新任チート魔王のうまうま魔物メシ~勇者パーティーを追放された死霊術師、魔王の力『貪食』と死霊術でらくらく無双&快適メシライフを満喫する~

だいたいねむい

文字の大きさ
131 / 141

第131話 崩壊

しおりを挟む
 教会下のダンジョンに入ると、内部はすでに崩壊寸前だった。
 さきほど襲ってきた魔物たちも、すでにいない。
 おそらくそれすら維持できないほど、ダンジョンが衰退しているのだ。

 こちらの一押しがあれば、術式はすぐにでも消失するだろう。

「よくも、やってくれたわねぇ……」

 霊廟の入り口に立つと、ヴィルヘルミーナが棺の影から姿を現した。
 こちらを睨み付ける目は怒りに満ちているが、息は上がり足取りもおぼつかない。かなり衰弱しているようだ。

 よく見れば手を術式に一部に触れたままなので、遺跡の魔力の代わりに自分の魔力を注ぎ込んでいたのだろう。
 まあ、さしもの魔王の巫女でも焼け石に水、といった様子だが。

「ああ。遺跡の魔力が供給源だと分かったからな。止めさせてもらった」

「よくも……! ――《解除》」

 ヴィルヘルミーナがこちらに向かって手をかざすと同時に、虚空から無数の武器が出現した。それが、俺たちに向かっていっせいに放たれる。

「危ねえっ!」

「ひゃんっ!?」

 とっさにパレルモを抱きかかえると、霊廟から通路に転がり込むように退避。
 次の瞬間、俺たちのすぐ上をいくつもの風切り音が通り抜けてゆく。

 ――ガガガガガッ!

「危ねー……」

 倒れたまま通路の奥を見れば、突き当たりの壁に無数の武器が突き刺さっているのが見えた。
 槍や剣、錫杖なんてものもある。

 コウガイの話を思い出す。
 ヴィルヘルミーナは確か、《封印》とかいう能力を持っていると語っていた。

 どうやらヴィルヘルミーナは術式から魔物を召喚するだけでなく、パレルモの《ひきだし》のように、亜空間に武器を隠し持っているらしい。
 おまけに、そのまま投擲することもできるようだ。

 あれらはナンタイの打った魔武具だろう。
 だとすると、どんな効果が付与されているのか分からない。
 ならば、かすり傷を負うのもあまりよろしくないな。

 正直な感想を言えばあんな使い方があるというのは驚きだが、現実に使ってくる以上対処するしかない。

 となれば……

「ラ、ライノー……お、重いよー」

 耳元で声が聞こえ、意識が現実に引き戻される。

 気付けば、パレルモの顔が、すぐ目の前に見えた。
 鼻と鼻がくっつきそうな距離だ。

 攻撃を回避するさいにパレルモに覆い被さるような格好になってしまっていたらしい。

「す、すまん。すぐにどく」

 転がるようにして、慌てて脇にどく。
 しばらく体重をかけたままになっていたせいか、彼女の顔がうっ血してしまっている。

「……パレルモ、大丈夫か?」

「……ウ、ウン? ワタシ、ダイジョブダヨー?」

 寝転んだままのパレルモが、俺の言葉にこくりと頷く。
 だが、なぜか俺と反対側を向いたまま目を合わせてくれない。

 つーか、なんだそのカタコトは。

「ここは危ない。奥にさがるぞ」

「う、うん! ……はあ……」

 次の攻撃が来ないうちに、通路の奥に隠れる。
 背後でパレルモのため息が聞こえた気がする。

 ……やはり怒っているようだ。
 かなり勢いよく押し倒したからな。
 あとでもう一度謝っておくか。



 ◇



「……さて、どうしたものか」

 俺は通路の壁に背を預けたまま、ちらりと霊廟側を見やる。
 ここは部屋からは死角になっており、武器が届かない。
 だが顔を半分だけ出して、様子を伺おうとすると――

 ――ガガッ!

「おっと」

 ものすごい勢いで武器が飛んできた。
 慌てて顔を引っ込める。

 見れば、今度は突撃槍チャージランス斧槍ハルバードだ。
 どちらも石造りの壁面深くに突き刺さり、ビイイィィン……と柄の部分が震えている。かなりの威力だ。
 もしかすりでもすれば、毒や呪いを受ける前に顔が吹っ飛んでしまうだろう。

 それから二度三度と霊廟の様子を伺ってみるが、そのたびに武具が飛んでくる。
 これでは先に進むことができない。

 ここからだと相手の攻撃は届かないが、俺たちも攻撃を仕掛けることができない。完全に膠着状態だ。

 相手の手札を考えてみる。
 術式の維持が手一杯なのだろう。魔物の召喚は今のところない。

 他にも手札を隠している可能性もあるが、少なくとも遠距離攻撃の手段は武器射出だけとみて良いだろう。
 この状況で出し惜しみをするとは考えにくいからな。

 となれば、俺が先行して飛来する武器を《時間展延》で全て捌きつつ、攻撃が途切れた瞬間に背後からパレルモが空間断裂魔術をぶちかますのが最善策か。
 かなりの魔力を消費することになるが、背に腹はかえられない。

