスパイスの香りが強い料理だが、別に臭くはない。
むしろ、食欲をひたすらそそる、いい匂いだ。
それに店内は毎日キチンと清掃している。悪臭の元は存在しないはずだ。
「ああ、確かに臭うな」
「ああ、いーい臭いがするぜぇ」
だが、他の二人もじゅるりと舌なめずりをすると、くんくんと周囲の匂いを嗅ぎ出す。
その様子はどことなく獣のような気配を漂わせており、どうにも気色が悪い。
心なしか、男たちの表情が邪悪に歪んでいるようにも見える。
「おい店主」
狩人職の男が俺を見て言った。
細い、表情が読みにくい目だ。
「……なんだよ」
「出せよ」
「は? 何をだ?」
意図を掴めず、聞き返す。
「出せっつってんだよ、店主! 分かってんだぞ、そこからぷんぷん臭ってきて、たまらねーんだよォ!」
「……はあ?」
何言ってんだコイツは。
指を差してさかんにアピールしているが、そこにはカリーしかないぞ。
……いや、まさか。
「女の臭いだ」
「ああ、たまらねえんだよ」
「食わせろ」
「ああ、喰わせろ」
「その臭い、狂いそうなんだよォッ!」
興奮したように、口々に叫び出す冒険者たち。
思わず下を見ると、ペトラさんが涙目でくんくん自分の匂いを嗅いでいた。
大丈夫だペトラさん。あんたは別に臭くない。
三バカの頭がおかしいだけだ。
……いや。
おかしいのは頭だけではないようだ。
――メキメキ、バキバキ。
木のひしゃげるような不快な音が、すぐ目の前から響いてきた。
男たちの身体からだ。
三人が三人とも、歪な形に膨張しているのが分かった。
ただでさえ狭い店内が、さらに狭くなる。
おいおいマジかよ。
こいつら魔物化しているぞ!?
「「「ギギ……ギギギ……オンナァ……ニク……」」」
不快な歯ぎしりの音が店内に響きわたる。
三人の男に、それぞれ角が、鱗が、獣毛が生え、本格的に魔物の姿を取り始める。
「ちょっと、ライノさん! 一体、なにが……?」
「出るなッ」
棚の下に隠れているせいで事態が飲み込めないペトラさんが小声で話しかけてくるが、俺はそれを手で制する。
今ここでペトラさんの姿を冒険者たちに見せるのは非常にマズい。
コイツらが興奮して暴れ出したら、店内どころか厨房までオシャカにされてしまう。
……やむを得ん。
俺は無言で厨房を出た。
コウガイを見ると、《隠密》状態のまま腕組みをし興味深そうにこちらを眺めていた。
手助けが必要か見極めているのか?
それとも俺の実力を測っているのか。
まあ、今はそのどちらでも構わん。邪魔をしなければいい。
「あアん? なんダおまエ」
一番近くにいた酔っ払い冒険者の前に立つ。
すでに半分ほど魔物化しており、背丈は俺と比べ頭一つ分はでかい。
筋肉量は比べるべくもないな。
見た目は、オーガだ。
どことなく、コウガイを彷彿とさせる。携行している武器も剣だし。
一方こっちは素手だ。だが厨房にある刃物を使うわけにもいかない。
大切な調理器具をコイツらの血で汚すなんてもってのほかだし、なにより刃こぼれでもしようものなら、あとでペトラさんに小一時間は説教されてしまうからな。
だがこの程度の状況、俺にとっては何の問題ともならない。
「おイ 店主ゥ! さっさト、オンナ、ニグ、よゴせェ!!」
硬質な鱗に全身を覆われ、蜥蜴人のような見た目に変化した重戦士が席から立ち上がると、ビリビリと店を揺るがせるような大声で咆えた。
コイツはまたデカイな! 頭が天井まで付きそうだ。
「うひゃあっ!?」
厨房からペトラさんの小さな悲鳴が聞こえてくるが、今はフォローしているヒマはない。さっさとコイツらを片付ける。
「おいコウガイ。先に言っておくぞ。巻き添えになる前にそこから退避しろ」
「…………」
一瞬、ピクリと片眉を動かしたコウガイだったが、俺の意図を察したらしく無言で店の隅へ移動する。
「ああん? ナンだ? コんな妙ナ臭イ、知らネエゾ? おいゼッド、気を付けロ、こいつハ……」
人狼と化した狩人職の男が長く突き出した鼻をひくつかせ、訝しげな表情を作る。
「あア? ただのひ弱なナ人間だろうガ? 今の俺らの敵じゃねえゼ! 女を隠スってんなラ、まずはてめェからダ!」
オーガが剣を抜こうとするが、遅い。
「――《時間展延》」
途端、俺を取り巻く世界から色と音が消え失せる。
「ウチはカリーしか出さん。注文する気がないのなら、とっとと出ていけ」
そうは言ったものの、すでに三体とも扉から出せる大きさじゃない。
だが、ここで殺してしまうと店が汚れて営業できなくなる。
すまない、ペトラさん。
俺は心の中で彼女に謝ると、ギリリと拳を握った。
被害を最小限度に抑えるには、これしかないのだ。
「ほっ、はっ、よっと……」
慎重に力加減をして、三体の魔物それぞれにトン、トン、トン、と拳を当てる。
この程度ならば、店の中で爆発四散するような事態にはならないはずだ。
スキル解除。
――ドドドンッ! ガガン!
