新任チート魔王のうまうま魔物メシ~勇者パーティーを追放された死霊術師、魔王の力『貪食』と死霊術でらくらく無双&快適メシライフを満喫する~

だいたいねむい

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第130話 樹海

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 魔物たちの猛追をかわしつつ、寺院を無事に脱出した俺たちは、その足で『嫉妬の遺跡』祭壇の広間に向かった。

「コウガイ、『ねね』さん、すまんが邪魔するぞ」

 通路を抜け、足早に広間に入る。
 その瞬間、崩れた祭壇の付近で寄り添っていたコウガイと『ねね』さんが、気配を察知して、さっと立ち上がった。

「ラ、ライノ殿、どうしたのだ? 寺院に向かったのではないのか?」

『急ニ、ドウサレタノデスカ?』

 まさか俺たちが現われると思っていなかったようで、険しい顔をしている。
 だが敵襲ではないと理解したコウガイは、小太刀の柄にかけていた手をすぐに戻し、弛緩したような息を吐いた。
 もっとも、跳ね上げた眉はそのままだったが。

「前に話したダンジョンを『拡張』する術式を見つけた。大規模なヤツだ。で、結論から言うと……どうやらこの遺跡から魔力の供給を受けているらしいことが分かった」

「なるほど……だが、なぜここに来る必要があるのだ?」

 コウガイはあまりピンと来ていないようだ。

「見てもらった方が早い。ビトラ、打ち合わせ通り頼む」

「む。了解」

 ビトラは小さく頷くと、両手を前に突き出す。
 無数の蔦が虚空より生まれ出る。

 シュルルルル――

 静かな葉擦れの音とともに、蔦がどんどんと広がってゆき……あっという間に広間の壁や天井を埋め尽くしてしまった。

 今や俺たちのいる広間は、さながら鬱蒼と生い茂った深い森のようだ。
 そして……あちこちから垂れ下がった蔦には、赤い光を放つ物体がいくつも見え隠れしている。
 
 俺はそのひと房に近づき、もぎってみた。

 それは、魔力核だった。
 みずみずしい真っ赤な果実を思わせるそれは、手にすっぽりと収まる程度の大きさだ。だが、内部に凄まじい魔力を秘めているのが感じ取れる。

 これ一つを精製するだけで、強力な魔力回復薬を数千本は生産できるだろう。
 値段は、とても付けられそうにない。

「大豊作だな」

「む。これしきのこと、造作もない」

 謙遜して見せるビトラだが、髪からのぞく耳がちょっと赤い。
 まあ、あえて指摘するような野暮なマネはしないが。

「こ、これは一体」

『マルデ、樹海デスネ……』 

 広間の様子を見て、唖然とするコウガイと『ねね』さん。
 そういえば二人には彼女の魔術を見せたことなかったか。

 まあ、俺もこれほど大規模なのを見るのは初めてだが。

「ああ、これがビトラの魔術だ。彼女はさまざまな植物を生み出し、操ることができる。今展開してるのは、魔力を喰らい成長する魔導植物だそうだ。コイツで術式に必要な魔力を奪い、無力化する」

 だが、そんな様子はおくびにも出さず、俺は二人にそう説明してやる。

 この作戦を思いついたのは、以前『怠惰の遺跡』で遭難したサムリらを助けに言ったときのことを思い出したからだ。

 あのとき、強化トレントの種子に浸蝕されドラゴンゾンビと融合したイリナは、ダンジョンの魔力を吸い取って驚異的な回復力を手に入れていた。
 そのとき、遺跡内の魔力がかなり減少していたのだ。

 そこで俺は、あとのきと同じ現象を再現できれば、ヴィルヘルミーナの展開する術式に流入する魔力を著しく減らすことができると考えた。

 そこで、ビトラに同じような植物を生み出せないか聞いてみたのだが……
 どうやら、普段戦闘時に生み出す植物ゴーレムを構成する蔦が、その魔導植物だったらしい。

 そして、ゴーレムを構成せずに広間中に展開させれば……見てのとおりだ。

「ライノ殿の側にいるのだ、ビトラ殿もただの女子おなごではないと思っていたが……まさかこれほどとは。ということは、パレルモ殿も、やはり……?」

『ヤハリ……』

 コウガイと『ねね』さんの、ちょっと引き気味かつ、期待のこもった視線がパレルモに向けられる。

「ふふん……もちろんわたしだってすっごいんだよー? じゃあじゃあせっかくだし、パレルモさんの良いとこ、見せちゃおっかかなー?」

 調子に乗ったパレルモが、これ以上無いドヤ顔をする。
 それから、スッと天高く両手を掲げ――

「ここからお空が見上げられたら、それって素敵なことじゃ――」

 …………!?

「ちょっと待てパレルモ! それはマズい! 絶対にマズい!」

「にゃっ!?」

 とっさに彼女の両手をガッ! と掴み、制止する。

 あ、あぶねー……!

「ちょっとライノー、なんで邪魔するの!? すごいところ見せられないよー」

 ほっぺをプクッ! とさせて抗議してくるパレルモ。

「本当にすごいからダメなんだよ……」

 彼女の力――空間断裂なんかバン! て魔術なるやつをもってすれば、ダンジョン最深部であるここから地上まで直通の大穴が空けることなど造作もないだろう。

 しかし、しかしである。

 言うまでもないことだが、そんなことをすれば俺たちは間違いなく岩盤の崩落に巻き込まれて生き埋めだ。

 いくら魔王の力があるとはいえ、さすがにそんな目に遭って生き残れる自信は欠片も持ち合わせていない。

 もちろん地上にあるヘズヴィンの街だって、タダで済むわけがない。
 というか、ヘタをしなくても街が滅ぶ。

「いいかパレルモ? さっき打ち合わせしたとおり、お前の力はあとでいくらでも見せる機会はあるはずだ。だから、そこまで温存しておけ。というかイザというときに魔力が足りなくなったら、《ひきだし》が維持できなくなって、亜空間から大量のおやつやら食材が溢れ出してくるぞ。それでもいいのか?」

「むうー……それは困る」

 パレルモのほっぺがちょっぴりしぼむ。
 しぶしぶだが、理解してくれたようだ。

 ふう……危機一髪だった。

 俺は心の中でほっと胸をなでおろす。
 というか、こんな掛け合いをやっている暇はない。

「ビトラ、首尾はどうだ?」

 すでに彼女の生み出した魔導植物は広間全体を埋め尽くし、さらには出入り口から外へとその版図を拡大している。

「む。たった今、第三十階層目まで到達した。魔力の一部は私にも循環するから、あまり消耗はない。けれども、もう少し時間が必要」

「さすがだな。大変だろうが、頼んだぞ」

「む……了解」

 玉のような汗を額ににじませ、ビトラが答える。
 さすがの彼女でも、ダンジョン全域・・・・・・・を覆い尽くすだけの植物を生み出すのは相当に大仕事らしい。

「この広間だけではないのか……」

 コウガイのアゴが外れそうになっているが、そっちに構っている暇もないな。

 周囲の魔力は、すでにかなり薄まっている。
 じきに、地上と同じくらいになるだろう。

 ……そろそろ頃合いか。

「よしパレルモ、今度はお前の出番だ。出発だ」

「うんっ!」

 俺とパレルモは互いに頷き合うと、大広間をあとにした。
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