 ……よし。

 そうと決まれば、あとは実行するだけだ。

「よし、パレルモ。そろそろ反撃の時間だ」

 手短に、概要を伝える。

「う、うん、りょーかい!」

「よし、じゃあいくぞ。――今だ!」

 タイミングを見計らい、通路の死角から飛び出す。

「させないわぁっ!」

 ヴィルヘルミーナが叫ぶ。
 一瞬だけ彼女の鬼気迫るような表情が視認できたが、それもすぐに幾十振もの長剣、大剣、曲刀に戦槌に埋め尽くされ見えなくなった。

 それらが、俺たちをバラバラに引き裂かんと殺到してくる。

「――《時間展延》」

 だが、魔武具といっても所詮はただの武具だ。

 物量も威力も凄まじいものがあるが、当たらなければどうということもない。
 魔剣の類いといえども、俺たちを追尾してくるわけでもないしな。

 ギギンッ! ギギギンッ!

 俺は手に握った短剣で身体を突き刺そうと迫るものだけを軌道を逸らし、あるいは撃ち落としてゆく。

 攻撃が途切れたところでスキルを解除。

 ガガガガガガ――ゴゴゴ――

 背後で凄まじい音が聞こえるが、俺たちには傷一つない。

「なっ……あれを受けて、なぜ生きているのぉっ!?」

 その様子を確認するやいなや、ヴィルヘルミーナの顔が引きつる。
 だが、それに答えてやる義理はない。

「今だ、パレルモ!」

「あいあーい! とわーっ!」

 パレルモが俺の後ろからさっと飛び出し、両手を前に突き出した。

 ――バキン! ゴゴッ!

 ガラスが砕けるような破砕音が鳴り響く。
 次いで、轟音が霊廟全体を揺るがす。

 よし、成功だ!

 パレルモにより破壊された場所からパリパリと薄い膜が剥がれるように、霊廟に施された術式が剥離してゆく。

 それと同時に、夥しい量の光の塊が次々と床や壁、それに天井から溢れ出した。
 術式に捕えられていた人々の魂が解放されたのだ。

「わ、私の術式がぁっ!? そ、そんな、ウソでしょぉ……」

 ヴィルヘルミーナが呆然と呟き、へなへなとへたり込んだ。

 やがて光の塊は奔流と化し、俺たちの脇をすり抜けどんどんとダンジョンの外へと流れて出してゆく。

「キレイ……」

 パレルモが、その様子を呆けたように眺めている。
 だが、まだ最後の仕上げが残っている。

 まだ、『ダンジョン拡張』の術式そのものを完全に崩壊させたわけではない。

「ダメ押しだ。パレルモ、もう一発撃ち込んだら即座に退避するぞ。……一応、出力は加減しておけよ? ダンジョンごと崩壊させたら俺たちも生き埋めだからな」

 俺は術式が光を失うのを見届けてから、パレルモに声をかける。

「う、うん分かってる……よ?」

 本当に大丈夫だろうか?
 まあ、さっきは問題なく術式だけを破壊できたからな。
 彼女の腕を信じよう。

「じゃあ、いっくよー! せーのっ」

 パレルモの手から放たれた不可視の刃が今度こそ術式を完全に破壊し――

 そのとき。

 霊廟にへたり込んだままのヴィルヘルミーナが、ニヤリと笑った気がした。
 それと同時に、真っ黒な殺気が、怖気となって俺の背中を撫でてゆく。

 この感じ――なにかヤバいっ。

「パレルモッ!」

 俺はほとんど無意識のうちに叫ぶと短剣を引き抜き、パレルモの前に躍り出る。

「ほわわっ!? ちょっとライノ、危な――っ!?」

 ――ギィン!

 火花が目の前で散り、甲高い金属音が鼓膜を叩く。
 同時に、凄まじい衝撃が俺の身体を襲った。

「ぐっ……」

 食いしばった奥歯から、思わずうなり声が漏れた。

 クソッ、重い……!

 不意の攻撃だったが、咄嗟に身体能力を強化して正解だったようだ。
 なんとか、受けきることができた。

「……ほう。今の一撃を受けきるか。しかも、魔剣ですらないただの短剣で」

 落ち着いた声が、頭上から降ってくる。
 声の主は、太刀を持った長身の男だ。

 クソ、コイツ……どこから現れた?
 今まで気配を殺して隠れていたのか?

「オラぁっ!」

 ――ギギン!

 さらに身体を強化して、力づくで太刀を弾き返す。

「ふむ」

 だが、手応えはあまりない。
 気配がスッと離れてゆく。

 どうやら受け流されたらしい。

「なるほど。お前がナンタイか」

 コウガイの話どおり、外見は優男だが……その剣圧はサムリなんかとは比べものにならない。

「いかにも」

 霊廟の薄闇の中、ナンタイの構える太刀がギラリと鈍く光を放った。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...