「「「っ――――ッ!?」」」
轟音とともに衝撃が魔物たちの腹部を襲う。
声を出すこともできず、目を見開いたままの魔物三体はド派手に吹っ飛び……
――ゴゴン! ガシャァァァン!
「ああっー!? お店の壁がああぁっ!? ちょっとライノさんッ!?」
ペトラさんの悲痛な叫びが背後から聞こえた。
それもそのはず。
今や、『彷徨える黒猫亭』は外側に面した壁は完全に崩壊し、涼やかな風が吹き抜けるオープンテラスなレストランと化しているのだ。
……もっとも、営業を再開するためには散らばる大量の瓦礫とそこで倒れたまま呻き声を上げている魔物三体をキチンと処分する必要があるだろうが。
すまん、ペトラさん。
もう一度、心の中で詫びを入れる。
店をこんなにした(原因を作った)アイツらを、俺は絶対に許さねえ。
この借りは必ず…………アイツラに返させるからな。
俺は固くそう決心しつつ、店の外に出た。
「おい兄ちゃん、酒だ! 酒もってこいや! ヒック!」
「クソ、狭いなこの店は。おい店主、ここのカウンターぶっ壊していいか?」
「おい店主、んな陰気なツラしてないで早くメシよこせや! ギャハハ!」
三者三様に、ゴロツキ冒険者たちが騒ぎ立てる。
先頭で入ってきたのは剣士風、次のガタイのいいのが重戦士風、三人目は狩人職だろうか。全員武器を身につけている。依頼帰りらしい。
最初に入ってきた男はすでに酔っ払っているようだ。
赤ら顔で、目の焦点が合っていない。
というか全員から酒の匂いがするな。
うーむ、この感じ……懐かしい。
最近はパレルモとビトラもいるしギルド併設の酒場にはほとんど行かなくなったが、夜になるとこの手合いがくだを巻いていたり、若手の冒険者たちに絡んでいたりしたものだ。
そんなやつらを相手にサムリとクラウスがケンカを買い、相手をボコボコのボコにしたうえトドメを刺そうとする二人を必死で止めたりしたっけかな。
まあ、良い思い出というヤツだ。
ちなみにそのときアイラに絡んだ連中は全員姉のイリナの剣の錆となった。
あな恐ろしや、姉妹愛。
もちろんそれについても、連中の息の根が止まる前に俺が止めたが。
……それはさておき。
どうする?
コイツら追っ払うか?
ただの酔いどれ三バカならば気にする必要もない。
適当にあしらって、お帰り頂くだけだ。
だが、問題は……
コイツらがペトラさんを追跡してきたとはいえ、ここまでたどり着いたという事実だ。
ただのルーキーやらゴロツキ冒険者ならば、とても『彷徨える黒猫亭』までたどり着くことは出来ないだろう。
つまりコイツらはAランクとは言わないまでも、少なくともBあるいはCランクの上位程度の追跡能力を有していることになる。
もちろん、それでも俺一人でどうとでもなる。
だが、冒険者としての戦闘力自体は決して侮れるものではない。
仮に暴れるコイツらをブチのめしたとして、それで店に被害が出るとあとで俺がペトラさんに怒られてしまう。
大人しく食事をして帰ってくれるならば、それが一番いいのだ。
「オイ店主! さっさとメニューくれやメニュー」
「……ほらよ」
というわけで、しばらく様子見だ。
「ああん? んだコレは。メシしかねーのかよ。オレは酒を注文してーんだよ! 普通分かんだろ!?」
剣士風の男がメニューをひったくるように奪い取ると、乱暴にページをめくり、それからビタン! とカウンターに叩きつけた。
「ギャハハ!」
それを見て、狩人職の男が耳障りな笑い声を上げる。
「…………」
ガマン、ガマンだ。
ここでブチ切れるほど、俺の心は狭くない。
オーケー、俺。ステイクール。
「チッ。狭いうえにしけた店だな。なんだ、シチューしかねーのか? 肉もってこいよ肉」
重戦士が太い腕をカウンターにドンと置き、顔を近づけながら凄んでくる。
う、うぜえ……
やはり、シメるか? シメちまうか?
自分でも、頬の辺りがピクピクしているのが分かる。
一応許可を得ようと厨房の下を見ると、ちょっと涙目のペトラさんがふるふると首を振っている。ここは堪えろということだろう。
ならば、もう少し我慢するとしよう……
コウガイも《隠密》スキルを発動したまま、静観の構えだ。
まだ、出番ではないと判断しているらしい。
「つーかよお。何か、臭わね?」
くんくんと鼻をひくつかせながら、今度は狩人職の男がそんなことを言ってくる。
「あぁ?」
思わずイラッとして反応してしまった。
クソ、まだ修行が足りん。何の修行か知らんが。
だが、そんな臭うか?
確かにカリーはスパイスの香りが強い料理だが、別に臭くはない。
むしろ、食欲をひたすらそそる、いい匂いだ。
それに店内は毎日キチンと清掃している。悪臭の元は存在しないはずだ。
「ああ、確かに臭うな」
「ああ、いーい臭いがするぜぇ」
だが、他の二人もじゅるりと舌なめずりをすると、くんくんと周囲の匂いを嗅ぎ出す。
その様子はどことなく獣のような気配を漂わせており、どうにも気色が悪い。
心なしか、男たちの表情が邪悪に歪んでいるようにも見える。
「おい店主」
狩人職の男が俺を見て言った。
細い、表情が読みにくい目だ。
「……なんだよ」
「出せよ」
「は? 何をだ?」
意図を掴めず、聞き返す。
「出せっつってんだよ、店主! 分かってんだぞ、そこからぷんぷん臭ってきて、たまらねーんだよォ!」
「……はあ?」
何言ってんだコイツは。
指を差してさかんにアピールしているが、そこにはカリーしかないぞ。
……いや、まさか。
「女の臭いだ」
「ああ、たまらねえんだよ」
「食わせろ」
「ああ、喰わせろ」
「その臭い、狂いそうなんだよォッ!」
興奮したように、口々に叫び出す冒険者たち。
思わず下を見ると、ペトラさんが涙目でくんくん自分の匂いを嗅いでいた。
大丈夫だペトラさん。あんたは別に臭くない。
三バカの頭がおかしいだけだ。
……いや。
おかしいのは頭だけではないようだ。
――メキメキ、バキバキ。
木のひしゃげるような不快な音が、すぐ目の前から響いてきた。
男たちの身体からだ。
三人が三人とも、歪な形に膨張しているのが分かった。
ただでさえ狭い店内が、さらに狭くなる。
おいおいマジかよ。
こいつら魔物化しているぞ!?
「「「ギギ……ギギギ……オンナァ……ニク……」」」
不快な歯ぎしりの音が店内に響きわたる。
三人の男に、それぞれ角が、鱗が、獣毛が生え、本格的に魔物の姿を取り始める。
「ちょっと、ライノさん! 一体、なにが……?」
「出るなッ」
棚の下に隠れているせいで事態が飲み込めないペトラさんが小声で話しかけてくるが、俺はそれを手で制する。
今ここでペトラさんの姿を冒険者たちに見せるのは非常にマズい。
コイツらが興奮して暴れ出したら、店内どころか厨房までオシャカにされてしまう。
……やむを得ん。
俺は無言で厨房を出た。
コウガイを見ると、《隠密》状態のまま腕組みをし興味深そうにこちらを眺めていた。
手助けが必要か見極めているのか?
それとも俺の実力を測っているのか。
まあ、今はそのどちらでも構わん。邪魔をしなければいい。
「あアん? なんダおまエ」
一番近くにいた酔っ払い冒険者の前に立つ。
すでに半分ほど魔物化しており、背丈は俺と比べ頭一つ分はでかい。
筋肉量は比べるべくもないな。
見た目は、オーガだ。
どことなく、コウガイを彷彿とさせる。携行している武器も剣だし。
一方こっちは素手だ。だが厨房にある刃物を使うわけにもいかない。
大切な調理器具をコイツらの血で汚すなんてもってのほかだし、なにより刃こぼれでもしようものなら、あとでペトラさんに小一時間は説教されてしまうからな。
だがこの程度の状況、俺にとっては何の問題ともならない。
「おイ 店主ゥ! さっさト、オンナ、ニグ、よゴせェ!!」
硬質な鱗に全身を覆われ、蜥蜴人のような見た目に変化した重戦士が席から立ち上がると、ビリビリと店を揺るがせるような大声で咆えた。
コイツはまたデカイな! 頭が天井まで付きそうだ。
「うひゃあっ!?」
厨房からペトラさんの小さな悲鳴が聞こえてくるが、今はフォローしているヒマはない。さっさとコイツらを片付ける。
「おいコウガイ。先に言っておくぞ。巻き添えになる前にそこから退避しろ」
「…………」
一瞬、ピクリと片眉を動かしたコウガイだったが、俺の意図を察したらしく無言で店の隅へ移動する。
「ああん? ナンだ? コんな妙ナ臭イ、知らネエゾ? おいゼッド、気を付けロ、こいつハ……」
人狼と化した狩人職の男が長く突き出した鼻をひくつかせ、訝しげな表情を作る。
「あア? ただのひ弱なナ人間だろうガ? 今の俺らの敵じゃねえゼ! 女を隠スってんなラ、まずはてめェからダ!」
オーガが剣を抜こうとするが、遅い。
「――《時間展延》」
途端、俺を取り巻く世界から色と音が消え失せる。
「ウチはカリーしか出さん。注文する気がないのなら、とっとと出ていけ」
そうは言ったものの、すでに三体とも扉から出せる大きさじゃない。
だが、ここで殺してしまうと店が汚れて営業できなくなる。
すまない、ペトラさん。
俺は心の中で彼女に謝ると、ギリリと拳を握った。
被害を最小限度に抑えるには、これしかないのだ。
「ほっ、はっ、よっと……」
慎重に力加減をして、三体の魔物それぞれにトン、トン、トン、と拳を当てる。
この程度ならば、店の中で爆発四散するような事態にはならないはずだ。
スキル解除。
――ドドドンッ! ガガン!
「「「っ――――ッ!?」」」
轟音とともに衝撃が魔物たちの腹部を襲う。
声を出すこともできず、目を見開いたままの魔物三体はド派手に吹っ飛び……
――ゴゴン! ガシャァァァン!
「ああっー!? お店の壁がああぁっ!? ちょっとライノさんッ!?」
ペトラさんの悲痛な叫びが背後から聞こえた。
それもそのはず。
今や、『彷徨える黒猫亭』は外側に面した壁は完全に崩壊し、涼やかな風が吹き抜けるオープンテラスなレストランと化しているのだ。
……もっとも、営業を再開するためには散らばる大量の瓦礫とそこで倒れたまま呻き声を上げている魔物三体をキチンと処分する必要があるだろうが。
すまん、ペトラさん。
もう一度、心の中で詫びを入れる。
店をこんなにした(原因を作った)アイツらを、俺は絶対に許さねえ。
この借りは必ず…………アイツラに返させるからな。
俺は固くそう決心しつつ、店の外に出た。
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